1年半のエバンジェリスト活動を振り返ってみる

2019.07.07

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せーのでございます。

今日はクラスメソッドの創立記念日です。創立記念日は毎年技術から多少離れた事を書いていまして、今年はこの1年半続けてまいりました「エバンジェリスト」というお仕事を、少し振り返ってみたいと思います。

きっかけ

話は2017年5月、我がクラスメソッドが「Alexa事業部」というAlexaの専門部署を(たぶん)日本で初めて立ち上げたところから始まります。

2016年のre:InventでSWAGとしてEcho dotをもらい、これは面白い、と色々遊んでいた結果、正式にAlexaをビジネスとして回していこう、となったわけです。

が、しばらく活動をしていて、あることに気が付きます。それは「知名度の低さ」です。
クラメソは「AWSの会社」というイメージが強く、Alexaをクラメソがやっている、ということを知っている人は当時ほとんどいませんでした。

外部にAlexa事業部をアピールしていきたい。どうせアピールするなら「日本でAlexaといえばクラスメソッドだよね」と言われるようになりたい。

この頃ちょうど「しくじり先生」や「アメトーーク」などでプレゼン、という手法自体が注目を浴びてきていた時期で、テック系でもMicrosoftの西脇さんや澤さんなど、広報とは違う「エバンジェリスト」という人に伝える職業が出てきていました。

そこで「Alexaのエバンジェリストやってみようか」と言い出したのがきっかけです。

活動内容

活動をするにあたって、まずは「3ヶ月で300人の前で話す」という目標を立てました。
ですが、その頃はまだAlexaが日本に上陸する前で、そもそも話す「場」がありませんでした

そこで自分たちで「Alexa Salon」という勉強会ブランドを立ち上げ、その中で話す事にしました。

最初は東京で20人前後の参加者の前で話していました。広報をマーケティング部に手伝ってもらいながら、ロゴのアイデアから勉強会の構成、BGMなどを考えました。
当日は同じAlexa事業部の同僚にお願いして、受付などをやってもらいました。

元々大学の頃に演劇をやっていたこともあり、自分でイベントを作るなら部屋に入った時から終わって帰る瞬間までを一つのコンテンツとして考えたい、と思っていました。

東京で1、2回やったところで、同じコンテンツを大阪や福岡、札幌に舞台を移してやってみました。各地によって参加者層に違いがあり、全く同じものをやってもウケない、ということがわかりました。毎会場アンケートを必ず取り、例えば大阪であればIoTやAVSなどのハード寄り、福岡であれば現地のエンジニアを巻き込む、など、フィードバックを元に演出を変えながら細かくアップデートしていきました。

ちょうど同じ時期にAmazonさんの公式ハンズオンのサポートをさせてもらっていた事もあり、Alexa業界におけるクラスメソッドの認知度が徐々に上がってきまして、自社以外のコミュニティからも呼ばれることが増えてきました。他のコミュニティはAlexa Salonとは違う層の参加者の方がいたりして、そこから新たな人脈がつながっていき、色々な情報を交換できました。

例えば「コミュニティを長続きさせるには"コンテンツ"の提供だけではなく、参加者も含めたそれぞれが自分を表現できる"場"を提供すること」というお話は非常に勉強になりました。その話を聞いてから、それまで私が一人で全て話していた構成を、色々な人に話してもらうような構成に少しずつ変えていったりしました。

2019年に入り、企業ドライブではない形でAlexaのコミュニティを作るきっかけがあり、関西にて活動していたAAJUG(Amazon Alexa Japan User Group)の運営の方とお話して、新たにフラットなユーザーコミュニティとして「AAJUG関東支部」を立ち上げました。

今まで自社以外の人と一緒にイベントを運営したことがなかったので、これも非常に勉強になりました。自分の現場での役割を他の方と分割することができ、その分イベントそのものの「企画」に注力することができました。

そんな時、とあるイベントを合同開催したアイリッジさんに誘われて、Alexaのビジネス向けイベントを運営することになりました。
コミュニティの勉強会と違い、ビジネスにつながるような明確な目的があるので、今までのコミュニティ運営でのノウハウを使って「参加者に楽しんでもらう」事を主軸にしつつも、何かしら参加者の方々の事業に対して、ヒントやサポートにつながるように企画を出していきました。その中でブランド名は「VoiceUI Show」に決まりました。

結果から言うと目標集客200名に対して400名以上の応募があり、イベントとしては成功したとは思うのですが、そこまでの道のりはかなりの難産でした。会場の都合上、セッションとブースを一つの部屋の中で行う必要があったり、様々な施策、企画に対して企業イベントならではの「法務上の問題」や「ブランド上の問題」などが噴出し、その都度ステークホルダーの方々と話し合って調整していきました。やはり企業イベントは一筋縄ではいかない、そう実感しました。
一方、このイベントを通じて各企業の方々の目的や思惑を全て受け入れていく事で、イベントとしてブレない芯ができたり、コミュニティのような「場」の提供に加えて、何かしらの「果実」を手に入れてもらえるように工夫する戦略を練る経験ができました。

現在、技術的な話はAAJUG、ビジネス的な話はVoiceUI Showと、それぞれの舞台が整い、Alexa Salonとしては特にやることがなくなっています。
そこで、前々からやりたかった「動画を使ってコンテンツを作りたい」という願いを、新たなAlexa Salonでやっていこう、と考えています。

以上、この1年半の活動をざっと振り返ってみました。

結果:
登壇イベント: 約80
参加者数: 延べ3000名
平均満足度: 4.6(5段階)

良かったこと

ではこの1年半を振り返って、自分なりに良かった点、良くなかった点を上げてみたいと思います。これからエバンジェリストをやってみたい方は参考になさってください。

そこそこ有名になった

Alexaに対して早くから取り組み、色々なイベントを主催したり参加させてもらった事もあり「Alexa = せーの = クラスメソッド」という関係を認識してもらうことができました。色々なお仕事のお話を頂いたり「お名前は聞いています」というご挨拶をされたりすることも増え、登壇するチャンスがどんどん増えていきました。
先行者利益を上手く使えたかな、と感じます。

人脈が増えた

様々なイベントに出席することにより、色々な人とお会いすることができました。その方々と一緒にイベントをすることで、また新たな方との出会いがあり、私の人生において大切な宝物になりました。

しゃべりの力がついた

これだけしゃべっていると、さすがに慣れてきます。
また一番最初にAmazonさんの公式ハンズオンのサポートで、Alexaエバンジェリストの畠中さんのお話を間近で毎回見られた、ということが大きかったです。

参加者の人をどのようにノセていけばよいのか、どのレベルで、どのくらいのテンポで話せばよいのか、スライドやハンズオンテキストの作り方など、大変勉強になりました。

イベントを作ることができるようになった

自分で試行錯誤してイベントを作っていき、うちのマーケチームや他のコミュニティの方々のノウハウを沢山吸収できて、イベントを作るにはどんな事に注意すべきなのか、どんな事をすると後に繋がっていくのか、を勉強できました。通常に仕事をしていればイベントの企画方法や構成、広報タイミング、登壇者のアサインや調整などは経験できなかったので、貴重だったと思います。
今では300人くらいまでのイベントは大体イメージすることができるようになりました。

良くなかったこと

集中できる時間が減った

エバンジェリストになってから、とにかく出張が増えました。ほぼ毎週、どこかに行っている形になります。
私は札幌に住んでいるので、東京のイベントでも移動に4時間は見積もります(空港まで1時間 + 飛行機1.5時間 + チェックイン0.5時間 + 空港から現場1時間)。
必然的に機内や移動時間を使って仕事をすることになります。
移動しながらなのでスマホで原稿を書いたりすることも多く、まとまった時間を取るのはなかなか難しかったです。

生活習慣が変わった

勉強会やイベントは参加者の生活時間に合わせて平日夜、19:00-21:30前後で行われることが多いです。
以前は朝5時くらいには起床する超朝型生活だった私ですが、この平日夜の時間帯にピークを持っていくようになったため、生活習慣が夜型に変わりました
しかし生活習慣というのはそうそう簡単には変わらないので、睡眠時間帯が安定しないことが多かったです。

エバンジェリストをする方は夜型が向いているかもしれません。

エンジニアとしては少し後ろめたく感じることも

イベントで話すために技術を習得するのですが、あくまでも「話すために」勉強している部分もあり、血肉として技術が備わっているのか、感じにくいこともありました。後半からは自分ひとりが登壇するだけではなく他のプロフェッショナルな方々にご登壇をお願いすることも多くなり、全体としてイベントのクオリティが上がりました。

これから

クラスメソッドは今期から組織改編があり、今月、7月1日よりAlexaエバンジェリストからジョブチェンジすることになりました。

エンジニアでは経験できなかった事を沢山経験させてもらい、非常に充実した1年半でした。このチャレンジを許容してくれた会社には感謝したいです。

新しいジョブは「AIスペシャリスト」としてカフェチームに入ります。

表で話す仕事から、コンピュータビジョンを使用した映像認識技術の研究、というまた今までとはまるで違う、完全裏方の仕事にチャレンジしていきます。

ただクラスメソッドとしてはAlexa事業は変わらず続けていきますし、私自身もAlexaは続けていこうと思っています。AAJUGはコミュニティなので、登壇する事もあるかと思います。また上に書いた動画配信や動画コンテンツを作って、新しいカタチで発信ができればと考えています。

さあ、今日からまた新しいチャレンジです。頑張っていきたいと思います。これからもよろしくお願い致します!