マネージャ不在のまま海外オフィスを全員リモートワークで業務開始する方法(タイオフィスが立ち上がりました)

マネージャ不在のまま海外オフィスを全員リモートワークで業務開始する方法(タイオフィスが立ち上がりました)

2020年4月タイにて Classmethod (Thailand) Co., Ltd. が立ち上がりました。 COVID-19(新型コロナウィルス)の影響により、ローカルマネージャである私が日本にいるままスタッフ全員が営業開始からいきなり事務所に出社せずにリモートワークで業務開始するという変わった立ち上がり方をしました。 いきなりリモートワークになった経緯と、実際にどのように最初から全員がリモートワークのツールや方法をどのようにしているかなどを書いています。
Clock Icon2020.05.10

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少し告知が遅れたのですが、2020年4月タイにて Classmethod (Thailand) Co., Ltd. が立ち上がりました。 タイトルにも書いたとおり、COVID-19(新型コロナウィルス)の影響により、ローカルマネージャである私が日本にいるままスタッフ全員が営業開始からいきなり事務所に出社せずにリモートワークで業務開始するという変わった立ち上がり方をしました。

いきなりリモートワークになった経緯と、実際にどのように最初から全員がリモートワークのツールや方法をどのようにしているかなどを書いていきます。 最初は経緯説明、中盤はツール類の解説、最後はどんな注意をしながらやっているかを書いています。リモートワークでどんな取り組みをしているのかを具体的な方法が見たい方は中盤まで読み飛ばしてもらえればと思います。

この記事の目次

経緯

私自身は、タイと日本を行き来しながら半年程度法人設立の準備をしてきました。法人登記、事務所設立、ローカルスタッフの雇用などが2020年3月に完了しました。そして、ビザを取るために3/22に私が日本に帰国しました。このあと、COVID-19の影響により、私はビザを取ることもタイに戻ることもできず、そのまま会社として営業を開始せざるを得ない状況になってしまいました。そのため、全員リモートワークにて業務を開始しています。

タイでは外資企業の設立に一定の制限があり、そのため外国人を一人雇用するために、タイ人を4人雇用する必要があります。そのため、当初日本人は私一人でタイ人を4人雇用する形をとっています。

COVID-19に関連したタイと日本の状況変化は以下のようになっていました。

日付 発生事項
2020/2/27 2月27日、タイ保健省は新型コロナウィルス(COVID-19)に関して、
感染例が多く見られる地域(日本を含む)との間を出入国する方に、
14日間の自宅等における症状の観察等の協力を要請する旨発表しました。
このとき日本はクルーズ船の寄港により感染者数が多いように見える
状態になっていました。(この段階でタイの1日の新規感染者数は1,2人程度)
2020/3/21 バンコク都知事は,3月22日から4月12日までの間,
新型コロナウイルス感染症2019(COVID-19)の感染予防のため,
バンコク都内の人々が集う施設(レストラン、デパート、
エンターテイメント施設など)を閉鎖することを発表しました。
(この段階でタイの新規感染者数は90人程度)
2020/3/24 タイにて首相による3/26から「非常事態」に発令されると発表されました。
(この段階でタイの新規感染者数は110人程度)
2020/3/25 タイの「非常事態」の詳細が発表され、労働許可証を持たない外国人の入国
を禁止すると発表。
2020/3/26 小池都知事が「重大局面」を発表し、週末の外出自粛要請。
(この段階で日本の新規感染者数は100人程度)
2020/3/27 在東京タイ大使館で労働許可証のない人へのビザの発給が停止
2020/3/31 日本が感染症危険情報レベルの引き上げを行い、感染症危険情報レベルはレベル3
(渡航は止めてください。(渡航中止勧告))になりました。
(この段階でタイの新規感染者数は140人程度)
2020/4/7 タイがタイ行き航空機の飛行禁止措置を発表(4/18まで)。
(この段階でタイの新規感染者数は50人程度)
2020/4/7 安倍首相が緊急事態宣言を発表(5/6まで)。
(この段階で日本の新規感染者数は300人以上)

推移がわかりやすいのでグラフも貼っておきます。(4月下旬のGoogleの統計情報で表示されたデータ。多少集計期間が違いますが、比較参考にはなるかと)

と、こんな感じで、タイから日本に戻る段階では警戒感はあったものの、ビザの取得もできるし、タイに戻れると考えていました。しかしながらあっという間にビザは発給されないし、タイに戻ることも禁止されるという状況になり、日本への滞在を余儀なくされました。個人的には実家が東京都下にあるため、滞在そのものは特に問題はない状態です。

しかしながら、タイのローカルスタッフには4/7から業務を開始するので出社してくださいと伝えてあった都合上、また業務開始を延期するとスタッフが辞めてしまうリスクもあったため、完全リモートワーク、かつマネージャ不在という状況で業務開始するという判断を3月末にしました。

余談ですが、タイから日本に帰国する当日にバンコク事務所(アソーク)の内装が完了し、これから業務ができるぞという状態になっていました。また、この段階ではスタッフ全員分のノートPC(Windows)は購入してあり、PCの初期アカウントの設定だけした状態になっていました。それと事務所のインターネットの設置が完了しWi-Fiが使用できるようになっていました。

リモートワーク開始できるようにPC環境にツールの整備

全員リモートワークで業務開始をするという判断をしたのが3月末で、実際の業務開始が4/7なので、約1週間程度しか準備期間が取れませんでした。タイのローカルスタッフの中の1名は、私の前からの知り合いで、タイ語のみのコミュニケーションにはなるものの、4月1日から色々と頼み事ができる状態にはありました。ただしこの人はもともと小学校の先生で、ITの専門知識は殆どないスタッフになります。 この段階で急ぎ行ったのが、以下になります。

  1. 業務開始可能なPC環境の設定内容の決定
  2. 事務所のWi-Fiへの接続方法を説明した資料(図とタイ語でわかりやすいもの)
  3. Quick Assistの設定方法の資料(図とタイ語でわかりやすいもの)
  4. G Suiteに契約をし(ドメインも取得)、スタッフ分のアカウントの準備
  5. Office 365に契約をし、スタッフ分のアカウントの準備
  6. SlackのWorkspaceを作成し、G Suiteで用意したメールアドレスで、アカウントを作成
  7. Zoomの有料アカウントを1つ用意し、電話会議が随時開催できるようにする

各アプリケーションについての説明は後述しますが、この資料と設定を用意するだけ3日間くらい時間がかかりました。

Quick Assist

Quick Assistは、Windows10に標準装備されているリモートアクセス機能です。アクセスする側で、一時パスワードを発行し、それをアクセスされる側のPCに入力することで、そのWindowsが外部からリモート操作できるようになるアプリケーションです。今回のリモートワーク開始にはこの機能があったことで、すべてのPCの設定が外部から行うことができました。 実際業務開始後も、アプリケーションの使用方法説明やPCの設定に問題が出たときにも使用できるので、このアプリはPC設定の肝になっています。

G Suite

Googleが提供する、オフィススイート。今回の契約の目的は、Gmail、Calendar、Google Driveが目的です。 Gmailは、Saasで使えるブラウザメール。当然ですが社外との連絡には必須です。 Calendarは、最初の時点では、私の予定をスタッフに共有するために使っています。業務が回るようになってきたら、スタッフ自身の予定を入れさせたり、会議室の予約に使ったりということを行う予定です。 Google Driveは、各種ファイルの共有を行い、実際のドキュメント作成作業や翻訳作業を、この上で行ってもらっています。

今回、Zoomを標準ツールとして採用したので、HangoutやMeetsは特に使っていません。

スタッフのアカウント及びパスワードは、全て事前設定してから渡しています。今回のリモートワークではすべての設定をリモートからできることが重要なため、パスワード自体はマネージャである私が管理するという方針にしています。

Office 365

Microsoftが提供するオフィススイート。Office(Word, Excel, PowerPoint)をPCにインストールするために契約しています。クラウド上での機能も充実しているところなのですが、タイの若者がGmailの利用率が高いということは知っていたので、今回MicrosoftのSaas機能は使っていません。

こちらもすべてパスワードはマネージャが管理。

Slack

エンタープライズ向けのチャットツール。タイでもLINEは流行っているので、LINE for Businessも検討したのですが、ここは私自身が一番使い慣れているSlackを採用しました。とりあえずSlackは無料アカウントで業務開始です。色々と機能面で不足が出た場合は、将来的に有料版に移行も視野に入れておきます。

スタッフのアカウント作成は、G Suiteで作ったメールアドレスを使用し、パスワードはマネージャが管理。

Zoom

電話会議用アプリ。こちらはSkype(Microsoft)、Meets(Google)など他の選択肢も多くあったのですが、私自身が一番使い慣れているZoomを採用。SlackにURLを貼り付けて、参加してもらうという使い勝手だと、スタッフとちょっと話したいときにもURL貼って、ここ来てと言うだけで会議が始められるので、使用感はすこぶる良いです。

実際のPC設定

事前に各種アカウント準備ができた状態で、ローカルスタッフに事務所に行ってもらい、Wi-Fi設定手順書を元にPCをインターネットに繋いでもらいました。これは常時LINE通話をして、一つ一つ確認しながらやってもらいました。Quick Assistの起動まで行ったら、あとはリモートで1台1台のパソコンを設定していくという流れになります。 Chromeをインストールしてから、事前に用意した各種アカウントを設定していきます。あえてすべてのアカウントはブラウザにアカウント情報は記憶させていきます。 タイならではのポイントとしては、以下になります。

  1. キーボード設定で、タイ語と日本語の入力ができるように設定する
  2. Officeのインストールの際に、英語版でインストールをしておき、タイ語と日本語のLanguagePackを後から設定。これでメニューは英語で、タイ語と日本語の使用が可能になります。

その他は、時間がかかるもののすべてのWindowsUpdateもすべてのPCで行っておきました。 それと、サードパーティのウィルス対策ソフトはあえて入れずに、Windows標準のWindowsDefenderを使用。セキュリティレベルが低いので心配はあるのですが、他社のウィルス対策ソフトを入れて、リモート操作の際にアクセスがブロックされてしまうと、その後そのPCは一切の設定ができなくなるという不安があったため、標準機能を使うことにしました。これは私がタイに戻って設定できるようになったら、ウィルス対策ソフトを購入して入れ直す予定です。

これも設定項目が多いため、1台あたり3-4時間の設定時間がかかりました。 スタッフ4人分ということで、丸々2日程度スタッフにも張り付いてもらいました、 Quick Assistは時々原因不明で接続が切れます。(タイと日本間の通信状態によるのかなと) それの対策のため、スタッフにはその場で待機しておいて貰う必要がありました。

スタッフにPC+Pocket Wi-Fi貸与

4/7(火)に業務開始をするために、業務開始前のスタッフに連絡を取り、その前の週の4/3(金)に事務所に集まってもらうことにしました。 これのための仕込みとしては、ネットワーク回線を会社から提供したほうが良いだろうということで、タイでPocket Wi-Fiのサービス提供しているa2networkさんに連絡を取り、4台のPocket Wi-Fiを1日で用意してもらいました。前々から、色々と仲良くしている会社なので無理を聞いてもらった感じです。

4/3(金)の朝10時に準備を手伝ってもらったスタッフに事前に事務所に行ってもらいPCを渡せるように準備。そして11時に残り3人のスタッフ全員に集まってもらいました。この3人のスタッフは事務所に始めてきた状態です。 日本に行く前に、1台予備用の端末を用意してあって、会議室で電話会議ができるようにプロジェクター、カメラとマイクの設定をしておけたので、その機材をそのまま使って、採用面談後はじめての会議を、Zoomを使っていきなりリモートで行いました。

私自身タイ語は喋れるもののネイティブではない言葉だけでフルに説明するのはかなりリスクなので、説明したい点はすべてパワーポイントを使い図で説明できるものように用意しておきました。 話としては、タイに戻れなくなっているという点や、それでも業務開始するという点を説明の後、最低限のツールの使い方ということで、全員にPCを渡した上で、Slackを使ってチャットをやる方法、Gmailの連絡方法、Zoomに参加する方法、Word、Excelなどの起動方法などの基本的な操作説明だけその場で行いすべて試しました。また、4/7以降は朝9:00からZoomで電話会議するので、必ず参加するようにという点だけ特に強調しておきました。

このあと、用意してもらったPocket Wi-Fiのお店に行ってもらい、店員からPocket Wi-Fiの使い方を説明してもらって、家でもPCを使って確実に連絡が取れる状態を確保して、その日は昼過ぎには全員解散しました。この段階ではバンコクは非常事態宣言が出ている状態なので、スタッフをあまり長い時間外出させたくなかったというのもあります。

準備漏れとTrello

ここまで準備をしてはっと気がついたのですが、各種連絡手段や作業環境をPCに設定することはできていたのですが、業務管理をどのように行うかを何も考えていませんでした。悩んだ末に、Trelloを使ってカンバン方式で業務管理することにしました。ここではカンバン方式自体についての説明は省略しますが、今回使ったボートは、Todo、InProgress、WaitApproval、Doneにしました。

業務開始日前に、スタッフ全員分の1週間分くらいのタスクを事前に登録しました。

業務開始後

業務ルールは全員一律で以下のようにしました。

タイ時間 内容
9:00 業務開始及び朝の会議。数分挨拶的な話をした後に、Trelloの自分のタスク内容を
見せながら各人が作業場報告を2、3分で行う。
その後、私から全体告知したい内容の会議とする。
私からの話がない日が20分位で終わらせるし、議題の多い日は2時間位やる日もあります。
昼休み 私だけタイムゾーンが2時間違うこともあるので、
昼休みは自由に1時間取るものとする
18:00 Slackの日報チャネルにて、箇条書きで本日やった作業を報告する

重要なのは、朝の会議だと考えています。全員リモートワークなのにで、この時間のきちんと全体でのコミュニケーションを取り、スタッフ全員での認識をあわせ会社の方向性の確認などをするという点を重視しています。リモートワークではなくてもこの会議は今後も継続的に行うことになることが重要と感じています。

次に、業務時間中はSlackで呼ばれたら10分以内にレスポンスするように言っています。テキストでのやり取りだけで足りない場合は、すぐにZoomを繋いで話すというのも重要視しています。リモートであってもコミュケーションの頻度を下げすぎないように注意するのが重要と考えています。

あとは、私自身タイ語はそれなりに喋れるものの、意図が正確に伝えられないと思ったら、すぐにスタッフに通訳してもらうようにしています。全員がタイ語で言っていることはだいたい理解できるものの、自分の意見を正確に伝えるのは難しい場合もあります。リモートでの会話で情報の伝わりにくさが起きやすいので、コミュニケーションの質を上げる努力は重要と考えています。といいながら、通訳をするスタッフの頭がよく、まだ言っていないことを先回りしてタイ語で言うことや、多少ニュアンス変えて話していることもあるので、ローカル言語が理解できるメリットは多くあるのですが。 そんな感じで社内の標準語はタイ語で、必要に応じて日本語、英語を使い分ける感じです。

所感

こんな感じで1ヶ月ほどやってみて、言語の壁、文化の壁、時差の壁、距離の壁などがあってもどうにかなるものだと感じているところです。もちろん課題も多く、業務効率をまだまだ上げられるはずなので、引き続きいろんな施策を試していきたいと思っています。

といいつつも、早くタイに戻ってタイのスタッフたちと顔を合わせて仕事したいというのが本音です。Covid-19の早い収束を願うばかりです。

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