クラスメソッドのマーケティング担当によるDevelopers.IO 2020 CONNECT 企画解説 #devio2020

2020.07.16

この記事は公開されてから1年以上経過しています。情報が古い可能性がありますので、ご注意ください。

こんにちは。マーケティングコミュニケーション部のタケハラです。Developers.IO 2020 CONNECTはお楽しみいただけたでしょうか?

終わってみれば2,600名様超のお申込をいただき、前年のDevelopers.IO 2019 Tokyoを大幅に超える集客を達成し、盛況のうちに会期を終えることができました。みなさまありがとうございます。

毎年のことではありますが、イベントが終わったら企画の主旨について説明をするブログを書こう書こうと思うものの、日々の忙しさに負け、そしてなにより説明がめちゃくちゃ難しいことに心が折れ放置していたのでした。そして今年も折れかけました(忘れかけました)。

しかし、今回については、昨年までの開催ノウハウがまったく役に立たないド新規プロジェクトとなったため、私にしてはめずらしく企画書をしっかりと書いたのでした(私のわりには)。

本稿はその企画書をベースに、企画の背景を解説するという前代未聞の記事にしてみようと思い付きました。当社社員におかれましては「そんなにちゃんと決まってなかっただろ!」とツッコミをいれたくなる気持ちもわかりますが、寛容の心で流していただければ幸いです。

(こちらの動画でも企画の説明をしていますので、お時間がございましたら御覧ください)

企画書のファイル名「Developers.IO 2020 Webinars - サブタイトル未定」

のっけからこれです。

サブタイトルは最終的には「CONNECT」(佐々木さん命名)になりました。ジョジョ3部のスターダストクルセイダース的な響きを意識して「Wonderful Wondering Webinars」などの案を考えていましたが、伝わらないだろうなと思いボツ。またこれまでのDevelopers.IOのサブタイトルはすべて「O」を頭文字としており(Outnumber、Overflow)、今年は「Olympic」という案もありましたが、絶対に怒られるやつなのでこれもボツです。世知辛いですね。

表紙、キービジュアルとコピー

キービジュアルは本当に直前に、ギリギリで、デザイナーfujitaさんがなんとかしてくれました。fujitaさんいつもありがとう(いつもごめんなさい)。

申し込みサイト(社内ではポータルと呼称)にクラスメソッドのロゴをベースに某人気ゲームを想起させる島のイラストを掲載しました。これは、fujitaさんが某人気ゲームにどハマリしたためかこういうのやりたいっていう提案をしたもので、このアイディアはとてもタイムリーだし後述する本イベントのコンセプトにも合致することから即採用となりました。数日後、これらのキービジュアルをちりばめた申し込みサイトのカンプを見たときに、本イベントの成功を確信しました。少なくとも、前年を下回ることはないと思うことができました。

私は「デザインの役割とは、あいまいな概念に説明可能な形状を付与すること」と考えています。何かをふわっと思いつくことは誰でもできます。それを形にし、実行していけるかどうかは実力次第です。その何かをふわっと思いついてから実行にしていく間の「形にする」部分で、今回ほどデザインの力に助けられたと思ったことはないと気がしています。できあがってみればどうってことないように思えますが、出来上がる前は「説明可能な形状」がないため、イメージを伝えることがとても難しいのです。

企画意図を非言語で瞬間的に捉えてもらうためには、デザイナーの制作するビジュアルは超重要だと考えていますし、そのような仕事の進め方をしていると思います。担当するデザイナーにはいつも大きな負担やプレッシャーがかかっているとは思うのですが、ビジュアルひとつで成否をわけることはいくらでもあり、ここは妥協できないところです。

コピーの「7日間、100のセッション、全部オンライン」はすごく、コピーっぽいですね。

コンセプトの説明

とりあえず「コロナ」って入れといたほうが良いんだろう感がひしひしと伝わりますが、書いてたときはわりと真剣です。

オンラインで行くと決まったときに浮かんだイメージはジャミロクワイの3rdアルバムのタイトルである「Traveling without moving」という言葉でした。クラスメソッドは東京だけでなく日本国内は札幌、上越、大阪、岡山、福岡、沖縄と進出し、海外はカナダ、ドイツ、タイ、インド、韓国(関連会社)のオフィスがあります。それぞれの地域の社員が登壇者として参加し、さらに広い地域からお客様にご参加いただけるイベントにするには、移動という概念(制約)を捨てる必要があります。折しも、コロナウイルス感染拡大により移動という選択がなくなってしまったこの時期に、適切なコンセプトだったのではないかと思います。そういった自室(オフィスでもいいいんですが)にいながらにして、数多くのコンテンツに触れることができ、あたかも大規模なテックカンファレンスに参加したかのような体験を得られる、そういったイメージを関係者に説明していました。

前回までのDevelopers.IO

なんでこういうよそ行きなページがあるのかというと、この企画書を作り始めた時点では、スポンサーさんにご参加いただく選択肢があったからです。これはコンテンツを設計する段階で見送りとなりました。

開催概要

これもよそ行きなページですね。開催日時、配信方法、参加料は何回も書き直されています。ド新規企画ということもあって、概要としてシンプルに書きづらかったですね。

展示ブースの言及があるのは、前項に書いたようにスポンサーさんにご参加いただく可能性があったからです。

イベントを全体像、全体スケジュール

今回の企画でもっとも悩まされたところです。そもそも発端として「オンラインイベントで100本超のセッションを用意して開催せよ」という指示がありました。これは単純にやってしまうことはそれほど難しくはありません。しかし、一斉に100本の動画が上がったとして、それはどれくらい観てもらえるのでしょうか? ブログですら1日に10本くらいの記事があがって「多すぎて読めない」というご意見をいただくことが多いのです。倍速でみても10分以上はかかり視覚と聴覚をもっていかれる動画をずーっと観ていただくのは無理があります。そんなイベントを強行し一所懸命つくった動画が観てもらえなかったりしたら、同僚たちにもうしわけない。勉強会登壇で悲しい思いをさせたいとは思いません。これは絶対に避けなければならない。

では分散すればいいのか、どれくらい分散させるべきか、数日間連続でやるのか、日程の間隔を空けるのかなど、前年までに蓄積されたノウハウもセオリーもまったく通じないド新規企画らしい悩ましさがここにありました。

最終的には「視聴習慣をつくっていただく」ということを重視し、一定間隔で空ける日程を採択しました。これには開催負荷を分散する効果もあり、正解だったのではないかと思います。

あわせてマルチトラックをやめて日毎にテーマを定めることにしました。日毎に参加されるお客様がガラリと変わることが予想されますが、ウェビナーという方式が、興味のあるセッションだけつまんで離脱するといった視聴パターンが多いという傾向を把握していたので、それであればいっそ分散した方が良かろうと考えました

P6.「セッション種別」

ライブセッションとビデオセッションの二種類の提供方法にしたことについては、動画で説明したのでそちらをご覧いただければと思います。3行にまとめると、

  • インタラクティブな要素としてのライブセッション

  • いつでもどこでもだれでも観られるビデオセッション

といったように3行どころか2行でまとまるわけですが、この方針に至るまでには数多くのパターンを検討し社内で議論を重ねました。迷ったら「それはユーザーのためか?」「それはユーザーにとって嬉しいか?」を問いただし(ときに自問し)、提供者の論理を主張してユーザーが参加しづらくなったり、イベントの構成がわかりづらくなったりしないように、なるべくシンプルになるように考えました。それでも、1つのイベントに2つの参加方法があるというのは、少々の混乱を発生させてしまったようであり反省点です。

タイムテーブル(1日目):AWSとクラスメソッドの文化

クラスメソッドといえばAWS徹底的にやっていく会社なので、初日のテーマをAWSにすることに迷う余地はありませんでした。問題は、社内にコンテンツも大量にあるAWSを1日だけで良いのか…?といったところです。ライブセッションはAWSの中でもタイムリーなテーマのものを集めました。ビデオセッションにも人気のでそうなコンテンツがたくさんあり、AWSのクラスメソッドな感じが表現できたのではないかと思います。

タイムテーブル(2日目):データ分析を支える技術

2日目は、マーケティング的に推していきたいデータ分析をもってきました(全部のテーマを推したいところではあるけどビジネス上の効果が速いという点で)。ライブセッションが途中で1つ追加されたのは嬉しい誤算でした。

タイムテーブル(3日目):ソーシャル、IoT、クラウドがもたらすUX

3日目は「ソーシャル、IoT、クラウドがもたらすUX」となっており、多岐にわたる技術を扱いつつ、まとめるちょうどよい言葉がないことに悩まされました。ギリギリまで考えに考えて、この日にとりあつかうセッションは、ユーザーへの影響が大きいことから、UXでまとめる……、というのは今考えても苦しいですが、妥当ではないかなとも思います。

タイムテーブル(4日目):機械学習の現在地と、サーバーレス、IaC…、ほか

機械学習は力を入れていきたいテーマだし、社内からでてくるコンテンツもすごく良いのだけど、数が少ないため他のテーマも一緒にやるしかない……。そのため、サーバーレス、IaC、「ほか」と同日となりました。会社として力を入れたいけど出せるコンテンツが少ないということは、機械学習に興味のあるエンジニアが少ないということになります。つまり採用において絶賛募集中です。

タイムテーブル(5日目):ビジネスとマネジメント

社員数が増えたクラスメソッドはかつてのほぼエンジニアの組織から、エンジニアじゃない人たちもいる組織になりました。それにあたり、非テッキーセッションをまとめてもイベントとして十分なボリュームは作れます。理論を解説して終わることもおおいテーマも「やってみた」結果を紹介しているあたりはとてもクラスメソッドらしいですね。

それと、私もビデオセッションで登壇しております。同時並行の別企画もすすめる都合上、編集に時間をかけるわけにいかず一発撮りで望みました。そういうとネガティブな雰囲気がでてしまいますが、私はライブが好きだし、収録もライブ感重視の一発撮りが好きなのです。後悔なんてあろうはずがない。

タイムテーブル(6日目):MAD

MADをテーマにし、アマゾン ウェブ サービス ジャパンの亀田さんにゲストスピーカーとしてご登壇いただきました。

ある意味、AWSの2日目といった内容の日ですが、こちらはアプリケーションの話になります。AWS自体は世界観を大きく広げていく中で、それを技術的にキャッチアップし続けるクラスメソッドとしては、今回のようなイベントのときにどこまで取り上げるのかは、とても悩ましかったりします。でもこれはきっと贅沢な悩みなのだと思います。

タイムテーブル(7日目):クラスメソッド、17年目の"Still Day 1"

通常、私は自社にとって手前味噌のような企画はしません。節度を持って端的な事実を提供し、ご判断は受け取った方に委ねるべきと考えています。しかし、6日目までに多岐にわたるテーマを扱った会社がどのような会社であり、どういった姿勢でいるのかを説明する必要があると思いました。自社を持ち上げすぎず、でも多様な技術に対して積極的な社風を伝えるにはどうするべきかを考えました。

参加方法/視聴方法

ライブセッションはZoomによる配信とし、事前申し込みを必要としました。ユーザーのアクセス容易性を考えたらYouTube Liveという選択肢もあったわけですが、検討段階ではコメントの制御や運営からのお知らせが難しいと判断しました。Zoomの場合は契約プランによっては視聴者数の上限が変わりますので、だいたい何名様くらいにご視聴いただけるのかを事前に把握しておく必要がありました。なので、大変もうしわけないんですけど、いちおうお申し込みをいただく形としました。

スピーカーのみなさんにやってほしいこと

100本のセッションを少ない人数の運営で乗り切るには、セッションを担当する人にどのようにしてほしいかをなるべく明確に伝える必要があります。そこで、思いつく限りの留意点をドキュメントに起こし、社内説明会を行い(もちろん録画して参加できなかった人も観られるようにして)、Slackに専用チャンネルを作りました。

今回の企画において、ライブセッションはZoomのウェビナーをつかったもので、社内にノウハウがあるためなんとかなるだろうと思えたのですが、とにかく数の多いビデオセッションをどうするのかが課題となりました。

  • 使用ソフトウェア、機材まで記述したマニュアルを用意

  • 内容チェックはバディ制度

この2つがキーになります。クラスメソッドの社員はこういった催事(祭事)にたいして前向きに取り組んでくれるので上手く行きました。決して余裕のある収録スケジュールではなかったはずなのに、やりきってくれた人たちに感謝です。

マニュアルについては、今回のイベントの企画・運営を通じて生み出された最大の副産物だと思います。このマニュアルのおかげで、短期間のうちに100名近くのYouTuberをデビューさせることができました。これに関しては、社内の有識者の意見をまとめながらやりきったHitch_Hiker_Holyさんが良い仕事をしたと言わざるを得ません。こちらについてはブログで公開されていますので、ご興味のある方はチェックしてみてください。

会期後に行ったアンケートで、もっとサポートをしてほかった、というフィードバックがありました。この指摘は一理あるため、次回以降の改善点とします。

司会について

これまでのDevelopers.IOは、デベロッパーコミュニティのもつオープンな雰囲気があり、企業色が少なく、技術が好きな人が集まっている、そういったイベントの「色」がありました。今回はオンラインになったこともあり、イベントの色がまだありません。多種多様なテーマを扱うため、イベント全体を通した、連続性というか、そういったものをどうやって作り込むのか、これもまた懸案事項となりました。

手っ取り早い方法としては、一人の人間が全日程の司会を担当しスピーカーとの質疑応答の進行もして都度都度ふりかえりなどをすることで、連続性をもたせることができるのではないか?と考えました。その場合、その司会担当は全てのセッションを把握し、開催実績のないイベントのため司会原稿を自分自身でつくる必要があり、7日間にわたって長時間拘束しても業務的な問題が少ない……、いろいろ考えたものの私がやるのが合理的であると判断しました。三日目くらいから後悔しはじめたので、あまりいいアイディアではありませんでしたね。

スライドテンプレートの紹介

クラスメソッドでは大きなイベントがあると、そのイベント用にスライドテンプレートを用意します。今回は前述したように、某人気ゲームにインスパイアされたビジュアルを配置しました。

レポートブログ

「息を吐くようにブログを書けるクラスメソッド社員」という大前提があるから成立しました。できればテンプレートを制作してからみんなに渡したかったところですが、そこまでの余裕はなく、必要な項目を伝えるにとどまりました。個人的には、厳格な規約によって創造性が損なわれるのは望まないので、今回くらいのルールで良いのかなとも思います。

誘導とページ構成

今回のイベント企画において最も神経をつかった部分になります。

  • ユーザーにとってなるべくシンプルで参加しやすいこと

  • 運営にとって管理しやすいこと(煩雑な仕組みは事故の元)

この2条件はそろって満たす必要があります。理由もシンプルで配信でZoomを利用する以上、視聴者数の最大値をある程度は予測しておかなくてはいけません。だったらYouTube Liveを使えば良いのではないか、という意見もあるかと思いますが、コメントのコントロールや運営からのお知らせなどを考えると、今回のイベントについてはZoomの方が適しています。実現したいイベント像から利用するべきツールを選定し、そのツールを安全に利用するための条件を揃える、ただしユーザーにストレスを与えることなく……。視聴者数予測を外して過小見積をしてしまうと、観たかったのに観られないユーザーを発生させることになるので、結果、ユーザーにとって不満となります。なので、この両者は両立する必要があるのです。

また、オンラインイベントとなりセッション動画は後からでも閲覧できるようにする以上、そのコンテンツに至るナビゲーションも極力シンプルにする必要があります。そういった観点においては、もっとシンプルにできたのではないか?とも思います。

拡散方法

ライブセッションを配信したのは7日間ですが、会期自体は4週間もありました。これだけの期間があるのですから会期中に集客を増やすことも考えられるし、選択肢も増えます。というわけで可能性はあって検討をしたもののいくつか未消化のプランがあったのでちょっと心残りです。

とはいえ、6/16(火)の初日から600名様以上のお申し込みをいただいたので、拡散についてはある程度は成功したようです。

会期終了後の活動

これまでの傾向だと、イベントをやりきることで力尽きてしまい、会期終了後については何も考えていないということがほとんどでした。今回は、少しは先のことを考えられるようになったので、動画の配信を継続することだけは決めておきました。イベント自体は火曜・金曜のペースで開催したこともあり、クラスメソッドのYouTubeチャンネルは火曜・金曜の視聴者数が多くなる傾向があります。これは視聴習慣ができるのではないかという仮説から、できつつあるのではないかというデータによる実証が進んだとも言えます。

まだまだ手探りではあるので、実際にやってみながら良いコンテンツにしていければと思います。

運営スケジュール(集客期間の目安)

企画に時間をかけすぎたため(本当にすみません)、告知ページを急ピッチで作成し、集客期間は約2週間となりました。オンラインイベントの集客期間はオンサイトイベントよりも短い方が良いという傾向があるのはだいたい把握できているのですが、どの程度が適切なのかはまだわかりません。1週間だと短すぎ、2週間はちょうどいいけど不調の場合立て直しが難しいということもあり、3週間程度が妥当ではないかと思います。それ以上だと忘れられてしまったり、先の予定すぎて申し込む動機が弱くなるようです(諸説あり)。当然、テーマや季節によっても変わってきますが、オンラインイベントを企画する際にはぜひとも把握しておきたい傾向です。

おしまい

以上が企画書をベースにしたDevelopers.IO 2020 CONNECTの企画の説明(いいわけ)となります。

今日においてはオンラインイベント百花繚乱のようであり、多くのプレイヤーが急速にノウハウを積み上げています。この記事は、オンラインカンファレンスを自分たちで企画して実行し、結果まで記録したという点ではそれなりに価値はあるかと思いますが、陳腐化するのも早いでしょう。しばらくしたら当たり前の形式知になっているはずです。しかし、実践知はそうではありません。そもそも今回のイベントもそれまでに回数を重ねたウェビナーがあったからこそ実行できたというのも事実です。そして、多くの社員が動画を制作して情報発信をする経験を積んだことにより、クラスメソッドは以前とは少し違う組織になったはずです(社員の3割がYouTuber?)。

そんなふりかえりをしつつ、また次の企画でお会いしましょう。