インハウスのマーケティングがしたい方へ!「マーケターがチームで成果を最大化する仕組みづくり」勉強会レポート #enjoyインハウス
本記事は、インハウスのマーケティング、広告運用をテーマにした勉強会「enjoy!インハウス#07|マーケターがチームで成果を最大化する仕組みづくり」のレポートです。下記を知りたい方はぜひお読みください。イベントは2019年8月28日に開催されました。
- マーケティングや広告運用の内製化によるメリット・デメリット
- インハウスマーケティングのチームで仕組み化によって成果を上げる方法
インハウスとは
「インハウス」は「インソース(内製化)」とも呼ばれ、企業が必要な仕事を社内で行うことを指します。「アウトソース(外注)」の対義語と言ったほうが理解しやすい方も多いのではないでしょうか。
今回の勉強会では、インハウス=インハウスマーケティング、つまり「自社で行うマーケティング」という意味で使っています。
enjoy!インハウスとは
株式会社ウェディングパークさんが主催するイベントです。インハウスならではの面白さ大変さをライトに語り合えるコミュニティを目指し、月替わりでエンジニア・ディレクター・デザイナーが主体となって開催。今回で7回目となります。
- Connpass
マーケターがチームで成果を最大化する仕組みづくり
- 楽しみ方
- LTを聞きながらsli.doで質問できる
- リンクを踏んで「enjoy07」を入力 -> 質問フォームへ
広告代理店出身2人+新卒ディレクター1人で挑む!チーム成果最大化の仕組み作り
スピーカー
株式会社ウエディングパーク メディア開発本部 マネージャー/助川健太郎氏
プロフィール
株式会社アイ・エム・ジェイ、株式会社ネクステッジ電通(現・電通デジタル)および株式会社電通にて、デジタル広告を中心とした運用コンサルタントやプランナー、営業などを経験。2016年1月より株式会社ウエディングパークにてマーケティングに従事。デジタル広告によるダイレクト施策やサービス全体施策、解析、およびマス広告も含む認知施策を担当。 MarkeZineにて記事の執筆やMarkeZine Dayでの登壇も経験。
概要
本イベントを主催するウエディングパーク社が、ライトインハウス型のマーケティングチームで実施している「成果を最大化するための取り組み」を紹介。ディレクター3名とデザイナー1名のチームでは、広告を中心にマーケティング戦略の設計やクリエイティブ制作などを主導しています。
主な施策は以下の通りです。
- トレジャーデータを採用するなどして社内でデータを可視化し、意思決定のスピードを上げる
- ディレクター3人が各々考えたクリエイティブを同条件で配信し成果を競う「クリエイティブバトル」
- 新企画を提案する毎月の「ブットビTIME」 .etc
セッション
- 本日のお話
- ライトインハウス型のマーケティングチームで実践している成果を話す
- ウェディングパーク社紹介
- ビジョン:21世紀を代表するブライダル会社を創る
- 国内最大級の結婚準備口コミサイト「Wedding Park」など5つのメディアを運営
- マーケティングチームのミッション
- 全事業の最重要KPIに貢献しスケールさせる
- チーム
- ディレクター3名、デザイナー1名
- ディレクターの内訳:広告代理店出身者が2名+2019年卒の新人1名
- 仕事の進め方と注力テーマ
- 広告中心
- ライトインハウス形式で戦略の全体設計・クリエイティブ制作を主導
- 環境づくりと組織づくりをテーマに注力
環境づくり
- 背景
- 状況把握や意思決定のプロセスに課題
- エリアごと、式場ごとのCV状況を把握でき、偏り無く分散が理想
- 広告代理店の状況把握の粒度やスピードに課題
- 取り組み
- 全体やエリア別の状況を自動集計
- TresureData -> BigQuery -> DataPotal
- パートナーの協力で広告配信向けのダッシュボード(DOMO)も構築
組織づくり
- 大事なこと
- チームのフェーズと成果の方程式
- チームのフェーズ
- これまでのディレクター2名体制では担当を明確に分けてきた
- 新卒ディレクターの加入によりチームとして仕組み化を目指す
成果最大化の方程式
- 京セラ創業者の稲盛和夫さんが提唱する「人生方程式」を意識
- 人生方程式:人生・仕事の結果 = 能力 × 熱意 × 考え方
- この方程式に基づきチームとしての仕組み化を促進
能力
- 1年間の新卒育成ロードマップ
- 新人賞を狙えるよう設計
- 理解テストなど実施
- 効率<量の目標「もなみ20」を設定
- 「もなみ」は新卒ディレクターの名前
- 月別・週別の定量目標
- スピードの意識を行動に落とし込む仕組み
- 結果 -> 強制的にスピードUP
- 考えてもわからないことに悩まず試行に時間を割けるように
- クリエイティブ強化
- デザイン相談会 = クリエイティブの検証結果の共有、考察、次の企画
- クリエイティブバトル = 同じテーマで3つのページを作って成果を競う
熱意
- 相互提案
- 各サイトのメイン担当に改善施策を提案する「パンプアップTIME」を毎月実施
- 筋トレと同じで「時には痛みを伴うが、それにより強くなる」
- KPIに直結しない中長期目標
- チームとして中長期的に目指したいこと、成し遂げたいことを掲げる
- 例:イベントでの登壇やクリエイティブアワード受賞など
- 足元のKPIだけに縛られずワクワクする目標を決めチームの熱量UP
考え方
- ぶっトピTIME
- 毎月新しい企画を提案する
- 企画力を鍛える
- 会社の方針とのすり合わせにより正しい考え方で伸ばす
4つのポイント
- マーケターには戦うための環境づくりと組織づくりが重要
- 適切な環境構築やパートナーへの丁寧なオリエン
- 組織のフェーズに合わせて「成果 = 能力 × 熱意 × 考え方」で施策を考える
- 施策のネーミングは心理的ハードルを下げ共通言語として使いやすいものに
QA
- チームのフェーズはどう分けているか?
- 何かモデルがあるわけではない
- 社内で3~40チームあるのでお互い参考にしている
- ぶっトビTIMEやパンプアップTIMEは誰が提案?
- 司会の石神さん(広告代理店出身のディレクター)が提案
- 石神)今まで二人でやっていたけど新卒が入ってそのままだと面白くない
- チーム感を出してやりたい
- 代理店さんを参考にした
人生の方程式についての所感
「成果 = 能力 × 熱意 × 考え方」というシンプルながら応用の効く方程式を軸にすることで、網羅的な施策を打てている印象を受けました。
私自身も何か企画を立てる際や、仕事が上手くいかない時にはこの方程式を思い出し、3つの要素のうち何が足りないのか、どうしたら成果が出るのか考えるという「考え方」を活用していきます。
運用型広告のインハウス化切り替え事例紹介。プロジェクト開始1年で見えた落とし穴。
スピーカー
JapanTaxi株式会社/マーケティング部/オンラインマーケティングチーム リーダー/吉田海斗氏
プロフィール
広告代理店にて運用型広告の経験を積んだ後、2018年9月より現職。入社後、WEB広告運用のインハウス化を主導。 オフラインプロモ・CRM・デザイナーと連携しながら 「JapanTaxi」アプリを中心にプロモーションに従事。
概要
都内最大手のタクシー会社であるJapan Taxi社では、コストカットやノウハウ蓄積などを目的としてオンライン広告のインハウス化を実行。その結果、億単位での運用フィー削減、従来のCPIではなくCPAを指標とした運用が可能となるなどの成果を挙げています。
スピーカーの吉田さんは、インハウス化にあたり苦労したポイントについても述べました。動画制作などの各業務を独立して行える人材の採用や、広告代理店よりも少人数の体制で作業系のタスクを回す大変さに言及しています。
JapanTaxiについて
- 都内最大手のタクシー会社・日本交通をグループに持つITベンチャー
- ミッションは「移動で人を幸せに。」
- No.1タクシー配車アプリ「JapanTaxi」を運営
- Japan Taxiのマーケティング活動
- インハウスを主軸としたマーケティング
- 外部注文チャネル -> GoogleMapsやSiri経由で配車できる
オンライン広告をなぜインハウス化したのか?
- Web専業の広告代理店を利用 -> 外注による課題が発生
- 代理店とのコミュニケーションコスト
- チャネル間の横連携がとりにくい
- マーケティングプランの柔軟な変更や改善が難しい
- 社内にノウハウがたまりにくい
インハウス化への期待とその実現
- インハウスに期待したこと
- 運用手数料のカット
- コミュニケーションコストの削減
- デジタルマーケのノウハウ蓄積
- CPI(アプリインストール単価)獲得に依存しない運用戦略
- メリットを実現できた? -> YES
- 運用フィーの削減は年間で億単位に
- 社内で計画からレポートまでシームレスな対応
- 全社戦略に基づくプロモーションの強化・抑制
- CPAを指標とした運用
- データはビッククエリに格納 -> Tableauで可視化
- インハウス化で大きいメリットはコストカット -> プロモーション費用が上がっていく会社は検討すると良い
インハウス化する際に苦労したこと
- 採用
- 代理店から引き継げるものが少ない
- ルーティンワークや作業系タスクの工数削減
-
採用
- インハウス化の初期メンバーを集めるのに6カ月
- 動画制作やプランニングなどを独立して行う人材の採用に苦労
- 代理店から引き継げるものが少ない
- アカウントもゼロから作成
- クリエイティブの引き継ぎも難しい
- 画像の素材を使う権利がないのでゼロから作成し直す
ルーティンワーク、作業系タスクの削減
- 代理店はポジションが分かれている
- 営業、コンサルタント、メディア担当など
- インハウス化するにあたり、それらの役割をより少人数でやらないといけない
- レポーティングや入稿系の作業は工数が大きい
- 1日数時間単位で必要 -> 委託できないかと思ったが振られた
- レポーティングのサービス会社もあるが500万〜1000万かかる -> 検討するもペイしないため断念
- アプリで付き合いのあるエンジニアにシステム構築を依頼 -> エンジニアに知見がなく実装まで半年かかった
今後やりたいこと
- 新機能リリース時のいち早いユーザーとのコミュニケーション
- One to One マーケ
- オフラインやCRMとのコラボをさらに深める
- インタビュー調査から機能提案まで
広告代理店とのやりとりがないインハウスマーケターの所感
私は業務全体に占める内製の割合がけっこう高いと思われるクラスメソッドのマーケティングチームに1年ほどおり、今のチームで初めてマーケティングの業界に入っています。そのため広告代理店への発注はおろか、やりとりすら経験がありません。そこで「もし代理店に色々頼んだ場合、何が嬉しくて何が不便なのか」に注目していました。
代理店に頼んだ場合、各分野を専門とするスタッフが対応してくれる代わりに、コミュニケーション面や予算面でコストが高くつくことが分かりました。逆に内製で対応した場合は社内にノウハウがたまり、上記のコストが削減できます。一方でスキルの高い人材の採用や、作業系のタスクについて工夫が必要になるということです。
「想い」を伝え合おう。越境マーケターが語る、ベンダーと事業主の最強チーム構築のコツ
スピーカー
三井住友カード株式会社 マーケティング本部 マーケティング統括部 部長代理/福田保範氏 Twitter:@fkd89
プロフィール
2007年~2015年6月、株式会社アイ・エム・ジェイにてWEBディレクター、SEOコンサル、マーケティングコンサルなどを経験。2015年7月より、三井住友カード株式会社にてWEBマーケティングを実施中。おもにコンテンツマーケティング、WEB広告、SEOなど多岐にわたるデジタルマーケティングに従事している。 Markezineにて記事多数執筆、掲載。
本日の話
- ベンダーと事業主の両方を経験 -> お互いどう歩み寄れば良いのかを考える
- チームビルディングについて
- ベンダーやクライアントとの関係構築の参考に
事業主とベンダー各々の立場から見た「見えないもの」とは?
ベンダーから見えない事業主の4つの苦労
- 担当が決裁にこぎつけることの大変さ
- ROIにシビア
- 成果が出るまで1年かかる
- 結果はすぐに出ないことの方が多い
- 担当ミッション = 評価に直結
- 担当の評価をどう上げるかが肝
- 社内調整の大変さ
- リテラシーが想像以上に低い
- 調整が面倒という理由でやりたがらないことも多いほどの大変さ
- 事業主にいても理不尽
- 納期に迫られ、理不尽なことを言われ、会社の方針は変わる
事業主にいると見えない"ベンダーエージェンシーの5つの苦労”
- 提案・見積もり製作の大変さ
- 提案に時間がかかる
- 事業主が出す情報やビジョンの大切さが分かってもらえない
- 認識のすり合わせに必要なことも話してくれない
- ヒヤリングシートに書いてもらえない
- ビジョンもないのに突っ込まれがち
- さりげなく依頼される作業の大変さ
- どれくらい大変か聞いてから依頼してほしい。それ必要?
- さりげないコミュニケーションが嬉しい
- 挨拶やアイスブレーク、メール、飲み会
- 自然と立場が下と思われがち
- 金を払うのはあなた(事業主の担当者)じゃなく会社
事業主とベンダー・エージェンシーのあるべき姿
- 両社のあるべき姿
- 提案の大切さ、決裁の大切さ、プロジェクト進行の大切さ、お互いをリスペクトする
- 情報はお互い包み隠さずすべて話そう
- 提案の最初の形を実現するよう事業主は努力せよ
- ベストプラクティスを常に狙おう
ふくだが事業主として実践していること
- オリエンテーションリストと情報公開
- 代理店に対してうちの会社で重要なミッション、体制などを伝える
- リストアップすることで抜けもれなく提案のたびに同じ情報を提供できる
- ひけらかし勉強会
- 例)カードゲームのカードが200種類ある。それをすべて理解してもらえるよう説明
- 提案謝罪行脚
- 何で提案がダメだったのかを説明にあがる
- その後の関係値がとても良い
- 新たな場で提案をしてもらうなどの展開も
- 社内調整を「しない」
-
楽しくフレンドリーに、記憶に残る「汚い」ことばでコミュニケーションを
- 様付け、お世話になっております -> さん付け、ちゃん付け -> 関係構築がうまくいく
- 社外へプロジェクトを積極的に公表
- 代理店・制作会社も全員読んで実施するオフサイトMTG
ベンダーと事業主は結婚生活みたいなもの
- ウェディングパークさんが主催なので結婚をからめて何か上手いこと言おうと思った -> 思いつかなかったので飛ばします
Q&A
- 「電通鬼十則」を参考にしている?
- 見たことない
- ぶっちゃけて話す場が減っている
- MTGを大事にしている
- 「待て待て」「そんな話すことないやろ」と言って最初の10分くらいアイスブレイク
無知な自覚を持ち情報は隠さないことが大事
ベンダーと事業者という関係性でなくても、同じプロジェクトを担うパートナーに対する接し方を考える際に応用できる考え方が多かったと思います。
具体的には下記の部分が特に印象的でした。
どれくらい大変か聞いてから依頼してほしい
特に自分とは職種が異なる方に依頼をする場合、どのくらいの工数を要するのかなどは分からないこともあります。無茶振りだと思わずに無茶振りをしてしまっていないか、気を付けていきたいところです。
情報はお互い包み隠さずすべて話そう
何で提案がダメだったのかを説明にあがる
上手くいっていることもそうでないことも、分け隔てなく共有していくことが信頼感につながるのだと感じました。
まとめ
元々インハウスでやってきたマーケティングの部署に最近入ってきた人間として、知らなかったインハウスのメリットを実感する勉強会でした。
例えば、会社の文化や社風を共有している人たちと働けるのでコミュニケーションコストが低いことや、よく変わる会社の方針に合わせて計画を変更できることなど。