サイボウズ ガルーンをAWSに構築してみた

2017.08.31

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まいど、大阪の市田です。
今回は、サイボウズ ガルーン(以下、ガルーンと表記)をAWS環境に構築してみたので、そのご紹介になります。

構成

今回は下記ドキュメントにある「サーバ分離構成」を構築しました。

サイボウズ ガルーン バージョン4.2 インストールガイド

実際の構成図は以下です。

garoononaws-simple-diagram

AWSでデータベースといえばRDSがよく利用されますが、ガルーンの場合、DBに対してNFSマウントする必要があるので、今回は全てEC2で作成します。

インスタンスのOS

ガルーンがサポートしているLinuxはRed Hat Enterprise Linux 5〜7なので、今回は2017年8月時点で最新の下記AMIを利用しました。

  • Red Hat Enterprise Linux 7.4 (HVM), SSD Volume Type - ami-30ef0556

EBSサイズやインスタンスタイプは利用可能な最小のものにしています。

Security Group

セキュリティグループは下記の通りです。

Appサーバ用グループ

ポート プロトコル ソース 備考
80 TCP ELBのSecurity Group ELBからのアクセス用途です
22 TCP 踏み台サーバのSecurity Group 踏み台サーバからのアクセス用途です

DBサーバ用グループ

ポート プロトコル ソース 備考
3770 TCP AppサーバのSecurity Group AppサーバからのDB(バンドル版MySQL)アクセス用途です
2049 TCP AppサーバのSecurity Group AppサーバからのNFSv4アクセス用途です
22 TCP 踏み台サーバのSecurity Group 踏み台サーバからのアクセス用途です

ELB用グループ

ACMでHTTPSによるアクセスを行いたいので、443ポートのみ許可しています。

ポート プロトコル ソース 備考
443 TCP 拠点IP ガルーン利用拠点からのアクセス用途です

踏み台サーバ用グループ

ポート プロトコル ソース 備考
22 TCP 拠点IP 保守拠点からのアクセス用途です

やってみた

上記の通り、VPCとインスタンスを作成して下さい。特に難しい部分は無いかと思いますので、それぞれについては割愛させて頂きます。

ガルーンのインストール

それではドキュメントに従って作業を行っています。
ドキュメントによると、途中までは全てのサーバで同じ作業を実施することになっているので、この節での作業は3台全てのサーバで実施して下さい。

まずはApacheをインストールして、KeepAlive設定を無効にします。

# yum -y install httpd
# echo "KeepAlive Off" >> /etc/httpd/conf/httpd.conf
# systemctl start httpd

Appサーバの場合は自動起動を有効にしておきましょう。

# systemctl enable httpd.service

次にSELinuxを無効化します。正しくポリシーを設定することでSELinuxが有効でも問題ないかと思いますが、検証の時間が取れなかった為、ドキュメントに記載の通りに進めます。

# sed -i -e 's/enforcing/disabled/g' /etc/selinux/config

設定を反映させる為、再起動します。

# reboot

再起動が完了したらガルーンに必要なパッケージ等をインストールします。

# yum -y install libaio libjpeg-turbo libpng perl perl-Data-Dumper wget unzip

これで準備ができたので、ガルーンをインストールします。
今回は下記の試用版のガルーンを利用します。下記のページから「サイボウズ ガルーン 4.2」のLinux(64bit)版をダウンロードします。

試用する(パッケージ版) | サイボウズ ガルーン

今回はサーバから直接インストーラをダウンロードして実行します。インストーラのURLはタイミングによって変わる可能性があるので、上記サイトで確認してから実行して下さい。

# wget http://download.cybozu.co.jp/cbgrn/grn-4.2.0-linux-x64.bin
# sh /tmp/grn-4.2.0-linux-x64.bin

最初に試用許諾契約が表示されるので、スペースキーまたはEnterキーで一番下まで目を通します。

01-garoon-install-agreement

試用許諾契約に同意の場合は「yes」を入力して下さい。

02-garoon-install-agree

次にインストール識別子を指定です。デフォルトのままとします。必要に応じて指定して下さい。

03-garoon-install-id

使用するMySQLの選択です。バンドル版のものが推奨とのことなので「1」を選択します。

04-garoon-install-mysql

ガルーンのプログラムとデータのインストールディレクトリーの指定です。ここもデフォルトのままとします。必要に応じて指定して下さい。

05-garoon-install-pgfile-dir

次に各種パスワードの設定です。ここでは以下のパスワードを設定します。これらのパスワードは3台のサーバで全て同一にして下さい。

  • MySQLの管理ユーザのパスワード
  • MySQLの接続ユーザのパスワード
  • ガルーンの管理者(Administrator)のパスワード

06-garoon-install-passwords

AppサーバーのCGIディレクトリーの指定です。デフォルトのままとします。必要に応じて指定して下さい。

07-garoon-install-cgi-dir

Appサーバーのドキュメントルートディレクトリーの指定です。これもデフォルトのままとします。必要に応じて指定して下さい。

08-garoon-install-doc-root

Webサーバーの実行ユーザー名の指定です。正しければそのままEnterキーを押します。間違っていれば正しいものを指定して下さい。

09-garoon-install-webserver-user

最後にサマリーが表示されます。問題無ければ「yes」を入力して、インストールを実行して下さい。

10-garoon-install-sammary

インストールが完了すると、完了の表示やガルーンのログインURL等が表示されます。
このログインURLはインストーラで一意に表示されているようなので、適宜読み替えて下さい。

11-garoon-install-complete

インスタンスの搭載メモリー量が8GB以上の場合は、mysqldの設定を変更する必要があるようですが、今回は検証用としてt2.microを利用しているので、設定はそのままとします。ご利用の環境に応じて変更して下さい。

尚、変更内容はガルーンのインストールドキュメントに記載されています。
(P.35「2.4.2節 MySQL の設定を変更する」参照)

以上の作業を全てのサーバで実行します。

サーバー分離構成に変更する

ここからは、ドキュメントのP.50「5章 サーバー分離構成で運用する」を参考に作業を進めていきます。
まず、全てのサーバーで、Webサーバー(httpd)を停止します。

# systemctl stop httpd.service

次に全てのサーバーでガルーンのサービスを停止します。停止するサービスはスケジューリングサービスとバンドル版MySQLの2つです。

# /etc/init.d/cyss_cbgrn stop
# /etc/init.d/cyde_5_0 stop

プロセスが全て停止できたら、各Appサーバのデータベース接続先の設定を変更します。
/var/www/cgi-bin/cbgrn/lwc.iniの設定を次のように編集します。

prop:_host = "val:127.0.0.1:3770"
↓
prop:_host = "val:<DBサーバのプライベートIP>:3770"

各Appサーバーのセッションデータの保存方法を確認します。/var/www/cgi-bin/cbgrn/php.iniに記載の[Session]セクションでsession.save_handler = filesとなっていることを確認します。
もし他の値が設定されている場合は「files」に変更して下さい。

[Session]
session.save_handler = files

次に全てのサーバのデータの保存領域の設定を確認します。/var/www/cgi-bin/cbgrn/common.iniに記載の[Session]セクションでsave_pathと、[Files]セクションのdirの設定が下記のようになっていることを確認して下さい。

(中略)

[Session]
cookie_lifetime = "0"
cookie_path = "/"
file_lifetime = "1"
save_path = "/var/www/cgi-bin/cbgrn/sessiondata/"
handler = "file"

(中略)

[Files]
dir = "/usr/local/cybozu/mysql-5.0/files/cbgrn"

上記の設定を踏まえて、DBサーバ(db-01)でNFSの設定を行います。DBサーバ/etc/exportsを下記のように記載します。
AutoScaling環境など、AppサーバのIPアドレスが変わることもあり得るのでサブネット単位で指定しています。

/var/www/cgi-bin/cbgrn/sessiondata 10.0.3.0/24(rw) 10.0.4.0/24(rw)
/usr/local/cybozu/mysql-5.0/files 10.0.3.0/24(rw) 10.0.4.0/24(rw)

次にDBサーバにNFSサーバをインストールして起動します。自動起動設定も有効化しておきましょう。

# yum -y install nfs-utils
# systemctl enable nfs-server
# systemctl start nfs-server

確認します。

# exportfs -v

/var/www/cgi-bin/cbgrn/sessiondata
        10.0.2.0/24(rw,sync,wdelay,hide,no_subtree_check,sec=sys,secure,root_squash,no_all_squash)
/var/www/cgi-bin/cbgrn/sessiondata
        10.0.5.0/24(rw,sync,wdelay,hide,no_subtree_check,sec=sys,secure,root_squash,no_all_squash)
/usr/local/cybozu/mysql-5.0/files
        10.0.2.0/24(rw,sync,wdelay,hide,no_subtree_check,sec=sys,secure,root_squash,no_all_squash)
/usr/local/cybozu/mysql-5.0/files
        10.0.5.0/24(rw,sync,wdelay,hide,no_subtree_check,sec=sys,secure,root_squash,no_all_squash)

次に、各Appサーバのデータ保存領域の書き込み権限を変更します。

# chmod -R 000 /var/www/cgi-bin/cbgrn/sessiondata
# chmod -R 000 /usr/local/cybozu/mysql-5.0/files

両方のAppサーバからDBサーバをNFSマウントします。

# yum -y install nfs-utils

「rpcbind」と「nfslock」を起動します。

# systemctl start rpcbind.service
# systemctl start nfs-lock.service

rpcbindの状態を確認します。

# systemctl status rpcbind.service

● rpcbind.service - RPC bind service
   Loaded: loaded (/usr/lib/systemd/system/rpcbind.service; indirect; vendor preset: enabled)
   Active: active (running) since Thu 2017-08-31 07:18:59 UTC; 7min ago
 Main PID: 13491 (rpcbind)
   CGroup: /system.slice/rpcbind.service
           └─13491 /sbin/rpcbind -w

Aug 31 07:18:59 ip-10-0-3-138.ap-northeast-1.compute.internal systemd[1]: Starting RPC bind service...
Aug 31 07:18:59 ip-10-0-3-138.ap-northeast-1.compute.internal systemd[1]: Started RPC bind service.

nfs-lockの状態を確認します。

# systemctl status nfs-lock.service

● rpc-statd.service - NFS status monitor for NFSv2/3 locking.
   Loaded: loaded (/usr/lib/systemd/system/rpc-statd.service; static; vendor preset: disabled)
   Active: active (running) since Thu 2017-08-31 07:22:04 UTC; 4min 26s ago
 Main PID: 13512 (rpc.statd)
   CGroup: /system.slice/rpc-statd.service
           └─13512 /usr/sbin/rpc.statd

Aug 31 07:22:04 ip-10-0-3-138.ap-northeast-1.compute.internal systemd[1]: Starting NFS status monitor for NFSv.....
Aug 31 07:22:04 ip-10-0-3-138.ap-northeast-1.compute.internal rpc.statd[13512]: Version 1.3.0 starting
Aug 31 07:22:04 ip-10-0-3-138.ap-northeast-1.compute.internal rpc.statd[13512]: Flags: TI-RPC
Aug 31 07:22:04 ip-10-0-3-138.ap-northeast-1.compute.internal rpc.statd[13512]: Initializing NSM state
Aug 31 07:22:04 ip-10-0-3-138.ap-northeast-1.compute.internal systemd[1]: Started NFS status monitor for NFSv2.....

自動起動を有効化しておきましょう。

# systemctl enable rpcbind
# systemctl enable nfs-lock

各Appサーバで、DBサーバのデータ保存領域をマウントします。
まず、セッションデータ保存領域をマウントします。

# mount -o intr,noac <DBサーバのプライベートIP>:/var/www/cgi-bin/cbgrn/sessiondata /var/www/cgi-bin/cbgrn/sessiondata

次に添付ファイル保存領域をマウントします。

# mount -o intr <DBサーバのプライベートIP>:/usr/local/cybozu/mysql-5.0/files /usr/local/cybozu/mysql-5.0/files

マウント出来ているか確認します。
(下記は私の環境での表示なので、ご利用環境によってIPアドレスなどが異なる場合があります。)

# mount |grep "10.0.5"
10.0.5.145:/var/www/cgi-bin/cbgrn/sessiondata on /var/www/cgi-bin/cbgrn/sessiondata type nfs4 (rw,relatime,sync,vers=4.1,rsize=131072,wsize=131072,namlen=255,acregmin=0,acregmax=0,acdirmin=0,acdirmax=0,hard,noac,proto=tcp,port=0,timeo=600,retrans=2,sec=sys,clientaddr=10.0.3.138,local_lock=none,addr=10.0.5.145)
10.0.5.145:/usr/local/cybozu/mysql-5.0/files on /usr/local/cybozu/mysql-5.0/files type nfs4 (rw,relatime,vers=4.1,rsize=131072,wsize=131072,namlen=255,hard,proto=tcp,port=0,timeo=600,retrans=2,sec=sys,clientaddr=10.0.3.138,local_lock=none,addr=10.0.5.145)

appサーバが再起動してもマウントできるように/etc/fstabに下記を追記しておきましょう。

<DBサーバのプライベートIP>:/mnt/DIR1/www/cgi-bin/cbgrn/sessiondata /var/www/cgi-bin/cbgrn/sessiondata nfs intr,noac 0 0
<DBサーバのプライベートIP>:/mnt/DIR1/cybozu/mysql-5.0/files /usr/local/cybozu/mysql -5.0/files nfs intr 0 0

Appサーバではガルーンを利用しないので、関連サービスの自動起動を無効化しておきます。

# systemctl disable cyde_5_0
# systemctl disable cyss_cbgrn

ガルーンの起動

DBサーバでガルーンのサービスを起動します。

# /etc/init.d/cyde_5_0 start
# /etc/init.d/cyss_cbgrn start

各Appサーバでhttpdを再開します。

# systemctl start httpd.service

確認

これで構築が完了しましたので、ELBに関連付けているURLでアクセスしてみます。今回はテストドメインに対して、ACMでHTTPSアクセスにしています。

https://<テストドメイン>/cgi-bin/cbgrn/grn.cgi

12-garoon-login

適当にクリックしてガルーンを操作して下さい。

13-garoon-etc

両方のAppサーバでガルーンに対するアクセスログが出ていれば、ELB経由でアクセスが振り分けられていることが分かります。

[ec2-user@ip-10-0-3-138 ~]$ sudo tailf /var/log/httpd/access_log |grep -v "ELB-HealthChecker"

10.0.2.156 - - [31/Aug/2017:08:05:16 +0000] "GET /cgi-bin/cbgrn/grn.cgi/todo/index? HTTP/1.1" 200 32635 "https://garoon.awstest.info/cgi-bin/cbgrn/grn.cgi/memo/index?" "Mozilla/5.0 (Macintosh; Intel Mac OS X 10_12_5) AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko) Chrome/60.0.3112.113 Safari/537.36"

(以下略)
[ec2-user@ip-10-0-4-150 ~]$ sudo tailf /var/log/httpd/access_log |grep -v "ELB-HealthChecker"

10.0.2.156 - - [31/Aug/2017:08:06:04 +0000] "GET /cbgrn/grn/image/cybozu/linklist20.gif?20151103.text HTTP/1.1" 200 1055 "https://garoon.awstest.info/cgi-bin/cbgrn/grn.cgi/link/index?" "Mozilla/5.0 (Macintosh; Intel Mac OS X 10_12_5) AppleWebKit/537.36 (KHTML, like Gecko) Chrome/60.0.3112.113 Safari/537.36"
(以下略)

DBサーバの冗長化対応

今回の構成ではDBサーバが単一構成なので、ここがSPOFになってしまいます。その為DBサーバの冗長化を検討したいところですが、いくつか方法がありそうです。

  • HAクラスタソフトによるフェイルオーバー
  • CloudWatchやEC2 Systems Manager等を活用したフェイルオーバー
  • 冗長化ではないけどEC2 Auto RecoveryでDBサーバを自動復旧

パッと上記のような方法が思いつきますが、これについては次回試してみたいと思います。

最後に

今回はドキュメント通りの構成にしていますが、DBサーバを冗長化してAppサーバにはAutoScalingを導入すれば、さらに可用性が高くなるかと思います。

先程記載しましたように、冗長化対応については今後紹介していきたいと思います。

以上です。