![[新機能] パッケージ化された専門的な開発スキルを動的に利用できるKiro powersがリリースされました #AWSreInvent](https://images.ctfassets.net/ct0aopd36mqt/4uTbTE9O9jUJCOs80dZ0Ao/e2da592b5eaaad0f5993d6ff64a12467/aws-kiro.png?w=3840&fm=webp)
[新機能] パッケージ化された専門的な開発スキルを動的に利用できるKiro powersがリリースされました #AWSreInvent
リテールアプリ共創部のるおんです。
先日、AWSから Kiro powers という新機能がリリースされました。Kiro powersは、AIコーディングエージェントであるKiroの機能を拡張するためのプラグインシステムです。
今回は、このKiro powersについて詳しく紹介したいと思います。
Kiro powersとは
Kiro powersとは、Kiroの機能を拡張するプラグインシステムです。
MCPサーバー、ステアリングファイル(≒ルールファイル)、フックなどをパッケージ化したもので、ワンクリックでインストールして使用することができます。
公式ブログによると、
Powers are curated packages that bundle MCP servers with steering files and hooks, enabling you to extend Kiro's capabilities with a single click.
つまり、MCPサーバーの設定やステアリングファイルの作成などを自分で行う必要がなく、powerをインストールするだけで特定のサービスを利用するための機能が一式揃う ということです。
厳密には、Powerをインストールすると、Power用のMCPが自動で設定され、オンボーディングを開始することによりAIエージェントがステアリングファイルやフックの作成を始めます。
挙動を先に確認したい方は、FigmaのPowerを試してみたので先にこちらをご確認ください。
そして、何よりも興味深いのは公式ブログの、以下の記載です。
- クロス互換性(近日公開)
現在、powers は Kiro IDE で動作します。私たちは、powers があらゆる AI 開発ツール(Kiro CLI、Cline、Cursor、Claude Code など)で動作する未来に向けて構築しています。Model Context Protocol はツール通信の標準を提供します。Powers は、パッケージング、アクティベーション、知識転送の標準でこれを拡張します。power を一度構築すれば、どこでも使用できます。
Powersは現在、Kiro IDEで動作しますが、将来的には 他のIDEでも動作するようになる とのことで、今からキャッチアップしておくべき技術なのでは?と考え今回ブログにまとめておきました。
従来のAI開発ツールが抱えていた課題
従来のAI開発ツールには、以下のような課題がありました。
1. MCPのコンテキスト問題
MCPサーバーはAIエージェントに外部サービスを操作する手足を与えますが、コンテキストの劣化 が発生してしまいます。5つのMCPサーバーに接続すると、エージェントは1行のコードを書く前に大量のツール定義を読み込みます。これにより、最初のプロンプトの前に コンテキストウィンドウの数十パーセントを消費してしまう可能性 があります。
この問題を解決するために、ClaudeのSkillsが登場しましたが、これから紹介する2つ目の問題が残ってしまいます。
2. 各機能を個別にセットアップする必要がある
AI開発ツールには、特定のタスクを実行するための様々な機能が存在します。
- MCPサーバー: ツールアクセスのための設定(各クライアントで個別に設定)
- Skills(Claude固有): 命令やワークフローのパッケージ化
- ルールファイル:
.cursorrulesのようなクライアントごとの振る舞い設定 - 動的ツール読み込み: コンテキスト管理のための別途セットアップ
これらはそれぞれ重要な役割を果たしていますが、開発者が 個別にセットアップし、組み合わせる 必要がありました。さらに、CursorやClaude Codeなど、ツールを切り替えるたびにすべてを再設定することになります。
Kiro powersが解決すること
Kiro powersは、これらの課題を解決するために設計されています。
1. パッケージ化された専門知識の提供
Kiro powersは、MCPサーバー、ステアリングファイル、フックなどを 一つのパッケージとして提供 します。開発者は個別にセットアップする必要がなく、powerをインストールするだけで必要な機能がすべて揃います。

2. 動的なコンテキスト読み込み
MCPのコンテキスト問題は、ClaudeのSkillsで解消されたように、Kiro powersでも 動的にPowerが読み込まれる ことで解決されています。
| 従来のMCPサーバー | Kiro powers |
|---|---|
| すべてのツールを事前に読み込む | 関連する場合にのみアクティブ化 |
| コンテキストウィンドウを大量消費 | ベースラインのコンテキスト使用量はほぼゼロ |
| エージェントが圧倒される | 現在のタスクに関連するツールのみ読み込み |
例えば、5つのpowersをインストールしても、ベースラインのコンテキスト使用量はほぼゼロ です。「database」と言及すると、Neon powerがアクティブ化され、そのツールとベストプラクティスを読み込みます。「ui」と言及すると、Figma powerがアクティブ化され、そのツールとベストプラクティスを 動的に読み込みます 。

これにより、エージェントは現在のタスクに関連するツールのみを読み込み、効率的に動作することができます。
例えばTerraform Powerの場合、従来のMCPの使い方とpowerでのMCPの使い方を比較すると、以下のようになります。

HashiCorp is a Kiro powers launch partnerから引用
powerの構造
powerは以下の3つの要素で構成されるバンドルです。
| 要素 | 説明 |
|---|---|
| POWER.md | エントリーポイントのステアリングファイル。エージェントに利用可能なMCPツールとその使用タイミングを伝えるオンボーディングマニュアル |
| MCP サーバー設定 | MCPサーバーのツールと接続の詳細 |
| 追加のステアリングまたはフック | フックやステアリングなどのエージェントに実行させたいこと |
POWER.mdの役割
POWER.mdのフロントマターは、powerがいつアクティブ化されるかを定義します。以下はFigma powerの例です。
---
name: "figma"
displayName: "Design to code"
description: "Connect Figma designs to code components - automatically generate design system rules, map UI components to Figma designs, and maintain design-code consistency"
keywords: ["ui", "design", "code", "layout", "mockup", "frame", "component", "frontend"]
author: "Figma"
---
この例では、「ui」や「design」、「frame」などのキーワードがプロンプトに含まれると、Figma powerがアクティブ化され、そのMCPツールとPOWER.mdがコンテキストに読み込まれます。
Kiro powersをインストールすると起きること
1. powerのインストール
KiroのIDEでpowersを閲覧し、「Install」をクリックするだけで自動的に登録されます。APIキーや環境変数が必要な場合は、初回使用時にプロンプトが表示されます。JSON設定ファイルも、コマンドラインセットアップも不要です。
すでにいくつかのパートナーからpowerが提供されていますが、それ以外でも自分たちで作成したpowerをインストールすることも可能です。

2. powerのインストール先
powerをインストールすると、システム全体で共通の~/.kiro/powers/installed/ディレクトリにpowerの内容がダウンロードされます。例えば、Figma powerの場合はGitHubのリポジトリからダウンロードされ、以下のような構成でインストールされます。
Figma powerのリポジトリ(GitHub)
Figma powerのインストール先(~/.kiro/powers/installed/)

mcp.jsonへの自動追加
powerをインストールすると、ユーザー設定ファイル(~/.kiro/settings/mcp.json)に 自動的 にpowerの設定が追加されます。以下は、従来のMCPサーバーとFigma powerの両方が設定されている例です。
ポイントは、従来のmcpServersセクションとは別に、powersセクション が追加されることです。この分離により、Kiroは通常のMCPサーバーとpowersを区別して管理することができます。

そして、MCP Serverビューを確認すると、従来のMCPサーバーとは別に、powerのMCPサーバーが追加されていることが確認できます。左に雷のマークがついているのがpowerのMCPサーバーです。
通常のMCPサーバーは従来通りコンテキストを圧迫しますが、powerのMCPサーバーは必要なときにのみアクティブ化されるため、コンテキストの消費を抑えることができます。

オンボーディングの開始
POWER.mdに記載されているオンボーディングワークフローが実行されます。ここのオンボーディングで、SteeringファイルやHooksファイルなどがAIエージェントによって生成されます。

オンボーディングが完了すると、IDE内にて必要な機能が全てセットアップできていることが確認できます。

あとはこれらを使って開発をするだけです。
実際にFigmaのPowerを試してみた記事もありますので、興味がある方はぜひご覧ください。
Kiro powersの良いところ
Kiro powersの主なメリットをまとめます:
- セットアップが簡単: 特定のpowerをインストールするだけで、MCPサーバーの設定やステアリングファイルなどの複数の機能の設定が自動的に完了
- コンテキスト問題を解決: powerは、プロンプト内にkeywordの文字が含まれている時のみMCPサーバーやPOWER.mdを動的読み込み
- 各サービス固有の知識の活用: 汎用LLMが知りうる一般的な回答ではなく、各サービス固有の知識を活用して、より精度の高いコードを生成可能
- クロス互換性(近日公開): 将来的には、Kiro CLI、Cline、Cursor、Claude Codeなど、あらゆるAI開発ツールでpowersが動作する予定
おわりに
今回は、Kiro powersの概要について紹介しました。
Kiro powersは、従来のAI開発ツールが抱えていた「MCPのコンテキスト問題」と「各機能を個別にセットアップする必要がある」という2つの課題を解決するために設計されたプラグインシステムです。MCPサーバー、ステアリングファイル、フックをパッケージ化することで、ワンクリックで 必要な機能が一式揃い 、さらに動的なコンテキスト読み込みにより コンテキストウィンドウの消費を抑える ことができます。
特に注目すべきは、将来的にKiro CLI、Cline、Cursor、Claude Codeなど、あらゆるAI開発ツールでpowersが動作する予定 であるという点です。現在はKiro IDEでのみ動作しますが、クロス互換性が実現すれば、一度構築したpowerをどのツールでも使用できるようになります。AI開発ツールのエコシステムにおいて、powersが標準的なパッケージングの仕組みとして普及していく可能性を秘めています。
今後、各サービスベンダーがpowersを提供するようになれば、より精度の高いコード生成が可能になり、開発者体験が大きく向上することが期待されます。
以上、どなたかの参考になれば幸いです。
参考








