Amazon ConnectのAI機能が無制限に無料で使える、新たな料金体系がリリースされました
はじめに
「次世代のAmazon Connect(the next generation of Amazon Connect)」がリリースされ、これに伴いAI機能がすべて無制限に無料で使える新たな料金体系が導入されました。
この新料金体系は、AWSの公式ドキュメントやリリースブログでは「the next generation of Amazon Connect」または「Next Generation Amazon Connect」と呼ばれています。
Amazon Connectは従来から、セルフサービス応答、エージェント支援、会話分析と品質管理、キャパシティプランニングなど、Amazon Q in Connectを始めとするAI機能を提供してきました。
今回のアップデートでは、次世代のAmazon Connectを有効化することで、これらのAI機能が全て無制限に無料で使える新たな料金体系が導入されました。
現時点での次世代のAmazon Connectは、料金体系以外では従来のシステムと機能的な変更点はありません。
しかし、リリースブログによれば、今後は「将来のAI機能のサポート」も提供される予定とのことです。
we are announcing that Amazon Connect now delivers first-party AI across all channels, featuring ongoing support for future AI capabilities with all-you-can-eat AI pricing that remains tied only to your underlying channel usage rather than AI consumption.
日本語訳:本日、Amazon Connectが全チャネルにわたって自社開発のAIを提供することを発表します。これには、AI消費量ではなく基本となるチャネル使用量のみに連動した定額制のAI料金体系で、将来のAI機能に対する継続的なサポートが含まれています。
どのような料金体系となったか
次世代のAmazon Connectの料金体系は、従来と比較して、据え置き項目、値上げ項目、無料項目の3つのカテゴリーに分かれます。
据え置き項目
以下の機能については、料金に変更はありません。
カテゴリー | 機能 | 料金(変更なし) |
---|---|---|
電話関連 | 電話番号(日本 直通ダイヤル) | 1日あたり 0.1000 USD |
インバウンドコール(日本 DID) | 0.0030 USD | |
アウトバウンドコール(日本→日本) | 0.078 USD | |
アプリケーション内通話およびウェブ通話 | 1分あたり 0.01 USD | |
画面共有の使用 | 1分あたり 0.015 USD | |
動画接続 | 1分あたり 0.015 USD | |
ケース | ケース | ケース作成1件あたり 0.12 USD |
Customer Profiles | Customer Profiles(外部データソース) | 1件あたり 0.005 USD |
プロファイルの追加料金 | 100個のオブジェクトごとに 0.005 USD | |
Voice ID | Voice ID の使用 | 1回のトランザクションあたり 0.025 USD |
Contact Lens | 外部音声転送コネクタ | 1番目のコネクタのみ 40,000 USD/月 |
値上げ項目
基本的なコミュニケーションチャネルの使用料は値上げされています。
機能 | 従来の料金 | 次世代の料金 |
---|---|---|
受信通話音声使用(1分あたり) | 0.018 USD | 0.038 USD |
発信通話音声使用(1分あたり) | 0.018 USD | 0.038 USD |
チャット使用料(メッセージ1件あたり) | 0.004 USD | 0.010 USD |
Eメール使用量(Eメール1件あたり) | 0.05 USD | 0.08 USD |
タスク使用料(タスク1個あたり) | 0.04 USD | 0.07 USD |
SMS使用料(メッセージ1件あたり) | 0.01 USD | 0.014 USD |
Apple ビジネス向けメッセージ(メッセージ1通あたり) | 0.01 USD | 0.014 USD |
WhatsApp Business メッセージング(メッセージ1件あたり) | 0.01 USD | 0.014 USD |
ステップバイステップガイドメッセージ(メッセージ1件あたり) | 0.005 USD | 0.010 USD |
アウトバウンドキャンペーン音声サービス(1分あたり) | 0.025 USD | 0.045 USD |
外部音声の統合(1分あたり.200万分以上の場合) | 0.012 USD | 0.032 USD |
無料項目
今回の料金体系改定の最大のポイントは、AI機能が全て無料になることです。以下の機能が無料化されます。
機能 | 従来の料金 | 次世代の料金 |
---|---|---|
Contact Lens(音声通話の会話分析) | 1分あたり 0.015 USD | 無料 |
Contact Lens(チャットメッセージの会話分析) | メッセージごと 0.0015 USD | 無料 |
Contact Lens(画面記録) | 1分あたり 0.006 USD | 無料 |
Contact Lens(パフォーマンス評価) | 1ユーザーあたり 12 USD/月 | 無料 |
予測とスケジューリング | 1ユーザーあたり 27 USD/月 | 無料 |
Amazon Q in Connect(セルフサービス) | 1分あたり 0.20 USD | 無料 |
Amazon Q in Connect(エージェントアシスタンス) | 1ユーザーあたり 40 USD/月 | 無料 |
この無料化によるコスト削減効果は大きく、例えばQ in Connectのエージェントアシスタンスを1000ユーザーで利用した場合、従来なら月額40,000USDのコストがかかっていましたが、次世代の料金体系では完全に無料となります。
同様に、予測とスケジューリング機能も1000ユーザーで利用すれば、月額27,000USDの削減になります。
特に大きなインパクトがある機能は、Q in Connectのエージェントアシスタンス、予測とスケジューリング、そしてContact Lensのパフォーマンス評価です。
有効化してみる
次世代のAmazon Connectへの移行は非常に簡単で、Connectインスタンスごとに1クリックで有効化できます。
管理コンソールから[Next Generation Amazon Connect]セクションにアクセスし、[有効にする]ボタンをクリックするだけです。
Amazon Connect+ が正常に有効になりました! アプリケーションをまだ設定していない場合は、必要に応じて、Amazon Q for Connect、Contact Lens、予測、AI を使用した音声およびチャット、ならびにエージェントスケジューリングを有効にしてください。
必要に応じて次世代のAmazon Connectを無効化することも可能です。
ただし、以下の記載がある通り、30日以内に無効化した場合でも、有効化してから30日間は次世代の料金体系が適用される点に注意が必要です。
これによってアクティブ化された個々のアプリケーションが無効になることはありません。Amazon Connect Plus を無効にした後もそれらのアプリケーションがまだ使用されている場合は、個々のアプリケーションの料金に基づいて課金されます。
Amazon Connect Plus を使用してから 30 日以内の場合は、30 日間が終わるまで引き続きアクセスでき、請求が行われます。詳細については、pricing page を参照してください。
無効化の操作自体はすぐに反映されます。
このように、次世代のAmazon Connectは必要に応じて簡単に有効化・無効化できることが確認できました。
料金ページ
AWS公式サイトの料金ページも、次世代のAmazon Connectの導入に伴い更新されました。料金体系は以下の2つのカテゴリに分かれています。
- Amazon Connect(次世代のAmazon Connectの料金体系)
- 基本チャネル使用料は値上げされているが、AI機能は無制限に無料
- 個々の機能(従来の料金体系)
- 必要な機能のみを個別に購入できる従来の料金体系
次世代のAmazon Connectの値上げ項目は「Amazon Connect」に記載されています。
基本的なコミュニケーションチャネルの使用料が従来より高くなっていることがわかります。
一方、無料になるAI機能については、表形式ではなく文章で説明されています。これらの機能は次世代のAmazon Connectを選択した場合、追加料金なしで無制限に利用できます。
据え置きの項目については、個々の機能(従来の料金体系)からご確認ください。
どちらの料金体系を利用すべきか
従来の料金体系と次世代の料金体系のどちらがお得になるかは、Amazon Connect利用パターンによって異なります。判断の参考となるポイントをまとめます。
ただし、あくまでも参考にしてください。組織によってランニングコストを実際に計算して比較してみましょう。
次世代の料金体系がお得なケース
以下のAI機能を積極的に活用している場合、次世代の料金体系のほうがお得になる可能性があります。
- Contact Lensのパフォーマンス評価(1ユーザーあたり12USD/月)
- 予測とスケジューリング(1ユーザーあたり27USD/月)
- Amazon Q in Connect
- エージェントアシスタンス(1ユーザーあたり40USD/月)
特に、エージェント数が多い組織では、これらの機能が無料になることによる節約効果は非常に大きくなります。例えば、100人のエージェントがいる組織では、Amazon Q in Connectのエージェントアシスタンスだけでも月額4,000USDの節約になります。
また、検証環境でAI機能をテストしたい場合も、次世代の料金体系がお得になる可能性が高いです。
従来の料金体系では、たとえ検証目的であっても、Q in Connectのエージェントアシスタンスには1ユーザーあたり月40USDの費用がかかりました。
従来の料金体系がお得なケース
一方、以下のような組織は従来の料金体系のほうがお得になる可能性が高いです。
- AI機能をほとんど使用していない
- 基本的なコミュニケーションチャネル(音声、チャット、メール等)の使用量が多い
- エージェント数が少なく、AI機能の無料化による恩恵が限定的
最後に
今回、次世代のAmazon Connectという新たな料金体系がリリースされました。
今後ConnectのAI機能がより充実すると、次世代の料金体系のほうがお得になるパターンが増えていきそうです。
次世代のAmazon Connectについては、現時点では料金体系が異なるのみですが、今後「将来の AI 機能のサポート」がリリースされる可能性があるので要チェックです。具体的な内容はまだ明らかではありません。
参考