
MASTRA社の「AIエージェント構築パターン集」が配布されていたのでご紹介 #AWSreInvent
「なんか、今年はAIエージェント一色なre:Inventやな」
現在、re:Invent 2025に絶賛参加中のハマコーです。昨日のキーノートや関連セッションに参加していると、そこで頻繁に触れられている単語が「AI Agent」。
マンダレイベイからMGM Grandへのシャトルバスでの移動中、こんなハンドブックが配られていたので内容を紹介します。
「Patterns for Building AI Agents」
(久しぶりに紙媒体を見た)
Mastra社が提供するAIエージェントを構築する時のパターン集です。今話題のAIエージェントの構築をパターン別に理解する上で非常に良い内容でした。
ハンドブック「Patterns for Building AI Agents」の内容
このガイドブックはTypeScriptスタックで動作するAIエージェントフレームワークで有名なMastra社の提供です。

書籍の基本情報
- タイトル: Patterns for Building AI Agents
- 著者: Sam Bhagwat(Mastra CEO)& Michelle Gienow
AIエージェントをプロトタイプから本番環境へ移行する際に多くの開発者がつまずくギャップを埋めることを目的として書かれています。前作「Principles」が「何を作るか」を扱ったのに対し、本書「Patterns」は「どう作るか」という実践的なパターンを提供します。
5部構成の内容
Part I: Configure Your Agents(エージェントの設計)
- Whiteboard Agent Capabilities - エージェントの機能を洗い出し、組織設計のようにグループ化する
- Evolve Your Agent Architecture - 巨大な単一エージェントではなく、反復的に専門エージェントを構築
- Dynamic Agents - ユーザーの属性やコンテキストに応じて動的に設定を変更
- Human-in-the-Loop - 人間のチェックポイントを組み込み、自律性とリスクのバランスを取る
Part II: Engineer Agent Context(コンテキストエンジニアリング)
- Parallelize Carefully - 並列処理の落とし穴を避け、必要に応じて単一スレッドを使用
- Share Context Between Subagents - サブエージェント間でコンテキストを共有
- Avoid Context Failure Modes - コンテキストの「汚染」「混乱」「衝突」「腐敗」を防ぐ
- Compress Context - コンテキストウィンドウのオーバーフローを防ぐため圧縮・要約
- Feed Errors Into Context - エラーメッセージをコンテキストに戻して自己修正
Part III: Evaluate Agent Responses(評価ワークフロー)
- List Failure Modes - 失敗の「理由」を分類(データ品質、推論失敗、ルール適用ミスなど)
- List Critical Business Metrics - ビジネス目標に紐づいた指標を設定
- Cross-Reference Failure Modes and Success Metrics - 失敗モードと指標を相互参照
- Iterate Against Your Evals - ベンチマークに対して反復改善
- Create an Eval Test Suite - 評価テストスイートの構築
- Have SMEs Label Data - ドメイン専門家(SME)にデータラベリングを依頼
- Create Datasets from Production Data - 本番データからデータセットを作成
- Evaluate Production Data - LLM-as-judgeで本番データを評価
Part IV: Secure Your Agents(セキュリティ)
- Prevent the Lethal Trifecta - 「プライベートデータアクセス」「信頼できないコンテンツへの露出」「外部通信能力」の3要素が揃うとプロンプトインジェクションの脆弱性になる
- Sandbox Code Execution - コード実行を隔離環境(サンドボックス)で行う
- Granular Agent Access Control - エージェントに対するきめ細かいアクセス制御
- Agent Guardrails - 入力・出力のガードレールでリアルタイム保護
Part V: The Future of Agents(今後の展望)
- シミュレーション: パラメータ最適化のためのシミュレーション増加
- エージェント学習: タスク経験から学習するエージェント
- 合成評価: 評価作成を自動化するエージェント
主要なコンセプト
| コンセプト | 説明 |
|---|---|
| Context Engineering | エージェントに適切な情報を適切なタイミングで提供する技術。プロンプトエンジニアリング、RAG、ツール呼び出し、エージェント状態管理を含む |
| Lethal Trifecta | プライベートデータ+信頼できないコンテンツ+外部通信の3要素が揃うと攻撃対象になる |
| LLM-as-Judge | LLMを使ってエージェント出力を評価する手法 |
| Human-in-the-Loop (HITL) | 人間のチェックポイントを組み込んだワークフロー設計 |
Webで公開されていないのか?
自分が知ったきっかけは、直接この冊子を受け取ったところだったのですが、以下のサイトでメールアドレスを登録することで、PDFを入手できました。
前作の「Principles of Building AI Agents」も、ここからダウンロード可能です。もし興味があれば、合わせて読んでみると全体感を把握できると思います。
ざっと読んでみた感想
AWSやその他特定のパブリッククラウドのサービスに依存する言及は基本的になく、書籍内で言及されているサービスは、だいたい以下の内容に限定されていました。
書籍内で言及されているサービス・ツール
| カテゴリ | 言及されているもの |
|---|---|
| LLMモデル | GPT-4, GPT-5, GPT-3.5, Claude, Gemini |
| デプロイ先 | Vercel, Cloudflare, Netlify |
| コーディングエージェント | Claude Code, Cursor, Windsurf, Replit Agent, Lovable, Devin |
| サンドボックス | E2B, Daytona |
| プロトコル | MCP (Model Context Protocol) |
内容は思った以上に汎用的で、これからAIエージェントを構築していくにあたり一般的に考慮に入れておくべきパターンが網羅されているので、サービス依存しない考え方が身につくのが非常に良さそうです。

具体的な実装をするときには、AWSのBedrockシリーズを中心としたマネージドサービスを取り入れていく事が多いと思いますが、もう少し上のレイヤーでパターンを整理して理解しておくことで、AIエージェントの構築により応用が効くんじゃないでしょうか。
ものすごく分量が多い書籍でもないので、頭の中にこれらパターンのインデックスを作っておくという使い方でも有用かと思います。
サーバーレスアーキテクチャパターンを思い出す
AWSのサービスは、EC2やRDSを中心としたIaaS中心だった昔から、Lambdaや各種マネージドサービスが急速に拡大していく流れで、「インフラのプロビジョニングを意識せずに、サービスとして直接使う」サーバーレスアーキテクチャパターンとして、代表的な利用方法が整理されてきた歴史があります。
ざっと眺めるだけでも、今のAIエージェントの実装パターンの大きな流れが把握できる貴重な資料なので、手に入れたら是非目を通していただくことをオススメします。
それでは今日はこのへんで。濱田孝治(ハマコー)でした。









