【セッションレポート】東京ヴェルディ代表取締役社長 中村考昭登壇!『プロスポーツチームの企業経営とビジョン、デジタル活用を熱く語る!』#cm_odyssey

【セッションレポート】東京ヴェルディ代表取締役社長 中村考昭登壇!『プロスポーツチームの企業経営とビジョン、デジタル活用を熱く語る!』#cm_odyssey

Clock Icon2024.07.29

クラスメソッド設立20周年を記念し、オフラインイベント、オンラインイベントを複数日にわたって展開するイベント「Classmethod Odyssey」を2024年07月現在、絶賛開催中です。

https://classmethod.jp/m/odyssey/

当エントリでは、2024年07月12日(金)に開催されたオフラインイベント「DevelopersIO 2024 TOKYO コミュニティ・リーダーズ・デイ」における東京ヴェルディ株式会社 代表取締役社長 中村考昭氏とクラスメソッド代表の横田との対談セッション「プロスポーツチームの企業経営とビジョン、デジタル活用を熱く語る!」の内容についてレポートします。

セッション概要

イベント公式サイトに記載のセッション概要情報は以下の通りです。
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  • 登壇者
    • 東京ヴェルディ株式会社 代表取締役社長 中村考昭
    • クラスメソッド株式会社 代表取締役社長 横田聡
  • タイトル
    プロスポーツチームの企業経営とビジョン、デジタル活用を熱く語る!
  • セッション概要
    本セッションは、クラスメソッド代表の横田と東京ヴェルディ代表取締役の中村様との対談セッションです。スポーツビジネスの経営戦略、収益モデル、ファンエンゲージメント向上の取り組みを深掘りします。さらに、デジタル技術を活用した革新的な施策や将来のビジョンについて議論します。スポーツとテクノロジーの融合がもたらす可能性、チーム経営におけるデジタル戦略の重要性について、第一線の経営者の生の声をお届けします。スポーツビジネスやデジタル戦略に関心のある方必見のセッションです。

はじめに

クラスメソッドは2024年に東京ヴェルディのオフィシャルパートナーになりました。
https://classmethod.jp/news/official-partner-verdy/
その縁から、この度クラスメソッド設立20周年イベント Classmethod Odyssey にて東京ヴェルディ株式会社 代表取締役社長 中村考昭様にご登壇いただき、東京ヴェルディの経営状況やビジョン、そしてIT活用とこれからについてを語っていただきました。その内容は、普段ただ観戦しているだけではわからない企業の経営目線からのヴェルディを知ることができ、非常に興味深い内容でした。会場には多くの参加者が来場し、とても盛り上がりました。
今回は、その内容の一部をセッションレポートとしてまとめさせていただきました!
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セッションレポート

ここからはセッション本編の内容紹介となります。

企業紹介・自己紹介

  • 東京ヴェルディ株式会社
    • 日本を代表するJリーグ創設時からの名門クラブ「東京ヴェルディ」を運営。多様なスポーツも展開し、多数の代表選手を輩出している。スポーツクラブの枠を超え、地域の生活との強い関係性を持つ。
  • 中村考昭氏
    • リクルート、A.T. カーニー、スポーツマーケティング会社を経て、2010年5月ゼビオ入社。
    • クロススポーツマーケティング株式会社 代表取締役社長/ゼビオホールディングス株式会社副社長執行役員
    • Jリーグ東京ヴェルディ代表取締役社長、3人制プロバスケリーグ3x3.EXE PREMIERコミッショナー、アジアリーグアイスホッケー東北フリーブレイズ代表取締役オーナー代行。
    • 公益財団法人笹川スポーツ財団理事、国立大学法人福島大学経営協議会委員、株式会社足銀総合研究所客員研究員。
    • 一橋大学法学部卒

東京ヴェルディの歴史

東京ヴェルディの歴史は大きく分けて四章に分かれると中村氏は言います。
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  • 第一章:栄光の時代
     東京ヴェルディのスタートは、まさにJリーグが誕生し、大きく注目を集めた輝かしい時代と共に歩んできました。三浦知良(カズ)選手、ラモス瑠偉選手、武田修宏選手など、現在もテレビでお馴染みの元サッカー選手たちが在籍していたこの時代は、Jリーグ創設と共にクラブがその人気を牽引していました。ヴェルディはその華やかなプレースタイルとスター選手たちの存在で、日本中のサッカーファンを魅了し、Jリーグの象徴的な存在となりました。
  • 第二章:苦難の時代
     しかし、栄光の時代は長く続きませんでした。成績も経営も徐々に低迷し、ついにはJ2に降格するという苦難の時代を迎えました。かつての栄光を知るファンにとって、この時期は非常に辛いものでした。クラブは再びトップリーグに戻るための挑戦を続けましたが、思うような結果を出すことができず、暗闇の中で模索する日々が続きました。
  • 第三章:経営危機
     東京ヴェルディ株式会社は、さらなる試練に直面します。経営危機により、10数億円の売り上げに対して5億円ほどの赤字を計上するという深刻な状況に陥りました。通常、Jリーグが一つのチームを支えることはありませんが、ヴェルディのビッグネームゆえに特例として一時Jリーグが管理監督し、経営支援先を探す形をとりました。これによりクラブは何とか存続しましたが、経営面でも成績面でも低迷が続き、再び浮上するための道程は険しく、またしても2年間で合計10億円を超える赤字の可能性に直面することとなりました。
  • 第四章:再生と挑戦
     そんな中、ゼビオホールディングス株式会社が東京ヴェルディを子会社化し、新たなリーダーとして中村考昭氏が社長に就任しました。中村氏のリーダーシップのもと、クラブは再生と挑戦の道を歩み始めます。彼の就任後、クラブは経営改善に取り組み、新たな施策を次々と実行しました。その結果、今シーズンからJ1に昇格し、再びトップリーグで戦うことができるようになりました。さらに、この再建プロセスにおいては、クラスメソッドの支援も大きな役割を果たしています。

クラスメソッドとの出会い

ヴェルディとクラスメソッドの出会いは、運命的なものでした。中村さんとクラスメソッド代表の横田は、稲城市の市長との会食で出会いました。横田も稲城市出身であり、地元のクラブであるヴェルディを応援する中で、その魅力にどっぷりとハマってしまったのです。横田は、「東京ヴェルディの歴史とクラスメソッドのストーリーが重なっている」と感じ、その発展を見届けてサポートしたいといいう思いから、ヴェルディを支援することを決意しました。
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質問と回答

ここからは、クラスメソッド代表横田と中村さんでのQA形式での対談です。
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経営背景とチーム状況について

Q. 経営再建のような形でのスタートはどのようなものであったか

  • A. 経営再建を始めた当初、サポーターからの激しい反発がありました。個人名の批判の横断幕が掲げられたりと、経営状況のみならず、サポーターからの目線は厳しいスタート でした。

Q. 現在好調なチームについて

  • A. 現在、シーズンの半分が終わり、ヴェルディは10位に位置しています。ACL獲得圏と降格圏の勝ち点差がそれぞれ+-10点差という緊張感のある状況なため、好調ではある一方で、どちらにも転ぶ可能性がある難しい状態 とも取れます。

Q. どん底の平均観客者数から劇的に改善している現在について

  • A. 就任した直後の年間平均観客数は約2500人でしたが、その後1万人を超え、J1に昇格した現在は2万人に達しています。J2時代に観客数を5千人から1万人に倍増させた秘訣は、ビジター側のマーケティングを強化したこと です。相手チームのサポーターにも積極的にアプローチし、結果としてホーム側の観客数も増加しました。サポーターから見れば、ビジターチーム側の集客を増やすのは見合わせてほしいと言われるくらいではあるが、ビジターチームの来場者もお客様ととらえることは、結果として自分のホーム側にもプラスになって相乗効果になります。

Q. 今後の目標観客数

  • A. 平均3万人を目指しています。これは昨年のJリーグで最も観客数の多かったクラブの1試合あたり平均来場者数であり、彼らにできるなら、東京という大都市のマーケットを持っているヴェルディでも達成できると考えています。

Q. 予算の少なさと運営

  • A. ヴェルディは選手にかけられる予算が多くなく、おそらくJ1では最下位グループのうちの一つですが、シーズン折り返し時点での順位は10位です。町田ゼルビアが同じタイミングでJ1に昇格し、J1の中で比較的上位の予算規模ではあるもののおそらく最大予算ではないであろうクラブが、これまで大きな選手予算をかけながら長年J1で戦い続けているクラブを抑えて首位を走っています。そのため、J1昇格組みの両者ともにROI的には非常に高い水準となっているはずです。人材が最も重要であり、明確な方針に基づいて採用やマネジメント するなどしてチームを組織していることが大きな要因の一つです。

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ビジョン

Q. 世界的なブランドにしたいというビジョンについて

  • A. スポーツの世界において、優勝を目指さないチームは存在しません。私たち東京ヴェルディも例外ではなく、日本で一番、アジアで一番、そして世界で一番を目指しています。サッカーは最もグローバルなスポーツであり、そのマーケットも世界中に広がっています。リーディンググローバルブランド になることが、ヴェルディの中長期的な目標です。

Q. 海外のサッカーチームの組織運営で参考にしているチームはありますか?

  • A. サッカーにおいてはヨーロッパのクラブはもちろんですが、他にもアメリカのスポーツチームなどもベンチマークしています。常に彼らの運営方法を意識し、学び続けています。海外ではテクノロジーが比較的進んでおり 、日本はまだ保守的で人的オペレーションが多いです。そこを変えていく必要があります。

Q. ヴェルディはサッカー以外にも17競技による総合ブランドの育成をしていますが、どのように育成していきますか?

  • A. eスポーツやバレー、フィールドホッケー、フットサル、野球など、スポーツに上下関係はなく、それぞれが重要です。サッカーだけにとどまる必要はありません。ワンブランドヴェルディとして、複数の総合型クラブを実現 したいです。プロ選手を輩出するだけがゴールではなく、楽しみながら習い事や健康増進、家族とのコミュニケーションを提供することが、社会との関わり方において理想の形です。そうすることで本当の意味で世界的なクラブになると考えています。

Q. 日本代表を多数輩出しているアカデミー/スクールの強みは何ですか?

  • A. ヴェルディのアカデミーは 育成力に定評 があり、男女の別なく多くの日本代表選手を輩出しています。オリンピックや女子サッカーでも多数の選手が活躍しており、ベレーザ(ヴェルディの女子トップチーム)からも多くの選手が輩出されています。過去の実績を基に、今後もさらなる成長を目指しています。

Q. スポーツ振興を通じた街の活性化についてはどう考えていますか?

  • A. スポーツは運動であり、体を動かす身体活動です。ジョギングや通勤、掃除など、日常生活の中にスポーツは紛れています。プロスポーツ観戦だけでなく、街づくりや社会の発展、健康寿命の延伸にスポーツが寄与 することで、魅力的な街になると考えています。そして、この分野にヴェルディが少しでも関われるといいと思っています。

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経営の課題感

Q. スタジアムの来客数を増やすためには

  • A. ファミリーで来てもらったり、様々なイベントを実施することで、試合を見るだけにとどまらず、それ以外にも多くの楽しみがあるスタジアムにしたいです。 また、試合がない日でもファンの皆様と繋がりたいと考えています。365日のうちホームでの試合はたったの19日だけです。一年のうち19回だけで勝負するのは難しいため、残りの日数で顧客との関係性をどのように構築するかが重要です。また、これには大きな可能性があると考えています。チケットや、顧客IDなどの仕組みを利用して、ファンクラブやコミュニティを活性化させていきたいです。これはヴェルディが直近で取り組みたいことの一つであり、それを IT技術で解決 したい。効率的なイベント運営や、試合の無い日でも日々顧客と良い関係性を構築することで経営の効率化と来客数の増加を図りたいと考えています。

全体まとめ

DevelopersIO 2024 TOKYO コミュニティ・リーダーズ・デイにおける中村考昭氏の「プロスポーツチームの企業経営とビジョン、デジタル活用を熱く語る!」のレポート紹介でした。
J1に返り咲き、今もっとも注目されているクラブの一つである、東京ヴェルディの経営者視点の貴重な話を聞くことができました。クラブの成績も経営も低迷する中での厳しいスタートから、どのようなことを意識して中村さんが経営再建を実行していったのかを知ることができて本当に良かったです!
観客数を増やすために、また、オペレーションを改善するために今後どのようにIT技術を活用していくかという話は、技術者である身としてとてもワクワクする内容でした。
私もサッカーが大好きで、ヴェルディの試合も見に行かせていただいたことがあるので、次観戦に行く時は、今回聞いた経営的視点を持ちながらスタジアムを周り、そしてIT技術で何か改善できることはないだろうかと考えながら観戦を楽しみたいと思いました!
個人的にも、そしてクラスメソッドとしてもこれからも東京ヴェルディの躍進を応援し続けたいと思います!

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