非営利組織のためのAI活用ラボ - 第1回:なぜ今、非営利組織にAIが必要なのか?

非営利組織のためのAI活用ラボ - 第1回:なぜ今、非営利組織にAIが必要なのか?

人手も予算も限られる非営利組織にとって、AIは“業務を置き換える道具”ではなく、“助けてくれる存在”です。本記事では、なぜ今、非営利組織にこそAI活用が求められているのかを、現場経験をもとにやさしく解説します。
Clock Icon2025.06.26

筆者紹介:現場とAIをつなぐ“かけ橋”として

こんにちは。筆者の進地(しんち)と申します。
クラスメソッドの情報システム部門でプロジェクトマネージャーを務めながら、業務効率化に取り組んでいます。
また、AIを業務の中で積極的に活用しており、「人の手を少しでも楽にする」ことをテーマに、日々実践を重ねています。

以前は、非営利組織向けのコンサルティング会社にて、技術コンサルタントとして従事していた経験もあり、
そのなかで、非営利組織の皆さんが直面している構造的な難しさにも何度も触れてきました。

  • 大掛かりなシステム導入は、コスト的に現実的ではなく諦めざるを得ない
  • ボランティアなど低コストのリソースが確保しやすい一方で、業務効率化へのモチベーションが上がりにくい
  • 組織内にエンジニアやITの専門家を配置できる余裕がない

こうした状況はとても理解できますし、無理もありません。
ただ、だからこそ私は、AIのような“手近にある変化の手段”がもっと活かされてもいいのではないかと感じています。

生成AI(ChatGPTやClaudeなど)は、専門知識がなくても使いはじめられ、低コストで「ちょっと楽になる」体験が得られる道具です。
この連載では、そんなAIの力を“できることから、無理なく”活用していくための知恵や工夫を、具体的なノウハウとして紹介していきます。

非営利組織に立ちはだかる“見えない壁”

非営利組織(NPO・NGO・地域団体など)の多くは、社会課題に真正面から向き合っています。
しかしその一方で、慢性的な人手不足資金制約IT人材の不在といった壁に悩まされています。

こうした「ないものづくし」の状況下で、日々の業務とミッション遂行を両立するのは簡単ではありません。
「スタッフは目の前の対応に追われ、改善や新しい取り組みに手が回らない」――そんな声もよく聞かれます。

このような現場で、AIは“味方”になりうる存在です。

AIは“誰かを減らす道具”ではなく、“誰かを助ける道具”

AIというと、「人間の仕事を奪うもの」というイメージが先行しがちです。
でも、非営利組織においての本質はむしろ逆で、 人の手が足りない現場を“補い、支える存在” です。

たとえばこんな場面で活用できます:

  • 慣れない事務作業や報告書作成の草案をAIがサポート
  • 外部とのメール文案をAIが丁寧語・誤字脱字含めて整えてくれる
  • ChatGPTを使った「仮想の相談役」がスタッフの悩みを整理してくれる
  • ドナーレンジチャートなど、高度なツールが比較的容易に実現できる

つまり、AIは“職員の数を増やせない現実”に向き合うための選択肢として捉えることができます。

非営利組織にとってのAI活用のメリット

項目 従来の課題 AI導入による変化
文書作成 時間がかかる、表現に迷う 草案作成が速くなり、見直しに集中できる
問い合わせ対応 担当者に負担が集中 FAQ対応の自動化、チャットボットによる一次対応
情報整理・引き継ぎ 人の記憶に依存 ナレッジを文章化しやすくなる
専門家の代替 採用に高コストがかかる 日常業務の改善は比較的簡単に可能に

まずは「小さな成功体験」から

AIは決して“魔法の杖”ではありませんが、「ちょっと楽になる」「ちょっと助かる」場面を作ることはできます。
大切なのは、いきなり全社導入を狙わないこと。まずは、1人の業務を少しだけ楽にする。
そこから「こういう使い方もできそう」と広がっていくのが理想です。

まとめ:変わるべきなのは、“技術”よりも“見方”

AI導入の成否は、ツールの性能ではなく「どう付き合うか」で決まります。
「これはうちには関係ない」と思った瞬間に、未来の可能性は閉じてしまいます。
まずは、「使ってみる」「触れてみる」ことが変化の第一歩です。

次回は、実際によく使われている 生成AI(ChatGPTやClaude) の非営利組織での使い方と注意点を提案、紹介します。

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