[レポート] データドリブン経営の「必要条件」〜未踏の地〜データドリブン経営の最新考より
はじめに
5月30日(火)にprimeNumber社が協賛、NewsPicks Brand Design社の主催でセミナー「**〜未踏の地〜データドリブン経営の最新考 **」が開催されました。
是非ブログにしてシェアしたい内容が満載だったため、ブログでお伝えします。
開催情報はこちら。
今回のセミナーはデータドリブン経営を軸に以下の3つのセッションがありました。
- データドリブン経営の「必要条件」
- データインフラ構築最前線 経営イシューと手を繋ぐには?
- データドリブンを生み出すエンジン「エンジニア」の才能を開花する方法
今回は、データドリブン経営の「必要条件」のレポートをお送りします。
データドリブン経営の「必要条件」
スピーカー
- 榊 淳 氏(株式会社一休 代表取締役社長)
- 元々データサイエンティストをされていた
- 石戸 亮 氏(小林製薬株式会社 執行役員 CDO)
- 営業やマーケティング関連のお仕事をされていた
最初はざっくりいうと、顧客データを持っている会社と持っていない会社の代表者の方のセッションでした。
テーマ1:データドリブン経営を行うとなぜ競争優勢が高まるのか?
榊さんのこたえ
榊さんが考えるデータドリブン経営とは:
- 顧客ドリブン経営
- 顧客データをもとに意思決定をする
- 一休に於いて意思決定をする際に重視する「顧客」とは利用ユーザー
- 以前はあるホテルの売上が下がった場合、社内では大問題だったが、現在は他のホテルで売上が立っていれば問題ないという認識になっている
- ファクトドリブン経営
- 経験と勘で意思決定しない
あるホテルがデータドリブン経営を取り入れた結果、取扱件数が鰻登りに。
石戸さんのこたえ
意思決定にデータを使うことの利点:
- 透明性が上がる
- 何をもとに判断が下されたのかが誰でもわかるようになる
- (透明性が高まると、)意思決定が早まる
- (意思決定が早まると、)成果が出る
これに対して、榊さんも「透明性は大事。データがその透明性を出せる」ととても納得されてました。
実際に石戸さんがPioneerで働かれていた時に、営業が日々の業務を入力してその情報を元に上司が売上予測を立てられるようになり、そのデータをそのまま経営層が見られるようになった結果、すごく仕事が回り出したそうです。
テーマ2:対極の2社から見る、データドリブン経営の必要条件
石戸さんのこたえ
CTFARモデル:
Eコマースのようにユーザーデータをそのまま取得できる会社でなくても、営業データや製造データなど意思決定に使用できるデータは存在していると思います。
ただ、この営業データや製造データに関しては、活用前にデータを分析できる形に整備する必要があります。
実際にデータを元に意思決定をする組織を作る場合にも、こちらの図の「思考・感情・行動」の現場でデータを扱う人のデータに対する考えや行動が変わらないと成果に結びつきません。
例えば、営業活動をデータ化したいといって現場への説明なしにいきなりCRMツールを入れても、実際に入力する営業担当がなぜCRMツールへの入力が必要で、入力するとどんないいことがあるのかというのをわかっていないと、自分の営業活動を新しいツールに入力するという業務が継続しません。また、どんなデータが必要かという出口も見えていないので、入力内容にも個々人でずれが生じてしまいます。これではデータを役立てることはできません。
これを複合的で複雑な問題に対して、さまざまな事象のつながりや背景にある構造・影響関係を深掘りしながらより本質的な問題解決へと繋げる思考モデルである氷山モデル(システムシンキング)に当てはめたのが下の図です:
経営層にとって目に見えている課題としてデータドリブン経営を行うというものがあるとして、それを実現するためにはデータ基盤を作ったり分析ツールを導入するというもの以外にも、現場でデータを扱うことになる担当者の「思考・感情・行動」が変わらないとデータドリブン経営は実現しません。
実際に石戸さんはPioneer時代にレガシーシステムの導入経緯や、現在に至る業務フローがなぜそうなったかを再雇用されている先輩に聞いてまわったそうです。そこで変えてもいいプロセスとさまざまな背景から変えることのできないフローがあることを知ることができたそうです。
また、そうやって色々な人に話を聞いていくうちに部門間の横のつながりがないことに気づき、外部の方を読んで部門横断の研修会を行なって部門間のコミュニケーションを促したそうです。
榊さんのこたえ
- 一休は、全ての顧客の行動を持っているので、データの取得にストレスがかからない
- 顧客行動データが全社員に共有されている。誰でもデータを見ることができる
- 全員が分析をやる必要がないので、分析結果を共有することを重視している
- 今事業がどんな状況なのかを見える化
- どのような施策を打てばいいのかをデータをもとに打ち出す
[質問] 経営層がデータが得意ではない場合があるが、その場合はデータドリブン経営のための予算や人の問題が出てくるが、そのような場合の組織的配慮はある?
- 社長直下にデータが得意な人を置くのがいいと思う
- 分析部隊と問いを出す人(経営者)が直接コミュニケーションが取れていないと問いが曲がって伝わってしまう
- 問いに対しての成果物に非常にたくさんの時間を使って合意をとることが大事
- データ部隊と経営層のコミュケーションに疲弊してしまうデータサイエンティストが多い
- そこは経営層が現場を分かろうとしていないケースが多い(経営者の問題)
榊さんは、データドリブン経営を行っていると言うと他の経営者から変わっていますねと言われることがあるそうです。ただ、その経営者に顧客を理解することが経営において大事と言うのは同意してもらえる。顧客理解は顧客のデータにこたえがあるので、経営層こそ自分でデータを取ってきて判断する組織が望ましいと榊さんは考えます。
テーマ3:データドリブン経営が進む組織を組成するには
石戸さんのこたえ
データ分析製品を販売していた時のお客様からよく自分たちはどのあたりにいるのか?という質問をもらった。
データで何ができて、データを使うと何がいいのかが腹落ちしていないと、データの導入に抵抗感が生まれてしまいます。データドリブン組織の第一歩として、現場の担当者レベルまでデータの大切さを認識してもらうことが大事。
榊さんのこたえ
- データドリブン組織を作るのにたくさんのデータサイエンティストは必要ない
- 一休では2~3名のデータサイエンティストが在籍している
- データ分析のサイクルは上の図の3ステップ。そのうちで分析スキルが必要なのは2のみ
- データxビジネスの両面に明るい人が一人でも入ると組織は劇的に変わる
- 分析自体も現在はツールの導入でほとんどノーコードでできてしまう
- むしろデータドリブンはビジネスマンが2ができてしまう方がずっと早く達成できる
最後に
石戸さん:顧客データが全部あるわけではないと思う。データの活用においても対話や思考や感情のシンクロを大事にしてみてほしい。
榊さん:Eコマースのようにデータがたくさんある会社は一人がデータを活用するとデータドリブン組織にできてしまう。
まとめ
データドリブン組織を作ると言っても、会社のデータの状況はさまざまだと思います。データドリブンに舵を切りやすい会社とそのための文化の醸成が必要な会社があり、それぞれどのようにデータドリブンな組織へと進めばいいのかを示したとても参考になるセッションでした。
データ分析ツールを使ってもらっている身からすると、その前になぜデータ分析が必要で大事なのかという発信をもっともっと行なう必要があると痛感しました。
あとは最後に出てきた、データ分析とビジネススキルの組み合わせの大切さもとても大事な視点ですね。どうしても一つのことを突き詰めないと!と穴を深く深く掘り進めてしまいがちですが、別の領域の知識を持つことでできることが幅が広がるというのを再確認できました。
この後のセッションもためになることばかりだったので、近いうちに公開します。お楽しみに!!