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2019年10月1日以降のDedicated HostsにおけるMicrosoft製品ライセンスについて

2019.10.17

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しばたです。

本記事で触れるMicrosoftのライセンス変更は結構大ごとなのですが影響を受けるユーザーが少ないためかあまり話題となっていません。
ライセンスの話なので非常にセンシティブでハイリスクなのですが、勇気を出して、できるだけわかりやすくこの件について解説していきたいと思います。

免責事項

極力間違いの無い様に努めて書いていますが、あくまでも私いち個人の解釈にすぎず、本記事の内容はライセンスに対する記述の正確さを保証しません。
仮に本記事の内容に誤りがあり、それによりいかなる不利益を被ったとしても一切の責任を負えませんので予めご了承ください。

ライセンスに関する正式な判断が必要になる場合は必ず Microsoft および AWS に確認してください。

2019年10月1日から何が変わったのか?

本記事の発端となるライセンス変更ですが、2019年8月1日にMicrosoftから以下のアナウンスが発表されたのがはじまりです。

以降は日本語版の内容をベースに話を進めていきます。

変更内容

上記アナウンスから変更内容を引用します。

2019 年 10 月 1 日より、ソフトウェア アシュアランスとライセンス モビリティ権が付属しない状態で購入したオンプレミス ライセンスは、パブリック クラウド プロバイダーが提供する専用ホスト クラウド サービスに展開できなくなります。
ここで言うパブリック クラウド プロバイダーとは、マイクロソフト、Alibaba、Amazon (VMware Cloud on AWS を含む)、Google のことであり、総称して「Listed Provider」と呼びます。

今回の改定はそれ以外のプロバイダーには適用されません。また、Services Provider License Agreement (SPLA) プログラムまたはソフトウェア アシュアランスのライセンス モビリティ特典については、専用ホスト クラウド サービスに適用する場合を除き、変更はありません。

( 専用ホスト クラウド サービスに関するマイクロソフト ライセンス条項の改定 より引用)

「ここに書いてある通りです。以上!」で終わりたいのですが、これだけだと大抵の方にとっては意味不明だと思いますのでもう少しMicrosoft製品ライセンスの前提を踏まえながら説明していきます。

Microsoftライセンスの前提

特に明記されたドキュメントがあるわけではないのですが、Windows ServerをはじめとするMicrosoft製品のライセンスは

  • 特定の組織がその組織内でのみ利用する
    • 運用を外部委託するのは組織内の利用とみなす
  • ライセンスはその組織が保有するハードウェアと紐づく

という前提に立つものがほとんどです。
要はオンプレ環境での利用が前提であり2019年現在でも原則は変わっていません。

ここでAWSなどのクラウドサービスはハードウェアを保有するのはサービス事業者であり利用者ではありません。そのためMicrosoft Services Provider License Agreement (SPLA)といった特別なライセンス体系が別建てで設けられています。
そしてクラウドサービスの台頭を受けてボリュームライセンスのソフトウェアアシュアランス(SA)特典の一つとして「ライセンスモビリティ」と呼ばれる権利が増え、特定のソフトウェアについては「ライセンスモビリティ」により既存の保有ライセンスをクラウド環境に移すことが可能になっています。

ライセンスモビリティのライセンスガイド(PDF)に良い図があるので以下に引用します。

(ライセンスモビリティのライセンスガイド(PDF) P6より引用)

この図の青色の部分が通常のボリュームライセンスの適用範囲であり、緑色の部分がSPLAの適用範囲となります。
中央の矢印の部分が「SA + ライセンスモビリティ」の行使により組織がハードウェアを保有しないクラウド上にライセンスを移動できる様になることが示されています。

これまでの専用ホスト(Dedicated Hosts)の扱い

ここから本記事の本題に入っていくわけですが、AWSをはじめとする各クラウドサービスではユーザーがハードウェアを占有する 専用ホスト (AWSだと EC2 Dedicated Hosts が該当。本記事では以降Dedicated Hostsで統一)が利用できます。

Dedicated HostsにおけるMicrosoft製品ライセンスの扱いはグレーであり、これまでは各社「ユーザー環境」と解釈し扱われてきました。
(解釈の仕方は各社それぞれでしょうが、恐らくは顧客占有のハードウェアを委託で運用している体を取っているのだと推測されます)

このためAWSのドキュメントでもDedicated HostsであればライセンスモビリティなしでもMicrosoft製品ライセンスの移動が可能と記載されていました。

2019年10月1日以降の専用ホスト(Dedicated Hosts)の扱い

ここまでくれば最初のアナウンスが何を言っているかお判りいただけると思います。

2019 年 10 月 1 日より、ソフトウェア アシュアランスとライセンス モビリティ権が付属しない状態で購入したオンプレミス ライセンスは、パブリック クラウド プロバイダーが提供する専用ホスト クラウド サービスに展開できなくなります。

これは「Dedicated Hostsはユーザー環境ではない」ということの明言であり、クラウドサービスにライセンスを移動するには必ず「ライセンスモビリティ」を行使する必要があるという意味になります。

図にすると上の通りであり、Microsoftのアナウンスにある通りオンプレ環境とクラウドサービスの区別は明確になりました。
ただ、この変更の適用範囲がMicrosoft、Alibaba、Amazon (VMware Cloud on AWS を含む)、Googleの Listed Provider だけであるのと既存のDedicated Hosts環境については従来の扱いのままとするなど何とも言えない中途半端さ、一貫性の無さを感じてしまうのが正直なところです。

誰が影響を受けるのか?

この変更で影響を受けるのは2019年10月1日以降にDedicated Hostsに対してBYOLでMicrosoft製品ライセンスを移行しようとしているユーザーです。
AWSへのBYOLは「ライセンスモビリティ」の行使が必須となったためユーザーがSAを契約しておく必要があるのと、「ライセンスモビリティ」は特定のソフトウェアのみ対象であるのでソフトウェアによってはAWSへの移行が不可能な場合があります。

誰が影響を受けないのか?

Dedicated Hostsを利用していないユーザーは影響を受けません。

Dedicated Hostsを利用するユーザーでも2019年10月1日より前にライセンスを購入しているユーザーは適用外です。ただし、購入済みライセンスをアップグレードする際はこの変更の対象になる様なので注意してください。

AWSとしてはどの様な対応をとっているのか?

本日(2019年10月17日)時点ではAWSのライセンスページに本件に対する追記が軽くされているだけであり、具体的な影響範囲に対する記述などはありません。

これはまだAWSとして公式の表明は無い状態と考えるべきでしょうし、今この時点で私から言えることは何もありません。
もし本件に関して確認すべき事項がある方はAWSサポートに問い合わせるのが良いでしょう。(弊社メンバーズのお客様は弊社サポートまでご連絡ください)

今後何らかの進展があれば本記事も更新していきたいと思います。

最後に

以上となります。

ここまでの説明で今回のライセンス変更がかなり重大な意味を持っていることはお判り頂けたかと思います。
本音を言えばこの様な重大な変更に対する見解はMicrosoftやListed Providerとされた各クラウドサービスからきちんとした形で出してほしいのですが、軽々に出せないだろうなぁとも思うのでなかなか難しい感じです...

本記事の内容に対するフィードバックは大歓迎ですのでもし内容に不備などありましたら是非お知らせください。