Amazon Q in Connectを利用する際、押さえておきたいサービスクォータまとめ
はじめに
Amazon Q in Connectを利用・運用する際、個人的に押さえておくべきと考えるサービスクォータをまとめました。
これらは実際の設計や運用において、特に注意を払うべきと感じた項目です。
Amazon Q in Connect のサービスクォータは、以下に記載の通り、上限緩和できない固定値です。
なお、利用用途や環境によって確認や考慮すべきランタイムクォータは異なるため、本記事はあくまでも参考情報としてご活用ください。
Amazon Q in Connect における各コンポーネントの関係性
1. Amazon Connect インスタンス
- 役割: コンタクトセンターの基盤となるサービス
- 概要: エージェントが顧客対応を行うためのプラットフォーム
- 関係: ドメインと関連付けられる
2. ドメイン(アシスタント)
- 役割: 実際にAI支援機能を提供するエンティティ
- 概要: エージェントからの質問に対して回答を生成する
- 関係: 単一のナレッジベースで構成される
- クォータ: アカウント全体で最大5個
3. ナレッジベース
- 役割: ドメインが参照する情報源
- 概要: FAQ、製品情報、手順書などのデータソース
- 関係: 1つのドメインにつき1つのナレッジベース
4. 統合(Integration)
- 役割: 外部データソースをナレッジベースに取り込む設定
- 概要: S3、Salesforce、ServiceNow、Zendesk、SharePoint Online、Web crawler等からのデータ統合
- 関係: ナレッジベースにデータを統合
関係図
Amazon Connect インスタンス
↕ (関連付け)
ドメイン(アシスタント)
↕ (1:1関係)
ナレッジベース
↕ (統合)
データソース(S3、Salesforce、ServiceNow等)
重要なポイント
- N:1関係: Connectインスタンス ↔ ドメイン(複数のConnectインスタンスが1つのドメインに関連付け可能、但し1つのConnectインスタンスは1つのドメインのみ)
- 1:1関係: ドメイン ↔ ナレッジベース(ドメインは単一のナレッジベースで構成)
- 複数データソース使用時: Amazon S3でデータを収集してからS3統合を使用することが推奨
この関係性を踏まえて、以下のサービスクォータを確認していきます。
確認すべきランタイムクォータ
以下は、特に重要だと考えるクォータです。
- アシスタント数 - 1アカウントあたりの最大ドメイン数
- アシスタントの関連付け - Connectインスタンスあたりの関連付け可能な最大ドメイン数
- データ統合数 - リージョンごとの作成可能なデータ統合数
- ナレッジベース数 - 1アカウントあたりの最大ナレッジベース数
- ナレッジベースの最大サイズ - データソース全体の容量制限
- ナレッジベースあたりのコンテンツ - データソース内のドキュメント数の上限
- ドキュメントあたりの最大サイズ - 個別ファイルの容量制限
アシスタント数
Q in Connectにおける「アシスタント」という用語は馴染みがないかもしれませんが、これは「ドメイン」を指します。
Connectインスタンスで Amazon Q を有効化するには、1つのドメインを使用する必要があります。
Amazon Q in Connect を有効にすると、Amazon Q in Connect ドメイン (単一のナレッジベースで構成されるアシスタント) が作成されます。ドメインを作成する際は、次のガイドラインに従います。
https://docs.aws.amazon.com/ja_jp/connect/latest/adminguide/enable-q.html#enable-wisdom-requirements
アシスタント数の上限は 5 つです。
つまり、1つのAWSアカウントでQ in Connectサービスを利用できるConnectインスタンスは最大5つまでです。上限緩和はできません。
複数の Connect インスタンスを運用している環境では、この制限に注意が必要です。
以下のコマンドでアシスタントは削除可能です。
// 1. アシスタント一覧
aws wisdom list-assistants
// 2. アシスタント削除
aws wisdom delete-assistant --assistant-id アシスタントID
アシスタントの関連付け
アシスタントの関連付けの上限は 1 つです。
これは、1 つの Connect インスタンスに関連付けられるドメイン(アシスタント)の数が最大 1 つであることを意味します。
つまり、1 つの Connect インスタンスで複数の独立したナレッジベースを持つことはできません。
この制限により、1つのConnectインスタンスで複数の独立したナレッジベースを持つことができない点に注意が必要です。
// 1. 現在の特定のConnectインスタンスとの統合関連づけを確認(IntegrationTypeがWISDOM_KNOWLEDGE_BASE)
aws connect list-integration-associations --instance-id <your-connect-instance-id>
{
"IntegrationAssociationSummaryList": [
{
"IntegrationAssociationId": "15c11290-c1b5-4eff-8e9a-74c61d580f25",
"IntegrationAssociationArn": "arn:aws:connect:ap-northeast-1:アカウントID:instance/3ff2093d-af96-43fd-b038-3c07cdd7609c/integration-association/15c11290-c1b5-4eff-8e9a-74c61d580f25",
"InstanceId": "3ff2093d-af96-43fd-b038-3c07cdd7609c",
"IntegrationType": "WISDOM_KNOWLEDGE_BASE",
"IntegrationArn": "arn:aws:wisdom:ap-northeast-1:アカウントID:knowledge-base/a772458c-e30c-4507-86ba-7e1575bea3cb"
},
{
// 2. 不要な統合関連づけを削除
aws connect delete-integration-association \
--instance-id <your-connect-instance-id> \
--integration-association-id <integration-association-id>
データ統合数とナレッジベース数
1アカウントあたりの最大ナレッジベース数は、10です。これは上限緩和不可です。
リージョンごとの作成可能なデータ統合数は10です。これは上限緩和可能です。
以下のコマンドで統合とナレッジベースは削除可能です。
//統合の削除
aws appintegrations list-data-integrations
aws appintegrations delete-data-integration --data-integration-identifier 統合名
//ナレッジベースの削除
aws wisdom list-knowledge-bases
aws wisdom delete-knowledge-base --knowledge-base-id ae697e40-9500-40c9-b007-05cab1de94c9
ナレッジベースの最大サイズとナレッジベースあたりのコンテンツ
「ナレッジベースの最大サイズが5GB」とは、すべてのデータソースの総ファイルサイズが最大5GBまでという制限です。
「ナレッジベースあたりのコンテンツが5000」とは、データソース内のファイル(ドキュメント)数が最大5000件までという制限です。
ナレッジベースでは、以下のデータソースを利用できます。
- Amazon S3
- Salesforce
- ServiceNow
- Zendesk
- SharePoint Online
- Web クローラー
残念ながら、ナレッジベースの現在の容量やコンテンツ数を直接確認するためのAPIは提供されていません。
そのため、データソースごとに個別に確認する必要があります。
例えば、S3 バケットをデータソースとして使用している場合は、バケットメトリクスの[合計バケットサイズ]と[オブジェクトの合計数]から確認できます。
Web クローラーを使用している場合は、各ページの Content-Length ヘッダーの値などからファイルサイズを推定し、クロールした URL の総数からコンテンツ数を把握するとよいでしょう。
ドキュメントあたりの最大サイズ
「ドキュメントあたりの最大サイズ」とは、データソースに保存された個々のドキュメントのサイズ上限のことで、1 MB に制限されています。これは、Amazon Bedrock ナレッジベースの上限である 50 MB と比較すると、かなり小さい値です。
この制限により、1MBを超えるファイルを取り込む場合は、分割するなどの対応が必要になります。
Q in Connect がサポートするファイル形式と上限は以下の通りです。
- HTML
- DOCX (Word文書)
- PDF ファイル
- TXT (プレーンテキストファイル)
詳細は以下のドキュメントをご参照ください。
ドキュメントサイズの確認方法として、S3バケット統合の場合、アップロード前のファイルサイズや、アップロード後に保存されたファイルからドキュメントサイズを確認できます。
その他の統合方法の場合、ファイルサイズを直接確認する方法は提供されていません。一部の統合方法では、ドキュメントをエクスポートすることでファイルサイズを確認できる可能性があります。
ナレッジベースには以下の3つの制限があります。
- 1ファイルのサイズ1MBの制限
- ナレッジベースあたりのコンテンツ数5000個の制限
- ナレッジベースの総サイズ 5GB (1MB × 5000個) の制限
これらの制限を超えるドキュメントを読み込む際、エラーを表示されず、そのドキュメントは単に学習に使用されません。
そのため、ドキュメントが実際にナレッジベースに取り込まれたかどうかを検証することで、間接的にサイズ制限を超えたかどうかを確認できます。
特に気にしなくてもよいランタイムクォータ
以下のクォータは、一般的な利用シナリオでは上限に達することが少ないため、通常はあまり気にする必要がありません。
- テンプレート関連のクォータ
- API のレート制限(RateLimit)
テンプレート関連
メッセージテンプレートは、E メールや SMS で頻繁に送信するメッセージを保存・再利用できるコンテンツと設定のセットです。
リッチテキスト書式、パーソナライズ属性、添付ファイルなどの機能を含め、エージェントの業務効率化に役立ちます。
以下のテンプレート関連のクォータは、実は Q in Connect の機能そのものとは直接関係ありません。これらは Amazon Q in Connect API を利用しているため、同じクォータ一覧に記載されているだけです。
- メッセージテンプレートあたりのバージョンの最大数
- E メールメッセージテンプレートあたりの添付ファイルの最大数
- E メールメッセージテンプレートの添付ファイルあたりの最大サイズ
- E メールメッセージテンプレートの最大文字数
- SMS メッセージテンプレートの最大文字数
これらの機能を利用しない場合、クォータを意識する必要はありません。
API のレート制限(RateLimit)
Amazon Q in Connect の API には、以下のようなレート制限があります。
- 基本的にすべての API:10 TPS(1秒あたり10リクエスト)
- DeleteQuickResponse と SearchQuickResponses:20 TPS(1秒あたり20リクエスト)
実際の運用では、1秒間に10回以上 AI エージェントや AI プロンプトを作成・削除するようなシナリオはほとんど考えられません。そのため、通常の利用では API のレート制限に達することはないでしょう。
ただし、Connect フロー上で AI エージェントを切り替える場合に使用される UpdateSession API については、高トラフィック環境では注意が必要かもしれません。特に受電や発信数が多いコンタクトセンターでは、このレート制限に近づく可能性があります。
UpdateSession API を使い、Connect フロー上で AI エージェントを切り替える方法は以下の記事をご参照ください。