
「トヨタ自動車 コネクティッドサービス 発展史」というテーマで社内勉強会を5回開催しました(継続中)
こんにちは、製造ビジネステクノロジー部の若槻です。
こちらは「クラスメソッド発 製造業 Advent Calendar 2025」の23日目の記事です。
今回は「トヨタ自動車 コネクティッドサービス 発展史」というテーマで社内勉強会を継続開催したので、紹介します。
なぜやろうと思ったのか
筆者が所属している「製造ビジネステクノロジー部」は、次の3つのチームから構成されています。
- スマートファクトリー
- スマートプロダクト
- コネクティッドカー
そのうち私はコネクティッドカーチームに所属し、自動車産業の顧客を中心に技術支援を行っています。
さて、昨今の自動車業界は様々な領域での開発競争が行われていますが、そのうち特に次世代の領域を表す言葉として「CASE」というものがあります。「Connected(コネクテッド)」「Autonomous(自動運転)」「Shared(シェアリング)」「Electric(電動化)」の頭文字を取ったものです。このうち我々のチームが特に強みを発揮できるのは「Connected」の領域となります。
「Connected」とは、自動車に通信機能を搭載し、リモート操作やデータのやり取りを可能にする技術概念です。そしてこれをサービス化して顧客へ提供可能としたものが「コネクティッドサービス」となります。国内の代表的なサービスだと以下のようなものがあります。
- トヨタ自動車 T-Connect
- 日産自動車 NissanConnect
- ホンダ Honda CONNECT
私もこれまでいくつかの案件でコネクティッドサービスに携わってきたのですが、その中で驚かされたのはサービスを支えるシステムの複雑さです。
自動車とクライアントアプリの間には、想像していたよりも多くのシステムが多層的に存在しており、また様々な役割や世代のシステムが複合的に並び立っているのです。
そのことに関し“勉強”する中で分かってきたのですが、これは「自動車」という製品の特性によるものです。安全を最優先すること、耐用年数が長期化すること、そして良いクルマを作るために新しい技術を次々と取り入れてきたこと——これらの要因が複雑なシステム構成につながっているのです。
そして私は「この成り立ちを体系的に整理・理解できれば、顧客や業界への理解をより深めることができるのではないか?」と考え、コネクティッドサービスの成り立ちについて調べていたところ、トヨタが公開している次の Web サイトにたどり着きました。
この「トヨタコネクティッド20周年記念連載 虹を架ける仲間達 | TOYOTA Connected」というサイトでは、トヨタという世界最大の自動車メーカーが提供するコネクティッドサービスの25年に歴史が物語として克明に記録・公開されています。
我々製造ビジネステクノロジー部は製造業・自動車産業においてはチャレンジャーです。それら領域で大きな実績やパイプを持っているわけではなく、自ら顧客や業界のことを知りに行く必要があります。
そのような必要性もあり「この資料を我が部のコネクティッドカー領域成長のために活用しない手はない!」と思い立ち、「トヨタ自動車 コネクティッドサービス 発展史」というテーマで勉強会を開催するに至りました。
どんなことをやったのか
それではどのような活動を行ったかというと、まず製造ビジネステクノロジー部では毎週金曜日に「製造業界ブートキャンプ」という会を設けています。そこでは部内の各メンバーが案件や展示会などで得た知見を共有し、部門全体で業界知識の底上げを図っています。

その会で私も不定期にではありますが前述のサイトの内容を軸にコネクティッドサービスについて勉強して得た知見を発表するという活動を行いました。下記が発表資料です。発表資料は全て公開情報のみから作成しています。

そして発表資料は基本的に時系列順に作っており、発表を進めるにつれ時代が降っていくようになっています。これによって聞き手にとっても物語として毎回の発表を楽しめるようにしています。(後述の通り、むしろストーリー仕立てにせざるを得ないと私は考えています)

また重要な要素については適宜深掘りするようにしていますが、その中でも特に「なぜ当時そのような判断に至ったのか」を当時の時代背景など様々な参考情報を交えて説明するようにしています。(こちらの動機についても後述します)

内容についてここでは多くは語りませんが、25年というコネクティッドサービスの歴史の中で、次のような様々な要因によりサービスもといシステムが発展・拡張していく様子が見て取れました。
- インターネット技術の発達
- 異業種同士のコラボレーション
- クラウドコンピューティングの登場
- Tesla などの新規参入企業の台頭
- 国際情勢の変遷や海外展開
このように今あるサービスやシステムの姿というのは技術の発展やビジネス環境の移り変わりに沿って変遷してきた結果であることを理解し、その延長線上としての今後のあるべき姿をある程度見通せるようになることで、今後の弊部門での案件提案や事業開発において、より本質的な価値提供ができるようになることを目指しています。
これまでこのような発表を5回に渡り行ってきましたが、このペースで行けば全10回くらいにはなりそうです。長くなってはしまいますが部のメンバーには今しばらくお付き合い頂ければと思っています。
おわりに: 物事をストーリーとして理解するということ
最後に、こういった物事の調査・整理・共有を行う際に私が意識していることを共有します。
- 人間はストーリー形式での理解に優れている。そのため、物事の変遷を現時点の断面情報やデータベースのような構造的情報ではなく、連続したストーリーとして構成することで共感や理解が促進される。
- そのため、各転換点での意思決定の背景や意図を明らかにし、「なぜ今の形になったのか」を可視化する。
- 歴史上のミッシングリンク(空白期間や不明瞭な部分)を調査・推測で補い、連続性のある理解を構築する。
- 一方で、ストーリーバイアス(因果関係の過度な単純化)に陥る可能性もあることを認識しておくことも重要である。
- また、当時の情報を時間をかけて整理したり、関係者に話を聞いたり、実際に現地を訪れたりするなど、調査に時間的・量的・身体的なコストを支払わなければ、人間は身体感覚的な理解に到達できないことを実感した。
以上






