Amazon Connect にタッチトーンバッファリングが追加されたので IVR の先行入力を試してみた
はじめに
Amazon Connect に、AI を活用したセルフサービス向けのタッチトーンバッファリングが追加されました。
アップデート情報では、Web サイト、モバイルアプリ、通知リンクなどから顧客が通話を開始した場合に、顧客 ID、セッション参照、キャンペーンコードなどのコンテキストを通話に自動的に渡せるようになったと説明されています。AI エージェントはそのコンテキストを利用して、発信者を認識し、通話理由を理解し、必要なアクションや問題解決を行えるようになります。
Amazon Connect では、通話がつながった瞬間から自動的に顧客のコンテキストを渡して、セルフサービスエクスペリエンスをパーソナライズできるようになりました。お客様がウェブサイト、モバイルアプリ、通知リンクから通話を開始すると、顧客 ID、セッション参照、キャンペーンコードなどのコンテキストを通話に自動的に渡すことができます。
https://aws.amazon.com/jp/about-aws/whats-new/2026/04/amazon-connect-touchtone-buffering/
また、管理者ガイドでは、タッチトーンバッファリングによって、顧客が IVR の案内を最後まで待たずに 1-2-3 のようなメニュー番号や、アカウント ID、注文番号などを入力できると説明されています。
Touchtone buffering in Connect Customer eliminates a common frustration in IVR systems by allowing customers to enter their complete menu path immediately (such as pressing 1-2-3 in rapid succession) or input identification numbers (such as account IDs or order numbers) without waiting for each prompt to finish or losing their inputs.
Amazon Connect のタッチトーンバッファリングは、顧客が各プロンプトの終了を待たずに、
1-2-3のようなメニュー経路や、アカウント ID、注文番号などの識別番号を入力できるようにすることで、IVR でよくある入力取りこぼしの課題を軽減します。https://docs.aws.amazon.com/connect/latest/adminguide/touchtone-buffering.html
本記事では、Amazon Connect の問い合わせフローでタッチトーンバッファリングを有効化し、長い音声案内の再生中に 123 を入力した場合に、後続の入力ブロックで 1、2、3 と順番に処理できるかを確認します。
タッチトーンバッファリングとは
タッチトーンバッファリングは、音声問い合わせフロー内で顧客の DTMF(Dual-Tone Multi-Frequency、電話のプッシュボタン入力)を一時的に保持する仕組みです。
Set Touchtone Buffer Behavior(タッチトーンバッファの動作を設定)ブロックを使うと、問い合わせフロー内でタッチトーンバッファリングを有効化、または停止してクリアできます。
公式ドキュメントでは、Set Touchtone Buffer Behavior ブロックについて以下のように説明されています。
Use this block to enable or disable touchtone buffering for a contact. When touchtone buffering is enabled, customer keypad inputs (digits 0–9, #, and *) are collected into a buffer of up to 30 characters as the customer presses them, even while prompts are still playing or between flow block transitions.
このブロックは、コンタクトに対してタッチトーンバッファリングを有効または無効にするために使用します。タッチトーンバッファリングを有効にすると、顧客が押したキーパッド入力(0〜9、#、*)が、プロンプト再生中やフローブロック遷移中であっても、最大 30 文字までバッファに収集されます。
https://docs.aws.amazon.com/connect/latest/adminguide/set-touchtone-buffer-behavior.html
このブロックには、主に以下の 2 つの設定があります。
| 画面上の日本語名 | 公式ドキュメント上の表記 | 概要 |
|---|---|---|
| 有効 | Enable Buffering | DTMF 入力をバッファに収集し始める |
| バッファを停止してクリア | Stop and Clear | バッファリングを停止し、保持中の入力をクリアする |

バッファに保持された入力は、後続の Get customer input ブロックや Store customer input ブロックで処理できます。
今回使用した問い合わせフロー
今回の検証では、以下の問い合わせフローを使用しました。

今回使用した問い合わせフローです。日本語音声の設定後、タッチトーンバッファを有効化し、長いプロンプトの後に 1、2、3 を順番に判定しています。
大まかな流れは以下です。
音声を設定
↓
タッチトーンバッファの動作を設定
↓
長いプロンプトを再生
↓
1 桁目の入力を確認
↓
2 桁目の入力を確認
↓
3 桁目の入力を確認
↓
成功メッセージ
今回の目的は、通常の入力受付ではなく、長い音声案内の再生中に押した 123 が後続の入力ブロックで処理されるかを確認することです。
そのため、入力ブロックの前に長いプロンプトを配置しています。入力ブロックがすぐ始まる構成だと、123 を押した際に各入力ブロックがリアルタイムに DTMF を拾って成功する可能性があり、タッチトーンバッファリングの効果を切り分けにくくなるためです。
タッチトーンバッファの動作を設定する
Set Touchtone Buffer Behavior(タッチトーンバッファの動作を設定)ブロックでは、タッチトーンバッファオプションを 有効 にしました。

タッチトーンバッファオプションで「有効」を選択しています。これにより、このブロック以降の DTMF 入力がバッファに収集されます。
この設定を 有効 にすると、顧客が押した DTMF 入力がバッファに保持されます。今回の検証では、長いプロンプトの再生中に 123 を押し、その入力が後続の入力ブロックで 1、2、3 として順番に処理されるかを確認します。
一方で、バッファを停止してクリア を選択すると、バッファリングを停止し、保持中の入力もクリアします。後述しますが、比較検証ではこの設定に切り替えた場合の挙動も確認しました。
長いプロンプトでスキップと割り込みを有効にする
長いプロンプトの再生ブロックでは、テキスト読み上げで案内文を設定し、タッチトーンバッファリング有効時にプロンプトをスキップまたは割り込みできる設定を有効にしました。

プロンプトの再生ブロックです。タッチトーンバッファリング有効時にプロンプトをスキップまたは中断する設定を有効にしています。
Play prompt(プロンプトの再生)ブロックには、タッチトーンバッファリングが有効な場合にプロンプトをスキップまたは中断するためのチェックボックスがあります。
The Play prompt block includes a checkbox: Skip or interrupt this prompt when touchtone buffering is enabled.
Play prompt ブロックには、「タッチトーンバッファリングが有効な場合に、このプロンプトをスキップまたは中断する」チェックボックスがあります。
https://docs.aws.amazon.com/connect/latest/adminguide/play.html
この設定を有効にすると、バッファにすでに入力がある場合はプロンプトがスキップされます。また、バッファが空の状態でプロンプトを再生している最中に顧客がキーを押すと、プロンプトが中断され、その入力がバッファに追加されます。
今回の検証では、以下のような長めの案内を入れました。
タッチトーンバッファリングの検証を開始します。
この長い案内の再生中に、すぐに 1、2、3 を連続で押してください。
バッファリングが有効であれば、この案内は途中で中断され、押された数字がバッファに保存されます。
その後の入力ブロックで、1、2、3 が順番に処理されます。
まだ入力していない場合は、今すぐ 1、2、3 を押してください。
繰り返します。今すぐ 1、2、3 を連続で押してください。
このように長い案内を入れることで、案内中に押した 123 が後続ブロックで処理されるかを確認しやすくしています。
なお、このスキップまたは割り込み設定は、すべてのプロンプトで有効にすればよいものではありません。メニュー案内や繰り返し案内のようにスキップされても問題ないプロンプトには向いていますが、法的な注意事項や必ず聞かせたい案内では無効のままにする方がよいケースがあります。
動作確認
以下のパターンで動作確認しました。
| No | テスト | 入力 | 結果 |
|---|---|---|---|
| 1 | 通常入力 | 1 → 2 → 3 |
成功 |
| 2 | 先行入力 | 123 |
成功 |
| 3 | 間違い入力 | 124 |
想定外入力 |
| 4 | 余分な入力 | 1234 |
成功、余りは未使用 |
通常入力では、各入力ブロックの案内に従って 1、2、3 を順番に押しました。この場合は、一般的な IVR 入力として成功します。
先行入力では、長いプロンプトの再生中に 123 を連続で押しました。タッチトーンバッファリングを有効化している場合、後続の入力ブロックで 1、2、3 が順番に処理され、成功メッセージが再生されました。
間違い入力として 124 を押した場合は、1 桁目と 2 桁目は期待値と一致しますが、3 桁目が 3 ではないため、想定外入力のメッセージへ進みました。
余分な入力として 1234 を押した場合は、今回のフローでは先頭の 1、2、3 が処理され、成功メッセージへ進みました。4 は今回のフローでは処理していませんが、バッファリングを継続している場合、未消費の入力として残り、後続の入力ブロックに影響する可能性があります。
バッファを停止してクリアの場合の挙動
比較として、Set Touchtone Buffer Behavior(タッチトーンバッファの動作を設定)ブロックを バッファを停止してクリア に変更し、同じように長いプロンプトの再生中に 123 を入力しました。

この場合、後続の入力ブロックで 1 から聞かれました。
これは、長い案内中に押した 123 がバッファに保持されていないためです。
| タッチトーンバッファオプション | 長い案内中の 123 |
後続ブロックでの挙動 |
|---|---|---|
| 有効 | バッファに保持される | 1、2、3 と順番に処理される |
| バッファを停止してクリア | 保持されない | 1 桁目の入力から聞かれる |
この差分により、今回の 123 成功が単に入力ブロックがリアルタイムに DTMF を拾っただけではなく、タッチトーンバッファリングによるものだと確認しやすくなりました。
利用時に気をつけたいこと
タッチトーンバッファリングを有効にすると、顧客が案内中に入力した DTMF が後続ブロックで処理されます。そのため、どのプロンプトをスキップまたは中断可能にするかは設計上のポイントになります。
公式ドキュメントでは、メニューオプションの一覧、必須ではない情報メッセージ、繰り返しのナビゲーションプロンプトではスキップまたは割り込みを有効化し、法的な免責事項、コンプライアンスメッセージ、重要な指示では無効のままにする例が示されています。
また、バッファに保持された入力は、後続の Get customer input や Store customer input で先頭から順番に処理されます。Get customer input では 1 回のブロック実行ごとに 1 桁ずつ、Store customer input では設定した最大桁数まで処理されます。
別の入力シーケンスに進む前に、不要な入力が残っていると後続の分岐に影響する可能性があります。そのため、入力のまとまりが変わるタイミングでは、必要に応じて バッファを停止してクリア を使って明示的にクリアする設計も検討した方がよさそうです。
今回の検証では 1 桁ずつのメニュー入力を確認しましたが、注文番号や会員番号などの複数桁入力を扱う場合は、Store customer input ブロックを使う構成も検討できます。
まとめ
Amazon Connect に追加されたタッチトーンバッファリングを使い、長い音声案内中に入力した 123 を後続の入力ブロックで順番に処理できることを確認しました。
有効 の場合は先行入力が処理され、バッファを停止してクリア の場合は後続ブロックで 1 桁目から聞かれるという差分も確認できました。
IVR で顧客が案内を最後まで待たずに番号を入力するケースがある場合や、多段メニューの検証を効率化したい場合に便利なアップデートです。導入時は、スキップしてよい案内と必ず聞かせたい案内を分けて、プロンプトのスキップまたは割り込み設定を調整するのがよさそうです。





