Amazon CloudFrontのデフォルト上限値が更に更に大幅アップしました!(2020初夏)
はじめに
清水です。AWSが提供する高速・高パフォーマンスなコンテンツ配信サービス(CDN)であるAmazon CloudFront、その開発者ドキュメントを確認していたところ、デフォルトのクォータ(上限値)が引き上げられたことが確認できたのでまとめてみます。引き上げられたデフォルトのクォータは「データ転送レート」がこれまでの40Gbpsから150Gbpsに、「1秒あたりのリクエスト数」が100,000から250,000となっています!
なお2020/05/30 03:00(JST)現在、日本語版ドキュメントは未反映のようです。英語版ドキュメントを参照ください。
またGitHubでドキュメントソースの差分を確認すると、2020/05/20に更新されていた内容のようです。
これまでのCloudFrontの「データ転送レート」、「秒間リクエスト数」のデフォルトのクォータの引き上げについても振り返ってみましょう。Amazon CloudFrontリリース当時のデフォルトのクォータ(当時は上限値)は1,000Mbps、1,000RPSでした。これが10Gbps、15,000RPSに引き上げられたのが2016年1月のことです。
さらにその年の10月、デフォルトのクォータ(当時は上限値)が40Gbps、100,000RPSまで引き上げられます。
今回のクォータ(上限値)の引き上げは3年7ヶ月ぶり、3回目のことになりますね!前回の引き上げから倍率を計算すると、データ転送レートは3.75倍(40Gbps→150Gbps)、1秒あたりのリクエスト数は2.5倍(100,000→250,000)となります。ついでにリリース当時から比較するとデータ転送レートは150倍!1秒あたりのリクエスト数は250倍!!になっています。
CloudFrontのデフォルト上限値一覧(2020年初夏ver.)
それでは最新のAmazon CloudFront開発者ガイドの情報を元に、CloudFrontのデフォルトクォータ(上限値)を表形式でまとめてみます。比較のため、先に紹介したこれまでのクォータ(上限値)引き上げのアップデートブログエントリに合わせた項目としています。一部開発者ガイドに記載されているクォータ(上限値)のうち、割愛している内容もありますので、詳細については必ず開発者ガイドを参照ください。
リソース | 2016年1月以前 | 2016年1月以降 | 2016年10月以降 | 2020年5月以降 |
---|---|---|---|---|
ディストリビューションごとのデータ転送レート | 1,000 Mbps | 10 Gbps | 40 Gbps | 150 Gbps |
1秒あたり、ディストリビューションあたりのリクエスト | 1,000 | 15,000 | 100,000 | 250,000 |
AWSアカウントあたりのウェブディストリビューション | 200 | ← | ← | ← |
AWSアカウントあたりのRTMPディストリビューション | 100 | ← | ← | ← |
ディストリビューションあたりの代替ドメイン名(CNAME) | 100 | ← | ← | ← |
ディストリビューションあたりのドメイン | 25 | ← | ← | ← |
ディストリビューションあたりのキャッシュ動作 | 25 | ← | ← | ← |
キャッシュ動作あたりのホワイトリスト登録ずみCookie | 10 | ← | ← | ← |
専用IPアドレスを使用してHTTPSリクエストに対応する際のAWSアカウントあたりのSSL証明書数(SNIを使用してHTTPSリクエストに対応する際はクォータなし) | 2 | ← | ← | ← |
オリジンリクエストを追加するようにCloudFrontを設定可能なカスタムヘッダーの最大数 | 10個の名前とペア | ← | ← | ← |
新たなデフォルト上限値を具体的にイメージしてみる
引き上げらた新たなデフォルトのクォータのうち、これまでの3.75倍にアップした「データ転送レート」について具体的にどのぐらいか、大規模動画配信を行う場合を例にイメージしてみましょう。
例えば、日本の地上デジタルテレビ放送はWikipediaによると平均ビットレートが9~13.5Mbps、解像度が1440x1080です。圧縮技術はMPEG-2なので、インターネットでの動画配信ならH.264/AVCやH.265/HEVCなどより圧縮率の高い方式を用いて、1920x1080や3840x2160(4K)などより高解像度の映像を同じぐらいの平均ビットレートで配信可能かと思います。ということで、ざっくり10Mbpsの高画質な動画配信をする、としましょう。
1視聴者あたり10Mbpsの帯域を使用するとします。1Gbps=1,000Mbpsとして、150,000 Mbps ÷ 10 Mbps = 15,000となるので、平均ビットレート10Mbpsの動画配信でも、15,000人の同時視聴までは上限緩和申請(クォータの引き上げリクエスト)なしで問題ない、といことになります。すごい! *1
10Mbpsだと高画質過ぎるので、例えばもう少し現実的に、3Mbpsの動画配信だとしましょう。150,000 Mbps ÷ 3 Mbps = 50,000となり、50,000人の同時視聴まではクォータの引き上げリクエスト(上限緩和申請)不要、ということになりますね。
まとめ
Amazon CloudFrontの3年7ヶ月ぶり、3回目のデフォルトのクォータの引き上げについてまとめてみました。そういえば、上限値/制限値ではなくクォータという表現になってからの初の引き上げだったかと思います。これまでもなかなか大きなデータ転送レート、秒間リクエスト数がデフォルトのクォータでしたが、ここからさらに引き上げられたため、別途クォータの引き上げリクエストを行う機会がさらに減り、より便利になったかと思います。またこれだけデータ転送レートや秒間あたりのリクエスト数のデフォルトのクォータが引き上げられている、ということは、CloudForntのリソースが日々増強されているのだろうなぁと思いました。将来的にはさらに大きな値になっていくのでしょうか!?楽しみですね。
脚注
- もちろんCloudFrontのデータ転送レートもすごいのですが、このデータ転送を常時行なっているテレビ放送の電波もすごいよなぁと思いました。 ↩