【レポート】AWS Summit Osaka 2019 基調講演 #AWSSummit
こんにちは、青柳@福岡オフィスです。
大阪で初開催となった AWS Summit Osaka 2019 に参加してきました。
本記事では基調講演の内容をレポートしたいと思います。
セッション情報
- スピーカー (敬称略)
- ホストスピーカー
- アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 代表取締役社長 長崎 忠雄 氏
- ゲストスピーカー
- 京セラ株式会社 経営管理本部 経営情報システム部 副部長 藤田 正則 氏
- 株式会社琉球銀行 営業統括部 メディア戦略室 室長 伊禮 真 氏
- 株式会社ヌーラボ 代表取締役 橋本 正徳 氏
- セッション概要
アマゾン ウェブ サービス(AWS)は、「地球上で最もお客様を大切にする企業」であり、お客様の成功である「カスタマーサクセス」を 10 年以上徹底的に考え、使い続けて頂くためのよりよい新機能、新サービス、機能改善を行い、その約 95% がお客様からの意見や要望に基づいて実現されています。 革新的な進化を続ける IT を提供しお客様の多岐に渡る挑戦を支え続ける AWS が、なぜお客様から選ばれ続けられるクラウドであるのかという理由と、デジタライゼーションを実現しカスタマーサクセス(クラウドによりお客様の事業の差別化による成功)を起こすためのテクノロジーのトレンドを、お客様事例をまじえてご紹介します。
レポート
AWSJ長崎社長による基調講演
- AWS Summit
- 関西のお客様から大阪での開催を要望されていた
- Summitは全世界30カ国以上で開催
- お客様へ「学びの場」を提供するため
- クラウドの進化は著しいため、1年に1回のみのSummmit開催では足りないとも思っている
- AWSからのみではなく、お客様、パートナーからも話していただいている
- AWSの近況と成長
- 2019年第1四半期 売上 30.8 billionドル (3.3兆円)
- 年間成長率 41%
- 2006年にAWSを開始して、たった13年しかたっていない
- しかし、クラウドコンピューティングの進歩はすさまじい
- 全世界に広がるAWSのリージョン
- 21のリージョン、66のアベイラビリティゾーン
- 1のローカルリージョン (大阪)
- 4の建設中リージョン (ジャカルタ、バーレーン、ケープタウン、ミラノ)
- 150を超えるエッジロケーション
- アベイラビリティゾーン (AZ)
- リージョンには複数のAZがある
- さらに、AZは複数のデータセンターで構成されている
- AZによって、可用性の高い構成をとることができる
- オンプレミスの可用性の考え方からシフトする必要がある
- リージョン間はAWSが管理するネットワーク経由でセキュアに通信
- お客様の要望による機能の拡張
- 2008年は24の機能拡張
- 2018年は1957の機能拡張
- 他のクラウドベンダでこれだけの機能拡張ができているところはない
- それはなぜか? お客様と会話し、要望をサービス化するから
- 多くのお客様の要望により機能拡張が行われ、新規のお客様は多くのサービスを利用することができる、というサイクル
- お客様のアイデアをクラウドで実現
- Airbnb、Pinterest、Uberなど、新しいアイデアをAWSを使って実現
- 以前はアイデアの実現には資本が必要だったが、クラウドのおかげで資本がなくてもアイデアを実現可能になった
- さまざまな業種の企業がさまざまなワークロードをAWSで稼働させている
- 日本でのクラウドの広がり
- 日本政府が「Cloud by Default」を打ち出した
- これにより、民間企業のクラウド加速が期待される
- 日本で数十万のお客様がAWSを利用している
- スタートアップ企業 (メルカリ、SanSan、etc.)
- エンタープライズ企業 (MUFG、みずほ銀行、etc.)
- 製造業 (キヤノン、AGC、etc.)
- など、あらゆる業種で利用されている
- 西日本のお客様
- 大阪ガス: エネファーム
- 近畿大学: 日本の大学で初となる、ほぼすべてのシステムをAWSで稼働
- 毎日放送: ビデオオンデマンドを3カ月で構築
- AWSは西日本のお客様を支援していきたい
- 今年12月には大阪オフィスを拡張予定、セミナーなどを開催
- あらゆる方に学びの場を
- TOKYO AWS LOFT: AWSのスペシャリストが常駐してお客様の疑問をリアルタイムで解決
- DEV DAY: デベロッパー向け最先端テクノロジーの学びの場、2019年も10月に開催予定、ライブ配信もあり
- Cloud Express Roadshow: AWSパートナーと一緒に全国で開催 (7月~)
- AWS INNOVATE: オンラインで学習することができる (次回は10月を予定)
- 地方におけるクラウド
- クラウドの決定的な違いは、必要なときに即座に立ち上げられること
- いつ、どこにいても、やりたいことがすぐにできる
- だから、クラウドは大都市圏だけのものではなく、資金を持っている企業だけのものでもない
- 既に北海道から沖縄まで全国で利用されている
- しかし、これは序章に過ぎない、少子化が叫ばれる中で地域の活性化につなげる
- IT人材の不足と育成
- イノベーションを起こすためにテクノロジーは不可欠
- しかし、経産省の予測では今年をピークにIT人材は減少
- 将来の市場活性化・市場改革のためにテクノロジーに関わる人材の育成が必要
- AWS認定によるデベロッパー、プリセールスの育成支援を行ってきたが、それだけれは足りない
- 学生向けに「AWS educate」を日本でも開始
- 早稲田大学、近畿大学、九州大学などの協力を得て、日本では3500人以上の学生が参加
- ただ教えるだけではなく、学生の学びたい目標に応じた教育を提供(例えばAI分野など)
- 学生に学んでもらい、最終的には企業とのマッチングができればよい
- デジタライゼーション (デジタル化)
- 企業のトップと話すときにデジタル化の話題が出ないことがない
- 経営者は、デジタル専門部署の開設や、人材のアサインを行っている
- AWSは数年来にわたってデジタル化を支援してきた
- そこから学んだことは「デジタライゼーションとはソフトウェアによるビジネス価値の最大化である」ということ
- お客様のニーズはなにか? ニーズにできるだけ早いサイクルで答えていく、これが価値の最大化
- 従来のハード主体の考え方から、ソフト主体の考え方にシフト
- デジタライゼーションの事例
- Netflix
- 従来はDVDなどのレンタルが主体だったが、2010年前後にデジタルにシフト
- 2010年にはビデオ配信はまだ珍しかったが、今では当たり前になっている
- ほぼすべての基盤がAWSで稼働している
- Capital One
- 7000万の顧客を持つ金融機関
- CIO「ITを買う企業から、ソフトウェアを開発する企業へと変革」
- 2010年はソフトエンジニアはITエンジニア全体の40%だったが、2018年は95%にもなった
- ソフトウェアエンジニアを採用し、クラウドを採用することで、人材と会社カルチャーを変革し、デジタル化を推進
- 従来の企業がデジタル化するには、一夜で変わるわけではない
- トップの考え方の変革、人材採用や育成の変革が必要
- これらにAWSはさまざま面で支援ができる
- Netflix
- 情報爆発とユーザエンゲージメント
- 膨大な情報が加速度的にアップロードされ、絶え間なく満足度が求められる
- クラウドの登場でIT、IoTを開始するしきいが下がったため、さまざまなビジネスへの導入が広がっている
- 交通、エネルギー、リテール、家電、ヘルスケア、農業
- 新しいサービスは皆さんにも潜んでいる
- Amazonのビジョン「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」
- リアル店舗を持たず、インターネット上でお客様の要望を掴み、サービスを変えてきた
- サービスはお客様の要望からスタートするものであり、我々が作りたいものを作るわけではない
- Amazonが始めた電子書籍やAWSなどのサービスは、当初は疑問に思われていたが、今や世の中に受け入れられ評価されている
- AWSの考え方は、従来のトラディショナルなITの会社とは全く異なる
- Amazon創業者ジェフ・ベゾス「顧客体験を高めるサイクル」
- 顧客体験の向上 →、顧客数の増加 → 出展者数の増加 → 品揃えの充実 → 顧客体験の向上・・・
- さらに、低コスト化 → 低価格化 による顧客体験の向上
- AWSもこのサイクルにのっとり、通算72回の値下げを行った (ここまで値下げを行った企業は他にない)
- さらに、使い易さの向上による顧客体験の向上
- Amazon Goの顧客体験、物を買う時に「並ぶ」というストレスをなくす
- カスタマーサクセスとAWS
- AWSはお客様中心で物事を考えている
- いまやインフラだけを提供する会社ではなく、さまざまなサービスを提供している (165以上のサービス)
- 金融機関のお客様のセキュリティ要望に応えるサービスを開発し、それがスタートアップなどのお客様へも提供される
- お客様が求めるものは柔軟性やスピード感、トライアンドエラーのサイクルをいかに速く回していくか
- カスタマーエンゲージメントを強化し、お客様、お客様の先にいるカスタマーの満足度を強化する
琉球銀行「クラウドの海へ」
- 「メディア戦略室」
- 伊禮氏: 昨年メディア戦略室を立ち上げ、初代室長に就任
- メディア戦略室の役割: 銀行内外のコミュニケーション
- マーケティング、コーポレートサイト運営、SNS、ブランディング、インナーコミュニケーション
- 新しい試みはメディア戦略室から始める
- 創立記念日のイベントで県内のラジオ局をジャック、頭取とAWSJ長崎社長とのトークでAWSを紹介した
- 今年の目標:RYUKYU PUNK DOG
- 琉球銀行のチャレンジ
- 新入社員の初仕事は「フラッシュモブ」
- キャラクターは「りゅうぎんロボ」
- 全社員(パート含む)にiPhoneを配布、社内SNSでコミュニケーションを図る
- 行員によるTV番組制作、「RYUGIN GOOD NEWS」良いニュースだけ流す番組
- 琉球銀行とAWSとの出会い
- 2014年、JAWS-UG沖縄に参加
- 参加して早速、上司にAWS導入を進言
- 関連IT会社の人もにもJAWS-UGへ参加してもらう
- 2017年、チャレンジング精神旺盛な川上頭取が就任
- AWSを招いて役員合宿を開催
- 役員陣にAWSという名前を覚えてもらった
- 2018年、コーポレートサイトをAWSへ移行
- 3か月でAWS導入を決定した
- 2019年、Amazon Connectに着手
- 60歳を超えた嘱託社員がAWSを独学
- ユーザー部門だけで1か月で構築
- 支店に掛かってくる電話を受電集中し、支店業務を軽量化した
- 2014年、JAWS-UG沖縄に参加
- エンゲージメントとは?
- ファンを増やすこと
- ファンから友達、友達から親友へ
- お客様の期待に応えること、それには「驚き(WOW)」がかかせない
- 今後のAWS活用
- Amazon Chime: 会議、研修システム
- メディア系サービス: 動画配信、動画解析
- Alexaの活用: 沖縄は車社会のためAlexaが有効なのではないか
- 「日本一大きな銀行にはなれないが、日本一チャレンジングで面白い銀行にはなれる」
- 必要なものは「少しの勇気」
AWSJ長崎社長による基調講演(続き)
- システムのクラウド移行
- サービス系システムのクラウド化
- 顧客体験の強化、UIの連続的改善により、顧客に選んでもらえるサービスにする
- 機械学習や深層学習など、最先端のテクノロジを駆使して、付加価値の高いサービスを提供する
- 基幹系システムのクラウド化
- システムの安定性、データの完全性を保ったままクラウドへ移行する必要がある
- サービス系システムのクラウド化
- クラウドジャーニーのステップ
- 1:計画
- AWSの検証を行う (費用面、運用効率、セキュリティ、パフォーマンスの観点)
- 計画を従来のような机上ベースのやり方で行うと、AWSの進歩に置いていかれる
- まず使ってみてどうか、で決める
- 2:ハイブリッド
- 一部のシステムを対象に、クラウドへの移行を行う
- この段階で人材への投資を行う、一人でも多くのクラウド人材が育てばクラウド化は加速する
- 重要なのはトップのコミットメントと、やりつづける勇気
- 3:拡張と最適化
- よりミッションクリティカルなシステムを対象に、クラウドへの移行を行う
- 移行済みシステムのアーキテクチャを、必要に応じてクラウドに最適化する
- 4:クラウドファースト
- ステップ1~3によりクラウドのシステム総保有コストが立証される
- 「クラウドファースト」の原則が全社に適応される
- 1:計画
京セラ「基幹システムのクラウド移行と今後の展望」
- 基幹システム刷新の背景とシステム構成
- 老朽化を刷新: オンプレミス → クラウド、COBOL → Java
- 変化の要求: ビジネススタイルの変化に応じた柔軟な対応が求められる
- 経営面: アメーバ経営の推進、グループ経営の強化
- AWSの採用理由
- グループ企業が世界中にあり、基幹システムはグローバル展開が前提
- インフラ管理手法として、CloudFormationやOpsWorksによるInfrastructure as Code、Immutal Infrastructureが提供されている
- MySQL、CentOSなどのOSSの活用による、コスト低減、柔軟性・俊敏性の向上
- 安く柔軟に素早く活用できることが決め手となった
- AWSを利用したことによるメリット
- 構築の自動化: 構築中、想定以上の検証環境が必要になったが、手間をかけずに対応することができた
- 自由度の高さ: システム要件の幾度とない変更に対して、OSSや各種サービスを組み合わせて実現することができた
- 今後の方針
- 更なるAWSの積極利用
- 新サービスの導入による生産性倍増、経営基盤の強化
AWSJ長崎社長による基調講演(続き)
- 移行に関しての企業からの課題
- データベース、Windows
- データベース
- 課題
- 費用が高く監査対応が面倒な商用DBから、OSSへ移行したい
- クラウド上でDBドリブンなアプリを開発したい
- 扱うデータ量のサイズがTB~PBと桁違いに増大している
- 高いスケーラビリティやレイテンシが求められる
- AWSではワークロードに応じた最適なDBが選択できる
- DBだけでなく、データウェアハウスAmazon Redshiftも提供
- Amazon Redshiftはリリース時からパフォーマンスが1000%以上向上
- より高い性能を求めるお客様のため、Amazon Redshift Concurrency Scalingをリリース
- 「Database Freedom」既存のDBに縛られない最適なテクノロジーを
- 課題
- Windows
- 10年前からAWS上でWindowsインスタンスが稼働している
- 143のインスタンスタイプ、50のイメージ
- Amazon FSx for Windows File Server (東京リージョンでも今年3月に提供)
- SMBフルコンパチブル、マネージド
- 最大10GB/sのスループットと1msecを切るレイテンシ
- PCI-DSS、ISO、HIPPAなどのコンプライアンス規約に準拠
- VMware on AWS
- お客様のニーズや状況に応じてフレキシブルに利用が可能
- 3つの利用パターン: データセンターの拡張、ディザスタリカバリ、クラウドへの移行
- さらなるカスタマーエンゲージメントへの挑戦
- デジタル時代のカスタマーエンゲージメントは、従来の手法では成功しない
- いつでも使える最新テクノロジー: ML、IoT、ブロックチェーン、コールセンター、AR&VR、サーバレス、カスタマエンゲージメント、データ可視化、コンテナ
- お客様と対峙して得られた要望をサービス化
ヌーラボ「Kubernetesによるマイクロサービス化」
- cacoo
- クラウドベースのダイアグラム作成ツール
- 世界から利用されている、国外比率は88%
- Kubernetesを採用したマイクロサービス化
- 分散した開発拠点: 福岡、ニューヨーク、アムステルダム
- マイクロサービス化により、機能ごとにソフトウェアを分割、開発チーム間の独立性を高める
- 成果: AWS構成図の自動生成機能を1.5か月で追加
- backlog
- 機能が豊富になり、複数チームで開発することになった
- アプリが大きくなり、ビルドデプロイの所要時間が増大、開発速度が低下
- cacooに続き、backlogもマイクロサービス化を検討
- Kubernetesの課題
- コントロールプレーンの管理が大変 (バージョンアップ、障害の検出・リカバリ)
- マネージドなKubernetesサービス「EKS」の採用により解決
AWSJ長崎社長による基調講演(続き)
- 機械学習 (ML)
- カスタマエンゲージメントが重要な時代にあって機械学習が注目されている
- AWSのミッション「すべての開発者に機械学習を」
- それを実現するために、さまざまなサービスをリリース
- AIサービス: Rekognition、Translate、Pollyなど
- 機械学習サービス: SageMaker
- インフラとフレームワーク: TensorFlowなど(フレームワーク)、EC2など(インフラ)
- SageMaker
- 機械学習における3つのステップ「開発」「学習」「推論」をまとめてサービス化
- 機械学習エンジニアが本来の仕事に注力できるように
- DeepRacer
- 楽しんで機械学習を学べる学習キット
- 仮想サーキットでの学習、実機による自動運転レース
- 機械学習やプログラミングの経験がなくても、学ぶことができる
- すぐに使えるAIサービス
- 画像解析・映像解析、言語処理、対話インターフェース
- これらはすべて、開発者が機械学習やAIの経験がなくても使える
- 新しいサービス
- Forecast: 精度の高い時系列予測サービス
- Personalize: リアルタイムのパーソナライズおよびリコメンデーション
- ドミノピザの事例
- Amazon Echoやスマートフォンアプリで注文
- 注文履歴によってパーソナライズされたリコメンデーション、リピーターを増やす
感想
基調講演では「機械学習」「IoT」「マイクロサービス」といったキーワードが頻出しましたが、これらが単に「流行りだから」ということではなく、何故AWSがこれらに注力するのかという強いメッセージ性が感じられました。
個人的にも興味があるこれらの分野について、今後もキャッチアップして行きたいと改めて思いました。