
【セッションレポート】クラウドストレージのコスト最適化戦略 - AWS ストレージの賢い活用法(AWS-05)#AWSSummit
はじめに
皆様こんにちは、あかいけです。
AWS Summit Japan 2025 の一日目で行われた、
「クラウドストレージのコスト最適化戦略 - AWS ストレージの賢い活用法」に参加してきました。
本記事ではそのレポートをお届けします。
セッション概要
タイトル :
クラウドストレージのコスト最適化戦略 - AWS ストレージの賢い活用法
概要:
AWS ストレージは、データ保存の柔軟性と拡張性を提供しますが、適切な設計とモニタリングがなされない場合、意図したコスト構造とならない可能性があります。
本セッションでは、AWS のオブジェクトストレージ (Amazon S3) とブロックストレージ (Amazon EBS) に焦点を当て、サービスの紹介と料金モデルから始まり、コスト最適化の実践的なアプローチ、機能、モニタリング方法を紹介します。
このセッションを通じて、クラウドストレージのコストの実践的な知見を得ることができ、利用者自身でコスト最適化が実施できるようにしていただけることを目標とします。
スピーカー :
榊原 直道
セッションレベル :
Level 300: 中級者向け
資料
AWS公式から資料や動画がアップされたら追記します。
レポート内容
本セッションについて
- セッションの対象者
- S3、EBSのコスト管理、最適化に課題感を持っているCCoE、FinOps、アプリケーション、インフラチーム、およびその責任を負う役職者
- セッションで話すこと
- S3、EBSのコストを最適化する実践的なアプローチ
- システム運用の改善を加速させるためのヒント
冒頭の挨拶
コスト最適化といえば?
全体のコストに占める割合が多く、
尚且つRI、SPなどコスト削減に直結しやすい以下サービスから取り組むことが多いかと思います。
- サービス
- EC2
- RDS
- コスト最適化
- RI / SP による割引
- 様々なインスタンスタイプ / クラス
- 動的なキャパシティ調整
一方Amazon S3、EBS のコストに関してはいかが?
前述のEC2やRDSに比べて、
以下の課題から後回しになることが多いのではないでしょうか。
- データに関する漠然とした不安
- データ可視化の欠如
- 運用負荷への懸念
- コスト最適化の手法がわからない
アジェンダ
- Amazon S3 コスト最適化アプローチ
- Amazon EBS コスト最適化アプローチ
- パフォーマンスがコストに及ぼす影響
- まとめ
Amazon S3 のコスト最適化アプローチ
- 課題:機能や種類は多いけど…
- データの使用頻度がわからない
- とりあえずスタンダードを使用
- 不要なデータの特定と削除が困難
- 結果:日々データとコストが増え続ける
S3 のコスト最適化パターン
S3でのワークロードは大きく二つのパターンに分けられます。
- アクセスパターンが既知または予測できるデータ
- アクセスパターンが不明または変化しているデータ
既知のアクセスパターンにおけるデータ最適化
- ストレージコスト
- スタンダード → アーカイブの順に安くなる
- リクエストコスト
- アーカイブ → スタンダードの順で安くなる
長期保管データのコスト削減
- 適切なストレージクラスを用いることで、40% ~ 90% 削減可能
S3 ライフサイクルはコスト最適化に役立つ
オブジェクトの経過時間に応じてストレージクラスを変更する
-
S3 ライフサイクルのフィルターとアクション
- きめ細かいルールを設定可能
- オブジェクトサイズフィルター
- 以前のバージョンの数
-
オブジェクトサイズフィルター
- オブジェクトサイズによってストレージコスト差分が移行コスト差分を相殺するまでの時間が異なる
- 大きいオブジェクトだと、相殺までの期間が短い
- 小さいオブジェクトであれば、移さない選択もあり
- S3 intelligent-Tiering
- アクセスパターンが予測不可、また変化する場合に有効
- 3 つのアクセス階層のコストを自動的に最適化する
- アクセスがなければ深い階層に
- アクセスがあれば浅い階層に
- プランの比較について
S3 コスト最適化のパターンまとめ
- アクセスパターンが既知または予測できるデータ
- S3ライフサイクルルール
- アクセスパターンが不明または変化しているデータ
- S3 intelligent-Tiering
S3 Storage Lens
- S3 コンソール上で利用できるダッシュボード
- 組織全体の可視性
- プランは Free、Advance
EBS のコスト最適化アプローチ
- 課題:オンプレからリフト&シフトしたけど…
- とりあえずオンプレと同じ容量
- gp2 がたくさん残っている
- 不要なボリューム、スナップショットが管理できていない
- 結果:コストメリットを感じられない
ボリュームタイプ
EBSには様々なボリュームタイプが存在し、
システムの要件に応じて適切なボリュームタイプを選択する必要があります。
- SSD
- 汎用 SSD ボリューム
- プロビジョンド IOPS ボリューム
- HDD
- スループット最適化HDD
- コールドHDD
EBS バックアップサービスについて
EBSのバックアップには以下二つのサービスが主に利用されます。
これもサービスの特性に合わせて適切に選択する必要があります。
- DLM
- AWS Backup
ストレージの柔軟性を活用:Elastic Volumes
EBSの根幹を支えているのは、名前にもなっているElastic Volumesという考え方です。
EBS のコスト最適化について
EBSのコスト最適化にあたり活用できるサービスとして、以下の二つがあります。
またEBS以外のサービスにも対応しているため、すでにご利用されている方も多いかと思います。
-
Cost Optimization Hub
- Organations 全体のコスト最適化の機会を特定できる
- アカウント、リージョン全体での最適化をレコメンド、フィルタリングや集約、一覧表示が可能
-
AWS Trusted Advisor
- コスト最適化、セキュリティ、パフォーマンス、耐障害性、サービス制限、
運用上の優秀性に関するベストプラクティスの提供
- コスト最適化、セキュリティ、パフォーマンス、耐障害性、サービス制限、
パフォーマンスがコストに及ぼす影響
ストレージのパフォーマンスはコストにとって重要
- コンピュートリソースは高価
- ストレージのボトルネックが結果的にコンピューティングリソースのコスト増につながる
- 例:Spark ワークロードを 2 倍高速 → 実行時間が半減するためコンピューティングリソースのコストも半減
S3のパフォーマンスについて
- リクエストのレイテンシーについて
- S3 リクエストのレイテンシー
- オーバーヘッド
EBSのパフォーマンスについて
- EBS の詳細なパフォーマンス統計の活用
- 最適な EBS ボリュームタイプを選択できる
まとめ
コスト最適化のために、まずはワークロードを理解する
- S3
- Storage Lens、ストレージクラス分析
- EBS
- 詳細なパフォーマンス統計
S3のコスト最適化
- アクセスパターンが既知または予測できるデータ:ライフサイクルルール
- アクセスパターンが不明または変化しているデータ:S3 intelligent-Tiering
EBSのコスト最適化
- Cost Optimization Hub、AWS Trusted Advisor を活用する
重要な思想
システムは作って終わり、ではなく長期運用の始まり
日々の改善、エンハンスメントが重要である
さいごに
私は普段の業務でお客様の環境を対象にコストアセスメントを行っているため、
本セッションでは実務に直結する貴重な知見を得ることができました。
特に印象的だったのは、ストレージコストを以下の観点で分類して考えるアプローチです。
アクセスパターンの分類:
- 既知または予測できるデータ → S3ライフサイクルルール
- 不明または変化しているデータ → S3 Intelligent-Tiering
これまで私は現状のアカウント利用状況を中心としたアセスメントを行うことが多く、「予測可能性」という観点が不足していたことに気づかされました。
実際のお客様環境では、ストレージの将来的な利用パターンが明確でないケースも少なくありません。
今回学んだフレームワークを活用することで、現状分析だけでなく、将来を見据えた長期的なコスト最適化提案ができるようになると感じています。
また当たり前ではありますが、「システムは作って終わりではなく、長期運用の始まり」という考え方はコスト最適化にも大きく関連していると感じました。
継続的な改善とモニタリングの重要性を改めて認識し、今後のお客様支援に活かしていきたいと思います。