
【レポート】セッション「Blazing Trails with Alteryx in Cannabis While Avoiding High Flying Costs~Alteryxを活用した大麻業界での挑戦と高コスト回避の工夫」(米国事例) - Alteryx Inspire 2025 #AlteryxInspire
業務効率化ソリューション部の兼本です。
本エントリは、2025年05月12日(月)〜2025年05月15日(木)に米国ラスベガスで開催されたAlteryxの年次カンファレンスイベント「Inspire 2025」のセッションレポートです。
Alteryxの興味深い活用事例として、大麻業界におけるサプライチェーン最適化のケーススタディが紹介されましたので、内容を技術ブログとしてまとめます。
なお、本記事で紹介する事例は米国など一部の国や州で合法的に運用されているものであり、日本国内では大麻の取扱い・所持・栽培等は法律で厳しく禁止されています。
また、本記事は特定の業界や製品の推奨を目的としたものではなく、Alteryxの技術的活用事例として紹介しています。
セッション概要
このセッションでは、West Monroe社のJeff Pehler氏とDrew Mitchellette氏が登壇し、大麻ビジネスの現状と課題、そしてAlteryxを活用したソリューションについて、詳細な技術的解説を交えながら紹介されています。
タイトル
Blazing Trails with Alteryx in Cannabis While Avoiding High Flying Costs
Alteryxを活用した大麻業界での挑戦と高コスト回避の工夫」(米国事例)
概要
This session highlights creative use of Alteryx to develop custom Supply Chain solutions that fit the unique needs of the emerging and ever-changing cannabis industry. Hear how Alteryx helped West Monroe avoided over $0.5m of commercial software fees.
(本セッションでは、Alteryxの創造的な活用により、新興で変化し続ける大麻業界特有のニーズに適合するカスタムサプライチェーンソリューションを開発することに焦点を当てます。AlteryxがどのようにWest Monroeを支援し、50万ドル以上の商用ソフトウェア料金を回避したかをお聞きください。)
スピーカー
- Jeff Pehler / West Monroe
- Drew Mitchellette / West Monroe
大麻ビジネスの現状と課題
大麻業界では、花(bud)、オイル、グミ、ベイプ、プリロールなど多様な製品形態が存在し、医療・嗜好両面での利用が進んでいます。
加えて、Jeff Pehler氏によると、大麻業界は一般的にイメージされるものとは異なり、先進的なCPG(消費財)企業が多く存在します。栽培においては、水分量、光照射量、二酸化炭素濃度などを厳密に管理し、機械学習モデルを活用して収穫を最適化する例もあるとのことです。
しかしながら、連邦法で違法であるため、銀行取引や税制面、規制、取引業者との関係など、多くの課題を抱えているのも事実です。
また、大麻の種から販売までのバリューチェーンは他の農産物と似ていますが、収量やTHC(テトラヒドロカンナビノール、大麻に含まれる精神活性成分)含有量の変動が大きいため、予測と計画が難しいという課題もあります。
既存のサプライチェーン管理ソリューションは高価でカスタマイズが難しいため、West Monroe社は、Excelベースの非効率なプロセスに代わる、低コストでカスタマイズ可能、かつ既存システムとの統合が容易なAlteryxを活用したソリューションを提案しました。
また、米国では州ごとに規制や運用モデルが異なり、製品や在庫の州間移動も法律で禁じられています。そのため、商用ソフトでは都度カスタマイズが必要ですが、Alteryxの柔軟性が大きな強みとなったそうです。
Alteryxツールの概要と機能
Drew Mitchellette氏からは、Alteryxで開発した2つのツールが紹介されました。
- 週次で実行される生産計画ツール: サプライサイドとデマンドサイドのマッチングを試みます。
- 日次で実行される在庫配置ツール: 在庫配分を迅速に計算します。
特に、全花製品においては、プレミアム、ミッドレンジ、ローレンジのオプションを考慮し、複雑化する在庫管理に対応します。バッチ処理と反復マクロを使用して、品種、優勢、価格帯ごとの製品ラインの在庫配分を迅速に計算します。
Alteryxによる在庫配分プロセス
AlteryxツールはSAPから自動的にデータを取得し、店舗ごとの在庫状況、顧客予約、輸送中の在庫などを考慮して、99%のSLAを維持するために必要な製品ラインごとのユニット数を計算します。
次に、その結果をSKU(最小管理単位)に変換し、倉庫から小売店への出荷指示をSAPに出力します。
製品ラインごとにバッチマクロが実行され、さらに品種と倉庫のサービスレベル目標を考慮した2つの反復マクロがネストされています。
多様性マクロの詳細と在庫最適化
多様性マクロの目的は、各店舗が必要な品揃えを確保することです。一度に1トレイ(約15ユニット)ずつ割り当てるループ処理を行い、すべての店舗が多様性の観点から満足するか、割り当てる在庫がなくなるまで繰り返します。
在庫の割り当てにおいては、店舗の多様性、効力、ユニットニーズに基づいて優先順位を付け、倉庫にあるSKUの中から、店舗の多様性を高めるものを選択します。過剰な在庫を避けるため、倉庫の在庫数を考慮し、将来的な欠品を防ぐようにしています。
分析アプリとしての活用とカスタマイズ性
Alteryxのワークフローを分析アプリとして構成することで、日常的な運用が非常に簡単になります。アロケーションプランナーが不在の場合でも、ツールに詳しくないユーザーが簡単に使用できます。
このツールの大きな特徴は、顧客サービスレベルや効力だけでなく、利益最大化など、複数の最適化目標をユーザーが選択できる点です。
元々、現場担当者の多くはExcelに慣れていたため、新ツールへの移行には時間を要しましたが、エグゼクティブ層の後押しや並行運用、ツールの効果を可視化することで徐々に定着が進んだとのことで、この辺りは業界に関わらず、同様の課題があることを再認識できました。
ツール開発の教訓と成果
Jeff Pehler氏からは、Alteryxツール開発を通じて得られた教訓として、以下が挙げられました。
- 技術的な出力よりもビジネス上の出力が重要
- 過度な複雑化はユーザーを混乱させる
- ユーザーの好みやインプットのタイミングがツールの採用に不可欠
- 成功事例を積極的にアピールすること
このプロジェクトでは、過剰在庫の削減により40万ドルのコスト削減、および420時間の作業時間削減という具体的な成果が得られました。
まとめ
テーマがテーマなので公開するのをためらいましたが、実現していることは大麻業界に関わらず、サプライチェーン管理と在庫最適化においてAlteryxが非常に有効であることを示す内容でした。
特に、SAPとの統合、バッチ処理と反復マクロを用いた複雑な在庫配分、マクロによる品揃え最適化などは、非常に興味深い技術的要素です。
分析アプリとしての構成やカスタマイズ性により、エンドユーザーが簡単に利用できる点も大きな利点です。
今後は、AIを活用したデータモデリングの効率化や、複数州での展開における課題解決も検討されているということで、続報も期待したいところです。
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。