デジタル庁が策定した 「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」読んでみた

デジタル庁が策定した 「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」読んでみた

Clock Icon2025.05.29

こんにちは!営業統括本部公共ソリューションチームの深田です。
5月27日にデジタル庁が「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン」を策定したので読んでいきます。

こちらのガイドラインは3月に意見募集をしており、今回策定したものとなります。
意見募集時の私のブログも掲載します。
※本記事の内容はデジタル庁が公開している資料に基づいています。正しい言い回し等はそちらをご確認ください。

本ガイドラインの適用開始時期等について

令和8年度以降に調達・利活用を行う生成 AI システムからが対象となります。
※令和8年度事業の令和8年3月末以前の企画や公告等調達手続きを含む
また、令和7年度に調達・利活用を行う生成AIシステムについても、可能な限り本ガイドラインに沿った取組を実施する必要があります。

政府における生成AIの3つの利活用方針

  1. 各府省庁は、AI 統括責任者(CAIO)の設置等AIシステム統括監理の体制整備を行うなど、AIガバナンスの強化に取り組む
  2. 各府省庁の生成 AI の調達・利活用を行う全ての者は、生成AIの便益とリスクについて理解する
  3. 各府省庁の生成 AI 調達・利活用を行う者は、生成AIのリスクを軽減するための方策を把握し、それぞれが適切なリスク対策を実施するとともに、生成AIシステムの品質向上や利用方法の工夫による利用効果の増進を図る

生成AIの活用を着実に進めるために、リスクが低いと考えられる生成AIの利活用をスピード感をもって実装を進めるとともに
相対的に高リスクの可能性があっても行政の推進や革新をもたらす取り組みについては取り組みを後押しすると記載があります。

そのうえで高リスクな生成AIであるかを相対的に評価するために
利活用ケースに合わせたリスク評価の軸として以下4点を挙げています。

  • 利用者の範囲・種別
  • 生成 AI 利活用業務の性格
  • 要機密情報や個人情報の学習等の有無
  • 出力結果の政府職員による判断を経た利活用

また、高リスクに該当する可能性が高いケースの例として以下2点を挙げています。
(例1)府省庁外に提供する生成 AI システムであって、誤作動等により国民の権利や安全に大きな影響を与える可能性がある業務への活用
(例2)個人情報を使用し、人間の生命・身体・財産に影響を及ぼす業務における活用を想定しており権利侵害をする恐れがある場合

生成AIによる便益とリスクを理解した利活用推進

便益として5点、リスクとして7点が挙げられています。

生成AIによる便益

  • 行政目的の効率的・効果的な実現
  • 企画立案能力の向上
  • 情報収集・分析能力の向上
  • 政府が作り出す政策・文書・分析等の質の向上
  • 既存政府情報システムの生成AIを用いた機能や利便性向上

生成AIによるリスク

技術的リスクと社会的リスクに分類し合計7点のリスクが記載されています。

  • 技術的リスク

    • 学習および入力段階のリスク
    • 出力段階のリスク
    • 事後対応段階のリスク
  • 社会的リスク

    • 倫理・法に関するリスク
    • 経済活動に関するリスク
    • 情報空間に関するリスク
    • 環境に関するリスク

生成AIサービスを調達する

各種法令・ガイドライン等を踏まえた対応事項

  1. 各種法令や「デジタル社会推進標準ガイドライン」、「政府機関等のサイバーセキュリティ対策のための統一基準群」、「IT 調達に係る国等の物品等又は役務の調達方針及び調達手続に関する申合せ」、「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(行政機関等編)」等の政府情報システムに係るガイドラインを遵守することが必要。
  2. 原則として ISMAPクラウドサービスリスト又は ISMAP-LIU クラウドサービスリストから選定した上で、別途、本ガイドラインによる対応を行う必要がある。
  3. 不特定多数の利用者に対して提供され、かつ定型約款や規約等への同意のみで利用可能となるクラウドサービス型の生成 AI システムを業務で利活用する場合には、原則として要機密情報を取り扱うことはできない。
  4. 政府機関等における生成 AI の業務利用にあたっては、「DeepSeek 等の生成AI の業務利用に関する注意喚起」を踏まえるて対応する。
  5. 生成 AI の調達・利活用に関わる政府職員は、AI 事業者ガイドライン「第2部 C. 共通の指針」を踏まえた取組を行う必要があります。

本ガイドラインに基づく対応事項

生成AIシステムの導入類型として、生成AIシステム導入に係る 開発の実施有無及び契約の形態で整理した場合以下の類型に整理が可能。

  1. 生成AIシステムの個別開発は実施せず、定型約款や規約等への同意によりサービスを利用する。(原則、要機密情報を扱わない想定)
  2. 生成AIシステムの個別開発は実施せず、定型約款や規約等への同意に加え、個別契約の締結を行う。
  3. 生成AIシステムの個別開発を実施し、個別契約の締結を行う。

1に該当するケースにおいては、原則、要機密情報を取り扱わない利用を想定し、2又は3に該当するケースも各対応事項について、対策が不十分又は過剰とならないよう、リスクと対策のバランスを考える必要がある。

企画時の対応事項

  1. 生成 AI システムを使って何を実現・解決したいのか目的を明確にするとともに、適切な目標設定を行う。
  2. 当該ユースケースを想定した環境・リスク分析を行うとともに、リスクを最小限に抑える方法や運用時を含めた品質確保策等を検討する。
  3. デジタル庁が実施する統括監理の際に、生成 AI システムの導入予定、リスク分析結果、リスク対応策、行政データの取扱い等について、報告を行う。
  4. 高リスクの可能性がある生成AIシステムについては、当該プロジェクト目的、リスク軽減策や運用時を含めた品質確保策等を、AI 統括責任者(CAIO)が先進的 AI 利活用アドバイザリーボードへ報告する際、連携して対応を行う。
  5. 新たな生成 AI システムの検討に当たっては、こうした共通機能として提供されたサービスの利活用についても留意する。(例)ガバメントクラウド等の共通機能上で、提供される生成AIシステムを積極的に活用することで、費用対効果の向上、セキュリティの確保、業務システムとの連携等を効率的に行うことができる可能性がある。

調達時の対応事項

  1. 「調達チェックシート(生成 AI システム用)」(以下、を参照し、事業者及び調達予定の生成AIシステム等について、調達の応募者に対し求める事項として、調達仕様書に盛り込む。
  2. 総合評価方式や企画競争方式を採用する場合は、こうした要求事項について、必要に応じ評価項目にも反映する。
  3. デジタル・スタートアップを評価し、SaaS 型の生成 AI システムや、その導入支援を行う会社のサービスの検討にあたっては、デジタル庁が運営する「デジタルマーケットプレイス」の積極活用を検討する。
  4. 「契約チェックシート(生成 AI システム用)」を参照し、生成 AI システムの調達において留意すべき事項についても、契約書または調達仕様書に盛り込むことを検討する。

構築・リリース前の準備時の対応事項

生成 AI システムの企画者は、システムのリリース前に以下の取組を実施します。

  1. 安定的な稼働の確認
  2. 適正利用の促進

そのほか

本ブログに記載の内容以外にも、AIの利活用促進とAIガバナンスの強化及び推進のための体制について記載されており、CAIOの設置各府省庁内におけるAIガバナンスの確保についても改めて言及されています。
意見募集段階から比較して、ボリュームのある内容になったように感じました。

ドキュメントの最後には、政府による生成AI調達・利活用ルールについては、随時見直していくことが明記されており、以下のように記載さいています。

政府機関等における生成 AI システム間のデータ等の連携や府省庁間での共同利用、共同プロジェクトや共通システムの組成等を通じた政府全体としての生成 AI システムの最適化の在り方について、令和7年度に検討を行ったうえで、今後のルール見直しに反映させていくこととする。

最後に

策定された内容は、生成AIを調達するまでの具体的な流れの明記だけではなく、リスクおよび便益の定義・ステークホルダーの整理もされており政府における生成AI導入の推進に繋がると感じました。
クラスメソッドでは公共機関向けのDX推進支援生成AI活用の支援も行っております。ぜひご参考ください。

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