
FinOps & クラウドコスト関連ナレッジ - 2025年7月
近年、クラウドコストに関する課題が注目を集めています。私自身も注目し、キャッチアップしているテーマです。そんな中で、同じ関心ごとをお持ちの方のお役に立てればと思い、個人的に気になった記事をシェアしています。
アップデート
主に AWS 関連のアップデートです。
Amazon S3 Express One Zone がコスト配分と属性ベースのアクセス制御用のタグのサポートを開始
2025年7月に更新されたAWS の新しい無料プランを試してみた
Amazon S3 Tables が圧縮コストを最大 90% 削減
Amazon S3 Metadata が既存のオブジェクトのサポートを開始し、料金を最大 33% 引き下げ
[アップデート] AWS Price List API が新たに 4 つのクエリフィルターをサポートしました
AWS コスト異常検出の精度がモデルの強化により向上
[アップデート] AWS Pricing MCP Server が利用可能になりました
AWS Pricing MCP Serverでどれぐらい正確にランニングコストを見積もれるか試してみた。
[プレビュー] S3ベースの低コストなベクトルストレージ「Amazon S3 Vectors」が発表されました (Bedrock Knowledge Basesのベクトルストアとしても使える!)
BigQuery, safer by default from September 2025
(BigQuery、2025年9月からデフォルトでより安全になります)
(カスタム割り当てを使用して BigQuery のコストに制限を設定する方法)
新しいワイルドカードステートメントにより AWS Organization のタグポリシーを簡素化
Cost Optimization Hub がコスト最適化の表示においてアカウント名のサポートを開始
トピック
先日 テクノロジー投資の価値を計測して最大化するためのグローバルスタンダードな方法論の一つとされる TBM(テクノロジー・ビジネス・マネジメント)を推進する TBM Council Japan が主催する TBM Summit 25 へ参加してきました。
財務からテクノロジー、テクノロジーからビジネスまで一貫したつながりを持たせた上で IT 投資における評価・判断を実践する企業の事例を聞きながら、改めてこの領域の重要さを感じました。今月はちょっと背伸びをして経営やビジネスに関する記事をトピックとしてピックアップしました。
FinOps-Enabled Executive Decisions
(FinOps を活用した経営判断)
FinOps をビジネス戦略と IT 投資における経営判断に活用するために必要とされる優先事項やそれらを実現するために経営陣と FinOps チームが実行できるアクションが紹介されています。
最近ではスコープを拡大しているとはいえ IT コスト管理や IT 投資といった経営レベルでの文脈で FinOps を活用するには果たすべき機能が多く存在しているというところでしょうか。全てが完璧に実践出来なければならないというものではないでしょうから、特定領域から積み上げて広げていくことや従来の方法と連携がスタートとしては良さそうですね。
Becoming "business first" by tracking AWS workloads with business metrics
(AWS ワークロードをビジネスメトリクスで追跡することで「ビジネスファースト」になる)
テクノロジー指標だけではなくビジネス指標を組み合わせて評価することでより良いクラウドの成果評価や最適化が実現します。とはいえ適切なビジネス指標の定義や対応するテクノロジー指標の選定、紐付けは難しい取り組みです。記事の中では代表的な指標例や選択の落とし穴、アプローチが解説されています。
何度か読み込んで実際の例などに触れないと身につかない印象を受けました。。
Proven Practices for Succeeding with a Multicloud Strategy
(マルチクラウド戦略で成功するための実証済みのプラクティス)
コストに特化した内容ではありませんが、最近増えているマルチクラウド利用における 7つのプラクティスが紹介されています。
個人的には以下の二つが重要かと考えています。この部分がコアとなるため十分ではない状況下で実施された場合、判断や評価軸が曖昧となり問題が発生した際の対応にも混乱をまねく可能性があります。一つ拠り所となる指針があると関係者での認識も合わせやすいですよね。
1. 明確な戦略とそれを支えるガバナンスを持つ
3. 長期的な統合戦略を持つ
ナレッジ
Amazon Aurora 概要編 - コスト最適化【AWS Black Belt】
6月に複数実施された Aurora に関する Black Belt のコスト最適化をテーマにした動画です。
基本編と応用編の二つのアプローチで構成されています。最近では Compute Optimizer での Aurora Storage に関するレコメンド対応などのアップデートもあったため、動画を見ながら改めて Aurora コストと向きあうのも良いかもしれません。
Allocate Amazon S3 objects costs by business unit using Storage Lens and Athena
(Storage Lens と Athena を使用して、Amazon S3 オブジェクトのコストをビジネス ユニット別に割り当てる)
S3 に付与されたタグやプレフィックスからストレージレンズで利用単位を定義して CUR と紐づかせることで S3 バケットを複数の部門で共有して利用するユースケースにおいても、その利用やコストのショーバックを実現するためのソリューションの紹介記事です。
人も時間もないスタートアップでFinOpsどう進めたか。トラフィック370%増、コストは維持
Google Cloud を利用されているスタートアップ企業(カウシェさん)の中での FinOps の取り組みが書かれています。取り組まれたことが一つ一つ書かれていて、リアルな体験談です。
SREとソフトウェア開発者を集めた専門チームによる、開発組織全体を巻き込んだコスト削減の取り組み
こちらは アンドパッドさんの取り組み記事です。会社の状況が違えば課題も異なり、複数プロダクトと開発組織におけるコスト最適化のプロジェクト推進と取り組みが紹介されています。コスト版ポストモーテムという取り組みの導入を進めているようです。とても気になります。
Simplify Departmental Cost Allocation with AWS Organizations and Lambda
(AWS Organizations と Lambda で部門コスト配分を簡素化)
AWS Organizations で定義した OU では Cost Explorer などのデータをフィルタリングすることができないため、その情報(OU)をコストカテゴリで利用するというワークアラウンドがあるようです。ただし OU 配下のアカウントに変更があった際に追従できないため今回のソリューションで対応するといった内容となります。
FinOpsとタグ付け防止対策 / CCoE Osaka FinOps Tags
永遠のテーマでもあるタグ付けに関して、ベーシックなタグ付けの説明から実際の取り組みが紹介されています。これからタグ付けを始めようとされている方にはイメージ付けるのにも良いスライドです。
Getting Started With FinOps in AWS: Strategies, Tools, and Best Practices
(AWS での FinOps 入門: 戦略、ツール、ベストプラクティス)
AWS, Azure, Google Cloud での FinOps 入門記事となります。製品ベンダーによる記事のため、何かを保証するものではありませんが同じフォーマットで書かれているので、利用していないクラウドでの方法が知れる興味深い内容です。
Optimize your ElastiCache costs by moving to Valkey | The Keys to AWS Optimization | S14 E1
(Valkey への移行で ElastiCache コストを最適化)
Valkey を利用することのメリットと CUR から移行対象や節約額の算出、移行に関する内容が紹介されています。
また先日 ElastiCache for Redis OSS バージョン 4 系と 5 系の延長サポートに関するリリースがされており、その中で Valkey へのアップグレードが推奨されているため、移行を検討する際の参考にもなりそうです。
FinOpsオートメーションでクラウドコスト最適化を実現する3つの方法
FinOps の一つのテーマでもある自動化に関する解説と PagerDuty で用意されている テンプレートが紹介されています。
手動で実施することの限界と繰り返し作業の生産性を考慮すると任せられる部分は積極的にツールやサービスにお願いしたいですね。PagerDuty をご利用中の方は一度テンプレートリストを確認してみるのも良いかもしれません。
AWS FireLensでECSログコストを50%削減!Fluent BitとKinesis Data Firehoseを活用したログ転送の最適化
ECS からのログを AWS FireLens を利用してログ種類に応じた最適な「収集」「転送」「保存」を実現することでコスト半分以上に削減された取り組み記事です。
ログに関するコンポーネントを見直すことはとても効果的です。クイックウィン施策を実施した次のステップとしても、お勧めです。
さいごに
記事を書いているとあれもこれも色々共有したくなって、つい長くなってしまいます。
NotebookLM で本記事を音声解説してもらうと聞きやすい解説してくれるはずなので、お勧めです。
是非、試してみてください。