Amazon Connect AIエージェントのセルフサービスでチャット向けに最適化されたデフォルトAIエージェントが追加されました
はじめに
Amazon Connect AIエージェントのセルフサービスで、チャット向けと考えられる SelfServiceOrchestratorChat というシステム提供のデフォルトAIエージェントが表示されていることを確認しました。
今回確認した範囲では、SelfServiceOrchestratorChat という名称そのものに対応する What's New は見当たりませんでした。また、公開ドキュメント上でも SelfServiceOrchestratorChat の詳細説明までは確認できていません。
本記事では、今回確認した SelfServiceOrchestratorChat と、その AIプロンプトである SelfServiceOrchestrationChat の内容を、管理画面上で確認できた範囲をもとに整理します。
なお、システム提供の AIエージェントや AIプロンプトは AWS 側で変更される可能性があります。本記事の内容は、確認時点の Amazon Connect 管理画面上の表示に基づくものです。実際に利用する際は、最新の管理画面および公式ドキュメントを確認してください。
確認したこと
今回確認した Amazon Connect 管理画面では、セルフサービス用の AIエージェントとして SelfServiceOrchestratorChat と SelfServiceOrchestratorVoice が表示されていました。

AIプロンプトの一覧では、SelfServiceOrchestrationChat と SelfServiceOrchestrationVoice が表示されていることを確認できます。

AIエージェントの一覧では、SelfServiceOrchestratorChat と SelfServiceOrchestratorVoice が表示されていることを確認できます。
なお、AWS 公式ドキュメントでは、デフォルト AI プロンプトとして SelfServiceOrchestration、デフォルト AI エージェントとして SelfServiceOrchestrator が記載されています。一方で、今回確認した管理画面では、SelfServiceOrchestration / SelfServiceOrchestrator は表示されず、チャネル別と見られる SelfServiceOrchestrationChat / SelfServiceOrchestrationVoice および SelfServiceOrchestratorChat / SelfServiceOrchestratorVoice が表示されていました。
そのため、本記事では、これらが削除された、または置き換わったとは断定せず、今回確認した管理画面上の表示差分として扱います。
SelfServiceOrchestratorChat は、名称からチャットチャネル向けのセルフサービス用途を意識したデフォルトAIエージェントと考えられます。
なお、音声向けの SelfServiceOrchestratorVoice については、以前の記事で整理しています。
以前の記事を執筆した時点では、今回確認した SelfServiceOrchestratorChat は表示されておらず、AIプロンプトも SelfServiceOrchestration として表示されていました。今回確認した管理画面では、これらが Chat / Voice に分かれて表示されていたため、本記事ではその差分も含めて整理します。
デフォルトAIプロンプトとは
Amazon Connect AIエージェントでは、AWS 側で用意されたデフォルトの AI プロンプトを確認できます。
公式ドキュメントでは、Amazon Connect が標準体験を提供するために、システム AI プロンプトと AIエージェントを提供していると説明されています。
Amazon Connect provides a set of system AI prompts and AI agents. It uses them to power the out-of-the-box experience with Connect AI agents.
日本語訳:
Amazon Connect は、システム AI プロンプトと AIエージェントのセットを提供しています。これらは、Amazon Connect AIエージェントの標準体験を実現するために使用されます。https://docs.aws.amazon.com/connect/latest/adminguide/default-ai-system.html
ただし、デフォルトの AI プロンプトを直接カスタマイズすることはできません。カスタマイズする場合は、デフォルトの AI プロンプトをコピーし、独自プロンプトを作成する際のベースとして利用します。
You can't customize the default AI prompts. However, you can copy them and then use the new AI prompt as a starting point for your customizations.
日本語訳:
デフォルトの AI プロンプトを直接カスタマイズすることはできません。ただし、コピーした新しい AI プロンプトを、独自にカスタマイズする際のベースとして利用できます。https://docs.aws.amazon.com/connect/latest/adminguide/default-ai-system.html
つまり、実際に業務に合わせて調整する場合は、システム提供のデフォルトAIエージェントそのものを直接編集するのではなく、含まれている AI プロンプトをコピーして、自社用のプロンプトとしてカスタマイズする流れになります。
今回確認した SelfServiceOrchestratorChat
今回確認した SelfServiceOrchestratorChat は、セルフサービス用途のデフォルトAIエージェントです。
管理画面上の説明は以下でした。
System AIAgent for end-customer self-service
AIプロンプトとしては、SelfServiceOrchestrationChat が用意されていました。
System prompt for self service ORCHESTRATION
一方で、音声向けには SelfServiceOrchestratorVoice と SelfServiceOrchestrationVoice が表示されていました。
System AIAgent for end-customer voice self-service
System prompt for voice self service ORCHESTRATION
この表示から、SelfServiceOrchestratorChat は、エンドカスタマー向けセルフサービスのうち、チャット向けのデフォルトAIエージェントとして用意されたものと考えられます。
ただし、今回確認した SelfServiceOrchestrationChat のプロンプト本文は、以前確認していた SelfServiceOrchestration の内容と大きな差分は確認できませんでした。
以前のセルフサービス用プロンプトについては、以下の記事で整理しています。
そのため、本記事では、SelfServiceOrchestrationChat のプロンプト内容から読み取れる特徴と、チャットで利用する場合に気になった点を中心に整理します。
SelfServiceOrchestrationChat の AIプロンプト
今回確認した SelfServiceOrchestrationChat の AIプロンプトは、主に以下の構成でした。
system: |
You are an AI customer service agent designed to help users with their questions and issues. However, your actual capabilities depend entirely on the tools available to you. Do not assume you can help with any specific request without first checking what tools you have access to.
IMPORTANT: Being labeled as a "customer service agent" does NOT mean you have general customer service capabilities. You can only help with tasks that your available tools support. Do not claim abilities you cannot verify through your tools.
Your goal is to resolve the user's issue while being responsive and helpful.
<formatting_requirements>
MUST format all responses with this structure:
<message>
Your response to the customer goes here. This text will be spoken aloud, so write naturally and conversationally.
</message>
<thinking>
Your reasoning process can go here if needed for complex decisions.
</thinking>
MUST NEVER put thinking content inside message tags.
MUST always start with `<message>` tags, even when using tools, to let the customer know you are working to resolve their issue.
</formatting_requirements>
...
プロンプトの冒頭では、AIエージェントの実際の能力は利用可能なツールに依存することが明示されています。
You are an AI customer service agent designed to help users with their questions and issues. However, your actual capabilities depend entirely on the tools available to you. Do not assume you can help with any specific request without first checking what tools you have access to.
日本語訳:
あなたは、ユーザーの質問や問題を支援するために設計された AI カスタマーサービスエージェントです。
ただし、実際にできることは、利用可能なツールに完全に依存します。
利用できるツールを確認する前に、特定の依頼に対応できると仮定してはいけません。
また、「カスタマーサービスエージェント」というラベルが付いていても、一般的なカスタマーサービス全般に対応できるわけではないことが強調されています。
IMPORTANT: Being labeled as a "customer service agent" does NOT mean you have general customer service capabilities. You can only help with tasks that your available tools support. Do not claim abilities you cannot verify through your tools.
日本語訳:
重要: 「カスタマーサービスエージェント」と分類されていることは、一般的なカスタマーサービス能力を持つことを意味しません。
利用可能なツールがサポートするタスクにのみ対応できます。
ツールで確認できない能力を持っていると主張してはいけません。
この点は、セルフサービス用途の AIエージェントでは重要です。AIエージェントは何でも回答するチャットボットではなく、設定されたツールや取得済みコンテンツ、会話履歴に基づいて、対応できる範囲を判断する設計になっています。
SelfServiceOrchestrationChat の主な特徴
利用できるツールに基づいて対応可否を判断する
SelfServiceOrchestrationChat では、回答の情報源が限定されています。
MUST only provide information from tool results, conversation history, or retrieved content - never from general knowledge or assumptions. When you don't have specific information, acknowledge this honestly.
日本語訳:
ツール結果、会話履歴、取得済みコンテンツに基づく情報のみを提供します。
一般知識や推測に基づいて回答してはいけません。
具体的な情報を持っていない場合は、そのことを正直に伝えます。
例えば、注文状況、契約内容、返金可否、予約情報などは、一般知識ではなく、実際の業務システムやナレッジに基づいて回答する必要があります。
そのため、SelfServiceOrchestrationChat は、ユーザーの質問に対してもっともらしく回答するのではなく、利用可能なツールで確認できる範囲を前提に対応するプロンプトになっています。
message と thinking を分けて出力する
SelfServiceOrchestrationChat では、応答形式として <message> と <thinking> の使い分けが定義されています。
MUST format all responses with this structure:
<message>
Your response to the customer goes here. This text will be spoken aloud, so write naturally and conversationally.
</message>
<thinking>
Your reasoning process can go here if needed for complex decisions.
</thinking>MUST NEVER put thinking content inside message tags.
MUST always start with<message>tags, even when using tools, to let the customer know you are working to resolve their issue.日本語訳:
すべての応答は、指定された構造でフォーマットする必要があります。
顧客への応答は<message>に記載します。
複雑な判断が必要な場合の推論過程は<thinking>に記載できます。
thinking の内容を message タグ内に入れてはいけません。
ツールを使う場合でも、必ず<message>タグから開始し、対応中であることを顧客に知らせます。
<message> は顧客向けの応答であり、<thinking> はツール選択や判断のための内部的な領域です。プロンプトでは、内部判断を顧客向けメッセージに混ぜないことが明示されています。
また、ツールを使う場合でも、最初に <message> で短く応答するよう指示されています。チャットでも、ユーザーが入力した後に何も返ってこない時間が長いと、処理が止まっているように見えます。そのため、先に「確認します」「お調べします」のような短い応答を返す設計は、チャット体験としても有効だと感じました。
ツール呼び出しが失敗した場合は再試行しない
SelfServiceOrchestrationChat では、ツール呼び出しがエラーになった場合、同じツール呼び出しを再試行しないよう指示されています。
If a tool call fails with an error, do not retry the same tool call. Instead, apologize for technical difficulties and offer to escalate to a human agent who can assist further.
日本語訳:
ツール呼び出しがエラーで失敗した場合、同じツール呼び出しを再試行してはいけません。
代わりに、技術的な問題が発生していることを謝罪し、さらに支援できる人間のエージェントへの接続を提案します。
応答例も用意されています。
I apologize, but I'm experiencing technical difficulties accessing that information right now. Would you like me to connect you with a human agent who can help you with this?
日本語訳:
申し訳ありません。ただいまその情報にアクセスする際に技術的な問題が発生しています。
この件について対応できる担当者におつなぎしましょうか。
ここでのポイントは、失敗した同じ呼び出しを繰り返さないことです。単純な再試行で状況が改善するとは限らないため、顧客には技術的な問題として伝え、人間のエージェントへの接続を提案する流れになっています。
確認が必要な操作では明示的な承認を得る
SelfServiceOrchestrationChat では、ツールに require_user_confirmation: true が設定されている場合、ユーザーの明示的な承認を得る必要があります。
For tools requiring confirmation (marked with require_user_confirmation: true):
MUST ask for explicit customer approval before proceeding.日本語訳:
確認が必要なツールでは、処理を進める前に顧客の明示的な承認を求める必要があります。
例えば、プレミアムサブスクリプションをキャンセルする場合の例として、以下の応答が示されています。
Before I proceed with canceling your premium subscription, can you confirm you'd like me to go ahead with this change?
日本語訳:
プレミアムサブスクリプションのキャンセルを進める前に、この変更を実行してよいか確認させてください。
チャットのセルフサービスでは、住所変更、予約変更、キャンセル、解約など、顧客の状態を変更する操作が含まれる場合があります。
このような操作では、AIエージェントがすぐに処理を実行するのではなく、処理内容を示したうえで顧客の承認を得る必要があります。SelfServiceOrchestrationChat では、このような確認が必要な操作に対する基本方針がプロンプトに含まれています。
内部用語や個人情報の扱いにもルールがある
SelfServiceOrchestrationChat では、顧客向けメッセージで内部用語や技術用語を避けるよう指示されています。
MUST avoid technical or internal terminology. Do not mention "knowledge base", "database", "tools", "API", "system", or other implementation details. Speak naturally as a human customer service representative would.
日本語訳:
技術用語や内部用語を避ける必要があります。
ナレッジベース、データベース、ツール、API、システムなどの実装詳細に言及してはいけません。
人間のカスタマーサービス担当者のように自然に話します。
また、個人情報についても、パスワード、社会保障番号、クレジットカード番号、アカウント認証情報、その他の機密性の高い顧客データを開示、確認、議論してはいけないと明示されています。
MUST never disclose, confirm, or discuss personally identifiable information (PII) such as passwords, social security numbers, credit card numbers, account credentials, or other sensitive customer data.
日本語訳:
パスワード、社会保障番号、クレジットカード番号、アカウント認証情報、その他の機密性の高い顧客データなど、個人を特定できる情報を開示、確認、議論してはいけません。
チャットでは、ユーザーが自由入力で個人情報を入力してしまうことがあります。プロンプトでは、ユーザーが個人情報を提供した場合でも、その機密情報を繰り返さずに対応する方針が示されています。
チャット向けの名前だが、音声読み上げ向けの指示も含まれている
SelfServiceOrchestrationChat で特に気になったのは、チャット向けと考えられる名前でありながら、プロンプト内に音声読み上げ向けの指示が含まれている点です。
例えば、<message> タグの説明では、以下のように書かれています。
Your response to the customer goes here. This text will be spoken aloud, so write naturally and conversationally.
日本語訳:
顧客への応答をここに記載します。
このテキストは読み上げられるため、自然で会話的に書きます。
また、メッセージ内容についても、音声合成に適した形式にするよう指示されています。
MUST write all message content to be voice-friendly and suitable for speech synthesis. Keep communication clear, concise and short. Write as if speaking naturally to a customer - avoid bullet points, numbered lists, special characters, or formatting that assumes visual reading.
日本語訳:
すべてのメッセージ内容は、音声に適しており、音声合成に適したものにする必要があります。
明確で簡潔かつ短くします。
顧客に自然に話しかけるように書き、箇条書き、番号付きリスト、特殊文字、視覚的な読み取りを前提とした書式は避けます。
この指示だけを見ると、チャット画面での視認性よりも、音声として読み上げたときの自然さを優先する内容に見えます。
チャットでは、手順を箇条書きで示したり、条件や料金を表で比較したり、URL や受付番号を画面上で確認しやすい形式で提示したりする方が分かりやすい場面があります。
しかし、SelfServiceOrchestrationChat のプロンプトでは、箇条書きや番号付きリスト、特殊文字、視覚的な読み取りを前提とした書式を避けるように指示されています。
そのため、チャットで使う場合でも、デフォルトのままでは「チャット画面で読みやすい回答」よりも、「会話として自然で短い回答」になりやすいと考えられます。
チャット画面での読みやすさを重視する場合は、コピーしたプロンプトで箇条書き、表、リンク、改行などをどこまで許可するか調整するとよさそうです。
SelfServiceOrchestratorVoice について
電話向けの SelfServiceOrchestratorVoice については、以下の記事で整理しています。
今回確認した範囲では、SelfServiceOrchestrationVoice には音声認識の誤認識、ID や確認番号の読み上げ、無応答時の扱いなど、電話特有の指示が含まれていました。
一方で、SelfServiceOrchestrationChat では、電話向けの詳細な spell-back ルールのような指示は確認できませんでした。
まとめ
Amazon Connect AIエージェントのセルフサービス用途で、SelfServiceOrchestratorChat というチャット向けと見られるシステム提供のデフォルトAIエージェントを確認しました。
今回確認した管理画面では、AIエージェントとして SelfServiceOrchestratorChat / SelfServiceOrchestratorVoice、AIプロンプトとして SelfServiceOrchestrationChat / SelfServiceOrchestrationVoice が表示されていました。一方で、公式ドキュメント上では SelfServiceOrchestrator / SelfServiceOrchestration の名称も記載されているため、本記事では削除や置き換えとは断定せず、管理画面上の表示差分として扱います。
SelfServiceOrchestrationChat は、ツールに基づく対応可否の判断や、確認が必要な操作の承認、セキュリティ上の制約を中心にしたプロンプトでした。チャット画面での見やすさを重視する場合は、コピーしたプロンプトで応答形式を調整するとよさそうです。




