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セブに移住しようとしたが、色々あって長野にログハウス借りて住んでる人の話

2022.02.07

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2020年8月に住み慣れた東京を離れ、八ヶ岳の麓にある長野県富士見町へ移住しました。そこに至るまでの経緯や実際にやってみて感じたことなどを書きたいと思います。

この記事は「いつかどこかへ移り住んでみたい」と考えはじめている人向けの内容です。技術的な話は全く出てきませんがご容赦ください。

やらずして後悔するよりやってみるべし

私は東京生まれビーバッブ育ちの40代、生まれてこの方ずっと東京都民として暮らしてきました。30代後半に差し掛かったあたりで「もう東京でやりたいことないな」と思いはじめ、漠然と別の土地で暮らしてみたいと考えるようになりました。

ですがプロマネという職種の性質上、お客様と対話してナンボの世界で、多くのクライアントがある東京を離れる=ジョブ的な死を意味する、というのは少し言い過ぎにしても、仕事で価値を出せなくなってしまっては本末転倒、なかなか踏み込めずにいました。いや今思えばただ何となくキッカケを待っていただけかもしれません。

数年が経過して40代に入り、ずっと元気だった母が病に倒れました。家族で最後まで闘いましたが病気に打ち勝つことはできませんでした。

実家を整理をしていると、私がまだ20代だった頃に母と共に海外を旅してきた数々の写真が出てきました。イタリア、イギリス、ドイツ・・・果てはアメリカ、メキシコを経由してキューバ。懐かしい思い出です。てか若いw

その時に急に思い出したというか、取り戻したというか。人生は一度きりだし、やってみずして後悔するより、やってみてダメなら変えればいいじゃんよ、っていうあの頃の感覚。

今から約三年ほど前の話です。

セブ島への移住計画

何かをやる気になった時の行動だけは早いのですが、できるかできないかじゃなくてやるかやらないか、ということで海外に移住することにしました。

  1. あまりに錆びついた英語力を磨ける場所
  2. これまで足を踏み入れたことがない場所
  3. 仕事に繋がる開発拠点を作れそうな場所
  4. 将来的に経済的な発展が望めそうな場所

という条件にいくつか調べて、公用語として英語がある、永住型ビザが取りやすい、若く有用なエンジニアがいる、人口動態的に見て今後経済が発展するだろうなどの理由で、一度も行ったことはありませんでしたが、フィリピンのセブ島に決めました。正直バナナが美味しそうなイメージくらいしかないです。

周囲から「山本が突然失踪した」などと思われるといけませんので、部長と社長にはやってみたいことを雑に説明し、家族には「啓示を受けた」とか謎の言葉を残して、2019年5月にセブのITパークという場所に飛びました。

目的は同国の退職庁が発行している「SRRV」という特別永住権を取得することでしたが、せっかくなので1Rのコンドミニアムを1ヶ月ほど借りて滞在しつつ、現地IT企業とのコネクションを広げながら、実際にフルリモートでプロジェクトを支障なく回せるのか、という実験も行うことにしました。

行ってみてはじめて繋がるご縁

縁というは不思議なもので、現地のコワーキングスペースで知り合って友だちになり、そこからまた誰かを紹介して頂いたり・・と、そんな人の優しさにしっかりと甘えていくスタイルでいもづる式に繋がりが広がっていきました。

セブに拠点を構えるイケてるITカンパニーのオフィスを訪問させて頂いて、オフィスを立上げた当時の貴重なお話を聞かせて頂いたり、当時マニラにいたメンバーの紹介で、その後に実際にプロジェクトを一緒にやることになる開発会社(株式会社gecogeco)のエンジニアの方々と酒を飲みながらキャッキャウフフしたり、コンドミニアムの近くにある屋台村で食事をしている時に知り合った国際夫婦にたまたま誕生日を祝ってもらったり(*1)と、東京にいるときよりも数十倍濃い時間を過ごすことができました。

その節は皆さま本当にありがとうございました。

*1)そのまま気風のいい韓国人の旦那さんと意気投合しすぎた結果、近くで飲んでいた様々な国の方々を巻き込みつつ国際的どんちゃん騒ぎに発展してしまいました・・反省しています。

プロマネでもフルリモートは可能

日本を発つ前に、プロジェクトメンバーやクライアントさんに「ひと月ほど日本を離れますがご安心ください」とは伝えてはいたものの、何かあってもパっとは戻ってこれません。

実際やってみた感想としては、会議も画面越しだと対話している相手の感情のゆらぎや、場の温度感みたいなものが汲み取りにくく、どうしても対面とのギャップを感じざるを得なかったです。ただ1ヶ月くらい続けていると慣れてくるというか、思ったよりは「フルリモートでもいけそう」という感覚をこの時に持てたことは大きな収穫でした。

そして世界は未曾有の事態に突入

無事フィリピンの永住型ビザを取得して帰国、その後も現地エンジニアの方々との開発ミーティング、実際に住めそうな場所探しなどでちょくちょくセブに足を運んでいました。

と、ここまではよかったのですが、2020年初頭に見つかった新型ウイルスの影響によって世界中で渡航制限がされてゆく中、これから世の中が大きく変わっていくという予兆を感じました。

せっかく手間暇を掛けて取得したビザだったのですが、セブ移住計画は自分の中で無期限凍結にして、いずれにしても東京を離れることは決めていたので、ターゲットを海外→国内へシフトしました。

セブから長野に移住先をピボット

国内にも札幌、福岡、沖縄など・・魅了的な候補地はありましたが、結果的に選んだのは長野県富士見町でした。

長野は子供の頃からよく遊びに行っていて馴染みがあったというのもありますが、八ヶ岳山麓の雄大な自然に囲まれ、都内まで特急で二時間というアクセスの良さ、また富士町自体が地域活性化のために、様々な取り組みを行っていることが興味を持った理由です。

移住&テレワーク支援制度の存在

富士見町が自治体として取り組んでいる施策の一つに「移住&テレワーク支援制度」というものがあります。

これは県外からの移住者で森のオフィスを利用する方を対象に、翌年3月まで「毎月8万3千円分の家賃と光熱費を補助する」というもので、移住を検討している方にとってはまさに神のような制度です。この移住支援の制度があったことが大きな決め手になりました。

富士見町|移住&テレワーク支援制度

森のオフィスがめちゃめちゃイイ

それと「森のオフィス」という超イケてるコワーキングスペースがあることもとても魅力的でした。富士見町のテレワークタウン構想を原型に、ルートデザインさんが企画・運営を行っており、一言で言うと、地域の方と移住者の方を繋ぐ交差点というか、ここから新しい出会い、コラボレーションのプロジェクトが生まれたりする、アイデアの着火点のような場所です。

富士見 森のオフィス

Route Design合同会社

役場の方と話して地域の課題を知る

2020年4月に移住&テレワーク制度に申込み、富士見町役場や森のオフィスを運営されている方々とリモート面談する機会を頂きました。

地方財政の現状や、これから町が取り組んでいく課題などについてお伺いし、地方と都市圏のあり方、新しい働き方や暮らし方など、色々な意見交換をさせて頂きましたが、役場の方のそれら課題に対する向き合い方が真剣で熱量を感じました。

実際多くの自治体でこの先の深刻な高齢化と人口減少、地域産業をどのように活性化させて、暮らしやすい町を作っていけるか、移住者を増やせるか、そのために今何ができるのかをガチで考えていらっしゃる。

これはプロダクト開発にも言えますが、ステークホルダーがその取り組みを行う目的やその背景、現状の課題を私事としてしっかり認識しているかってとても大切なことだと思っています。

シビックテックとかプロボノを考える

ITテクノロジーの利活用は都市圏中心に考えがちですが、実はこうした地方にこそ必要なのではないか、とも感じました。これら日本全体の課題という意味では、IT業界に身を置くものとして個人でも何か役に立てることがあるかもしれません。

こうした課題にシビックテック(IT活用して地域課題を市民で解決をしていこうぜ!的な取り組み)という動きも世界中で起こっていますが、ぶっちゃけIT人材は都市圏に集中していて、そういう事ができる人が不足してるっていうのが現実だと思います。

私たちは幸いなことに地理的な制約なく働ける/働きやすいという武器があるので、これまで磨いた技術を持って日本各地へ分散しよう。そうしよう。

この後は実際に私が長野に移住してどんな暮らしをしているか、という部分についてお話をしたいと思います。

標高1250mのログハウスに住む

土地勘もないので駅周辺のワンルームでも借りればいいかー、くらいに考えていたのですが、物件探してますと役場の方に相談したところ「山本さん、あんた運がいいよ。80年に一度の物件があるけど見る?」とか言われて、半ば強引に連れてこられたのが、標高1250mの別荘地帯にあるログハウスでした。パッと見で150平米くらいあります。いやいや広すぎるでしょw

その後にフツーのワンルームもいくつか見て歩いたのですが、最初に見てしまったがカッコいいログハウス。ガンダム見たあとにザクには乗れない。翌日、ログハウスの賃貸契約書にサインしていました。

これだけ広さがあれば自宅兼作業場という以外の使い方もできそうですね。2020年8月に引越しました。

まずはログハウスをIT武装化

標高1250mだろうがインターネットさえあれば生きていける。幸いログハウスには光ファイバーが引き込まれていたこともあって、工事に1ヶ月ほど待たされましたが無事開通しました。回線めっちゃ遅かったらどうしよう・・と心配していましたが、下り帯域で200Mbpsくらいで安定して出てるのでホッとしました。

照明は備え付けが白熱球だったものを全てLEDに換装して節電。できるだけ家をスマートスピーカーで制御できるように、モーションセンサー、赤外線ハブ、スマートスイッチ、スマート電球などを購入して、日常生活をできるだけ省力化できるように改造しました。

24時間、家の中で人の動きがないと、東京にいる家族に自動でメッセージが飛ぶ仕組みを作り孤独死対策を施しました。たまにセンサーが誤作動することがあって電話が掛かってきます。

車ないと生きていけない

最寄りコンビニ/スーパーまで片道8キロ(車10分)という場所ですので車がないとまず生きていけません。買出しは週一回。毎日の食事は99%手作りします。作れるものは何でも作ります。ジャムも自分で作ります。ジャムおじさんです。

ただ毎食フルスクラッチで作る、というのも時間が掛かりますので、週末にごはんをまとめて炊いて冷凍、ハンバーグや餃子を大量に製造して冷凍、余った野菜で保存が効く惣菜を作っておくなど工夫して仕事が忙しい時にも対応しやすいようにしています。

緊急時に備えて缶詰やレトルトも用意していますが、実際あまり食べる機会はありません(時々消化して入れ替えてます)

仕事しやすさは最高レベル

日本有数の寒冷地だということは後で知りました。冬はマイナス10度以上になりますが降雪は少ないです。夏はエアコンいらずで湿度も低く、終日快適に仕事ができます。こちらに移住してから「日本の四季の美しさ」を肌で感じられるようになりました。

会社で余剰となったモニターや椅子を貸し出してもらっていることもあり、オフィスと同等かそれ以上の作業環境を得られています。周辺には動物しかいないので静かです。リモート会議も捗ります。

プロジェクト合宿にも使える

ログハウスにして一番よかったなと思ったのは、社内メンバーが気分転換にワーケーションしに来たり、マネジメント合宿やプロジェクト合宿に使ったり、地域交流でホームパーティしたりと、単純にスペースの活用方法が広いということでした。

地球に優しくサステイナブルな生活

東京にいた頃に比べると、めちゃめちゃエコな生活になったと思います。ジャムおじさんは食材もほとんど廃棄しないですし、会社帰りに一杯飲んでくとか、週末にどこかに遊びに行ったりする機会もなくなったので、とにかくこれ以上ないわっていうくらい生活がミニマルになりました。森の動物たちが友だちです。

冬場は太陽光/運動不足に注意

冬場は11月下旬くらいから4月下旬くらいまでと長いのですが、その寒さから屋外に出て散歩するなどの機会が減ります。これは実体験なのですが、人って十分に太陽光に当たっていないと、体内時計が狂ってくるのか、夜に寝付きが悪くなる→睡眠不足→日中に眠くなる→どんどんやる気がモゲ太郎化していきます。

晴れた日は寒かろうが外でて太陽光補充、定期的に筋トレなどをしていないと、個人差はあると思いますが知らぬ間にゾンビ化していくので、この辺りは気をつけるべきところだと思いました。

これからの働き方とか生き方とか

とりとめのない話になってしまいましたが、セブへの移住計画から始まり、紆余曲折あって結果的に長野に移住、当初目指していた目標とは全然変わってしまいましたが、今の生活は気に入っています。

この先もずっとここに住むかはわかりませんが、しばらくはここを拠点しながら、今自分が出来ることをやっていきたいと思います。また世界の状況が変わってきたらセブ移住計画を再始動するかもしれません。

私たちはIT業界ということもあって、たまたま今の時代に自由な働き方を選択しやすいという恵まれた状況になっているだけだと思います。リモートワークしたくてもできない方、世界が否応なしに変わっていく中で本当に辛い思いをされている方も大勢います。

そういった多くの方々と共に私たちの社会が成り立っているということも忘れてはいけないですし、そうであるなら、いま比較的自由な選択肢を与えられている私たちひとりひとりが、自分の周りや社会に何かできることはあるのかな、と、少しだけ自分ていう枠を広げて考えてみて、これから、どういった人と関わり、どこに暮らして、どう生きていくのかってこんな時代だからこそ考えてみるのもよいかと思います。

まとめというか最後に

移住や暮らし方をテーマに、私が体験談したことを思いつくままに書いてしまいましたが、最後まで読んでくれてありがとうございました。これから何か新しいことやってみようかなとか、これから地方移住をしてみようかな、とか考えている方にとって何かの参考になれば幸いです。