[AWS Deadline Cloud] Windows+Maya 環境における CMF (Customer-Managed Fleets) を使用したクラウドレンダリング [1/3]

[AWS Deadline Cloud] Windows+Maya 環境における CMF (Customer-Managed Fleets) を使用したクラウドレンダリング [1/3]

AWS Deadline Cloud の Customer-Managed Fleet (CMF) を使用して、Windows OS 上で Maya プロジェクトのレンダリングをクラウド上で実行する方法を解説します。第 1 回となる本記事では、Deadline Cloud コンソールでの基本的なセットアップ手順を紹介します。

対象読者

  • クラウドレンダリングに興味がある方
  • AWS Deadline Cloud の基本を理解し、より高度な制御を求める方
    • Deadline+Blender 環境で Deadline の基本的な操作を解説する記事については こちら
  • Customer-Managed Fleet (CMF) を使用してカスタマイズされたレンダリング環境を構築したい方
  • Windows OS 環境で Maya を使用している方
  • 自社のインフラストラクチャを AWS 上で管理・活用したい方

参考ページ

検証環境 (2025.4 時点)

ローカル PC

OS: Windows 11 (23H2)
Maya: 2025.3
DeadlineCloudMonitor: 1.1.5
DeadlineCloudSubmitter: 2025.02.06.0

EC2

OS: Windows Server 2025 Base
Maya: 2025.3
Worker Python: 3.11 (Maya 2025 同梱の mayapy も 3.11 のため、互換性の問題を避けやすい)
deadline-cloud-worker-agent: 0.28.5
deadline-cloud-for-maya: 0.15.4
openjd-adaptor-runtime: 0.8.2 (Maya 用 Worker で必要)
pywin32: 308 (Maya 用 Worker で必要)

Customer-Managed Fleet (CMF) とは

Customer-Managed Fleet (CMF) は、AWS Deadline Cloud において、ユーザー自身がコンピューティングリソースを管理するフリートタイプです。 CMF では、 EC2 インスタンスやオンプレミスのマシンなど、自分で用意したコンピューティングリソースをワーカーとして登録し、レンダリングジョブを処理させることができます。これにより、特定のハードウェア要件や既存のインフラストラクチャに合わせた柔軟なレンダリング環境を構築できます。

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SMF と CMF の違い

特徴 Service-Managed Fleet (SMF) Customer-Managed Fleet (CMF)
リソース管理 AWS が自動的に管理 ユーザーが管理
スケーリング 自動的にスケールアップ・ダウン ユーザーが手動で設定・調整
インスタンスタイプ 事前定義されたタイプから選択 任意の EC2 インスタンスタイプを選択可能
カスタマイズ性 限定的 高い(OS やソフトウェア構成を自由に設定可能)
管理の手間 小さい 大きい
オンプレミス統合 不可 可能(オンプレミスマシンをワーカーとして追加可能)

CMF を選ぶべき状況

以下のような状況では、SMF よりも CMF を選択することが適切です:

  1. 特定のハードウェア要件がある場合

    • 特定の GPU タイプ(NVIDIA A100 など)が必要
    • 大量のメモリや高速なストレージが必要なレンダリングタスク
  2. 既存のインフラストラクチャを活用したい場合

    • すでに所有している EC2 インスタンスを利用したい
    • オンプレミスのレンダリングマシンをクラウドと統合したい
  3. 高度なカスタマイズが必要な場合

    • 特定のOSバージョンやカーネル設定が必要
    • 特殊なドライバーやライブラリをインストールしたい
    • 独自のセキュリティ設定を適用したい
    • Maya に追加モジュールを導入する必要がある場合

CMF のセットアップ手順

Maya 環境で CMF を使用してクラウドレンダリングを行うためのセットアップ手順は、以下の 3 段階に分かれます。

  • Deadline Cloud コンソールで設定を行う
  • EC2 インスタンスを作成して環境を作成し、Deadline Cloud にワーカーとして登録する
  • ローカル環境でサブミッターの設定を行う

本記事では第 1 回として、AWS Deadline Cloud コンソール上での設定手順を紹介します。 AWS Deadline Cloud コンソール のページで、Deadline Cloud の設定を行います。プロジェクトの単位である ファーム を作成し、ファーム下に キューフリート を作成します。 キュー は、レンダリングジョブの優先順位付けと順序管理を行う仕組みです。 フリート は、ワーカーの集合体を指します。

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モニターの作成

AWS Deadline Cloud コンソール のページにいき、左上のハンバーガーメニューを開いて ダッシュボード を選択します。 ※ トップページの Deadline Cloud をセットアップ は Service-Managed Fleet (SMF) 向けの設定手順となるため、今回使用しません。

画面上部のバーの モニター設定に移動 を選択し、任意の名前を付けて作成します。
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ファームの作成

AWS Deadline Cloud ダッシュボードファーム > Set up farm > スタンドアロンファームをセットアップ を選択します。任意の名前を付けてファームを作成します。

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アクセス管理 > グループを追加 を選択し、モニターを通してファームにアクセスできるユーザーを追加します。ユーザー/グループが未作成の場合は、 IAM アイデンティティセンター でユーザー/グループを作成してください。

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Storage profiles > ストレージプロファイルを作成 を選択し、ストレージプロファイルを作成します。 オペレーティングシステムWindowsパス名DeadlineCloudストレージタイプLocalファイルシステムの場所のパスC:\mnt\deadline-data とします。

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フリートの作成

Fleets > フリートを作成 からフリートを作成します。任意の名前を設定し、フリートタイプカスタマーマネージドストレージプロファイル先に設定したストレージプロファイル を設定します。

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ワーカー機能として Windows を選択します。他はデフォルトとして構いません。

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フリートを作成後、詳細画面を開き、ロール ARN をコピーしておきます。このロール ARN は、後のシークレット設定 (認証情報取得許可) で使用します。必ず控えておいてください。

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キューの作成

キュー > キューを作成 からキューを作成します。任意の名前を設定し、使用する S3 バケットを設定します。今回は S3 バケットを新しく作ります。すでにある S3 バケットを使用したい場合はそうしてもかまいません。 カスタマーマネージドフリート (CMF) との関連付けを有効にする の項目では、 有効にする を選択します。

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run-as ユーザー では キュー設定ユーザー を選択し、 ユーザー設定として実行 項目では Windows 認証情報の追加 を Active にして認証情報を追加します。これは、 この後の手順で作成するワーカーインスタンスにログインできるようにするための設定 です。ユーザー名 には deadline-job-user と入力します。 パスワード ではシークレットを作成して選択します。

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シークレットを作成 ボタンをクリックして、 AWS Secrets Manager コンソールに移動します。シークレットには、次の構造のキーと値のペアとして Windows ユーザーパスワードが含まれている必要があります。

{ password: <WINDOWS_USER_PASSWORD> }

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シークレットを作成したら、キュー作成画面に戻り、 パスワード に作成したシークレットを設定してください。

フリートを関連付ける - オプション で、 先に作成したフリート を選択します。

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シークレットリソースポリシーを編集 のボタンを押下し、 「リソースのアクセス許可」を編集します。以下のポリシーを追加し、YOUR_FLEET_ROLE_NAME の部分を実際のロール名に置き換えてください

{
  "Version": "2012-10-17",
  "Statement": [
    {
      "Effect": "Allow",
      "Principal": {
        "AWS": "arn:aws:iam::881490116279:role/YOUR_FLEET_ROLE_NAME"
      },
      "Action": "secretsmanager:GetSecretValue",
      "Resource": "*"
    }
  ]
}

これにより、Deadline Cloud フリートがワーカー起動時に認証情報を取得できるようになります。リソースのアクセス許可を編集後、キュー作成画面に戻ります。

Allowed storage profiles先に作成したストレージプロファイル を追加します。ファイルシステムの場所には DeadlineCloud を設定します。

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デフォルトの Conda キュー環境 の 「ジョブによってリクエストされた Conda パッケージをインストールする Conda キュー環境を作成します。」 の チェックを外します

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他の設定項目はデフォルトのままで問題ありません。この設定でフリートを作成します。

AWS Deadline Cloud コンソールでの設定は、これで以上となります。

おわりに

本記事では、AWS Deadline Cloud を使用し Windows+Maya のクラウドレンダリングを実現する方法について、 AWS Deadline Cloud コンソール上での設定手順を紹介しました。次回以降の記事では 残りの下記手順についても解説していく予定です。

  • EC2 インスタンスを作成して環境を作成し、Deadline Cloud にワーカーとして登録する
  • ローカル環境でサブミッターの設定を行う

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