クラスメソッドの決算報告書(PDF)から B/S の内訳をグラフ化してみる
こんにちは、CX事業本部 Delivery部の若槻です。
弊社クラスメソッドでは、財務ハイライトとして過去3期分の業績と、決算報告書(PDF)をホームページで公開しています。
クラスメソッドは非上場企業なので上場企業のようにIRとして詳細な財務情報を開示する義務はない(ただし決算公告は必要)のですが、ステークホルダーからの信用を得るために詳細な決算報告書を公開しています。下記は弊社社長のツイート。
更に社会的な信用を得るために決算書を公開することにしました。
— Yokota, Satoshi / Classmethod (@sato_shi) August 22, 2019
※要するにクラスメソッドは、DevelopersIO で技術的なノウハウを社外に広く共有するのみならず、財務に関する情報も出し惜しみせずに公開している企業となっております。面白いですね。
今回は、クラスメソッドの決算報告書(PDF)から B/S(Balance sheet: 貸借対照表)の内訳をグラフ化してみました。(ただし、特に財務内容については今回は触れません)
背景
上場企業のホームページでは株主や投資家向けの提供情報として、証券取引所によって定められた形式の「決算短信」や金融商品取引法に基づく「有価証券報告書」などのIR資料を公開しています。
例:NTTグループのIR資料室
しかしこれらのIR資料はPDFなどの非構造化データのみで提供されている場合がほとんどで、公開されている財務データを分析などに活用したい場合は、手作業でデータを抽出する必要があります。国内外の上場企業の財務データを集約して API などで提供しているサービスを使うという手もありますが、有料だったりデータが古いこともあるので、出来れば公式のIR資料を当たりたいです。(ちなみに上のNTTグループはIR資料をPDFと合わせてEXCELデータでも提供している。こういうのは嬉しい)
どうしてそのようなことを気にするようになったかと言うと、最近社内の有志のメンバーで「財務分析トレーニング」を定期開催しており、様々な企業の財務データを分析する機会があったためです。
そこで PDF 形式のIR資料を構造化データに変換する方法を確認および紹介するにあたり、弊社クラスメソッドの決算報告書で試してみた、という背景になります。
やってみた
決算報告書(PDF)のデータ変換からグラフ化までを試してみます。表計算ソフトは Google スプレッドシートを利用します。
PDF を EXCEL に変換
直近の第18期の決算報告書をダウンロードしてみます。
ダウンロードした決算報告書。表紙、B/S、P/L(Profit and Loss: 損益計算書)から成る3ページのPDFファイルです。実際に見て頂ければ分かりますが、それぞれ上場企業が公開している財務諸表並みの粒度の情報が記載されています。
さてこのPDFファイルをまずは表計算ソフトで扱える形式に変換したいです。
ツールなどは色々あると思いますが、今回は Adobe のオンラインツールを使ってみました。
PDFファイルをアップロードすると変換が始まります。
XLSX 形式に変換されました。ダウンロードします。(この時にログインが必要な場合があります)
データを整形する
ダウンロードした XLSX データを Google ドライブにアップロードして Google スプレッドシートで開きます。
開いたデータがこちらです。概ね良さそうですが、ここからグラフを作成するにあたりデータ整形が必要な箇所がいくつか見受けれます。
今回グラフ化したい B/S で言うと、資産の部で科目名の末尾が別セルになっていたり、負債の部で負債および純資産の科目がそれぞれセル結合されていたります。あとは科目名で1字ずつスペースが入ったままなのも気になりますね。
まず資産の部から。
A列とD列を CONCAT
で文字列結合します。
次に負債および純資産の部。
結合されたセルをそれぞれ SPLIT
で改行コードによるセル分割をし、これだと列方向に分割されてしまうので TRANSPOSE
で行列を入れ替えます。
複数科目名が謎に横方向に文字列結合されているので分離し、その他の未転記の科目も同列に並べます。
関数で記述されている両部の科目名を値として同じセルに貼り付け直し、Data > Data clean-up > Trim whitespace で余分なスペースを削除します。
しかしこれだけだと何故か半角スペースが削除されないので、SUBSTITUTE
で半角スペースを削除します。
データ整形が一通りできたので、整形した科目名と金額を別シートに転記しました。いい感じですね。
2021年および2022年の資産の部についても同様に整形し並べます。(この時、期の間で科目の変更や統廃合があり行を合わせるのに少し苦労しました)
参考までに、整形したのものをマークダウンで置いておきます。
資産の部(百万円) | |||
---|---|---|---|
年 | 2022 | 2021 | 2020 |
【流動資産】 | 17,137,813 | 11,662,663 | 8,429,110 |
現金及び預金 | 8,746,003 | 6,087,672 | 3,340,555 |
受取手形 | 0 | 6,751 | 1,493 |
売掛金 | 6,713,936 | 4,980,395 | 4,097,264 |
貸倒引当金 | -6704 | ‐13,803 | -22,389 |
商品 | 18,614 | 2,954 | 5,978 |
仕掛品 | 32,800 | 12,411 | 14,012 |
貯蔵品 | 86 | 91 | 160 |
未収入金 | 9366 | 0 | 0 |
前渡金 | 1,312,716 | 377,497 | 670,103 |
前払費用 | 168,710 | 102,089 | 93,298 |
未収収益 | 2,756 | 2,910 | 2,585 |
立替金 | 18,672 | 9,340 | 29,789 |
繰延税金資産 | 117,521 | 93,666 | 48,223 |
その他の流動資産 | 3335 | 690 | 148,040 |
【固定資産】 | 1,320,600 | 1,060,254 | 756,907 |
【有形固定資産】 | 412,140 | 410,410 | 443,441 |
建物 | 193,806 | 203,198 | 217,189 |
建物附属設備 | 125,893 | 137,501 | 144,456 |
構築物 | 1,017 | 1,174 | 1,330 |
工具器具備品 | 72,839 | 53,788 | 59,802 |
一括償却資産 | 18,585 | 14,749 | 20,665 |
【投資その他の資産】 | 908,460 | 649,844 | 313,466 |
投資有価証券 | 216856 | 0 | 0 |
関係会社株式 | 445,088 | 408,106 | 63,302 |
出資金 | 0 | 10 | 10 |
長期貸付金 | 36,358 | 35,051 | 26,543 |
繰延税金資産 | 2,789 | 2,674 | 2,605 |
敷金 | 167,278 | 175,421 | 203,545 |
保証金 | 16,897 | 16,989 | 17,461 |
その他の固定資産 | 23194 | 0 | 0 |
保険積立金 | 0 | 11,592 | 0 |
資産の部合計 | 18,458,413 | 12,722,917 | 9,186,018 |
グラフ化する
表を選択してメニューから Graph をクリック。
既定ではこのようなグラフになるはずです。
Chart type を Stacked column chart
に変更。
Setup メニューの一番下の3つのチェックボックスを入れます。これにより行列の変換、B列(科目名)のヘッダーへの利用、3行目のラベルへの利用が行われます。
必要に応じてX軸の並び順を逆にします。
最小値を0
に設定します。
Number format を #,##0
にします。
Series から合計科目を削除して、グラフを縦に引き伸ばしたらそれっぽいグラフが出来上がりました。
出来上がったグラフです。
どの年でも資産の8割近くを「現金及び預金」および「売掛金」が占めています。また、2020年から2022年にかけて「現金及び預金」が大きく増えているのが可視化されています。コロナ禍に突入した際に多くの企業は社債発行や長期借入により手元流動性を高める財務行動を取りましたが、クラスメソッドも同様の動きをしているように見受けられます。そして「売掛金」や「前渡金」にも目立った増加が見られます。
以上、B/S のうち資産の部だけですが、過去3年分のデータを時系列でグラフ化してみました。
おわりに
クラスメソッドの決算報告書(PDF)から B/S の内訳をグラフ化してみました。
財務諸表を始めとした財務データを分析すると企業の経営状態や方針を知ることができてとても楽しいですね。B/S の負債/純資産の部や P/L についても別途やってみたいと思います。
ちなみにクラスメソッドの経営の歴史がもっと知りたいという方は、社長がこのような動画に出演し赤裸々にぶっちゃけトークをしているので是非ご覧ください。
クラスメソッドの経営について数々のしくじりを中心にしゃべりました!!高評価とチャンネル登録をお願いします!whttps://t.co/DKvZoI9a86
— Yokota, Satoshi / Classmethod (@sato_shi) July 8, 2020
参考、関連ツイート
クラスメソッド、2022年6月期の財務ハイライトを公開しました。納税15億円だけど純利益28億円嬉しい!3000社のお客様、グループ13社700名の社員、100社のパートナー企業に支えられて今期も生き残りました。新規事業に投資するぞ!純資産100億目指すぞ!JOIN待ってます!https://t.co/giYz7BNqDZ
— Yokota, Satoshi / Classmethod (@sato_shi) August 10, 2022
経営については、NTT東日本と合弁会社を設立しました。一緒に大きな事業に育てていきたいです。財務では、デットファイナンスが充実してきて好条件に資金調達できるようになりました。3期分の決算書や四半期速報などをネット公開始めました。デットとエクイティを両方活用してより強い会社になりたい。
— Yokota, Satoshi / Classmethod (@sato_shi) December 31, 2020
以上