[セッションレポート] JAWS FESTA 2024 in 広島 開会式~広島県内企業トラック午前 #jawsug #jawsfesta2024
コーヒーが好きな emi です。
2024/10/12(土) に開催された JAWS FESTA 2024 in 広島に参加しました。
開会式、キーノート、広島県内企業トラックのセッション(私が聴講した午前分のみ)をレポートします。
JAWS FESTA 2024 in 広島自体については以下のブログを参照ください。
開会式
10:00 から Track A、2F 講義室に全員が集合して開会式です。
JAWS FESTA を広島で開催するのは初めて!そもそも中国地方での開催が初だそうです。開催おめでとうございます!
Track ごとにテーマが分かれています。
さて、実は私は開催直前くらいまでずっと把握していなかったのですが、今回の JAWS FESTA は 酒まつり に合わせて開催されたということで、懇親会二次会が酒まつりの参加となっています。
昨年と比べて本編の時間が短く、15:00 頃には最後のセッションが終了します。酒まつりを楽しんじゃいましょう、ということですね。
キーノート:~AIで未来を切り開く~広島県におけるAI活用の取組
広島県知事、湯﨑氏の登壇ということで、会場は拍手喝采でした。
最初は少し余談パートでした。
JAWS FESTA が今回の日程になったのはやはり酒まつりがあるからとのことです。
2024 年ノーベル平和賞を日本原水爆被害者団体協議会が受賞ということで広島が話題になっている点についても述べられました。
同じく 2024 年ノーベル物理学賞・化学賞のテーマが AI ということで、キーノートのテーマも AI です。
- 広島の強み
- 自然と都市が近接した暮らし
- 産業の集積
- 100 円ショップのダイソーも広島発
- チャレンジ精神
- AI を支える技術も広島発!
- NVIDIA の半導体(H200GPU)を作っているのは広島の工場
- 最新 GPU は広島の半導体がのっかっている
- 広島の技術挑戦
- 牡蠣の養牡手法改善(水温などデータの AI 分析)
- ドラレコで道路の陥没予測(路面状態を AI 解析)
- ぶどう栽培の粒数自動計測
- AI を用いた自動航行技術
- AI 活用をリードする 3 つの取り組み
- ひろしま AI サンドボックス
- 費用を最大1億円補助
- 必ずしもうまくいかなくてもいい。まずはアイデア
- 広島 AI ラボ
- 県庁内に 5 人の専任チームがあり、AI の使い方を自由に検討中
- 町内の課題解決、産業、地域の役に立つこと…なんでも
- 県内からも県外からも人材募集中、お給料をもらって研究できるのでせひ声かけてくださいとのこと
- ひろしま AI 部
- 高校生の AI クラブ
- 企業がメンターして高校生に試してもらう
- 高校生はやりたいことを検証し、企業はそれを後押し
- HIROSHIMA AI TRIAL ~失敗を生かそう~
- AI 活用における失敗許容の重要性
- 若い人こそ失敗を
対談セッション
広島県知事と JAWS UG の友岡さんの対談セッションです。(以下敬称略)
- 友岡:自分は東京に行かないと人生は変わらないと思っていた。知事も東京に出て戻ってきたと聞いている。あらためて広島の魅力は?
- 知事:自然と都市が近い。広島はスキー場が多くあるが東京だと出かけるのが大変。広島市からなら 1 時間でスキーやゴルフができる。
- 友岡:呉線(くれせん)の島々と海とか見ると涙が出ますよね(笑)
- 知事:飛行機の左に座っているときれいに見えますね、エーゲ海より綺麗ですよ。
- 友岡:今日のプレゼン資料いいですね、字も大きくて見やすいしスタートアップみたいな。
- 知事:指導入ってます(笑)
- 友岡:失敗を許容するリーダーは素晴らしいですよね。ここに込めた思いを教えてください。
- 知事:先端のものは探索が必要。やってみてダメだったら戻るなどの試行錯誤をしないといけない。AI とか最新のものはまだまだ探索が必要な期間。今日はエンジニアの方が多いのでぜひスカウトしたいです。
- 友岡:ノマドとかワーケーションとかもありますし。
- 知事:海の上でも広島ならネットが入りますよ(笑)
- 友岡:企業も探索中と思うが、期待することは?
- 知事:生産性向上など。AI 単体というより、他のアプリやシステムとくっつけてやるなど。速くなるとか、自動になるとか…まだ分からないので、まずはやってみないと。データ連携基盤も気になる。
- 友岡:大学、行政など協力すれば色々なことができそうですよね。
- 知事:生成 AI はジェネラルで誰でも挑戦できる。データが多いほどいい。産官学が持っているデータを持ち寄っていろんなものができたらいい。
- 友岡:最後にひとことお願いします。
- 知事:日本は能力不足と言われたりもしますが、まだまだ優秀です。ぜひ広島で技術力を発信してほしい。
- 友岡:ありがとうございました。
Track E 広島県内企業トラック
乾燥機遠隔監視システムのAWS移行
【E-1】登壇者:株式会社サタケ 堀岡 和則 様
作業着でのご登壇です。農家のご出身とのことで今も農作業をされることもあるそうです。
- 穀物乾燥機の運転状態をスマートフォン等で確認できる「乾燥機遠隔監視システム」を AWS に移行
- 経費節約が主な目的
- とにかくマネジメントコンソールでサーバーを構築し、アプリをのせてみる
- 「翌日、どこに何を設定したか覚えとらんのです!」(会場、爆笑)
- 本番AWSアカウントに同じ設定をしないといけないのに…
- 画面をスクショして手順書を作ろうとしたが、コンソール画面は日々変わるため避けたい
- CloudFormation を作成し SAM でデプロイすることに
- Web アプリのデプロイはどうする?
- CopePipeline を使う
- Code Commit にソースコードを保存するだけで Web アプリを EC2 にデプロイ成功
- 「翌日、CodePipeline に何を設定したか覚えとらんのです!」(会場、爆笑)
- これも CloudFormation を作成し SAM でデプロイすることに
- CopePipeline を使う
- 「ここまでやれば勝ち確であろう!」(フラグ)
- 当日 CodePipelie に push するだけでよいはず
- 証明書発行が当日ぶっつけ本番になってしまった
- ドメインが社内管理で Route53 にいない
- DNS 検証が通るまでの 10 分ほど、生きた心地がしませんでした
- 今後の展望
- 「証明書はマネジメントコンソールで実施してしまったので覚えとらんのです!」(会場、爆笑)
- Snyk や ControlTower の導入もやりたい
感想
語りが本当に面白くて、めちゃくちゃ笑いました。技術セッションでこんなに何度も会場がドッと何度も湧くのは珍しいと思います。
最初は EC2 をマネジメントコンソールから構築していた話が徐々に IaC や CodePipeline を使った CI/CD までレベルアップしていく様子もすごくて、周りから「すげぇ…」という呟きが聞こえてきました。
私はこれまで農業ドメインに関わったことがなかったので「穀物乾燥機」なるものがあり、穀物の乾燥状態を見る機械というのがあることも、それを監視するシステムがあることも大変興味深く面白かったです。
堀岡様のお人柄が伝わってくる大変楽しいセッションでした。
たるポで拓く 地方都市における地域共通プラットフォームの可能性
【E-2】登壇者:中国新聞社 石井 将文 様、明知 隼二 様
企業の挑戦やビジネスを紹介してくださいました。
- 130 年以上新聞発行をしてきたいわゆる JTC
- ゆるぎない地方紙としての信頼はあるが、ビジネスや市場はどんどん変化している
- たるぽ について
- たるポ ID は中国新聞社が提供するメディアをはじめ、様々なサービスがまとめて楽しめる ID
- アプリをたくさん使うと木のイラストが育っていく…という遊び心
- 10 月は酒まつりがるので木に徳利が成るようになっている
- 地域生活を豊かにする外部サービスとの連携を進めたい
- 地域に根差した ID 基盤として
- AWS Clean rooms で企業間データ連携をスムーズに
- オフラインの消費行動との紐づけ
- 現地チェックイン、チケット購買など
- ひろしま盆ダンス QR ガチャなど
感想
130 年以上の伝統を持ちながらも新しいビジネス領域に挑戦し、変化する市場に迅速に対応している姿勢が印象的でした。アプリをたくさん使うと木が育つ仕組みも可愛くて面白いです。
色々なシステムが一つにまとまったことで分かりやすくなり、問い合わせが減ったという話もされていて素敵でした。
Otafukuグループのデータ分析基盤の構築
【E-3】登壇者:オタフクホールディングス株式会社 岡本 侯子 様
ソースで有名な Otafuku ホールディングス様のビジネスの歴史やデータ分析基盤についてお話くださいました。
- オタフクソースが有名だが最初は酒、しょうゆの卸売りをしていた
- 当時の社長の「モノづくりをしたい!」という夢のもと、工場で最初に作り始めたのは「お酢」
- ソースを作り始めたのは戦後
- 戦争で工場が焼けてすべてが無くなってしまい、ゼロから再スタート
- 当時のコンサルの人に 「オタフクさん、これからは洋食の時代じゃけ、ソース作りんさい」 と言われ、ソースを作り始める
- 戦後、未亡人となった女性が生きていくために鉄板で小麦粉をといて焼いて売る商売をしていた
- ウスターソースはサラサラ
- 「オタフクさん、ソースが流れてしまうけ、もっととろみのあるソース作って」 と言われ、お好みソースが始まった
- 「モノ売りではなく、コト売り」
- ソースではなくお好み焼き自体を普及する
- 社内に「お好み焼き課」があり普及活動をしている
- お好み焼き館
- お好み焼きの博物館のような場所。Wood Egg という名前の通り木を使った建物も素敵なのでぜひ行ってみてほしい
- お好み焼き体験スタジオ OKOSTA
- IT 推進部は 16 名
- オフィスは倉庫二階をリノベーションして綺麗に
- 国際事業スタッフも一緒に働いている、ボーダーレス
- ハラール認証済のソースもある
- 基幹系の SAP はすっごい大変
- 現状の SAP ECC6.0 は 2027 年にサポート切れるから頑張ってるところ
- SAP の BI ツールを一部しているが、SAP で保持しているデータしか可視化できないなど課題が多い
- AWS でデータレイク基盤を構築し QuickSight で可視化
- どのエリアのどの量販店で売っているか等、地図マッピング
- 工場ラインの稼働状況可視化など
感想
最初はソースを作っていなかったという意外な歴史が興味深く、広島弁でのアドバイスや要望を柔軟に取り入れて成長していく様子が印象に残りました。広島弁は可愛いですね。
また、難しい基幹システムの移行に取り組まれているとのことで、未来に向けた挑戦を応援したいです。
ちなみに私はいけなかったのですが、翌日に行われた JAWS FESTA 2024 in 広島 おとなの遠足(宮島観光/お好み焼きハンズオン) は、Otafuku ホールディングス様が営業されている お好み焼き体験 OKOSTA-オコスタ でおこなわれました。予約人数に限りがあり一部の方しかできなかったそうなのですが、機会があればぜひ行ってみたいです。
終わりに:県内企業トラック聴講のススメ
繰り返しますが JAWS FESTA は地方でおこなう全国規模の JAWS-UG イベントです。その土地でどんな人がどんな企業でどんな考えのもと技術を使っているかを地元の方の直接の声で聴けるまたとない機会です。
あまり自分では触らない技術領域だったり、あまり知らない業界にこそ出会いがあります。ぜひ県内企業トラックを一つでも二つでも聴講してみてください。
……というのは去年の JAWS FESTA 2023 の開会式で聞いた内容の受け売りです。
私は去年も JAWS FESTA に参加したのですが、最初は自分に興味のある技術セッションだけ聴講しようとしていました。開会式でこの言葉を聞いてから、「なるほど、確かにそうだな」と思い、予定を変更し、県内企業トラックで聴講することにしました。
そうしたら、私が知らなかった新たな視点ばかりで、企業の生い立ちや思いがとっても面白くて、思いのほかめちゃくちゃ感動してしまったのです。
その経験を活かし、今回の FESTA では最初から県内企業トラックに居座りました。結果、予想を裏切らない面白さで今年もめちゃくちゃ勉強になりました。
自分が知らない業界のビジネスや考え方が面白く「その業界ではそんなことも考えないといけないのか!」 「なるほどそういう需要があるのか!」と新たな発見が盛りだくさんでした。
IT の技術自体にフォーカスするのも面白いですが、たまにはこういった企業のビジネス視点多めのセッションを聞くのも楽しいし、こういうことが学べるのが JAWS FESTA の醍醐味だと思っています。
広島企業の魅力をたくさん学んだ 1 日でした。