
Trend V1FSSの従量課金料金を従来サービスと比較してみた
はじめに
こんにちは、シマです。
皆さんはS3のマルウェアスキャンを実施していますか?トレンドマイクロ社が提供するセキュリティサービスの1つに「Trend Cloud One File Storage Security(以降C1FSS)」という製品があり、Amazon S3のファイルに対してマルウェアスキャン機能を提供しています。そして、すでにC1FSSの後継製品として「Trend Vision One File Security Storage(以降V1FSS)」がリリースされています。また、AWSネイティブサービスとしては「Amazon GuardDuty Malware Protection for S3(以降GuardDuty S3)」があります。
今回は、V1FSSの従量課金について解説し、従来のC1FSSやGuardDuty S3の料金と比較してみます。
V1FSSの料金体系
V1FSSにはクレジット方式もありますが、今回はよりシンプルで理解しやすい従量課金方式について説明します。
従量課金方式
従量課金方式には2つの料金体系があります。
- スキャン単価:1スキャンあたり$0.013
- バケット単価:時間あたり$1.155
料金選択の目安
バケット保護を利用する場合、どちらの料金体系を選ぶべきかの目安があります。
- 1時間あたり89ファイル未満:スキャン単価($0.013×ファイル数)が安価
- 1時間あたり89ファイル以上:バケット時間単価($1.155/時)が安価
89ファイルが課金方式を選択する際の分岐点となります。
従来サービスとの比較
Cloud One File Storage Security(C1FSS)
従来のC1FSSは階層型の料金体系でした。
- 1-20ファイル/時:無料
- 21-200ファイル/時:$0.42
- 201-400ファイル/時:$0.63
- 401-2000ファイル/時:$1.155
GuardDuty S3
2025年2月頃にAWSで大幅な料金改定が実施されました。
- 東京リージョン:$0.79/GB → $0.1185/GB(85%削減)
GuardDuty S3は「スキャンしたデータ量($0.1185/GB/月)」と「評価されるオブジェクト数($0.282/1,000個のオブジェクト/月)」の両方で課金されます。
料金比較シミュレーション
超小規模環境(1時間あたり20ファイル、ファイルサイズ1MB)
サービス | 料金 | 備考 |
---|---|---|
C1FSS | $0.00/時 | 無料枠(1-20ファイル/時) |
GuardDuty S3 | $0.01/時 | データ量課金 + オブジェクト数課金 |
V1FSS | $0.26/時 | スキャン単価選択時($0.013×20ファイル) |
C1FSSが最もコスト面で有利です。20ファイル/時以下であれば完全に無料で利用できるため、小規模なプロジェクトや検証環境には最適です。
小規模環境(1時間あたり200ファイル、ファイルサイズ1MB)
サービス | 料金 | 備考 |
---|---|---|
GuardDuty S3 | $0.08/時 | データ量課金 + オブジェクト数課金 |
C1FSS | $0.42/時 | 21-200ファイル/時の料金帯 |
V1FSS | $1.155/時 | バケット単価選択時 |
GuardDuty S3が最もコストパフォーマンスに優れています。
中規模環境(1時間あたり400ファイル、ファイルサイズ10MB)
サービス | 料金 | 備考 |
---|---|---|
GuardDuty S3 | $0.59/時 | データ量課金 + オブジェクト数課金 |
C1FSS | $0.63/時 | 201-400ファイル/時の料金帯 |
V1FSS | $1.155/時 | バケット単価選択時 |
GuardDuty S3が最もコストパフォーマンスに優れています。
大規模環境(1時間あたり2000ファイル、ファイルサイズ10MB)
サービス | 料金 | 備考 |
---|---|---|
V1FSS | $1.155/時 | バケット単価選択時 |
C1FSS | $1.155/時 | 401-2000ファイル/時の料金帯 |
GuardDuty S3 | $2.93/時 | データ量課金 + オブジェクト数課金 |
2000ファイル/時の大規模環境では、V1FSSとC1FSSが最も経済的です。GuardDuty S3はファイルサイズが大きくなると料金が大幅に上昇するため、この規模ではコスト面で不利になります。
※ただし、大規模なスキャンはパフォーマンス影響等も含めてしっかりと検証する必要があります。
各サービスの特徴
C1FSS
メリット
- 20ファイル/時以下なら無料枠で利用可能
- 大規模環境(2000ファイル/時)でV1FSSと同等で最もコスト効率が良い
デメリット
- 2025年8月28日にEOLが発表され、2026年12月31日でサポート終了予定
V1FSS
メリット
- C1FSSの正式な後継サービスとしてトレンドマイクロが推奨
- マルチクラウドやVision OneのXDRを活用した統合管理が可能
- 悪意のあるファイルの隔離もVision Oneが提供するCloudFormationで自動実装
- 大規模環境(2000ファイル/時)でC1FSSと同等で最もコスト効率が良い
デメリット
- 小・中規模環境でGuardDuty S3やC1FSSよりコストが高い
- Marketplaceの契約周りの柔軟性がC1FSSに劣る
GuardDuty S3
メリット
- AWSネイティブサービスのため、AWS管理コンソールから簡単に開始可能
- 小・中規模環境(200・400ファイル/時)で最もコストパフォーマンスが優秀
デメリット
- スキャン結果がタグに付与されるのみのため、後続処理は自分で実装する必要がある
- ファイルサイズが大きいと料金が上昇し、大規模環境ではコスト不利になる
まとめ
V1FSSの従量課金を従来サービスと比較してみました。C1FSSは2026年12月31日でサポート終了となるため、既存ユーザーは移行先の検討が必要です。実際に導入を検討する際は、現在のファイルサイズとスキャン頻度を把握し、各サービスの料金シミュレーションを行うことが重要です。また、単純な料金だけでなく、機能面や運用面、既存システムとの連携性も含めて総合的に判断することをお勧めします。
本記事がどなたかのお役に立てれば幸いです。