Argo CDを FargateからEKS Capabilitiesに移行した場合のコストを試算してみた

2025年11月末、AWSはAmazon EKS Capabilitiesを発表しました。これにより、Argo CD / ACK(AWS Controllers for Kubernetes) / kro(Kube Resource Orchestrator)をセルフホストせずにAWSマネージドサービスとして利用できるようになりました。

EKS Capabilitiesについて、およびCapabilities上でのArgo CD利用についての詳細は以下をご参照ください。
https://dev.classmethod.jp/articles/eks-capabilities-argo-cd/

本記事では、現在参画中のプロジェクトで稼働している、東京リージョンのEKSクラスター上でFargate Node上でセルフホストしているArgo CDを、EKS Capabilitiesに移行した場合のコスト試算を行なった結果を共有します。

結論

現在の構成の場合、EKS Capabilitiesへの移行でコスト削減が可能です。

• 月額$52.06の削減、年間で約$624.72の削減
• 損益分岐点は約40 Applications（39個以下ならコスト削減効果あり）
• コスト削減に加え、運用負荷削減・セキュリティ向上のメリットも

ただし、Notificationsなどの未サポート機能を使用している場合は、代替手段の検討が必要です。

前提条件

現在のArgo CD構成

• デプロイ先: Fargate Node
• 稼働Pod数: 7個
• 管理しているApplication数: 1個

各Argo CD Podのリソース割当量（metadata.annotations.CapacityProvisionedの値）

Fargate Nodeの場合、Podに割り当てられたvCPUとメモリの組み合わせによって時間課金単価が決定します。マニフェストファイル内のPod内の各コンテナのresources.requestsフィールドの値を参考にし割り当て量が決定されます。resources.requestsフィールド未設定の場合は、最小割り当て設定である0.25vCPU、0.5GBメモリが割り当てられます。

合計リソース: 1.75vCPU、4.0GB

• Argo CD Helmリリースをデプロイするとデフォルトでデプロイされる 6つのPodに加えて、Notification機能を利用しているためnotifications-controllerもデプロイしています。
• application-controller 以外はデフォルト設定である最小割り当て設定の 0.25vCPU、0.5GBメモリ で問題なく動作しています。

コスト比較

現在のコスト（Fargate）

Fargate料金（東京リージョン）:

• vCPU: $0.05056/vCPU/時間
• Memory: $0.00553/GB/時間

月730時間で計算した場合のコスト内訳:

移行後のコスト（EKS Capabilities）

2種類の時間課金が発生します。CapabilitiesでArgo CDを有効化するだけで発生するBase chargeと、Capabilitiesで管理するApplicationの数に比例して課金額が増すUsage chargeです。

EKS Capabilities Argo CD料金（東京リージョン）:

• Base charge: $0.037486/時間
• Usage charge: $0.001853/Application/時間

1 Application管理時のコスト:

• Base charge: $0.037486/時間 × 730時間 = $27.36/月
• Usage charge: $0.001853/Application/時間 × 1 Application × 730時間 = $1.35/月
• 合計: $28.71/月

損益分岐点（Application数別）

EKS Capabilitiesでは、管理するApplicationの数によってコストが変動します。

損益分岐点: 約40 Applications

計算式: $27.36 + ($1.35 × Application数) が、現在のコスト $80.77 と等しくなるポイント

• 39個以下: コスト削減効果あり ✅
• 40個以上: コスト増加 ❌

※ 現在管理しているArgo CD Applicationの数は以下のコマンドで確認できます。

kubectl get applications -A --no-headers | wc -l

コスト以外のメリット

運用負荷の削減

AWS により完全に管理されるため、Argo CDのインストール、メンテナンス、スケーリングが不要になります。AWS がセキュリティパッチの適用、アップデート、運用管理を担当するため、我々開発者は Argo CD Applicationを定義する以降の作業、つまりArgo CDの機能利用に集中できます。大きなメリットです。

移行時の考慮事項

サポートされていない機能

EKS Capabilitiesでは、以下の機能が現在サポートされていません。

• カスタム SSO provider (AWS Identity Center のみがサポートされ、AWS Identity Center を介したサードパーティのフェデレーション ID も含まれます)
• Config Management Plugins
• Luaスクリプトによるリソースカスタムヘルスチェック
• Notifications
• Argo CD Image Updater
• UI Extensions
• カスタムバナー
• Argo CD関連のConfigMapへのアクセス

まとめ

Fargate上でセルフホストしているArgo CDをEKS Capabilitiesに移行することで、管理Application数が約40個以下の場合、コスト削減と運用負荷削減の両方を実現できます。

特に小規模なApplication数を管理している場合は、コストメリットが大きく、かつAWSマネージドサービスの恩恵（自動パッチ適用、スケーリング、セキュリティ強化など）を受けられるため、移行を検討する価値が高いと言えます。

参考資料

• AWS EKS Pricing
• Amazon EKS Capabilities Documentation
• Argo CD on EKS Capabilities Comparison
• AWS Fargate Pricing
• Announcing Amazon EKS Capabilities
  [アップデート] EKS Capabilities (機能) を利用できるようになったので、AWS マネージドな Argo CD を試してみた | DevelopersIO