
「現時点の衛星通信サービスの現状を整理してみる」というタイトルでDevelopersIO 2026 TOKYOで登壇しました #devio2026
ウィスキー、シガー、パイプをこよなく愛する大栗です。最近は製造ビジネステクノロジー部に所属しています。
クラスメソッドがお届けするカンファレンスイベント DevelopersIO 2026 の東京会場のイベントで登壇してきました。
現時点の衛星通信サービスの現状を整理してみる
概要
Starlinkやスマホ直接通信の実用化が進む衛星通信サービスの現在地を整理します。国内主要キャリア(KDDI、楽天モバイル、NTT、ソフトバンク)と衛星通信事業者の関係に加え、インフラ視点を交えて解説してみます。なお個人的には Amazon Leo(旧称 Project Kuiper)が気になっており、その最新情報も織り込みたいと思います。
衛星通信の今
人工衛星は大きく分けて 3 種類あり、軌道の高度順に GEO / MEO / LEO となります。高い軌道の衛星では広範囲のエリアをサポートします。低軌道ではカバレッジが狭いため衛星を高頻度で切り替える必要があります。

衛星との接続は、専用アンテナ設置とスマホに直接とがあります。専用アンテナは、以前主流だったパラボラアンテナから、平面のフェーズドアレイアンテナへ変化しており高速通信を実現します。スマホに直接の場合には、専用アンテナはいらずスマホなどだけで接続できますが、テキストデータなど低速通信が主流で災害時の連絡などを想定したものになっています。au、ソフトバンク、NTTドコモは Starlink Direct ですでにサービスを提供しており、楽天は AST SpaceMobile でスマホでも高速通信を目指しています。

専用アンテナを設置して高速通信を行なう事業者の選択肢に、今後は Amazon Leo や O3b mPOWER などが加わります。
今まで衛星通信はインターネット接続が前提で非常時のバックアップなどの用途が主流でしたが、閉域網に接続できるようになり、衛星回線をシステムへ組み込めるようになってきています。
Starlink を測ってみた
衛星通信をシステムへ組み込むには、通信品質がどうなっているかが気になります。そこで実際に Starlink のネットワーク品質を計測してみます。
詳細はすでにブログ化しているため、こちらをご覧ください。
LEO は数分で頭上を通り過ぎるため高頻度で衛星のハンドオーバーを行います。既存の論文では Starlink が15秒周期で割り当てを更新していると述べられているので、実際に15秒ごとの変更でどの様な影響があるかを計測します。

1時間ほど計測して、以下のようになり地上回線並みの状況であることは確認できました。
- RTT 中央値:28ms
- パケットロス:0.08%
1時間の RTT のグラフを見ると 20〜50ms 周辺に集まっており、75〜100ms 程度まで定期的に跳ねています。パケットロスは1時間中稀に発生している状態でした。15秒周期で RTT が悪化し、パケットのロス率も上がります。

一番レイテンシのばらつきがあった2分間を拡大したグラフを見ます。15秒周期で RTT が 100msになりますが、それを跨ると RTT のばらつきが顕著に変化することが見て取れます。

100ms ごとに計測をしていますが、2回連続で通信できなかったのが1時間の中で3度発生しました。3回連続で途切れることはありませんでした。ただしアップリンクはダウンリンクに比べてパケットのロス率が高かったので、アンテナを設置した現場からデータを送信する用途では注意が必要となります。

0.2秒程度の接続断であれば TCP の再送機構で吸収できると考えられます。映像や音声の送信で UDP ベースのプロトコルを使用する場合には FEC を有効化すべきです。その様な工夫を行えば Starlink が十分な品質の通信回線として利用できると考えられます。

Starlink 以外の選択肢
Starlink は高頻度でハンドオーバーを行ない、帯域もベストエフォートで提供されています。そのため他の選択肢を検討したい場合もあると思います。

すでに日本で提供されている Eutelsat OneWeb では帯域確保のプランがあります。

今後提供される予定の SES 社の O3b mPOWER は、MEO(中軌道)であるため衛星間のハンドオーバーの頻度が少なく、帯域保証があります。日本ではシャープが2027年以降に提供予定となっています。

個人的に注目している Amazon Leo はまだまだ準備中の状態です。10月29日以降に Vulcan で 40 基を打ち上げる予定や、11月23日以降に Ariane 6 で 36 基を打ち上げる予定もあります。

ネイティブに AWS の VPC へ直結できるというのは、大きなアドバンテージだと考えています。

主要な衛星通信サービスを比較してみると、やはり Starlink 一強という様相です。しかし、他社も帯域保証やクラウドへの直結など特色がある機能があるため多様な選択肢が出てきています。参考に IRIS² を載せていますが、EU 主導で、すでに衛星通信サービスを提供しているヨーロッパ企業を集めて自前のネットワーク網を構築するという取り組みもあります。ただし IRIS² を日本で提供するという計画は今のところ無いようです。

まとめ
- 衛星回線は目的で選ぶ時代:速さなら LEO、帯域保証なら O3b mPOWER(MEO)、閉域なら直結サービス
- Starlink は速い。15 秒周期を前提に設計する:RTT 中央値 28 ms。断は最長 0.2 秒。アップリンクが弱い
- Amazon Leo と O3b mPOWER で選択肢が増える:AWS 直結(2026 年度内)、帯域保証(2027 年以降)
さいごに
Starlink は想像以上に安定しており高速な通信サービスです。しかし来年以降に他の選択肢が増えてくるので楽しみにしています。早く Amazon Leo のサービスが開始され、日本や ASEAN 各国で利用できる様になることを望んでいます。






