
クラスメソッド データアナリティクス通信(AWSデータ分析編) – 2025年9月号
クラウド事業本部コンサルティング部の石川です。今月は先月の怒涛のアップデート の反動もありアップデート数自体は落ち着いていますが、Amazon QuickSightをはじめ主要サービスでの確かな機能強化が続いています。加えて、SageMaker Unified Studioのプロジェクト内S3ファイル共有対応や、OpenSearchのセマンティック検索自動化、さまざまなAPI拡張など、現場のコラボレーションやデータ活用を支える注目のアップデートも多くリリースされています。
Amazon SageMaker Unified Studio
新機能・アップデート
2025/08/22 - Amazon SageMaker Unified Studio adds S3 file sharing options to projects
Amazon SageMaker Unified Studioの新機能として、プロジェクト内のファイル共有にAmazon S3を選択できるようになりました。これにより、Gitリポジトリの代わりにS3バケットを使用して、プロジェクトメンバー間でコードファイルなどを共有し、共同作業をより簡単に行えるようになりました。
Gitの専門知識がないデータエンジニア間では、使い慣れたS3で容易にファイル共有ができ、コラボレーションが円滑になります。例えば、バージョン管理の厳密性が求められる場合はGit、手軽さや大規模ファイルの共有を重視する場合はS3と、プロジェクトの特性に応じた使い分けが可能になります。
Amazon QuickSight
新機能・アップデート
2025/08/06 - Amazon QuickSight now supports connectivity to Apache Impala
Amazon QuickSightが、新たにApache Impalaへのネイティブ接続に対応しました。これにより、Hadoop上の大規模データに対し、Impalaの高速な並列処理SQLエンジンを利用した分析と可視化がQuickSightで直接可能になります。ユーザーは使い慣れた認証情報で接続し、データをSPICE(インメモリエンジン)へインポートできます。
Impala、、、久しぶりに聞きました。
2025/08/18 - Amazon QuickSight expands limits on calculated fields
Amazon QuickSight で、作成可能な計算フィールドの上限数が大幅に引き上げられました。分析ごとの上限は500から2000へ(4倍)、データセットごとの上限は200から500へ(2.5倍)増加しました。これにより、作成者はより多くのデータ変換や複雑な分析をQuickSight内で行えるようになります。
2025/08/29 - Amazon QuickSight now supports connectivity to Google Sheets
Amazon QuickSightがGoogleスプレッドシートへのネイティブ接続に対応しました。これにより、Googleアカウントでログインするだけで、スプレッドシートのデータを直接QuickSightの高速なインメモリエンジン「SPICE」に取り込み、分析や可視化が可能になりました。マルチクラウド環境における横断的なデータ分析にも役に立ちそうです。
APIの変更点
2025/08/11 - Amazon QuickSight - 9 updated methods
HeatMapConfiguration に RowAxisDisplayOptions と ColumnAxisDisplayOptions を追加し、PluginVisual にアクションを追加し、CalculatedFields リストの制限を増やしました。
Amazon DataZone
APIの変更点
2025/08/13 - Amazon DataZone - 6 new 6 updated methods
アカウントプールとプロジェクトプロファイルアカウントの分離のサポートを追加しました。
2025/08/20 - Amazon DataZone - 3 updated methods
CloudFormation 統合のポリシー付与識別子がサポートされました。
2025/08/25 - Amazon DataZone - 2 new 16 updated methods
適切な権限を持つユーザーが、アセットを分類する際に制限された用語を使用できるアセット分類。また、プロジェクトステータスに新しい列挙値「Moving」を追加しました。
AWS Glue
APIの変更点
2025/08/07 - AWS Glue - 8 updated methods
AWS Glue データカタログは、カタログレベルで Iceberg 最適化設定をサポートするようになり、最適化ジョブの実行レートを制御するための新しいオプションもサポートしました。
2025/08/14 - AWS Glue - 4 new methods
AWS Glue は、Trusted Identity Propagation をサポートするようになりました。
2025/08/15 - AWS Glue - 4 updated methods
AWS Glue Zero ETL がオンデマンドスナップショットロードをサポートするようになりました。
2025/08/21 - AWS Glue - 9 updated methods
新しい DataQualityGlueTable 構造を通じて、データ品質操作における前処理クエリのサポートが追加されました。
2025/08/28 - AWS Glue - 1 updated methods
AttributesToGet を使用して GetDatabases 中に TargetDatabase フィールドを取得するためのサポートを追加しました。
Amazon OpenSearch Service
新機能・アップデート
2025/08 - OpenSearch UI supports Fine Grained Access Control by SAML attributes
Amazon OpenSearch UIから、SAML属性を利用したきめ細かなアクセスコントロール(FGAC)が可能になりました。これにより、IDプロバイダー(IdP)のユーザー属性に基づき、インデックスやドキュメントレベルでの精密なデータアクセス制御が実現します。
Amazon OpenSearch Serverless
新機能・アップデート
2025/08/07 - Amazon OpenSearch Serverless introduces automatic semantic enrichment
Amazon OpenSearch Serverlessに、セマンティック検索を自動化する新機能が追加されました。従来はMLの専門知識やモデル管理が必要でしたが、本機能では検索対象のフィールドを指定するだけで、データ取り込み時に自動で意味情報が付与されます。これにより、キーワードの一致を超えた文脈ベースの高度な検索を、最小限の労力で実現できます。日本語を含む多言語に対応し、料金はデータ取り込み時のみ発生します。
セマンティック検索とは、単にキーワードが一致するかどうかだけでなく、言葉の「意味」や文脈、ユーザーの「検索意図」を理解して、より的確な検索結果を提供する技術のことです。例えば、「頭痛の治療法」を検索する場合、セマンティック検索は、クエリにこれらの用語が正確に含まれていなくても、「片頭痛の治療法」や「痛みの対処法」に関する関連性の高い結果をインテリジェントに返すことができます。
2025/08/28 - OpenSearch Serverless now supports Attribute Based Access Control (ABAC) for Data Plane APIs and Resource control policy
Amazon OpenSearch Serverlessは、データアクセスをより柔軟かつ集中的に管理できる新しい権限設定機能「属性ベースのアクセスコントロール (ABAC)」と「リソースコントロールポリシー (RCP)」が追加されました。
属性ベースのアクセスコントロール (ABAC)は、ユーザーの所属部署や役職といった「属性」に基づいてアクセス権限を動的に設定できます。
リソースコントロールポリシー (RCP)は、AWS Organizationsを使い、組織全体に共通のセキュリティルールを一元的に強制できます。
APIの変更点
2025/08/06 - OpenSearch Service Serverless - 4 new methods
OpenSearchServerless は、インデックス API を追加して、マネージド セマンティック エンリッチメントをサポートしました。
Amazon Kinesis Data Analytics
APIの変更点
2025/08/20 - Amazon Kinesis Analytics - 7 updated methods
HeatMapConfiguration に RowAxisDisplayOptions と ColumnAxisDisplayOptions を追加し、PluginVisual にアクションを追加し、CalculatedFields リストの制限を増やしました。
AWS Clean Rooms
APIの変更点
2025/08/19 - AWS Clean Rooms Service - 5 updated methods
分析テンプレートのエラーメッセージ設定をサポートしました。
最後に
今月もQuickSightやGlue、DataZone、OpenSearchといった主要サービスで実運用に役立つアップデートが数多く投入されました。特に、他サービスとの連携や分析機能の強化、アクセス制御や利便性の向上が全体的なトレンドと感じられます。最近はZero-ETLやセマンティック検索など、より直感的かつ効率的なデータ活用環境への進化が加速しています。来月以降の新サービス・新機能にもぜひご期待ください。