国立科学博物館の近年の注目的な取り組みについて 〜「おうちで体験!かはくVR」から「クラウドファンディング」まで 〜

2023.11.14

こんにちは、CX 事業本部 Delivery 部の若槻です。

今回は、日本を代表する博物館である国立科学博物館が、注目的な取り組みをいくつか行っていたので個人的にまとめてみました。

日本屈指のコレクション、国立科学博物館

国立科学博物館(以降、かはくと略称します)は、1877 年に設立された日本最古の博物館のひとつで、東京上野公園内に位置しています。

かはくでは展示内容として多数の恐竜の化石や希少種の標本を含む膨大なコレクションを長年かけて収集・収容しており、教育の場としてだけでなく、科学研究の重要な拠点としても機能している、日本を代表する博物館となっています。

また、自分が子供の頃に両親に連れられて行ったり、もしくは今親になった皆さんが自分たちの子供を連れて行ったりと、かはくが思い出の地となっている方も多いのではないでしょうか。

コロナ禍を受けて導入された「かはく VR」

しかし、2020 年より新型コロナウイルス感染症の流行が始まり、緊急事態宣言により外出の自粛の要請が行われたことにより、国立科学博物館をはじめとした展示物を見てもらうことを目的とした文化施設にとっては「そもそも来館することができない」という死活問題の事態に陥りました。

そのような事態を受け、かはくは館内の展示を自宅にいながらにしてオンラインで体験できるように「かはく VR」を導入しました。

「かはく VR」では、国立科学博物館の常設展である「日本館」および「地球館」が博物館の建物まるごとごと 3D スキャンされ、ユーザーは実際に博物館の中にいるかのように館内を自由に移動し、迫力のある展示をなんと無料で観覧することが出来るようになっています。

  • 日本館

  • 地球館

ちなみに「VR」とある通り VR ゴーグルを使うことによりリアルな没入感を楽しめますが、PC やスマートフォンからもウォークスルーをすることは可能です。

この VR ウォークスルーの実現には Matterport というサービスが利用されています。Matterport では専用のカメラを使うことにより 4K の高解像度撮影したデジタルツインを作成することができ、そのデジタルツインを VR 空間として公開することができます。

「かはく VR」の導入の背景については次のページでも詳しく述べられているので合わせてご覧ください。

貴重なコレクションを維持するための「クラウドファンディング」

さて、「かはく VR」は公開当初の 1 ヶ月で 100 万プレビューを突破するなど注目を集めはしましたが、来館者の減少による収入の減少に近年の物価高が重なり、国立科学博物館の運営は資金的に厳しいものとなっていました。そこでかはくが収蔵する貴重なコレクションを維持するために次の一手として打ち出したのが「クラウドファンディング」です。

かはく公式 YouTube チャンネルでクラウドファンディングによる資金協力を館長の篠田氏が自ら呼びかける動画を公開しています。

篠田氏によると、現在かはくは次のような危機的状況にあるとのことです。

  • 近年は資金不足によりスペースや人員が確保できず、コレクションの新規受入れを断らざるをえない状況が続いている
  • かはくでは 500 万点の収蔵品があり、適切な環境で保存や展示をするためにランニングコストも膨大となる
  • 光熱費だけで億単位を要していたが、近年の燃料費の高騰により 2021 年に比べて倍増してしまった

しかし危機感を伝えるだけでなく、コレクションを次世代へ引き継ぐことにより日本の科学技術を一歩でも前へ進めようという熱い想いも合わせて語られていました。

その結果として、大変喜ばしいことに、クラウドファンディングでは目標金額の 1 億円を大きく上回る 9 億円以上の資金が集まったとのことです。

ちなみに今回のような一時的なプロジェクトであるクラウドファンディング以外にも、様々な形で引き続き寄付が可能となっているので、興味のある方はぜひご覧ください。

おわりに

国立科学博物館の近年の注目的な取り組みについて簡単にまとめてみました。

最近デジタルツイン技術に注目している私としては、「おうちで体験!かはく VR」はテクノロジーの力で貴重な展示を空間ごとデジタル化し、オンラインを通じて多くの人に容易にその価値を伝え、さらに 3D モデルというデータとして残すことができるという、デジタルツインの大きな可能性が示された取り組みだと思っています。

また「クラウドファンディング」に関しては、本日プレス発表された通り実は弊社クラスメソッドも、法人向けコースで支援に参加させて頂いていました。

個人的には博物館や資料館を巡って貴重なコレクションに触れるのが大好きなので、自分の所属する会社がこのような日本を代表する博物館を支援する取り組みを行うことはとても嬉しく思います。

以上