【レポート】AI/ML を活用し、害虫・ネズミと戦う IoT ソリューション ~害虫駆除業界のゲームチェンジャー~ #AWSSummit

AWS Summit Osaka 2019 のセッション「AI/ML を活用し、害虫・ネズミと戦う IoT ソリューション ~害虫駆除業界のゲームチェンジャー~」をレポートします
2019.06.29

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こんにちは、青柳@福岡オフィスです。

AWS Summit Osaka 2019 のセッションレポートをお送りします。

セッション情報

  • セッションタイトル
    • AI/ML を活用し、害虫・ネズミと戦う IoT ソリューション ~害虫駆除業界のゲームチェンジャー~
  • スピーカー (敬称略)
    • 環境機器株式会社 経営企画部 副部長 亀本 達也 氏
    • 株式会社アジャイルウェア プロダクトマネージャー 平川 隆二 氏
    • 株式会社アジャイルウェア エンジニア Kevin Fischer 氏
  • セッション概要

防虫コンサルティング商社の環境機器株式会社は、害虫駆除業界において AI/IoT 技術を活用した新サービスを開発、サーバーレスアーキテクチャで構築したシステム「ペストビジョン」を実用化。害虫・ネズミの生息調査業務の自動化・遠隔監視化により、問題発生時の早期発見・早期解決が可能、害虫駆除サービスを受ける側とのデータ共有も可能になる等、防虫管理の品質向上と大幅な省力化を実現。今回は、昨年秋の AWS Solution Days での発表から、よりテクニカル部分にフォーカスする。

レポート

環境機器株式会社 亀本氏: 会社、業務の紹介

  • 会社スローガン
    • 害虫駆除の仕組みをITで変える!
    • 害虫防除業界のビジネスにイノベーションを!!
  • アジェンダ
    • 会社紹介
    • 害虫駆除業界とモニタリングの課題
    • ペストビジョン紹介
    • アーキテクチャ
    • まとめ

会社紹介

  • 環境機器株式会社
    • 害虫駆除を行う業者向けに、資材や薬剤などを販売する (B2B)
    • ITとは全く無縁の企業
    • ITでビジネスの在り方を変えていきたい
  • 害虫・害獣駆除/予防
    • 一般には「ペストコントロール」と呼ばれる業務
      1. 一般家庭における害虫駆除
      2. 飲食店などの小型店舗の害虫駆除
      3. 公共施設や大型工場等における害虫防除: 昆虫などの異物混入リスクを低減
      4. 昆虫媒介の感染病対策: 蚊(マラリア)、マダニなど
      5. 外来種害虫の侵入防除: ヒアリ、セアカゴケグモなど
    • 本セッションでは3にフォーカス

害虫駆除業界とモニタリングの課題

  • 害虫駆除業務における「モニタリング」とは?
    • 対象施設における、害虫・害獣の定期生息調査のこと
  • モニタリング業務
    1. 各種トラップの設置&回収 (誘虫ランプや粘着シートなどを使用)
    2. 捕虫紙検定 (捕獲した虫の種類、数を検定する)
    3. 報告書提出 (結果と対処策の提示)
    • ネズミなどの活動を確認するためにビデオ録画・解析なども行う
  • モニタリング業務の問題点
    1. より精度が求められ、設置するモニタリングトラップが増加傾向
    2. 虫の多い夏場の同定(種類の識別)に時間がかかる
    3. モニタリング頻度が不十分 (リアルタイムでない)
    4. 技術者の確保が困難

ペストビジョン紹介

  • 問題点をITで解決「ペストビジョン」
    1. IoT技術をフル活用した遠隔モニタリング
    2. 人工知能(AI)による害虫のカウント・同定、独自プログラムによるネズミの活動検出
    3. モニタリング結果が時系列にデータベース化される
    4. モニタリング結果を共有可能 (害虫駆除業者、品質管理者)
  • ペストビジョンのビデオ紹介
    • 画像から虫の種類・数を自動判別する様子
    • 24時間録画された動画を解析して、ネズミが発生した時間帯だけを切り出す
    • ネズミが隙間から顔の一部だけを出しているような場面でも、ネズミだと判定することができる
  • 当社がAWSを採用した理由
    1. AWSを使えるベンダーが多い
    2. 充実したマネージドサービス (やりたいことを実現するためのサービスがだいたい揃う)
    3. グローバル展開を視野に
    4. サーバーレスアーキテクチャの実現 (インフラエンジニア、保守作業が不要)

株式会社アジャイルウェア 平川氏: アーキテクチャ解説

システム概要

  • 解析システム
    • センサーからの入力をサーバーレスアーキテクチャ(API Gateway、Lambda、DynamoDB、S3)で処理
    • バックエンドはEC2(解析エンジンが動作)
  • 利用者向けサイト
    • Vue.jsによるSPA(Single Page Application)で構築: CloudFront、S3

各コンポーネントの説明

  • CloudFrontによるコンテンツ配信
    • 月間30万リクエストを滞りなく処理
  • Lambdaによるサーバーレスアーキテクチャ
    • Serverless Frameworkを採用
    • 採用の理由
      • ツール群の充実
      • 設定ファイルのみでAWSリソースを定義できる
      • デプロイまでを開発者ベースで一気通貫で行える
  • Serverless Framework
    • 設定ファイルによるAWSリソース定義
    • 現在は設定ファイルが1000行を超えている
    • メンテナンス性、可読性に問題 → リファクタリング中

株式会社アジャイルウェア Fischer氏: 技術詳細解説

課題と解決策

  • CloudFrontとLambdaにより高可用でスケーラブルなシステムを実現したが、技術的な課題が発生
    • API Gatewayの6MBの壁
    • 解析エンジン(EC2)の「過労死」
  • API Gatewayの6MBの壁
    • 当初: センサーから静止画・動画のデータをAPI Gateway経由で受け取っていた
    • 改善後: S3への署名付きアップロードを使用することで大容量データがAPI Gatewayを通らないようにした
      • まず、センサーは送信リクエストをAPI Gateway→Lambda(リクエスト処理用)へ送る
      • LambdaはS3の署名付きアップロードURLを返す
      • センサーは返されたURL(S3)に対してデータ本体を送る
      • S3格納をトリガにLambda(データ処理用)が実行される
  • 解析エンジンの過労死
    • 当初: EC2に対して直接処理要求、解析エンジンの限界値を超えても処理が投げられる
    • 改善後: SQSによるキューイングにより解決

サーバレスアーキテクチャへのパラダイムシフト

  • 従来のEC2上で動作するアプリケーション
    • 例: オブジェクト指向で設計、Ruby Railsなどで実装
    • コードベースの肥大化、密結合
  • サーバーレス(FaaS)
    • 従来の設計・実装の考え方は、サーバーレスでは「アンチパターン」
    • SNSを使ったメッセージングモデル、分散システム化
  • これからの課題
    • モノリシックなデプロイパッケージ(40MB)をどうするか
    • コードベースの分割、デプロイ方法の改善 (Lambda Layersなど)

株式会社アジャイルウェア 平川氏: 今後の取り組み

  • SageMaker
    • EC2の解析エンジンをSageMakerへ移行
    • SageMakerを利用することで、学習~デプロイまでのスパンを短くする
    • より高精度なAIを、より簡単に実装可能にし、サービス品質を向上する
  • IoT Greengrass
    • エッジ側でのコンピューティングを行う
    • 現在はAWSと常に接続された環境が必要 → 通信環境が不安定な状況でもサービスを継続したい
    • 推論をエッジ側で行うことでクラウド側と通信するデータを圧縮する
    • より安定したサービス提供を可能とする

感想

IoTとAIを組み合わせて現場の問題を解決するソリューションの実例を聞くことができ、これからのIoTとAIの重要性を改めて感じました。

また、サーバーレスアーキテクチャの開発における問題やその解決手法について、実際にシステム開発されている方の解説を聞くことができ、大変勉強になりました。