AWS ParallelCluster 3.16.1 がリリースされ Slurm の CVE 問題が解消したので確認してみた
はじめに
バージョン 3.16.0 以前のすべての AWS ParallelCluster が Slurm の 8 件の CVE の影響を受けます。修正版の Slurm 25.11.8 に切り替わった ParallelCluster 3.16.1 が 2026 年 9 月 9 日にリリースされました。クラスターを作成して確認してみました。
バージョン 3.16.0 以前のクラスターで Slurm のバージョンをインプレースアップグレードする方法を試しました。
確認結果
3.16.1 の pcluster CLI で新規作成したクラスターで確認しました。パッチ提供の扱いは公式ドキュメントより。
- ヘッドノードの
sinfo -Vは 25.11.8 だった - コンピュートノードの
slurmdも 25.11.8 だった - 稼働中のクラスターを 3.16.1 へ移行する仕組みはなく、パッチバージョンの差でもクラスターの作り直しになる
- 修正版のパッチが出るのは最新のマイナーバージョンだけで、3.15.x 以前には出ない
新規でクラスターを構築するなら最新版を使ってください
ParallelCluster 3.16.1 で作成したクラスターは、今必要とされている Slurm のバージョン 25.11.8 が入った状態で立ち上がります。ヘッドノードで Slurm をソースからビルドし直す作業が必要ありません。新規でクラスターを構築する場合は最新版をご利用ください。
ParallelCluster 3.16.1 の変更点は Slurm のバージョンだけ
ParallelCluster のバージョンは 3 つの数字で、2 つ目がマイナー、3 つ目がパッチです。3.16.1 は 3.16 系のパッチリリースにあたります。リリースノートに書かれた変更点は 1 行だけです。
Upgrade Slurm to version 25.11.8 (from 25.11.6).
検証環境
| 項目 | 値 |
|---|---|
| リージョン | ap-northeast-1 |
| ParallelCluster | 3.16.1 |
| OS | Ubuntu 24.04 |
| ヘッドノード | t3a.small |
| コンピュートノード | t3a.small(MinCount 0 / MaxCount 2) |
| Slurm アカウンティング | なし |
| ログインノード | なし |
前回、ソースコードからビルドする都合でヘッドノードのスペックは考慮しました。今回はビルドが要らないのでヘッドノードを大きくする必要はなくt3a.small にしました。クラスター設定ファイル parallelcluster-3161-release-cluster.yaml は次のとおりです。ヘッドノードとコンピュートノードの両方に SSM で接続するため、AmazonSSMManagedInstanceCore を付けています。サブネット ID は環境に合わせて置き換えてください。
クラスター設定ファイル
Region: ap-northeast-1
Image:
Os: ubuntu2404
Tags:
- Key: Name
Value: cluster-v3.16.1-parallelcluster-3161-release
HeadNode:
InstanceType: t3a.small
Networking:
ElasticIp: false
SubnetId: subnet-029f0fb0acc64043d
LocalStorage:
RootVolume:
Size: 45
Encrypted: true
VolumeType: gp3
Iops: 3000
Throughput: 125
Iam:
AdditionalIamPolicies:
- Policy: arn:aws:iam::aws:policy/AmazonSSMManagedInstanceCore
Scheduling:
Scheduler: slurm
SlurmSettings:
ScaledownIdletime: 5
SlurmQueues:
- Name: queue1
ComputeResources:
- Name: compute1
Instances:
- InstanceType: t3a.small
MinCount: 0
MaxCount: 2
ComputeSettings:
LocalStorage:
RootVolume:
Size: 45
Encrypted: true
VolumeType: gp3
Iops: 3000
Throughput: 125
CapacityType: ONDEMAND
Networking:
SubnetIds:
- subnet-0897827eb4d8cd2fe
Iam:
AdditionalIamPolicies:
- Policy: arn:aws:iam::aws:policy/AmazonSSMManagedInstanceCore
Monitoring:
Logs:
CloudWatch:
Enabled: true
RetentionInDays: 180
DeletionPolicy: "Delete"
Dashboards:
CloudWatch:
Enabled: false
クラスターを作成して Slurm 25.11.8 を確認する
3.16.1 でクラスターを作成する
実行前に pcluster version が 3.16.1 を返すか確認しておきましょう。
pcluster create-cluster -n pcluster-3161-verify -c parallelcluster-3161-release-cluster.yaml
最終的にクラスターがどのバージョンで作られたかは describe-cluster コマンドから確認できます。
pcluster describe-cluster -n pcluster-3161-verify
{
"version": "3.16.1",
"clusterStatus": "CREATE_COMPLETE"
}
作成にかかった時間はおよそ 9 分でした。
ヘッドノードの Slurm は 25.11.8 であればよい
ヘッドノードには SSM で接続します。sinfo -V コマンドの結果からヘッドノードの Slurm は 25.11.8 であることが確認できました。
sinfo -V
slurm 25.11.8
ParallelCluster は AMI のビルド時に使った Slurm のソースツリーを残しています。パスは /etc/chef/local-mode-cache/cache 配下です。
ls -d /etc/chef/local-mode-cache/cache/slurm-slurm-*
ParallelCluster 3.16.1 では、25.11.8 のツリーが 1 つあるだけでした。前回インプレースアップグレードした 3.16.0 のクラスターではここが slurm-slurm-25-11-6-1 でそれを入れ替える作業でした。
/etc/chef/local-mode-cache/cache/slurm-slurm-25-11-8-1
コンピュートノードも 25.11.8 であればよい
コンピュートノードはジョブを投入して起動させます。起動中にバージョンを確認したいため、すぐには終わらないように sleep するだけのジョブにします。
sbatch --wrap "sleep 600" -N 1
scontrol show node の Version が 25.11.8 なら期待どおりです。
scontrol show node queue1-dy-compute1-1
NodeName=queue1-dy-compute1-1 Arch=x86_64 CoresPerSocket=1
NodeAddr=10.0.3.66 NodeHostName=queue1-dy-compute1-1 Version=25.11.8
srun 越しに sinfo -V を実行しても、ヘッドノードから NFS 共有された /opt/slurm のバイナリを実行するだけです。コンピュートノードで動いている slurmd のバージョンは、SSM で接続して起動ログで確かめます。
sudo grep "slurmd version" /var/log/slurmd.log | tail -n 1
Slurm のバージョンが 25.11.8 であることが確認できました。
[2026-09-09T02:09:08.006] slurmd version 25.11.8 started
3.16.0 以前のクラスターはどう対応すればよいのか
稼働中のクラスターを 3.16.1 へ移行する仕組みはありません。マイナーバージョンだけでなく、3.16.0 から 3.16.1 のようなパッチバージョンの差でもクラスターの作り直しになります。
Currently each AWS ParallelCluster minor version is self-contained along with its
pclusterCLI. To move a cluster to a new minor or patch version, you must re-create the cluster using the new version's CLI.出典: Best practices: moving a cluster to a new AWS ParallelCluster minor or patch version
では 3.15.x や 3.14.x に修正版のパッチが出るかというとそこは期待できません。パッチリリースが提供されるのは、EOSL(End of Support Life)を迎えていないリリースのうち、最新のマイナーバージョンだけです。今回のパッチも 3.16.1 しかリリースされていません。
For critical issues, AWS provides fixes through patch releases, but only for the latest minor versions of releases that have not reached EOSL.
サポート中のバージョンの EOSL は次のとおりです。
- 3.13.x: 2026 年 9 月 30 日
- 3.14.x: 2027 年 3 月 29 日
- 3.15.x: 2027 年 9 月 23 日
- 3.16.x: 2028 年 2 月 20 日
EOSL を過ぎたバージョンを使っている場合は、サポート対象のバージョンでクラスターを作り直すことが推奨されています。
作り直せるなら 3.16.1 で作り直すのが正攻法です。とはいえ、ユーザー環境の移行に時間がかかるといった事情もあります。その場合は公式 Wiki のインプレースアップグレード手順で Slurm だけを 25.11.8 に入れ替える方法があります。
手順は冒頭で紹介した前回の記事で試しています。リンクはもう一度貼っておきます。
まとめ
AWS ParallelCluster 3.16.1 でクラスターを作成しました。ヘッドノードとコンピュートノードの Slurm は、どちらも 25.11.8 で動いていました。3.16.1 の変更は Slurm のバージョンだけです。稼働中のクラスターを 3.16.1 へ移行する仕組みはなく、新しいバージョンを使うにはクラスターの作り直しが必要です。
おわりに
作り直せる環境なら素直に 3.16.1 で作り直すのがよさそうです。移行できない事情があればインプレースアップグレードを試してみてください。3.16.0 で Amazon Linux2 はサポートされなくなったので、どうしても Amazon Linux 2 使いたいケースはインプレースアップグレードするしかないですね。








