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チームで働くための知識体系としての「心理的安全性」

2019.10.07

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事業開発部の塩谷 (@kwappa) です。

ジョインしたときの記事執筆者プロフィールに書いてある通り、ぼくは「チームリライアビリティエンジニア」というジョブタイトルをつけています。今回はその活動の一環として、チームの定例ミーティングで「心理的安全性」について話しました。

「心理的安全性」という言葉は最近よく話題になりますし、「なにか大事なものらしい」という認識も広がっているようです。ですが、そもそもどのようなものでなんのために必要なのか、という共通の認識がないと、少しずつ意味がブレてしまい、本来の意図や目的から乖離したものになってしまいがちです(バズワードがよくたどる末路ですね)。

今回は「心理的安全性」という言葉の本来の出自と、なぜそれが必要なのかについてを改めて考えてもらうために話してみました。チームや会社に依存する内容ではないのでスライドは公開したのですが、より深く知っていただくためにフォローとしての記事を書きました。

ちなみに、11/1(金)に開催される「Developers.IO 2019 TOKYO」でもチームやチームワークについて話すことになっています。このテーマに興味をお持ちの方は、ぜひご来場ください。

チームで働くための知識体系

なぜ心理的安全性が必要かというと、現代の仕事においてはチームとして働き、学習し、成果を出すことが不可欠だからです。そこで今回は「チームで働くための知識体系」というタイトルで、チームで働くための基本的な知識体系について話しました。

話の大枠はスライドを読んでいただければ把握できると思います。この記事ではスライドからは読み取りづらい点について補足をしていきます。

プロジェクト・アリストテレス

世界でも有数のソフトウェア企業であるGoogleは、その徹底したデータ志向から採用や人事についてデータを収集し、分析した結果を発表しています。記事の多くは日本語にも翻訳されているので、気軽に読むことができるのはありがたいことです。

その中でも特に有名で、「心理的安全性」という言葉が注目を集めるきっかけとなったのが、「「効果的なチームとは何か」を知る」という記事で、2012年からGoogle社内で行われた「プロジェクト・アリストテレス」という労働生産性向上計画の結果報告です。

レポートでは、生産性の高いチームにとって重要なのは「誰が」ではなく「どのように協力するか」であり、その中で最も生産性に寄与するのが「心理的安全性の高さ」であった、と報告されています。

チームが機能するとはどういうことか

プロジェクト・アリストテレスで着目された「心理的安全性」という概念は、ハーバード大学のエイミー・エドモンソン教授によって提唱されました。日本語で読める一番よい資料は、氏の著書である「チームが機能するとはどういうことか〜「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ」です。

この書籍ではもうひとつ、「プロセス知識スペクトル」という重要な概念が紹介されています。知識の成熟度と不確実性から、チームで取り組む仕事を「ルーチンの業務」「複雑な業務」「イノベーションの業務」と分類し、不確実性が高まるほどチームで失敗から学習していうことが重要であり、そのために不可欠なのが心理的安全性である、という主張がなされています。

「プロセス知識スペクトル」について知らずに「心理的安全性」だけを追求するのは、脱線やブレの元凶になると言えるでしょう。

HRT

HRTは「Humility(謙虚) / Respect(尊敬) / Trust(信頼)」の頭文字をとった略語で、その語感のよさから「ハート」と呼ばれることもある概念です。同じくGoogleのエンジニアによる書籍「Team Geek ――Googleのギークたちはいかにしてチームを作るのか」で紹介されました。

この本では人間関係の三本柱としてHRTをとりあげ、「あらゆる人間関係の衝突は、謙虚・尊敬・信頼の欠如によるものだ。」と論じています。プロフェッショナルとして問題に取り組むチームとして、HRTなしには心理的安全性は成立し得ないことは、容易に想像できるでしょう。

ロールプレイングゲーム

今回話すにあたりメッセージとして盛り込んだのが、心理的安全性と誤解しがちな「仲よしグループ」問題と「モヒカン」問題です。

単なる仲よしと心理的安全性が高い状態は明確に違うものです。また、「正しい」指摘を遠慮なくできる雰囲気にするために心理的安全性が必要なのですが、正しい指摘であれば感じ悪くても攻撃的でもいい、というわけでもありません。

もちろんお互いの関係がスムーズであることは心理的安全性の醸成に大きくプラスになるのですが、手段と目的が逆転しがちなポイントでもあります。また、コミュニケーションが得意ではないメンバーを無理に雑談や懇親会の場に引っ張り出すことは、大きなストレスを与えることにもなりかねません。

そのために、心理的安全性は「プロとして仕事をするために必要なふるまいである」という定義をし、そのために参考になる文章として、「プログラマが知るべき97のこと」という本に収録された「ロールプレイングゲーム」というエッセイを紹介しています。

この本はWeb上で全文が公開されていますので、ぜひご一読ください。「ロールプレイングゲーム」はもちろんのこと、ほかにも魅力的なエッセイが多数収録されています。

おわりに : チームの信頼性を高めるということ

信頼性を雑に言語化すると、「壊れにくいこと」「壊れても原因究明 / 復旧が容易であること」などと考えています。メカやソフトウェアはもちろん、チームも同様です。「チームの信頼性」をより高めていくために頑張っている日々の活動を、少しだけご紹介しました。

なお、クラスメソッドとその自社プロダクトであるプリスマティクスでは、それぞれ採用を強化中です!信頼性の高いチームでのびのびと活躍したい方は、ぜひご連絡ください!