クラスメソッドの決算報告書(PDF)から B/S の内訳をグラフ化してみる

2023.05.07

こんにちは、CX事業本部 Delivery部の若槻です。

弊社クラスメソッドでは、財務ハイライトとして過去3期分の業績と、決算報告書(PDF)をホームページで公開しています。

クラスメソッドは非上場企業なので上場企業のようにIRとして詳細な財務情報を開示する義務はない(ただし決算公告は必要)のですが、ステークホルダーからの信用を得るために詳細な決算報告書を公開しています。下記は弊社社長のツイート。

※要するにクラスメソッドは、DevelopersIO で技術的なノウハウを社外に広く共有するのみならず、財務に関する情報も出し惜しみせずに公開している企業となっております。面白いですね。

今回は、クラスメソッドの決算報告書(PDF)から B/S(Balance sheet: 貸借対照表)の内訳をグラフ化してみました。(ただし、特に財務内容については今回は触れません)

背景

上場企業のホームページでは株主や投資家向けの提供情報として、証券取引所によって定められた形式の「決算短信」や金融商品取引法に基づく「有価証券報告書」などのIR資料を公開しています。

例:NTTグループのIR資料室

しかしこれらのIR資料はPDFなどの非構造化データのみで提供されている場合がほとんどで、公開されている財務データを分析などに活用したい場合は、手作業でデータを抽出する必要があります。国内外の上場企業の財務データを集約して API などで提供しているサービスを使うという手もありますが、有料だったりデータが古いこともあるので、出来れば公式のIR資料を当たりたいです。(ちなみに上のNTTグループはIR資料をPDFと合わせてEXCELデータでも提供している。こういうのは嬉しい)

どうしてそのようなことを気にするようになったかと言うと、最近社内の有志のメンバーで「財務分析トレーニング」を定期開催しており、様々な企業の財務データを分析する機会があったためです。

そこで PDF 形式のIR資料を構造化データに変換する方法を確認および紹介するにあたり、弊社クラスメソッドの決算報告書で試してみた、という背景になります。

やってみた

決算報告書(PDF)のデータ変換からグラフ化までを試してみます。表計算ソフトは Google スプレッドシートを利用します。

PDF を EXCEL に変換

直近の第18期の決算報告書をダウンロードしてみます。

ダウンロードした決算報告書。表紙、B/S、P/L(Profit and Loss: 損益計算書)から成る3ページのPDFファイルです。実際に見て頂ければ分かりますが、それぞれ上場企業が公開している財務諸表並みの粒度の情報が記載されています。

さてこのPDFファイルをまずは表計算ソフトで扱える形式に変換したいです。

ツールなどは色々あると思いますが、今回は Adobe のオンラインツールを使ってみました。

PDFファイルをアップロードすると変換が始まります。

XLSX 形式に変換されました。ダウンロードします。(この時にログインが必要な場合があります)

データを整形する

ダウンロードした XLSX データを Google ドライブにアップロードして Google スプレッドシートで開きます。

開いたデータがこちらです。概ね良さそうですが、ここからグラフを作成するにあたりデータ整形が必要な箇所がいくつか見受けれます。

今回グラフ化したい B/S で言うと、資産の部で科目名の末尾が別セルになっていたり、負債の部で負債および純資産の科目がそれぞれセル結合されていたります。あとは科目名で1字ずつスペースが入ったままなのも気になりますね。

まず資産の部から。

A列とD列を CONCAT で文字列結合します。

次に負債および純資産の部。

結合されたセルをそれぞれ SPLIT で改行コードによるセル分割をし、これだと列方向に分割されてしまうので TRANSPOSE で行列を入れ替えます。

複数科目名が謎に横方向に文字列結合されているので分離し、その他の未転記の科目も同列に並べます。

関数で記述されている両部の科目名を値として同じセルに貼り付け直し、Data > Data clean-up > Trim whitespace で余分なスペースを削除します。

しかしこれだけだと何故か半角スペースが削除されないので、SUBSTITUTE で半角スペースを削除します。

データ整形が一通りできたので、整形した科目名と金額を別シートに転記しました。いい感じですね。

2021年および2022年の資産の部についても同様に整形し並べます。(この時、期の間で科目の変更や統廃合があり行を合わせるのに少し苦労しました)

参考までに、整形したのものをマークダウンで置いておきます。

資産の部(百万円)
2022 2021 2020
【流動資産】 17,137,813 11,662,663 8,429,110
現金及び預金 8,746,003 6,087,672 3,340,555
受取手形 0 6,751 1,493
売掛金 6,713,936 4,980,395 4,097,264
貸倒引当金 -6704 ‐13,803 -22,389
商品 18,614 2,954 5,978
仕掛品 32,800 12,411 14,012
貯蔵品 86 91 160
未収入金 9366 0 0
前渡金 1,312,716 377,497 670,103
前払費用 168,710 102,089 93,298
未収収益 2,756 2,910 2,585
立替金 18,672 9,340 29,789
繰延税金資産 117,521 93,666 48,223
その他の流動資産 3335 690 148,040
【固定資産】 1,320,600 1,060,254 756,907
【有形固定資産】 412,140 410,410 443,441
建物 193,806 203,198 217,189
建物附属設備 125,893 137,501 144,456
構築物 1,017 1,174 1,330
工具器具備品 72,839 53,788 59,802
一括償却資産 18,585 14,749 20,665
【投資その他の資産】 908,460 649,844 313,466
投資有価証券 216856 0 0
関係会社株式 445,088 408,106 63,302
出資金 0 10 10
長期貸付金 36,358 35,051 26,543
繰延税金資産 2,789 2,674 2,605
敷金 167,278 175,421 203,545
保証金 16,897 16,989 17,461
その他の固定資産 23194 0 0
保険積立金 0 11,592 0
資産の部合計 18,458,413 12,722,917 9,186,018

グラフ化する

表を選択してメニューから Graph をクリック。

既定ではこのようなグラフになるはずです。

Chart type を Stacked column chart に変更。

Setup メニューの一番下の3つのチェックボックスを入れます。これにより行列の変換、B列(科目名)のヘッダーへの利用、3行目のラベルへの利用が行われます。

必要に応じてX軸の並び順を逆にします。

最小値を0に設定します。

Number format を #,##0 にします。

Series から合計科目を削除して、グラフを縦に引き伸ばしたらそれっぽいグラフが出来上がりました。

出来上がったグラフです。

どの年でも資産の8割近くを「現金及び預金」および「売掛金」が占めています。また、2020年から2022年にかけて「現金及び預金」が大きく増えているのが可視化されています。コロナ禍に突入した際に多くの企業は社債発行や長期借入により手元流動性を高める財務行動を取りましたが、クラスメソッドも同様の動きをしているように見受けられます。そして「売掛金」や「前渡金」にも目立った増加が見られます。

以上、B/S のうち資産の部だけですが、過去3年分のデータを時系列でグラフ化してみました。

おわりに

クラスメソッドの決算報告書(PDF)から B/S の内訳をグラフ化してみました。

財務諸表を始めとした財務データを分析すると企業の経営状態や方針を知ることができてとても楽しいですね。B/S の負債/純資産の部や P/L についても別途やってみたいと思います。

ちなみにクラスメソッドの経営の歴史がもっと知りたいという方は、社長がこのような動画に出演し赤裸々にぶっちゃけトークをしているので是非ご覧ください。

参考、関連ツイート

以上