2 ビット量子化の MoE 「Nemotron 3.5 Bolt 74B-A9B」を DGX Spark で動かしてみた

2 ビット量子化の MoE 「Nemotron 3.5 Bolt 74B-A9B」を DGX Spark で動かしてみた

Expert の重みを 2 ビットに削り 24GB に収めた Nemotron 3.5 Bolt 74B-A9B を、公開翌日に DGX Spark の llama.cpp で動かしました。DFlash で単発 61.61 tok/s、日本語 8/9、コード 49 テスト全通過。24GB というサイズの読み方も書きます。
2026.10.16

はじめに

こんにちは、クラスメソッド製造ビジネステクノロジー部の森茂です。

NVIDIA が Nemotron 3.5 の新しいモデルを 3 つ発表しました。120B の Super VL、24GB に収めた Bolt 74B-A9B、そして 10 月 23 日に出る 4GB の Bolt E4B です。

https://blogs.nvidia.com/blog/nemotron-3-5-super-vl/

この中でまず最初に気になったのは Bolt 74B-A9B でした。総パラメータ 74B、1 トークンごとに使う重み(アクティブパラメータ)は 9B の MoE を、expert の重みを 2 bit まで削って 24GB に収めています。今回は NVIDIA が学習の段階から 2 bit を含めてリリースしています。

8 月に同じ Nemotron 3.5 の Lightning を公開当日に測っているので、今回も同じ課題・同じ条件で並べます(2026-08-12 時点の記事です)。

https://dev.classmethod.jp/articles/dgx-spark-nemotron-3-5-lightning-first-touch/

先に結論を書いておくと、2 bit の重みで日本語 8/9、コード生成 5 問 49 テスト全通過と、Lightning と同じか部分的に上の判定でした。公開当日の llama.cpp がすでに対応していて、モデルカードの DGX Spark 向けレシピをそのまま流すと 22 秒で立ち上がります。投機デコードを載せた単発の速さは 61.61 tok/s で、常駐は 31 GiB。128GB の DGX Spark で使うには余裕がありすぎるくらいで、むしろ「なぜこのサイズで出してきたのか」のほうが面白い問いになりました。

この記事では、公開翌日の Nemotron 3.5 Bolt 74B-A9B 24GB を DGX Spark の llama.cpp で動かした結果を紹介します。速度・日本語・コード生成・ツール呼び出し・画像を Lightning や GLM の 2 ビットと同じ条件で測り、最後に 24GB と 4GB というサイズの読み方を書きます。

Nemotron 3.5 Bolt 74B-A9B の素性

まず何者かを一次情報で押さえます。数字はモデルカードと config.json、GGUF のメタデータから取っています。

項目 値
パラメータ 74B(アクティブ 9B)
アーキテクチャ Mamba-2 + MoE + Attention のハイブリッド、画像は C-RADIO v4-H
層構成 88 層 = Mamba-2 40 + MoE 40 + Attention 8。shared expert 1、top-9
親モデル Nemotron 3.5 Super VL 120B-A12B(Star Elastic で圧縮、top-K は 22 から 9 へ)
量子化 expert を IQ2_XXS(1 要素 2.0625 ビット)、Mamba 層を NVFP4、埋め込みと出力層を Q8_0
コンテキスト 256K トークン
語彙 131,072
入力 テキスト、画像、動画(mp4、2 分まで)
ライセンス OpenMDW-1.1(商用利用可)
推奨サンプリング temperature 1.0 / top_p 0.95
配布 GGUF 本体 20.51 GiB、画像用 mmproj 1.61 GiB、投機デコード用ドラフト LiLiCorr 0.93 GiB

Lightning のときは 52 層のうち attention が 6 層でしたが、Bolt は 88 層で attention が 8 層です。親の Super VL と同じ層数で、config.json の llm_config を見ると NemotronHPuzzleForCausalLM という名前になっています。

Puzzle という名前のとおり、層ごとに MoE の形が違います。入力ごとに選ばれる expert の数は層によって 240 から 496 まで、中間層の幅も 1,536 から 2,560 まで 12 通りの組み合わせが並んでいます。Lightning は全層が 128 expert の top-6 で揃っていたので、ここは見た目からして別物です。モデルカードの説明では、「24GB 未満」という予算を与えた振り分け役(router)が層ごとに expert の数と幅を選び、親モデルから蒸留で削り出したとあります。親から子を切り出した跡が、そのまま層の凸凹として残っている形ですね。

2 ビットの中身も GGUF を開いて確かめました。

テンソルの型 本数 容量 中身
IQ2_XXS 160 16.30 GiB routed と shared の expert
NVFP4 80 2.30 GiB Mamba-2 層
Q8_0 114 1.68 GiB 埋め込み、出力層
F32 489 0.22 GiB norm など

20.5 GiB のうち 16.3 GiB が 2 ビットの expert です。NVIDIA は量子化後に QAD(量子化を前提にした蒸留)で精度を戻したと書いています。公開後に外から削る GGUF との違いはここで、2 ビットで動くことを前提に親から学び直しているわけです。

公式ベンチの対照表は、Lightning と Qwen3.6-35B-A3B、Gemma4 26B-A4B が相手です。

ベンチマーク Lightning 30B-A3B(BF16) Bolt 74B-A9B(IQ2)
Terminal-Bench 2.1 23.46 50.98
GPQA Diamond 75.57 86.43
BrowseComp 36.81 66.75
PinchBench 83.43 87.82
AA-LCR(長文) 49.19 64.06

Lightning の BF16 に対して、Bolt は 2 ビットの状態で Terminal-Bench が 2 倍です。アクティブが 3B から 9B に増えた分が、そのまま出ているように見えます。この看板が手元の課題でも出るかを見ていきます。

動かすまで

今回も拍子抜けするくらい、あっさり動きました。

llama.cpp の master には、公開当日の 10 月 15 日付で Bolt の対応が入っています。手元の DGX Spark には 8 月時点の llama.cpp があったので、master を取り直して GB10 向けに build しました。build の指定は -DCMAKE_CUDA_ARCHITECTURES=121 だけです。

起動コマンドは、モデルカードの「RTX Spark 128GB」向け 32GB レシピをそのまま使えます。

llama-server \
  --model "$MODEL" \
  --mmproj "$MMPROJ" \
  --batch-size 4096 \
  --ubatch-size 2048 \
  --ctx-size 262144 \
  --parallel 1 \
  -ngl 999 \
  --spec-type draft-dflash \
  --spec-draft-n-max 7 \
  --spec-draft-model "$SPEC_DRAFT" \
  --spec-draft-ngl 999 \
  --temp 1.0 \
  --top-p 0.95 \
  --flash-attn on \
  --jinja

投機デコードは DFlash 方式で、ドラフトは LiLiCorr という 0.93 GiB の別 GGUF です。llama.cpp の DFlash は --spec-type draft-dflash と --spec-draft-model の組で指定します。起動ログにドラフトの読み込みと n_max=7, block_size=8 が出るので、投機が載ったかはここで確かめられます。

ダウンロードから起動までの実測値です。

項目 値
重みの実サイズ 20.51 GiB(本体)+ 1.61 GiB(mmproj)
ドラフト(LiLiCorr) 0.93 GiB
起動 22 秒
常駐(DFlash あり) 31.4 GiB(空き 39.6 GiB → 8.2 GiB)
常駐(DFlash なし) 27.9 GiB

llama.cpp は重みを mmap で読むのでコンパイルも KV の事前確保もなく、GGUF を開いたらそのまま上がります。常駐の 31.4 GiB はモデルカードの「32GB レシピ」どおりです。設計目標の「batch 1、128K で 24GB 未満」より大きいのは、このレシピがコンテキストを 262,144 まで張っているためです。

モデルカードには vLLM のレシピもあります。nightly イメージに 2 bit 用の b12x カーネルを追加で入れる構成です。DGX Spark 向けの nightly-aarch64(10 月 15 日 push)でも起動しました。投機デコードなしの単発は 31.46 tok/s で、同じ条件の llama.cpp(39.47 tok/s)より 2 割遅い値でした。llama.cpp 側はさらに DFlash で 1.5 倍になります。この記事の数字は、速く上がって速く動く llama.cpp 側で揃えました。

測定条件

速度の章では、レシピ逐語の --parallel 1 と、他のモデルと揃えた --ctx-size 65536 --parallel 8 の 2 本を分けて測りました。日本語以降の課題はすべて後者で、投機デコードは載せていません。llama.cpp は --ctx-size を同時に処理する枠(スロット)の数で割るので、8 スロットでは 1 本あたり 8,192 トークンが上限です。サンプリングは推奨値の temperature 1.0 / top_p 0.95 です。予算(出力トークンの上限)は 8,192 を基本にし、打ち切りが出た課題だけ 2 スロット(1 本あたり 32,768)の起動で 16,384 の行を別に足しています。

比較対象は 2 つです。同じ llama.cpp で動く 2 bit の GLM-5.3-Flash(Unsloth UD-Q2_K_XL、320B-A18B)と、同じ Nemotron 3.5 の Lightning 30B-A3B(NVFP4、vLLM)です。GLM は別の DGX Spark で、Lightning は vLLM で測った値なので、速度は並べず品質の判定だけを並べます。GLM の思考の強さは最上位の max、Lightning と Bolt は high で揃っていません。その旨は各表の下に書きます。

速度

まずレシピ逐語の --parallel 1 で、投機デコードの効きを見ます。強制長 256 トークン・temperature 0 で 3 回測った中央値です。

構成 単発 tok/s TTFT(秒)
投機なし 39.47 0.238
DFlash あり(先読み 7 段) 61.61 0.217

1.56 倍です。ドラフトの受理率(先読みした候補のうち本体が採用した割合)は llama-server の統計で読めます。速度測定の固定文で 35%(511 本中 181 本、平均受理長 3.45)、日本語の 3 文説明で 39%、ツール呼び出しの短い応答で 56% でした。先読み 7 段のうち 3〜5 段が当たっている計算で、Lightning の DSpark で見た受理長 3.27 とほぼ同じ水準です。

同時実行数を変えた側は、他のモデルと揃えた --ctx-size 65536 --parallel 8、投機なしで測っています。

同時実行 1 本あたり tok/s 合計 tok/s TTFT(秒)
1 39.30 39.30 0.115
2 30.41 59.42 0.183
4 21.34 82.08 0.480
8 13.26 102.45 0.594

8 本同時で合計 102.45 tok/s、1 本あたりは 13.26 tok/s まで落ちます。単発の 39.30 から 3 分の 1 です。同じ llama.cpp の 2 ビット MoE である GLM-5.3-Flash は、別の機体で単発 17.72 tok/s、8 本合計 63.97 tok/s でした。アクティブ 18B の GLM に対して 9B の Bolt が 2.2 倍速いのは、動く重みの量の差がそのまま出ています。

Lightning のほうは vLLM で単発 79.59 tok/s、8 本合計 331.97 tok/s でした。エンジンが違うので同じ表には載せません。この差にはアクティブ 3B と 9B の差に加えて、llama.cpp の 2 ビット MoE のカーネルが 8 並列でどこまで伸びるか、という差も乗っています。並列で伸び悩むのは、モデルカードが「1 シーケンス」を前提に 24GB を設計していることとも整合します。この Bolt は 1 人で使うときに速いモデルで、チームで 1 台を共有するなら Lightning のほうが向いています。

日本語

日本語 10 課題を投げました。予算は 8,192、思考は high です。判定は機械で、文字数や必須語の有無、JSON がパースできるか、といった機械的に確かめられる条件で採点しています。

課題 Bolt 74B-A9B 消費トークン 思考の長さ Lightning GLM 2 ビット
50 字以内で答える ○ 251 652 ○ ×(63 字)
自由記述 ○ 460 770 ○ ○
コード生成 ○ 129 479 ○ ○
数値推論 ○ 335 557 ○ ○
語彙制約 ○ 1,715 2,918 ○ ×
JSON 整形 ○ 483 1,208 ○ ○
固有名詞つき要約 ×(本文なし) 7,841 12,303 × ×
図表の書き起こし ○(5/5) 1,302 2,778 ○(5/5) ○(5/5)
敬語への言い換え ○(5/5) 355 558 ○(5/5) ○(5/5)
長文からの抽出 ○(4/4) 542 1,130 ○(4/4) ○(4/4)
機械判定の合計 8/9 8/9 6/9

自由記述は機械で採点できないので合計から外しています。GLM の列は思考の強さが max、予算は同じ 8,192 です。

2 ビットの日本語は壊れていませんでした。GLM の 2 ビットが落とした 50 字制約と語彙制約を Bolt は通し、機械判定は Lightning と同じ 8/9 です。語彙制約の課題では、必須語 3 つを入れて禁止語 2 つを避けた 207 字の社内連絡文がそのまま使える出来でした。

落としたのは固有名詞を保ったまま要約する課題で、12,303 字考えたところで 8,192 トークンの枠を使い切り、本文が出ませんでした。この課題は Lightning も GLM も同じ落ち方をしていて、8,192 ではどのモデルも思考で紙を使い切ります。そこで Bolt だけ、スロットあたりのコンテキストを 32,768 に広げた別の起動で、予算 16,384 の行を測り直しました。

結果は変わりませんでした。16,384 トークンを丸ごと思考に使い、25,525 字考えたところで再び枠が尽き、本文は出ていません。他の 9 課題は 16,384 でも同じ判定です。Lightning は 16,000 まで広げると、20,678 字の思考のあとに本文を出して固有名詞を落とす落ち方でした。Bolt のほうはこの課題に限って思考が止まらない、と読むのが正直なところです。後で見る medium の設定では同じ課題を 1,105 字の思考で答えて 6 語中 4 語を残したので、この課題は思考の強さの選び方で見え方が変わります。

思考の長さに目を向けると、Bolt は Lightning よりだいぶ短く考えます。50 字で答える課題で Lightning が 7,245 字なのに対し Bolt は 652 字、敬語の言い換えでは 6,839 字に対して 558 字です。アクティブ 3B の Lightning は迷いながら長く考え、9B の Bolt は短く決めて答える。同じ 8/9 でも、答えにたどり着く道の長さが 10 分の 1 でした。生成速度は Lightning のほうが 2 倍速いのに、10 課題の合計時間は Bolt の 356 秒に対して Lightning が 307 秒とほぼ並んでいます。この思考の短さのおかげです。

思考の強さを変えた行も測りました。Bolt の思考は 3 段で、既定の high、最後の発話に「reasoning effort: efficient」を添える medium、そして思考を切る off です。

条件 機械判定 消費トークン合計 10 課題の所要 落とした課題
high(既定) 8/9 13,413 356 秒 固有名詞つき要約(8,192 の枠を使い切る)
medium 8/9 3,240 91 秒 固有名詞つき要約(6 語中 4 語、183 字)
off 7/9 958 31 秒 語彙制約(必須語を 1 つ落とす)、要約(257 字で字数超過)

medium が面白いところで、消費トークンが 4 分の 1、所要が 4 分の 1 になっても機械判定は 8/9 のままでした。固有名詞の要約も、high が枠を使い切って本文を出せなかったのに対し、medium は 183 字で 6 語中 4 語を残しています。落ちはしたものの、答えは出ています。思考を切ると 6 語すべて残す代わりに 257 字まで膨らんで字数制限を破り、語彙制約でも必須語を 1 つ落としました。Lightning と同じで、思考は指示を守るために使われているようです。1 人で対話に使うなら medium が釣り合いのよい設定に見えます。

コードを書かせる

日本語の仕様書からゼロで書かせる 5 問と、バグの入ったミニリポジトリを修正させる課題の 2 本立てです。採点はこちらで pytest を回して判定し、モデルの自己申告は使いません。

仕様からゼロで書く

問題 Bolt 74B-A9B 思考の長さ Lightning(8,192) GLM 2 ビット
slugify ○ 11/11 4,374 ○ 11/11 ○ 11/11
parse_duration ○ 16/16 8,696 ×(予算切れ) ×(予算切れ)
merge_intervals ○ 8/8 2,778 ○ 8/8 ○ 8/8
group_by_month ○ 6/6 1,057 ○ 6/6 ○ 6/6
top_k_frequent ○ 8/8 1,601 ○ 8/8 ○ 8/8
合計 5/5 4/5 4/5

全問正解で、テストも 49 個すべて通りました。差が出たのは parse_duration(「1h30m」のような文字列を秒に直す問題)です。Lightning はこの問題だけ 8,192 の予算を思考で使い切ってコードを出せず、16,000 まで広げてようやく解いていました。GLM の 2 ビットも同じ落ち方です。Lightning は 26,056 字、GLM は 27,064 字考えたところで紙が尽きていて、Bolt は 8,696 字の思考と 2,792 トークンで解き切っています。同じ予算で、同じ問題を、3 分の 1 の思考で解いたことになります。

既存のバグを直す

12 個のテストのうち 5 個が失敗するミニリポジトリを渡して、ファイル読み書きのツールだけで直させる課題です。

モデル 修正 ターン数 ツール呼び出し 所要(秒)
Bolt 74B-A9B 5/5 5 11 43.0
Lightning 5/5 13 12 33.6
GLM 2 ビット 5/5 5 10 72.0

3 つとも 12 テスト全通過まで持っていきます。Bolt は 5 ターンで直し切りました。Lightning は 13 ターンかけて同じ結果に届いていたので、1 ターンあたりに進む量が違います。壊れた呼び出し(パースできない出力)は 0 件でした。

ツールとして使えるか

エージェントの部品として使えるかを見ます。ツール呼び出しの形式は Lightning と同じ XML です。llama.cpp は --jinja を付けるだけでテンプレートからこの形式を読み取り、OpenAI 互換の JSON に直して返してくれます。vLLM のようにパーサ名を指定する必要はありません。

<tool_call>
<function=get_weather>
<parameter=city>
Tokyo
</parameter>
</function>
</tool_call>

基本的な呼び出しは 5 問すべて通りました。擬似ファイルシステムを渡してバグを探させる課題も 4 ターン・6 回のツール呼び出しで解け、壊れた呼び出しは 0 件です。ストリーミングでもツール呼び出しと思考の両方がチャンクに乗ってきます。

required で止まらなくなる問題は出なかった

Lightning で一番はっきりした問題は、「必ずツールを呼べ」と指定する tool_choice: required で同じ呼び出しを 159 回返し続けることでした。Bolt では出ません。

モデル required の挙動 返った件数
Bolt 74B-A9B 受理して 1 件で止まる 1
Lightning 受理して止まらない 159
GLM 2 ビット 受理して 1 件で止まる 1

Lightning のときは vLLM の qwen3_coder パーサとの組み合わせを疑っていました。今回は同じ XML 形式を llama.cpp のテンプレート経由で読んでいて、1 件で止まります。モデルの世代差なのか、エンジン側の違いなのかはこの 1 観測では切り分けられませんが、llama.cpp で Bolt を使う限りはこの心配はなさそうです。

複数のツールをどう呼ぶかも見ました。「東京と大阪の天気を教えて」のような 2 か所への問い合わせで、Lightning は 1 件ずつ 2 ターンに分けていましたが、Bolt は 1 つのメッセージに 2 件まとめて返しました。親の Super VL と同じ呼び方です。場面依存なので 1 回の観測で性格と決めつけませんが、ツールの往復に時間がかかる環境では有利な向きです。

エージェントの部品としての適性

opencode や Hermes Agent のようなハーネスに載せられるかを、6 つのプローブで見ます。ここで測っているのは各ハーネスが依存する能力であって、ハーネス本体を動かした結果ではない点は先に断っておきます。

プローブ high medium off Lightning(high)
40 個のツールから正しく選ぶ 4/6 4/6 4/6 5/6
長い system prompt のルール遵守 ○ × × ○
定型フォーマットの再現(5 回) 4/5 ○ 5/5 0/5 0/5(予算切れ)
応答言語の固定 ○(3/3) ○(3/3) ○(3/3) ○(3/3)
過剰なツール呼び出しの抑制 ○(2/2) ○(2/2) ○(2/2) ○(2/2)
マルチターンの往復 ○ ○ ○ ○

Lightning の列は予算 4,096 で測った値で、定型フォーマットは 16,000 まで広げると 10/15 まで改善していました。Bolt の 3 列は 8,192 です。

ツール選択は、40 個のツール定義を積んだ状態で 6 つの依頼を出し、期待どおりのツールを選ぶかを見ます。Bolt は 3 条件とも同じ 2 問を外しました。「毎朝 9 時に実行するよう設定して」で cron を作るツールを選ばないのは Lightning と同じ外し方で、Bolt はさらに「ファイルに追記して」で読み取りのツールを選びます。思考の強さを変えても同じ 2 問を外すので、思考の量より選び方の癖のようです。

定型フォーマットの再現は、日報のテンプレートを 5 回書かせて毎回同じ構造になるかを見る課題です。Lightning は 4,096 の予算で 5 回とも本文 0 文字でしたが、Bolt は high で 4/5、medium では 5 回とも同じ構造で書けました。high で崩れた 1 回は見出しの順も揃っていて、1 つの節が 3 行のところを 2 行で書いただけです。思考を切ると 2〜3 秒で返ってくるものの、5 回のうち 3 通りの形に揺れて、長い system prompt の「最後に要約の 1 行を置く」というルールも落とします。思考を切ったときの崩れ方も Lightning と同じでした。

一方で medium は、長い system prompt の要約行のルールを 1 つ落としています。定型を安定させたい用途と、長いポリシーを守らせたい用途で、釣り合う思考の強さが違うわけです。

ハーネス別の判定は、3 条件とも opencode・Hermes Agent・OpenClaw のすべてで「厳しい」でした。引っかかっているのはツール選択の 2 問と、条件によって定型か長い system prompt のどちらかです。実行層の仕事(ツールを呼び、結果を確かめ、バグを直す)は 5/5 で通しているので、Lightning のときと同じく、落とすのは書類仕事と選択の癖の側です。繰り返しになりますが、これは能力のプローブで、ハーネス本体を載せた結果ではありません。

画像

Bolt は画像も読めるモデルなので、GGUF 同梱の mmproj を付けて 3 つのプローブを通しました。

プローブ 結果 中身
保護具の列挙(工場の写真) ○ ヘルメット 2 つとベストを色まで挙げ、無いものは挙げない
棒グラフの数値読み取り ○(4/4) 17, 43, 62, 88 を順に転記
点検記録の OCR ○(CER 0.0) 日付、設備番号 AZ-4471、7.5 mm/s、判定、点検者を 1 字も落とさない

3 つとも通りました。幻覚(写っていない物を挙げる)は 0 件です。GGUF と mmproj の経路で通るのは静止画だけで、モデルカードにある動画入力は今回は測っていません。Lightning はテキスト専用だったので、同じ Nemotron 3.5 で画像を読めるのは Bolt の側の強みです。

なぜ 24GB と 4GB で出してきたのか

ここからは実測を離れて、サイズの読み方です。

モデルカードには設計目標が一文で書いてあります。「batch size 1、128K コンテキストで、配備時の常駐メモリを 24GB 未満にする」。量子化後の重みと、推論中に持つ状態(2 ビットの expert と 16 ビットの Mamba の状態)まで含めた予算です。この数字が狙っているのは、同じ日に発売された RTX Spark のノート PC と、32GB の GeForce RTX 5090 でしょう。発表ブログも「24GB に収めて、他のアプリと並行して動かす」と書いています。ゲームや動画編集の隣に常駐させる前提の数字で、128GB の DGX Spark で動かすと 90GB 以上が余るのはそのためです。

もうひとつの読み方は、作り方のほうにあります。Bolt は、Super VL 120B-A12B から Star Elastic という手法で切り出した子です。親の重みを 8K コンテキストで 72B トークン、128K で 48B トークンぶん蒸留して回復し、そのあと 2 ビットに削ってもう一度蒸留しています。Lightning は別の骨格(52 層、128 expert)で、Super VL の直系は Bolt のほうです。親を 1 つ育てておけば、予算を変えるだけで別のサイズの子を切り出せる。E4B 4GB が同じ手法かは公開されていませんが、サイズの階段を増やすコストが下がっているのは確かです。

階段を手元の機材で並べると、こうなります。

モデル 配布サイズ 想定している置き場
Bolt E4B 4GB(10/23) 4GB Jetson、GeForce RTX、ゲーム内 NPC
Bolt 74B-A9B 24GB 24GB RTX ノート、RTX 5090、同居前提
Lightning 30B-A3B NVFP4 で 21.6GB DGX Spark で 8 並列を速く回す
Super VL 120B-A12B NVFP4 で約 75GB DGX Spark の天井
Ultra 550B-A55B NVFP4 で約 335GB クラウドか純正 API

自分が最初に期待した「ドメイン特化のファインチューニングの受け皿」としては、Bolt 74B は少し違うところにいます。学習の起点になるのは量子化前の BF16 版で、Hugging Face の safetensors は 149.8GB あり、128GB の DGX Spark には載りません。2 ビットの GGUF は学習の起点ではなく、学習済みを配るための形です。手元で特化学習をするなら、BF16 が 65.8GB に収まる Lightning のほうが現実的で、4B 級の E4B が出れば Jetson 込みでそちらが本命になるでしょう。Bolt 74B は「賢い実行役を 24GB で配る」側のサイズだと読んでいます。

その読みで手元の数字を見直すと、収まりがよくなります。1 人で使う単発は投機デコード込みで 61.61 tok/s。Lightning より短い思考で同じ判定に届き、parse_duration のような 1 万字級の思考が要る問題も 8,192 の予算で解く。コーディングエージェントを 1 人で回す用途に寄せた調整に見えます。逆に 8 並列で 1 本あたり 13 tok/s まで落ちるので、チームで 1 台を共有する用途は Lightning に任せる。同じ Nemotron 3.5 でも、置き場で選び分ける設計です。

まとめ

Nemotron 3.5 Bolt 74B-A9B 24GB は、2 bit の重みでも日本語 8/9、コード生成 5 問 49 テスト全通過、ツール呼び出し 5/5 でした。2 bit は精度の劣化を覚悟して選ぶ数字のはずでしたが、手元の課題ではその劣化が出ませんでした。学習の段階で 2 bit を織り込む QAD の効きは、手元でも確かめられたと思います。

動かすのは簡単でした。公開当日の llama.cpp master が対応していて、モデルカードのレシピをそのまま流すと 22 秒で上がり、常駐は 31 GiB。DFlash の投機デコードで単発 61.61 tok/s です。一方で 8 並列は合計 102 tok/s と伸びず、設計が 1 シーケンス前提なのが数字に出ています。

24GB は DGX Spark のためのサイズではなく、RTX ノートや 32GB の GeForce で他のアプリと同居するための予算でした。ファインチューニングの起点は BF16 の 149.8GB で手元には載らないので、特化学習の受け皿は Lightning か、10 月 23 日に出る E4B に回ります。Bolt 74B は、賢い実行役を 24GB に詰めて配るためのモデル、というのが今回の読みです。

続きとしてやりたいのは、10 月 23 日に出る Bolt E4B 4GB です。手元には Jetson Orin Nano Super があるので、4GB が本当にエッジで動くのか、特化学習の受け皿になるのかを、同じ課題で測ってみる予定です。

参考リンク


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