Amazon CloudFront の定額プラン選択時はデータ転送量よりもリクエスト数と機能に注目しましょう

Amazon CloudFront の定額プラン選択時はデータ転送量よりもリクエスト数と機能に注目しましょう

CloudFront の定額料金プランで 50TB を $15 で使えると思った方は、冷静にこの記事を読んでください。
2025.11.19

ウィスキー、シガー、パイプをこよなく愛する大栗です。

Amazon CloudFront で定額プランが発表されました。有料のプランだと月間使用量が 50TB となっており配信データ単価がかなり低価格になっています。しかし詳細を確認すると 50TB という数字だけで判断すると実際のコストを少し勘違いしてしまうと思ったので、内容をまとめてみます。

要約

  • CloudFront の定額料金プランは 50TB のデータ量よりもリクエスト数に注目してプランを選択すべし
  • プランごとに使用できる機能に大きな差があるので、使用したい機能を元にプランを検討すべし
  • CloudFront の料金を削減する手段は定額プラン以外にもあるので検討すべし

Amazon CloudFront の定額料金プラン

定額プランの概要は以下のエントリを御覧ください。定額料金プランには Free、Pro、Business、Premium があり使用できる機能が分かれており、月間使用量が定められています。

https://dev.classmethod.jp/articles/aws-flat-rate-pricing-plans/

月間使用量

定額プランには月間の使用量が定められており、以下の表の内容となっています。使用量がプランごとの上限を超えた場合、AWSはパフォーマンスの低下や料金体系の変更などを含む適切な措置を講じる場合があります。安いからと言って Free プランを適用するとアクセスが多くなったときに問題が発生するかもしれませんので注意しましょう。

ここでデータ転送の 50TB に目が行きがちなのですが、実は リクエスト数が重要なファクター なのです。

Free Pro Business Premium
料金 $0 $15 $200 $1,000
月間使用量:
リクエスト数
1 M 10 M 125 M 500 M
月間使用量:
データ転送
100GB 50TB 50TB 50TB

月間使用量のリクエスト数でデータ転送量を使い切る場合の平均リクエストサイズを考えてみると以下になります。

Free Pro Business Premium
データ転送量を使い切れる
平均リクエストサイズ
100KB 5MB 400KB 100KB

ここで一般的な Web サイトの平均リクエストサイズがどの程度か調査してみいます。Internet Archive 傘下の The HTTP Archive で出している State of the Web というレポートを確認します。

ページあたりのデータ量は以下の通りです。

  • デスクトップ: 2923.1 KB
  • モバイル: 2608.8 KB

スクリーンショット 2025-11-19 11.04.11

ページあたりのリクエスト数は以下の通りです。

  • デスクトップ: 76
  • モバイル: 72

スクリーンショット 2025-11-19 11.04.25

つまり 1 リクエスト当たりの平均データ量は以下のサイズとなります。

  • デスクトップ: 38.5 KB
  • モバイル: 36.2 KB

1 リクエスト当たりの平均データ量を元に、実際のどの程度のデータ量を使用するのかを見てみると、データ転送で月間使用量を使い切るのは難しそうです。

Free Pro Business Premium
料金 $0 $15 $200 $1,000
月間使用量:
リクエスト数
1 M 10 M 125 M 500 M
月間使用量:
データ転送
100GB 50TB 50TB 50TB
実効データ量
(デスクトップ)
38.5 GB 385 GB 4.8125 TB 19.25 TB
実効データ量
(モバイル)
36.2 GB 362 GB 4.525 TB 18.1 TB

ここで月間使用量を使い切った場合と実効データ量の想定データ単価をまとめてみます。大きなファイルを配信する場合などでは Pro プランが極めて安価に利用できそうですが、一般的な Web サイトの場合は通常の CloudFront の単価に比べて安価ですが現実的な料金設定となっています。

Free Pro Business Premium
料金 $0 $15 $200 $1,000
月間使用量ベースの
データ単価
$0.0003/GB $0.004/GB $0.02/GB
実効データ量ベースの
データ単価
(デスクトップ)
$0.0389/GB $0.0415/GB $0.0519/GB
実効データ量ベースの
データ単価
(モバイル)
$0.0414/GB $0.0441/GB $0.0552/GB

Web サイトのトラフィックをリクエスト数で把握していることは少ないかもしれません。PV を元に考えると、ページあたりのリクエスト数(デスクトップ: 76、モバイル: 72)を元に以下のような想定の PV 数が出てきます。

Free Pro Business Premium
実効データ量ベースの PV
(デスクトップ)
13,157 PV 131,578 PV 1,644,736 PV 6,578,947 PV
実効データ量ベースの PV
(モバイル)
13,888 PV 138,888 PV 1,736,111 PV 6,944,444 PV

実効データ量ベースの数字は目安ですので、ご自身のサイトの状況を確認してプランを選択しましょう。

プランごとに使用できる機能

定額プランでは、プランごとに利用できる機能が決まっています。それ以外の機能を利用する場合には、プランをアップグレードするか従量課金制にする必要があります。例えば Free プランのディストリビューションを見ると、以下のように機能を有効化するためにはプランを変更するように促されます。

スクリーンショット 2025-11-19 11.41.36のコピー

機能詳細: パフォーマンスと配信

CDN の基本機能について、個人的には以下の機能を使用するかどうかを検討したほうが良いと思います。

  • カスタムキャッシュルール
  • 自動オリジンフェイルオーバー
  • カスタムオリジンリクエストルール
  • カスタムレスポンスヘッダールール
パフォーマンスと配信 Free Pro Business Premium
グローバル CDN Yes Yes Yes Yes
コンテンツキャッシュ Yes Yes Yes Yes
高速キャッシュ無効化 Yes Yes Yes Yes
スマートルーティング Yes Yes Yes Yes
階層型キャッシュ
リージョンエッジキャッシュ
Yes Yes Yes Yes
デフォルトのキャッシュルール Yes Yes Yes Yes
カスタムキャッシュルール Yes Yes
高速オリジンルーティング
Origin Shield
Yes
オリジン負荷軽減
Origin Shield
Yes
自動オリジンフェイルオーバー Yes
デフォルトのオリジンリクエストルール
AWS マネージドオリジンリクエストポリシー
Yes Yes Yes Yes
デフォルトのレスポンスヘッダールール
AWS マネージドレスポンスヘッダーポリシー
Yes Yes Yes Yes
カスタムオリジンリクエストルール
オリジンリクエストポリシー
Yes Yes
カスタムレスポンスヘッダールール
レスポンスヘッダーポリシー
Yes Yes
キャッシュ動作の数 5 10 50 100

機能詳細: セキュリティと保護

セキュリティ系機能では以下の機能を使用するかどうかが判断のポイントかなと思います。

セキュリティと保護 Free Pro Business Premium
常時稼働のDDoS防御 Yes Yes Yes Yes
高度なDDoS対策
AntiDDoS AMR
Yes Yes
Webアプリケーションファイアウォール(WAF) Yes Yes Yes Yes
WAF ルールの数 5 25 50 75
WordPress、PHP、SQLデータベースの保護 Yes Yes Yes
IPベースのレート制限
5分間に設定可能なリクエスト数を超えるIPアドレスを自動的にブロック
Yes Yes Yes Yes
地理的トラフィックのブロック Yes Yes Yes Yes
ヘッダーベースの脅威フィルタリング Yes Yes Yes
正規表現ベースの脅威フィルタリング Yes Yes
JavaScriptチャレンジ Yes Yes
ボット管理と分析
AWS WAF Bot Control
Yes Yes
カスタム WAF レスポンス Yes Yes Yes
ヘッダー挿入 Yes Yes Yes Yes
リクエストボディの検査
AWS WAF が検査できる HTTP リクエストボディコンテンツの最大サイズ
16 KB 16 KB 64 KB 64 KB
VPC 内のプライベートオリジン Yes Yes
オリジンアクセスコントロール (OAC) Yes Yes Yes Yes
無料の TLS 証明書
AWS Certificate Manager による自動更新
Yes Yes Yes Yes
署名付きURL Yes Yes Yes Yes

機能詳細: エッジコンピューティング

CloudFront Functions で KeyValueStore を使用する場合には Pro 以上か従量課金制を使いましょう。

エッジコンピューティング Free Pro Business Premium
サーバーレスエッジコンピューティング
CloudFront Functions
Yes Yes Yes Yes
エッジ Key-Value ストア
CloudFront KeyValueStore
Yes Yes Yes

機能詳細: ネットワークとプロトコルのサポート

プランごとに機能差はありません。

ネットワークとプロトコルのサポート Free Pro Business Premium
IPv6 Yes Yes Yes Yes
HTTP/2 Yes Yes Yes Yes
HTTP/3 Yes Yes Yes Yes
TLS 1.3 Yes Yes Yes Yes
WebSocket Yes Yes Yes Yes

機能詳細: ログ記録と監視

アクセスログと WAF リクエストログで Amazon CloudWatch Logs の取り込みの追加料金が発生しないのはかなり重要だと思われます。Free ではログを出力できないので、必要な場合は Pro 以上にしましょう。

ログ記録と監視 Free Pro Business Premium
アクセスログ
Amazon CloudWatch Logs の取り込みは追加料金なしで利用できます。
Yes Yes Yes
WAF リクエストログ
Amazon CloudWatch Logs の取り込みは追加料金なしで利用できます。
Yes Yes Yes
セキュリティダッシュボード
Pro以上のプランには、ログを照会することなくトラフィックパターンを迅速に把握できる視覚的なログアナライザーが搭載されています。
Yes Yes Yes Yes

機能詳細: DNS

DNS のレコード数に応じて検討しましょう。

DNS Free Pro Business Premium
Amazon Route 53 DNS Yes Yes Yes Yes
ホストゾーンあたりのレコード数 50 100 1000 5000
DNSSEC Yes Yes Yes Yes

機能詳細: ストレージ

S3 のクレジットなので料金に含まれることは魅力的ですが、機能的な差はなさそうです。

ストレージ Free Pro Business Premium
Amazon S3 ストレージ
Amazon S3 標準ストレージ料金ストレージクレジット
5 GB 50 GB 1 TB 5 TB

機能詳細: サポートと信頼性

稼働時間の SLA は Business 以上が対象となります。現時点では Amazon CloudFront Service Level Agreement にプランの差は記述されていないようです。(Last Updated: May 5, 2022 の内容)

サポートと信頼性 Free Pro Business Premium
24時間365日対応のアカウントおよび請求サポート
アカウントと請求に関するご質問に個別にお答えします。
有料サポートプランにご加入の場合は、すべての定額プランでサポートをご利用いただけます。
Yes Yes Yes Yes
ドキュメントとAWSサポートフォーラム Yes Yes Yes Yes
稼働時間SLA
Amazon CloudFront、AWS WAF、Amazon Route 53、Amazon CloudWatch のサービスレベルアグリーメント (SLA) は、サービスの可用性に関するコミットメントを定めています。AWS が関連する SLA のコミットメントを満たさない場合、お客様はサービスクレジットを受け取ることができます。
Yes Yes

定額料金プラン以外の選択肢

定額料金プランは事前に決まったコストとなり、使い方によっては大変安価に使用できるプランですが、使用したい機能や利用量の変動などで従量課金制となることも多いかと思います。その場合は他の割引料金もあるので検討できるかと思われます。

CloudFront Savings Bundle

1 年間の月額使用量を一定にすることと引き換えに、CloudFront の請求額を最大 30% 節約できます。CloudFront リソースを保護するための AWS WAF の使用量 (確約プラン量の最大 10%) が追加料金なしで含まれています。

CloudFront Security Savings Bundle

カスタム料金

12 か月間以上、1 か月あたり最小 10 TB のデータ転送量をお約束いただけるお客様は、カスタム割引料金でご利用いただけます。

Amazon CloudFront の料金

リセールパートナー割引

各リセールパートナーが独自の CloudFront の割引を出している場合があります。手前味噌ですが、弊社クラスメソッドの場合は AWS請求代行の EC2・CDN割引プラン において Amazon CloudFront はアウトバウンド通信を最大約 65% 割引($0.0399/GB)、GETリクエスト料 100% 割引(2025年11月19日現在)となっております。使用量の確約も不要です。

AWS請求代行 プラン詳細

まとめ

  • CloudFront の定額料金プランは 50TB のデータ量よりもリクエスト数に注目してプランを選択すべし
    • 単純な料金だけでなく、実際の利用状況を確認しましょう。
  • プランごとに使用できる機能に大きな差があるので、使用したい機能を元にプランを検討すべし
    • プラン対象外の機能を使用するためには、プランのアップグレードや従量課金制への切り替えが必要になります。
  • CloudFront の料金を削減する手段は定額プラン以外にもあるので検討すべし
    • 利用料の確約による割引や、リセールパートナーの割引などもあります。

さいごに

50TB に目が行きがちな定額料金プランですが、使い方で実際に使用する量が変わってきます。ご自分の環境がどのような使い方になっているかを確かめてプランを選択したり、それ以外の選択肢を検討したりが必要です。

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