[ゼロから始めるプロジェクトマネジメント] プロジェクトの移動するゴールを追い続けよう、記録しよう
情報システム室の進地@日比谷です。
プロジェクトのゴールはうつろいます。残念ながらうつろいます。貴方が無菌室で一人で行っているプロジェクトであってすらうつろいます。貴方が変化し続けるからです。今回は、うつろいゆくプロジェクトゴールを記録し続けることの意義についてまとめます。
プロジェクトのゴールはうつろいゆく
プロジェクトのゴールはなぜうつろい、移動してしまうのか。理由は主に3つあります。
- 外部環境が変わってしまうから
- 内部環境が変わってしまうから
- 貴方が変わってしまうから
まさに仏陀の仰るとおり、万物流転です。
外部環境が変わる
開発中のプロダクトと非常に似たコンセプトのプロダクトを競合他社が先にリリースした。マーケットシェア自体が新技術の登場によりシュリンク(縮小)した。などなど、貴方以外の世の中の人々も動き続けているので、ゴールが無意味、無効化されることはままあります。
内部環境が変わる
プロジェクトがコストカットの対象となり、予算が大幅に削減された。エース級エンジニアが家庭の事情で退職した。などなど、外部環境と同様に内部環境も変化し、ゴールが無意味、無効化される、達成が困難なため修正を余儀なくされるといったことが発生します。
貴方が変わる
大事な家族が大病にかかり、プロジェクトマネジメントなんてやってる場合じゃなくなる。プロジェクトで優先すべきと考えることが貴方の思考が変わったことによって変わる。などなど。貴方自身も日々刻々と変わり続けているため、ゴールに影響を与え得ます。
ゴールを記録することの意味
ゴールは変わります。故に記録をとっておかないと過去のゴールを忘れてしまいます。では、なぜ過去のゴールを忘れてしまってはいけないのでしょうか?
それは、自分達が今現在どこにいるのか、そしてそれは何のためだったのか、どういう歴史的経緯があってここにあるのかを明らかにするため、です。これらがわかっていると、新しいゴールに向かうにあたって、変えて良いもの、変えてはいけないものが明確になります。ゴールが変わったことによって無効化される要求や仕様、無効化されない要求や仕様とに分かれるからです。
また、ステークホルダに対してゴールと現在地が離れている理由を論拠を持って示すことができるからです。大阪から東京に向かっていて、途中でゴールが変わり福岡を目指すことになった時に、現在地が名古屋であることに怒り狂う人はいないと思いがちですが、稀によくいらっしゃいますので気をつけてください。
過去のゴールと現在のゴールとの共通要素と差分要素から、現在のゴールまでの方向性と距離をより正確に割り出すことが可能になります。活かせる過去の資産も活かせます。貴方が変わってしまった場合であれば、引き継ぎもスムーズです。とにかく、ゴールの変化は必ず記録をとりましょう。
スクラムで進めている場合は、インセプションデッキの定期的な更新をお勧めします。
現在地から正しい方向を掴んで進み続ける
旅の基本1はゴール(目的地)と現在地を明らかにすることです。でなければ、どちらに進めば良いのか皆目見当がつきません。
記録を取り続けるというのは、航海日誌をつけ続けるようなことです。ゴールが変わったら、それを記録し、これまでのゴールとの差分を導き出し、現在地を割り出し、正しい方向と距離を特定する。当たり前と言えば当たり前のことなのですが、プロジェクトのゴールは不変である、と思い込んでいる
と記録をとることをせずにがむしゃらにプロジェクト運営をしてしまいます。
残念ながら、注意深く方向と距離を特定せずにゴールに辿り着けるほど世界はシンプルではありません。現実のプロジェクトは整備された一本道を自動車で軽快に進むようなものではなく、激流を流れる木の葉のようなイメージの方が近いと思います。
PMの貴方は、非常に危険で難しい仕事をしているということを常に忘れてないでください。簡単なプロジェクトなどこの地球上に存在しません。
決して油断せず、航海日誌と共に進んでいきましょう。
- 語れるほど私は旅をしてないのですが。。。 ↩