アクションを駆動するドキュメントの作成

アクションを駆動するドキュメントの作成

読み手が行動しやすいドキュメントを作るには、内容の範囲と対象読者を明確にし、必要な情報を網羅しつつ正確性を保つことが大切です。要点を強調し、具体例を示し、フィードバックやサポート体制を整えることで、スムーズな行動を促します。
Clock Icon2024.09.18

こんばんは。僕です。

ドキュメントの読み手に対し行動を促すにはどうすれば良いのか

以前、社内向けに用意している制度リファレンスの改善について、記事を書きました

その記事では主に、内容の理解を促すための改善について説明しました。

しかし、社内向けにドキュメントを作成する上で、さらにもうひとつ大事なことがあります。それは、読み手が適切な行動を取りやすいものにすることです。単に内容が理解できるだけでなく、「ところで自分は何をすればいいの?」と読み手が迷わないようなドキュメントを作るには、どのようなことに心がけると良いでしょうか。

今回は、これまで自分が取り組んだドキュメント整備の中での反省点や試してみたことなどをふまえて、読み手が次の行動をスムーズに取れるドキュメントの作り方について考えてみます。

1. 「このドキュメントが何なのか」をはっきりさせる

1.1 ドキュメントがカバーする範囲をはっきりさせる

本文中で扱う内容を、ドキュメントの初めに示しておくと良いでしょう。

特に、

  • このドキュメントを読むと何を理解できるのか
  • このドキュメントを読むと何ができるようになるのか

といったことを明示することで、ゴールを意識しながら読み進めてもらえるようになります。

1.2 ドキュメントの対象読者をはっきりさせる

書き手としては、何かひとつの内容について書いているつもりでも、様々な立場の方に向けた内容をひとつのドキュメントにまとめてしまいたくなることがあります。

しかし読み手にとっては、それら全てがひとつのドキュメントにまとめられている場合、自分には関係のないことまで読まなくてはいけなくなります。

立場の異なる人の視点も理解する必要があるようなケースであればそれで良いのですが、本来意識しなくて良いはずのことまで書かれていると、その内容を読み飛ばすための認知コストが生じます。

そのため、ドキュメントの対象読者を明確にし、できるだけ対象を絞って内容をまとめることが重要になります。

1.3 目次を見れば大まかな流れがわかるようにする

ドキュメント作成に用いられるツールでは、見出しを目次として自動的にまとめてくれるような機能を提供している場合があります。

目次としてまとめられた見出しを眺めたとき、全体の流れがスムーズに理解できるようになっているか確かめてみましょう。

目次を読んでもドキュメントの全体像が掴めない場合、文章の構成や見出しの付け方に失敗しているかもしれません。

全体像を掴みやすい目次になっていれば、読み手は必要な情報にアクセスしやすく、次の行動へとスムーズに繋げられます。

2. 情報としての完全性を確保する

2.1 内容を十分に網羅する

行動するために必要な情報がドキュメントの中に全て含まれていることを確認しましょう。

確認のためのテストとして、ドキュメント作成者自らが実際に読みながら必要な行動を完遂できるかどうか試してみるのも良さそうです。

★必要に応じて外部リソースへのリンクを提供する

「〇〇の資料を読んで、△△を実施してください」

とドキュメントには書かれているのに、肝心の〇〇の資料のありかが示されておらずわからない、ということが読み手にはありえます。

資料のありかをこれまでに何度も何度も繰り返し周知していたとしても、迷う読み手は必ず現れます。

「資料を読んでください」というような指示を書くのであれば、その資料のありかをその箇所で必ず示しましょう。ドキュメント作成のツールは、ハイパーリンクを使用できるものがほとんどだと思います。有効活用しましょう。

2.2 正確な内容を提供する

「正確な内容」と言うと、「正しい内容になっているかどうかチェックしよう」という話になってくるかと思います。しかしそれだけではなく、「正しく伝わる内容になっているかどうか」もチェックする必要があります。

部署内でレビューを実施するとき、部署のメンバーはドキュメントに関する知識をすでに持っている場合が多いです。そのため、ドキュメントの内容の正しさについてはチェックできても、知識のない人に対して正しく伝わる内容になっているかどうかについてはチェックしにくい可能性があります。

読み手によって違うものが想起されるような内容だと、行動も読み手によってバラバラになります。読み手の理解度にばらつきが出ないよう、語彙や表現をチェックできると良いでしょう。

2.3 内容の整合を取る

ドキュメントは、いくつかのページに分割されたり、それらのページ間で相互に参照(リンク)し合ったりという形で提供されることが多いです。それらのページが、それぞれ別のタイミングでリリースされる場合もあります。

段階的にドキュメントをリリースしていくと、あるページの内容と別のページの内容との間に齟齬・矛盾が生まれてくることもあります。複数のリリースの間に状況が変わっていたり、過去のドキュメントの内容が忘れられていたりと、その背景は様々です。

ドキュメントを作成する際は、関連する他のドキュメントの内容にも気を配り、相互に整合が取れているかどうかを確認できると良いでしょう。

3. スピーディーな判断と行動を助ける

3.1 要点やまとめを目立たせる

まさに宿命とも言うべき事実ですが、ドキュメントの読み手には、ドキュメントを読む時間がありません。

全ての内容を読まなくても、目次や強調箇所だけをかいつまんで眺めれば9割程度の内容を把握できるような体裁にしておくことが重要です。

3.2 具体的な事例を提供する

内容を短く伝えようと思うと、抽象的な説明に終始してしまう場合があります。

しかし、そういった説明だけで具体的なケースを想像できないような内容もあります。

ドキュメントの中に具体的な事例をストーリー仕立てで盛り込んだり、読み手に作成してほしい成果物のサンプルを提供したりといった方法で抽象と具体の両方を提供することで、取るべき行動を読み手がイメージしやすくなります。

4. 双方向のやりとりを可能にする

4.1 内容を最新に保つためのフィードバックを受け入れる

部署内で常にチェックしてドキュメントの内容を最新に保てるのが理想ですが、内容が古くなっていることに読み手が先に気づく場合もあります。

読み手が気づいたときにすぐに連絡をもらえるよう、ドキュメントには問い合わせフォームや連絡先を必ず添えるようにすると良いでしょう。

4.2 疑問点・不明点があった場合のサポートを提供する

このように工夫しても、ドキュメントが全ての読み手の状況をカバーできるわけではありません。特殊な状況や例外が生じ、「こういうケースではどのように行動すれば良いのだろう?」という疑問が生じることもあるでしょう。

そういった疑問点・不明点を解消できるよう窓口を設けて、相談があった場合は部署として責任を持ってサポートできるように体制を整えておくと良いでしょう。

まとめ

行動を促すドキュメントの作成について考えてきました。促す方法は「やってください」と発信を強めたり繰り返したりするだけではありません。読み手にとっての障壁を取り除き、自然と行動に移せるような環境を整えるというアプローチもあります。

以上の全てを完全に準備してドキュメントをリリースすることは難しいですが、折に触れてこれらの観点を段階的に適用することで、組織内の動線の改善に繋げられるのではないかと思います。

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