
【セッションレポート】 AWS 人材育成支援メニューの変遷と ベストプラクティス(AWS-26)#AWSSummit
こんにちは!クラウド事業本部のおつまみです!
本記事は 2025 年 6 月 25 - 26 日の 2 日間開催された AWS Summit Japan 2025 のセッションレポートとなります。
セッション資料
セッション概要
クラスルームトレーニングから始まり、デジタルラーニングプラットフォームである AWS Skill Builder、応用力/実践力を身に着けるための AWS Jam、そして EST(Enterprise Skills Transformation)と呼ばれる伴走支援コンサルティングサービスまで、近年大きくベンダートレーニングの有り様が変わりました。人材育成のベストプラクティスになり得る事例をベースに、各支援メニューの使いどころをお伝えします。
スピーカー
冨田 賢
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
トレーニングサービス本部 事業開発部 部長
アジェンダ
- 事業会社におけるデジタル人材育成の現状と課題
- 5つの主要課題と解決の方向性
- 企業内理解の醸成
- 非ITエンジニア(ビジネスユーザー)のリテラシー向上
- 時間・予算制約への対応
- 知識から実践力への昇華
- 育成ノウハウの不足
- 新しい人材育成メニューとベストプラクティス
本セッションの3行まとめ
- 事業会社のDX人材育成は量・質の両面で課題があり、IT企業とは異なるアプローチが必要
- AWSは従来の3つのメニュー(クラスルーム・eラーニング・認定資格)を大幅に拡充し、5つの主要課題に対応
- 経営層の理解醸成からビジネスユーザーの巻き込み、実践的スキル習得まで包括的な支援が可能
セッションレポート
事業会社における人材育成の現状と課題
日本のITエンジニアの所属を見ると、76%がIT企業(システムインテグレーター等)に所属し、24%が事業会社に所属している。DXの文脈でシステム内製化とデジタル人材育成に乗り出した事業会社は、現状は厳しい状況にある。
アンケート調査によると、 DX人材が量・質の両面で「過不足ない」と回答した企業はわずか4.2%と3.8% という結果が出ており、多くの事業会社でデジタル人材育成が課題となっている。
IT企業と事業会社の人材育成の違い
IT企業の場合
- 経営層、人材育成リード、受講者の認識が一致
- 豊富な実案件でOJTによる実践力獲得が可能
- デジタルスキルを実践力に昇華するノウハウが蓄積
事業会社の場合
- ステークホルダー間の熱量や到達目標の認識がバラバラ
- 非ITエンジニア(ビジネスユーザー)の巻き込みが必要
- 時間・予算の制約があり、実践の場も限定的
- 育成担当者の経験・ノウハウ不足
5つの主要課題と解決アプローチ
1. 企業内理解の醸成
課題: エグゼクティブスポンサーの理解不足により、適切な受講者アサインや予算確保ができない
解決策:
- EBC(Executive Briefing Center):経営層と育成リード、AWS専門家による数時間の深掘りセッション
- LNA (Learning Needs Analysis):数百〜数千人規模の自己申告型ウェブアンケートでスキルギャップと学習ニーズを可視化
2. 非ITエンジニア(ビジネスユーザー)のリテラシー向上
課題: ビジネスユーザー向けの適切なコンテンツ不足と学習動機の欠如
解決策:
- AWS Skill Builder上のデジタルスタジオ:日本独自のビジネスユーザー向けコンテンツを開発・収録
- IT基礎・AI基礎などクラウドの一歩手前の入門コンテンツを充実
- AWS Leaders' Voice:企業規模別・業種別・ユースケース別の成功事例と経営者インタビュー
成功事例: TOPPAN様では3年間で累計2000人超がAWS初級資格を取得。営業担当者がデジタルリテラシーを学ぶことで顧客のデジタル課題をキャッチアップし、デジタル関連売上が向上。
3. 時間・予算制約への対応
課題: 学習時間が取れない、教育予算が少ない、学習継続が困難
解決策:
- AWS Skill Builder チームサブスクリプション:年間449ドル(約65,000円)でeラーニング + AWSハンズオン環境 + AWS Jam が使い放題
- デジタルクラスルーム:従来の教室型トレーニングを収録し、隙間時間にスマートフォンでも視聴可能
- 利活用支援サービス:キックオフイベントやログインフォローなど継続学習をサポート(無償)
4. 知識から実践力への昇華
課題: IT企業ほど実案件に恵まれず、知識を実践力に転換するのが困難
解決策:
- AWS Jam:本番案件を想定した現実的な課題を含むAWS環境での実践トレーニング
- AWS環境にトラブルやセキュリティ課題を仕込み、自ら調査・解決する体験
- チーム戦での競技要素を取り入れ、楽しみながら実践力を養成
- ソロ型・ペア型・モブ型など学習目的に応じた柔軟な実施形式
実践的な学習サイクル:
- デジタルクラスルームで最低限の知識習得
- AWS Jamで実践的課題に挑戦
- 弱点をeラーニング・ハンズオンで復習
- 継続的なサイクルで実践力を向上
成功事例: Works Human Intelligence様では、開発者のクラウド運用効率が6.7倍向上。
5. 育成ノウハウの不足
課題: DX文脈で突如として人材育成を担当することになった担当者の経験・ノウハウ不足
解決策:
- ESP Guild Incubator:AWS人材育成コンサルタントが4ヶ月間お客様に張り付いて伴走支援
3つの主要シナリオ:
- アイデア創出:デジタルを活用したビジネスアイデアの企画立案支援
- アイデア具現化:ビジネスアイデアをプロトタイプとして実装する支援
- 学習の仕組みづくり:お客様内部でトレーニングを企画・運用する体制の構築支援
成功事例:
- コニカミノルタ様:4つのビジネスアイデアを年度内にプロトタイプ化。個別ラーニングプランでスキル習得と成果創出を同時並行で実現
- 消費財メーカー様:4ヶ月で段階的にお客様内部でのトレーニング企画・運用体制を定着
人材育成メニューの変遷
従来の3つのメニュー(クラスルーム・eラーニング・認定資格)から、事業会社の課題に対応した包括的なメニューに拡充。
新たに追加されたメニュー:
- EBC(経営層向けブリーフィング)
- LNA (学習ニーズの可視化)
- ビジネスユーザー向けコンテンツ
- AWS Skill Builder チームサブスクリプション
- デジタルクラスルーム
- AWS Jam(実践的トレーニング環境)
- ESP Guild Incubator(コンサルタント伴走支援)
認定資格取得状況の変化
日本市場における認定資格取得者数を見ると、パートナー企業とユーザー企業が半々の比率となっている。これは、ビジネスユーザーの方々がクラウドリテラシー・デジタルリテラシーを学び、資格取得まで行うケースが急増していることを示しています。
特にAI関連では、AIの初級資格がクラウド初級資格に比べて11倍のスピードで取得数が伸びており、マーケットのAI関心の高さが表れている。
感想
このセッションを通じて、AWSの人材育成支援が単なるトレーニング提供から、お客様の課題解決パートナーへと大きく進化していることを実感しました。
特に印象的だったのは、事業会社特有の課題を5つに整理し、それぞれに対して具体的な解決策とメニューを用意している点です。IT企業向けの従来アプローチでは対応できない「経営層の理解醸成」「ビジネスユーザーの巻き込み」といった課題に、EBCやデジタルスタジオなど新しいアプローチがあるのは良いなと思いました。
またAWS Jamについては、弊社でイベント支援も実施しています。
ちょうどAWS Summit前日に弊社オフィスにて、お客様と一緒にイベントを実施していたので、非常に興味深い内容でした。実践的な学習サイクルで述べられた「AWS Jamで実践的課題に挑戦→弱点をeラーニング・ハンズオンで復習」の流れは今後取り組む際に参考にしたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました!
どなたかのお役に立てれば幸いです。
以上、おつまみ(@AWS11077)でした!