【レポート】AWS IoT で実現する IoT プラットフォーム構成と IoT データの活用(AWS-41) #AWSSummit
この記事は、4月26日に行われた AWS Summit Tokyo(2023)のセッション『AWS IoT で実現する IoT プラットフォーム構成と IoT データの活用(AWS-41)』のセッションレポートとなります。
セッション概要
IoTプラットフォームには、デバイスとのスケーラブルな形での接続、データの収集と保存、デバイスの管理や監視機能が必要です。さらに集められたデータを活用しビジネス価値を生む洞察を得るためには、データを分析するためのデータ分析基盤を構築する必要があります。そのためIoTプラットフォームの構築には一般的には高い実装/運用コストが発生します。AWS IoT ではそれらを実現する様々なサービスや機能がフルマネージドなサービスとして用意されており、低い実装/運用コストで IoT プラットフォームやデータ分析を実現できます。本セッションでは、IoT データからビジネス価値を生む洞察を得るために、どのような AWS IoT サービスを利用してどのようにシステムを構成すれば良いのか紹介します。
スピーカー
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
プロフェッショナルサービス本部
シニアIoTコンサルト
小林 嗣直 氏
セッション視聴
AWS Summit Tokyoの登録を行うことでオンデマンドで視聴可能です。(現地参加された方は改めての登録は不要です。)
登録済みの場合、以下から直接遷移できます。
レポート
IoT のトレンドとビジネス価値
- IoT市場におけるユーザー支出額5兆円
- 年間平均成長率(予測)9兆円
IoTから得られるビジネス価値・メリット
- リモートからのデバイス制御
- 外からの空調操作、ペットの餌やりによる利便性の向上など
- 情報のデータ化・見える化
- 一番重要な点ではないかと考える
- 伝統芸能や古来のやり方でやってきたものは、経験と勘でやってきた領域
- 例えば、日本酒の造り酒屋でみると職人の経験で判断
- センサーでデータを見える化・定量化してデータで判断することで誰でも一定の品質をクリアしていくができるようになる
- データ分析・機械学習
- 工場の機器の故障の予兆検知
- 振動の時系列データに対して機械学習を適用して検知する
- 故障が起きそうな部品を予め交換して生産性を上げていく
今後成長が見込まれる分野
- 産業とエネルギーの分野
- 日本は製造業が多い
- しかしIoT化されているのは限定的なので、これから工場のIoT化が見込まれる
- コンシューマプロダクト
- スマート家電
- 家電のログを収集して品質を管理する取り組み
- 自動車産業
- 自動運転、コネカなどに代表される位置情報、車の操作情報を損害保険サービスと連携させるなど
- 農業・漁業
- 温度湿度を管理作物を管理
- 養殖池にセンサーを設置して、魚の生育度合いをみながら給餌を調節
- 医療・ヘルスケア
- バイタルデータ管理、お年寄りの見守りサービス
IoT導入の課題
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- 技術の範囲が広い
- 範囲が広く総合格闘技と言われる
- デバイス、ネットワーク、サーバ、データベース、機械学習など広い範囲のスキルが必要
-
- スケーラビリティ
- IoTのユースケースでは、何万何十万台のデバイスがつながるのでスケーラブルなサーバ環境が必要
-
- セキュリティ
- 今までつながっていなかったようなデバイスがネットに繋がるようになることで引き起こされる問題
- 暗号化、認証認可をサポートしていく必要性
IoTプラットフォーム構築に必要な要素
- データ活用
- AI・MLを適用、インテリジェントな洞察
- 収集と管理
- データ収集
- 多数のデバイスの制御・管理 エッジデバイス
- デバイスとクラウドを接続するためのソフトウェア
サポートする技術範囲が広い
- IoTが必要とする技術範囲は広いが、AWS ではデバイスからデータ活用まで幅広いサービスを展開
- 各種サービスを組み合わせてクイックかつ容易に構築できる
AWS IoTを採用する理由
- スケーラビリティとセキュリティ
- これらはサービス提供において差別化をもたらすものではない
- 差別化に直結しない部分は、AWSにオフロードしてサービス価値の想像に注力できる
IoTのユースケースと構成例
- 代表的なユースケース
- デバイスとクラウドの接続
- デバイスのコントロール
- データの可視化
- データ分析・機械学習
デバイスとクラウドの接続
- デバイスからのデータ転送ではスケーラブルかつセキュアに接続できる
- AWS IoT Core のルールエンジンで後段のAWSサービスに連携する
- 用途に応じてデバイス側の実装を選択
- デバイスソリューションの選択
- FreeRTOS
- AWS提供のライブラリで簡単にAWSと連携できる
- AWS IoT Device SDK
- アドオンでAWSに連携できる
- AWS IoT Greengrass
- 高性能なプロセッサを持つデバイス向け。デバイスでコンテナ動かしたり、機械学習の推論を実行など
- AWS IoT Core
- サーバの管理が不要で大量デバイスとスケーラブルに接続
- 100万台規模の接続実績
- セキュリティ
- 認証認可とデータ保護
- デバイス証明書をデバイス側に焼き込んで証明書をもとに認証
- どんなリソースにアクセスできるか(認可)は証明書に設定するポリシーで制御する
- 証明書が漏洩しても個別に無効化できる
- TLS1.2による通信の暗号化
- ファームウェアの脆弱性が出てもセキュアにアップデートする仕組みもある
デバイスをコントロールするユースケース
- ユーザーがモバイルデバイスやスマートスピーカー、WebUIなどから命令(照明つけて)
- IoT Coreからデバイスにコマンドを送信してデバイスが処理を実行
- 制御する方法は2パターン
- MQTTトピックによる制御
- AWS IoT Shadowによる制御
- いずれもIoT Coreにコマンド投げるまでは一緒
- MQTTの場合は、階層構造のトピックにコマンドを投げる形になるので並列で複数デバイスにコマンドを投げるような場合にマッチする
- AWS IoT Shadowの場合
- デバイスの仮想状態を保持して差分を解消する形で制御する
- 状態を持っている時間がある程度継続するようなモノの制御に利用
- アイリスオーヤマ様の事例で、音声で制御できるサーキュレータなどに利用されている
- 風量を3にする、4にするという使い方で「風量」の状態を持つ
データ可視化
- アプリケーションでデータ化する場合
- 適切なデータベースにAPI経由でアクセス
- ニアリアルタイムな可視化
- ストリームを扱うAmazon Kinesis Data Firehose 経由で Amazon OpenSearch Serviceに入れて可視化
- 事例として牛の行動をセンシング、モニタリングしたものがある
- 繁殖業務には発情してるかどうかを判別するのが重要
- 目視でやっていたが限界があったのでAIで検知できるようにした
データ分析
- データレイクとしてS3に保存
- ETL処理をLambdaやGlueで実施
- 小規模ならLambda、中規模以上ならGlueを利用するなど使い分け
- 分析はAthena や Redshiftにデータ格納して実行
- 可視化はユーザーの好みなどによるので、QuickSightやユーザーの好みに合わせたBIツールを活用
- AWSが提供しているしている「AWS コネクテッドモビリティソリューション」が参考になる
- フリート(車両)管理
- 車の走行履歴、車のファームウェアの一覧を管理
- 「このユーザーは運転が洗い」「どんな経路をよく使ってるのか」といった分析ができる
機械学習
- データを貯めるまではデータ分析と同じ
- Amazon SageMakerで機械学習に特有なワークフローを実行
- モデルのトレーニング、モデルを本番にデプロイして推論、判定させる
- データ準備、構築運用まで機械学習に必要なワークフローを網羅している
- 機械学習においてはモデルの改善などにおいて反復的なプロセスになることが多い
- そのための時間の省力化のためにSageMakerでツールを提供
産業設備における構成例
- AWS IoT SiteWise にデータ集約してS3に貯める
- Amazon SageMakerでモデルを構築、モデルをデバイスに配布して推論
- 工場のタクトタイム内に推論終了の制約がある場合は、モデルをデバイスに配布してエッジで推論させる
- 油圧メーカーの事例
- AWS IoT Greengrassでエッジ推論しクラウド推論も実行
- エッジでの短期の故障判定とクラウド上での長期の故障判定で推論を使い分けされている
最後に
AWS では 汎用的なIoTサービスの他に業界に特化した各種サービスや、機械学習やデータ分析など利用目的別のサービスも多くあります。 これらをうまく組み合わせることで効率的にシステムを構築することができるようになるというのは、他のセッションやイベントでもよく紹介される話だと思います。 しかし改めて本セッションを聴講してみて、IoT 関連サービスや周辺サービスも多岐にわたり「これから始めてみよう」と考えても、以前に比べて初期の学習コストが高くなっているように思いました。
このセッションでは、その触りになる部分を用途に応じて満遍なく説明されていましたので、自分たちがやりたいことをこれらの中から見つけて徐々に深ぼっていくようなアプローチが取れるのではないかと思いました。
ぜひ本セッションを参考にしつつ AWS を使った IoT の取り組みをスタートされてみてはいかがでしょうか?
以上です。