Route 53の失効したドメインを復元してみた
ドメインを更新し忘れると、ドメインが失効し、名前解決できなくなります。 失効した汎用JPドメイン(.jp)の復元をお手伝いをする機会がありましたので、手順を共有します。
まとめ
- ドメインを更新し忘れると、ドメインはSuspended状態に遷移。ネームサーバーが止まり、Route 53の登録済みドメイン一覧からも消える
- JP汎用ドメイン(.jp)は Suspended から20日以内であれば回復可能
- AWSサポートに料金発生の同意文とともに回復を依頼
- Amazonはレジストラ Gandi のリセラー。回復作業はGandiが平日の営業時間内に実施
- 回復作業はドメインの回復(この時点でサービス復旧)とAWSへのデータ同期の2段階
- ドメイン更新を忘れないように、自動更新を有効にしよう
汎用JPドメインのライフサイクル
汎用JPドメイン名のライフサイクルは次のとおりです。
画像引用 JPドメイン名のライフサイクル
Active [登録されているドメイン名]
ドメインが有効期限内の場合 Active 状態です。 有効期限は月末に設定されています。
例えば、classmethod.jp は次の通りです。
$ whois -h whois.jprs.jp classmethod.jp ... Domain Information: [ドメイン情報] [Domain Name] CLASSMETHOD.JP [登録者名] ClassMethod.Inc [Registrant] ClassMethod.Inc [Name Server] ns-1722.awsdns-23.co.uk [Name Server] ns-1421.awsdns-49.org [Name Server] ns-266.awsdns-33.com [Name Server] ns-576.awsdns-08.net [Signing Key] [登録年月日] 2006/02/12 [有効期限] 2022/02/28 [状態] Active [最終更新] 2021/03/01 01:05:10 (JST) Contact Information: [公開連絡窓口] [名前] クラスメソッド株式会社 [Name] ClassMethod.Inc [Email] XXX [Web Page] [郵便番号] 101-0025 [住所] 東京都千代田区神田佐久間町1丁目11番地 産報佐久間ビル8階 [Postal Address] Sampo Sakuma Bldg 8F 1-11 KandaSakuma-cho, Chiyoda-ku, Tokyo, 1010025,Japan [電話番号] ..-....-.... [FAX番号]
Suspended [廃止されているドメイン名]
ドメインの更新をしなかった場合、有効期限翌日からドメインは 失効(Suspended 状態) し、ネームサーバー設定が無効になります。
汎用JPドメイン名は、失効後20日以内であれば登録を回復して Active 状態にできます。
今回対応したのは、このケースです。
この状態で whois
したときの擬似的な結果は以下の通りです。
$ whois -h whois.jprs.jp classmethod.jp ... Domain Information: [ドメイン情報] CLASSMETHOD.JP [登録者名] [Name Server] [Signing Key] [登録年月日] 2006/02/12 [有効期限] 2022/03/31 [状態] Suspended [最終更新] 2021/03/01 01:05:10 (JST) Contact Information: [公開連絡窓口] [名前] [Name] [Email] [Web Page] [郵便番号] [住所] [Postal Address] [電話番号] [FAX番号]
- ドメイン名
- ドメインの期限
- 状態(Suspended)
は確認できますが
- 登録者情報(Registrant・Contact Information)
- ネームサーバー
はブランクになっていますね。
ドメイン名登録の削除
Suspended状態のまま月末を迎えると、レジストリデータベースからドメイン名の情報が削除され、ドロップキャッチ含め、第3者がドメイン名を登録できるようになります。
失効したドメインを回復するには?
Route 53で登録されたドメインが失効したときの回復手順をお伝えします。
具体的な手順は次のドキュメントにあります。
失効したドメインまたは削除されたドメインの復元 - Amazon Route 53
ドメインが失効するとどうなる?
ドメインの有効期限内に更新手続きを行わずにドメインが失効すると、ネームサーバー設定が無効になり、ドメインにアクセスできなくなります。
Route 53 にアクセスすると、ドメインの期限が切れたことを伝えるメッセージが表示されます。
"Domain registration expired successful: Domain has been removed from your account upon expiration"
ドメインのライフサイクルに則ったオペレーションが行われているため、正常系の緑色メッセージで表示されますが、サイト運用の観点からは異常系フローに突入しています。
JPRS サイトや whois コマンドでドメインが Suspended 状態であることを確認します。
$ whois -h whois.jprs.jp example.jp ... [有効期限] 2022/03/31 [状態] Suspended [最終更新] 2021/03/01 01:05:10 (JST) ...
- 有効期限 : 1ヶ月伸びます。この期限をすぎると、登録が削除されます。
- 状態 : Suspendedです
- 最終更新 : 有効期限・状態が遷移した日時です。もともとの有効期限の超過直後です。
AWS サポートにドメイン回復を依頼
Suspended 後、20日以内であればドメインを回復できます。
以下の情報とともに AWS サポートに回復依頼します。
- 復元するドメイン
- ドメインが登録された AWS アカウントの 12 桁のアカウント ID
- ドメイン復元の料金に同意することの確認。以下のテキストを使用します。「____」部分に実際の費用を記載
- 日本語 : ドメインを復元するための ____ USD の料金に同意します。
- 英語 : I agree to the price of $____ for restoring my domain. ※英語起票する場合
回復費用は登録・更新費用とは別に定義されています。
TLD ごとの回復費用はドキュメント「失効したドメインまたは削除されたドメインの復元 - Amazon Route 53」から参照されている次の価格表から確認できます。
Amazon Route 53 Pricing for Domain Registration
参考までに、COM と JP の料金は以下の通りです。
TLD Name | Registration and Renewal Price(登録更新) | Change Ownership Price(所有者の変更) | Restoration Price(回復) | Transfer Price(レジストラの変更) |
---|---|---|---|---|
com | $12 | $0 | $66 | $12 |
jp | $90 | $0 | $94 | $90 |
"Restoration Price" がドメイン回復で発生する費用です。
JP は更新($90)と回復($94)がほぼ同額なのに対し、COMを回復($66)するには更新時($12)の5倍程度の費用が発生します。
ドメインの回復作業
Amazon はあくまでもレジストラ Gandi のリセラーであり、回復作業は Gandi が実施します。
ドキュメントには次の記載があります。
復元申請が Gandi に転送され、このリクエストは、月曜日から金曜日の営業時間中に処理されます。Gandi はパリに拠点を置くため、時間帯には UTC (協定世界時) /GMT (標準時) + 1 時間が適用されます。このため、リクエストを送信する時間により、まれにリクエスト処理に 1 週間以上かかる場合があります。
AWS 〜 Gandi間のコミュニケーションパスが存在するため、通常の問い合わせよりもコミュニケーションに時間がかかることがあるかもしれません。 ドメインが回復すると、以前と同じネームサーバー設定が復活します。
AWSサポートからドメイン回復の連絡が来たら、以下を確認してください。
- whois でドメインの状態が Active になっていること(
$ whois -h whois.jprs.jp example.jp
) - 名前解決できること (
$ dig www.example.jp.
など)
この時点でサービスは復旧しています。
GandiとAWSのデータ同期
回復したドメインの情報が Amazon Route 53に反映され、登録済みドメイン一覧に表示されるようになれば全行程の完了です。
AWS からの作業完了報告を待ちましょう。
復元スケジュール
参考までに、今回(N=1)の復元スケジュールは以下の通りでした。
- 週末に復元依頼
- 翌営業日にドメイン復元 = サービス復旧
- さらに約1週間後、AWSコンソールでもドメイン復元
ビリングレポートへの反映
ドメイン回復後、以下の様な明細が発行されます。
product_name | usage_type | operation | item_description |
---|---|---|---|
Amazon Registrar | Route53-Domains | RenewDomain | [OP-***] Renewal of example.jp |
ドメインの自動更新を有効にしよう
ドメイン失効後、回復のアクションが遅れると、登録したドメインが売りに出され、ドロップキャッチ可能になります。
Route 53の設定で、ドメインの自動更新を有効にしましょう。