[セッションレポート] いつが量子コンピューティングを始める絶好のタイミングか? QCM201 #reinvent 2020
AWS事業本部@福岡オフィスの梶原です。re:Invent 2020で公開されています、量子コンピューティングのセッション「QCM201 Is now the right time to explore quantum computing?」を聴講したのでレポートさせて頂きます。
セッション概要
スピーカー: Grant Salton
Quantum computing is a young and exciting field, but it’s hard to know if, when, and how to get started. Join this session to learn when it makes sense for your organization to start its quantum computing journey. Hear about the scientific problems and potential use cases that Amazon Braket users are exploring. The session will provide a brief overview of Amazon Braket and share lessons from the service’s early users and research consultants at the Amazon Quantum Solutions Lab.
量子コンピューティングは若くてエキサイティングな分野ですが、いつ、どのように始めるべきかを知ることは困難です。このセッションに参加して、組織が量子コンピューティングの取り組みを開始することが理にかなっている時期についてご確認ください。Amazon Braket ユーザーが探求している科学的問題と潜在的なユースケースについて聞きます。このセッションでは、Amazon Braket の概要を説明し、Amazon Quantum Solutions Lab でサービスの初期ユーザーとリサーチコンサルタントからのレッスンを共有します。
セッション動画及び資料は以下のリンクから確認できますので、 ご興味があるかたは、ご参考ください。
Is now the right time to explore quantum computing?
以下セッションレポートです。
概要
- このセッションが終わる際には以下の質問に答えが出せればよいと思っている
- 量子コンピューティングとは何か?
- なぜ今なのか?
- どの分野が量子コンピューティングに期待できるのか?
- どのようにして専門知識を構築するのか?
- AWSの量子コンピューティングへのアプローチは?
- 誰が今日から始めるべきか?
量子コンピューティングとは?
- 量子コンピューティングは、計算の新しいパラダイム
- 量子情報は、量子物理学から来る重ね合わせや絡みなどの特性を使用して物理システムにエンコードされる そして、その情報は量子力学の法則に従って処理される
- チャーチ・チューリングのテーゼは誤りであった強い証拠があります
- 古典的なコンピュータにはできない問題を量子コンピュータが効率的にできる問題があるように思える
- 古典的なコンピュータでは指数的にスケールしてしまう
- 量子物理学の法則を使った繊細なデバイスを作ることはとても難しい
- 量子コンピューティングはNISC時代に入った
- NISQ は Noisy Intermediate-Scale Quantum の略
- ノイズが大きく汎用的に使用できる量子コンピューティングデバイスではない
- 古典的なコンピュータでは解決が期待できない問題を効率的に解決する新しい方法を提供してくれる可能性がある
なぜ今なのか?
- 主な理由は、この分野では本当に急速な進歩が起こっており、今後も起こり続ける
- ハードウェアの進展は目覚ましい
- NISQデバイスが短期的に量子優位性を提供できるか否かはわからない
- いくつかのアルゴリズムは良い結果をだす
- この分野に参加できる興味深い時期であるもう一つの理由は、政府の主導のイニシアティブが最近発効し、多くの活動が行われている
- 世界中の政府、学術研究者、新興企業がとりくんでいる
- 量子コンピュータは長期的な変革をもたらす可能性があり、注目することが必要
- どの分野で変革が起きるか予測するのは難しい
- 先見性のある顧客は、新技術の可能性を理解し、ゲームに遅れることに伴うリスクを理解している
- 技術の強みと弱みを把握することは価値がある
- 量子コンピューティングは非常に新しい分野で、非常に初期の段階にある
- ツールや技術を学び、結果を理解するためにはある程度の時間が必要
- 早くとりくみを始めることで時間はかかるが新しいアルゴリズムを発見したり、リーダーとなることができる
アルゴリズム
- 数学
- 最適化問題
- 探索
- シミュレーション/近似
- 最終的に完全な耐障害性を持つ普遍的な量子コンピュータが完成したときには、難しい計算問題を解決するために使用できる一連のアルゴリズムを手に入れることができる
量子コンピューティングは広く適用可能
- 様々な分野
- 金融サービス
- 自動車
- エネルギーとガス
- 医薬品
- バイオテクノロジー
- 製造業
- 学術研究
- 政府
- 強いシグナル
- 最適化
- 計算化学
- ハイブリッドメソッド
- 専門知識の構築
最適化
- 長期的には難しい最適化問題を解くためのアルゴリズムも存在する
- 今現在、利用可能な量子技術を使って、ある種の最適化問題は解くことができる
- オプションや、価格設定、ポートフォリオの最適化、車両のルーティングなど
- QUBO問題として知られている最適化問題は解くことができる
- 短期的に注目されている理由は、量子ハードウェアを使えば、このような問題を解決することができる
量子ハードウェアでQUBO問題を解く
- 量子コンピューティングで解くためには、問題を小さくして対応する
- AWSのD-Waveの量子アニーリングデバイスを使って、これらの最適化問題を解くことができる
自然からインスパイアを得た最適化技法
- 非常に強力なQUBOソルバーが開発された
- QUBOソルバーの一部はAWSのマーケットプレイスで利用可能
- QUBO問題はゲートベースの量子コンピュータでも解くことができる(IONQ, Rigetti)
計算化学
- 量子計算・計算化学
- 一般的に量子コンピューティングではシュレディンガー方程式を解く必要がある
- 本質的に量子コンピュータはシュレディンガー方程式を解くことができる
- 量子シミュレーションが量子コンピュータを使用した有用な技術になると期待されている
- 今の分野は機械学習やHPCの潜在的な利益が大いに期待できる
ハイブリッドアルゴリズム
- ハイブリッド処理はNISQアルゴリズムで有用
- Quantum Approximate Optimization Algorithm (QAOA)
- Variational Quantum Eigensolver(VQE)
- QAOA、VQEでは量子ハードウェアを有効に活用することができる
専門知識の構築
- 専門知識の構築方法
- 非常に多くの顧客がこの分野の専門知識を得て、内部組織を増強したいと考えている
- 最良の方法はやって学ぶこと
- AWSが提供するワークショップやトレーニングに参加する
- 基礎的な数学を学ぶ
- 実際に手を汚して、PoCをやってみる
- 次のステップは、あなたの組織が興味ある分野やユースケースに適用する
- スケールアップしていくと、量子ハードウェアの限界を知ることができます
- 潜在的なパワーを把握することができる
- 大事なことはこのプロセスを最初に戻って反復すること
- ドメイン固有の知識を持ち込んで、新しいアプリケーションを発見する
- 実際のユースケースを念頭において、技術の最前線でのリーダになれる
AWSの量子コンピュータ
Quantum computing at AWS
- 3つの柱からなっている
- Amazon Bracket service
- AWSが提供する量子コンピュータサービス
- Amazon Quantum Solutions Lab
- 量子計算専門家チーム
- AWS Center for Quantum Computing - カリフォルニア工科大学と共同で設立された新しい研究機関
Amazon Braket
- Amazon Braket はAWSに完全に統合されている
- 自分の好きな環境を使って量子ソリューションを設計・構築することができる
- それらをクラウドにアップロードし、Amazon Bracketがバックグラウンドで処理する
- シミュレータで実行することができ、1行の変更で実際の量子ハードウェアを使用できる
- AWSの他のサービスとも統合されているので、セキュリティやプライバシーを適用することができる
Amazon Bracket経由で使えるハードウェア
- 量子アニーリング - D-WAVE
- イオントラップ
- IONQ
- 超電導量子チップ
- Rigetti
- なぜ複数のプラットフォームを提供するのか?
- 異なるハードウェアには異なる強みがある
- 時間より興味が変わることがある
- 初期段階では進捗にあわせて、柔軟に動けるようにすることが重要
Amazon Quantum Solutions Lab
- 量子コンピューティングの専門家で、顧客との共同作業に独自のアプローチをしている
- お客様と協力して、興味のあるユースケースを特定し、そこから新しいプロトタイプ、新しいアルゴリズム、あらゆる種類の新しいアプローチの開発・構築を開始する
- 機械学習、HPCのサポートとも連携することができる
- 顧客は量子コンピューティングの専門知識を持っている必要がないということ
量子コンピューティングで何ができるか?
- 現在
- ソリューションの設計とテスト
- ハイブリッド・クラシカル/量子コンピューティングワークフローの実行
- 小さなコンセプト実証プロジェクト
- 古典的な方法の境界線を押し広げる
- NISQの潜在的なアプリケーション
- 将来
- より大きな、初期のアプリケーション
- デモンストレーション 関連量子的優位性
- 最終的には
- 完全なフォールトトレラント量子計算
まとめ
- Every new thing creates two new questions and two new opportunities.(Jeff Bezos)
- 量子コンピューティングの分野は非常に研究がすすんでいて、未解決の問題に満ちています
- 最初の問 Is now the right time to explore quantum computing?
- この答えは、確かに Yes だと考えます。絶対に。
感想
- 量子コンピューティング自体は難しい分野なのですが、量子コンピュータとはなんぞや、といったところから、現在の量子コンピューティングの現状、問題や、取り組み方などがわかる良いセッションでした。
- AWSでは量子コンピュータのデバイスだけではなく、量子コンピュータの専門家に相談できるソリューションも合わせて提供されている点も、説明されていました。
- 量子コンピューティングいつやるの?っていう問いに答えられそうです。