非営利組織のためのAI活用ラボ - 第4回:AIと“属人化”をほどく – マニュアル整備とナレッジ共有の工夫

非営利組織のためのAI活用ラボ - 第4回:AIと“属人化”をほどく – マニュアル整備とナレッジ共有の工夫

属人化が避けられない非営利組織でも、生成AIを活用することで知識の共有やマニュアル整備は可能です。一例として、ObsidianとNotebookLMを使った実践的なアプローチを紹介します。
Clock Icon2025.07.03

はじめに:「属人化」は現実。でも、不安定さは減らしたい

非営利組織では、業務が一人の担当者に依存する“属人化”はごく自然な現象です。

少人数・低コストで運営されている以上、「○○さんにしかできない仕事」が生まれるのは当然。しかしそれが引き継ぎや継続性の妨げになってしまうことも多く、組織の成長や持続可能性にとっては大きなリスクになり得ます。

そこで今回は、属人化を完全に否定するのではなく、「安心して頼れる状態」をつくるために生成AIをどう活用できるかをテーマにお話しします。

属人化を“言語化”でほぐす – AIが活躍する場面

属人化の根本的な課題は、「暗黙知のままになっていることが多い」 という点です。

例えば、「○○さんがいたらすぐにできるけど、手順を誰も知らない」といった状態は、その知識が言語化・構造化されていないことが原因です。

ここで生成AIが役に立ちます。
ChatGPTやClaudeに対して、

  • 「この作業ってどう進めていたんだっけ?」
  • 「Slackにあるやりとりからマニュアルを作って」
  • 「この手順を初めての人でも分かるように書き直して」

といったプロンプトを投げることで、暗黙知を明文化するプロセスをサポートしてくれます

Obsidian + NotebookLM:会話からナレッジベースを育てる

筆者は、以下のような構成でナレッジを蓄積・活用しています。

Obsidian:知識の蓄積と構造化

  • ローカル環境で動作し、Markdownで記述可能
  • ノート同士をリンクでつなぎ、マインドマップ的に整理
  • Obsidianで記録したノートは、GitHubのリポジトリに自動的に同期・保存することで、外部連携や履歴管理も容易に

NotebookLM:自然言語で知識を引き出す

  • GitHubリポジトリ内のObsidianノートを元に、NotebookLMに読み込ませる
  • AIが「中の人のように」質問に答えてくれる
  • 例:「○○事業の助成金申請の手順って?」「過去にやった広報の内容は?」など

このようにして、知識の蓄積・共有・検索が循環する仕組みを構築できます。

まずは“やりとり”を記録するところから

いきなり立派なマニュアルを作ろうとすると大変です。
まずはSlackのやりとりや議事録といった、すでにある言語情報を記録し、それをAIで整形することから始めましょう。

  1. Slackの会話:「どうやって申請したっけ?」→「前回は○○で…」
  2. そのやりとりをObsidianに記録(Markdownで書き留める)
  3. GitHubリポジトリに自動同期
  4. NotebookLMに連携して、自然言語で再活用できるようにする

このように、“会話”からマニュアルは生まれます。

まとめ:「頼れる人」を、安心して頼れる仕組みに

属人化をゼロにすることが目的ではありません。
人が人に頼ることは、組織にとってむしろ健全です。

しかし、“○○さんがいないと分からない”ではなく、
“○○さんの知識がここにある”という状態にしておくだけで、組織の不安定さは大きく減らせます。

生成AIとObsidian、GitHub、NotebookLMなどのツールをうまく活用することで、
非営利組織でも無理なく、属人化を“知識の形で引き継ぐ”ことが可能になります。

次回予告:AIは“IT人材の代わり”になれるのか?

第5回では、非営利組織で特に不足しがちなIT人材の代替や補完について取り上げます。

「この作業、できればエンジニアに相談したいけど、うちにはいない…」
そんな状況で、生成AIはどこまで頼りになるのか?

AIをIT人材の“並走者”として使う現実的な方法を探っていきます。

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