[ 参加レポート]Tech Play Conference 2017 – VRが作り出す世界 #techplayconf2017
TECH PLAY Conference 2017というイベントの、VR回に参加してきました。
セッションやパネルディスカッションだけでなく、体験コーナーもある大変有意義なイベントでした。レポートします。
展示
会場に到着したときには「セッション1: 新しい「エコシステム」を生み出すWeb/モバイル VRの世界」が既に終了していたため、まずは展示スペースを見てみました。
セッション2で登壇するAOI Pro.のVR Insightが展示されていました。
これは、各種センサーを付けたテスターに、視線トラッキング機能付きVRヘッドセットでCM動画を見せて、その反応から効果測定を行なうためのシステムです。既に一般公開されていて、いくつかの実績もあるそうです。
このシステムを開発する前の研究とフックコンテンツを兼ねて開発された、野球選手の豪速球をバッター・キャッチャー視点で体験する「VR Dream Match - Baseball」も展示されていました。
セッション: 「映像が心に及ぼす影響」を可視化するVR
- モデレーター
- アルティテュード株式会社 北野 幸雄 氏
- パネラー
- 株式会社AOI Pro. 額田 康利 氏、吉澤 貴幸 氏
- FOVE, Inc. 小島 由香 氏
- ニューロスカイジャパン株式会社 伊藤 菊男 氏
公開されているスライドを、見つけられていません。
- AOI Pro.: 創立55年のテレビCM制作会社。約1200本を作成して、直近10年で600ほどの賞を獲得。それとは別に、新規事業でテクノロジー活用をしている。
- 当初の目的の前に、フックコンテンツとして「VR Dream Match - Baseball」を作成した
- 「VR Private Tour - Wonderful World」は、風やミスト、歩行ガジェットと使って、一歩先の没入感を実現した
- 「virtualだけど、過去の経験を思い出すなど、既にリアルなものだと考えている」
- 実際に体験しなくても、同じような生体反応を取得できる
パネルディスカッション: VRと感情データの活用の方向性
パネルディスカッションのため、スライドはありません。
感情抽出の考え方
- 究極のインタフェース = 感情
- 現在のインタフェースは筋肉運動を必要とする
- 目指すのは考えたことが機械に直接つながるインタフェース
- 現在は計測機器を装着する必要があるので、VR技術でそれを解決することを期待している
- 視線トラッキング併用VRによって、例えばVRコマースで顧客の興味をフィードバックできると考えている
- Facebook Spacesのように、アバターを通じたコミュニケーションをするときに、微細動作をのせられる
- VRやセンサーを使ってセンシングして、データを解析して感情を抽出したいという方向
- 研究、ビジネス、コミュニケーションなど理由は違うが、「感情抽出」という手段は一致している
- 「まばたき」を取得するケースが多い
- 脳波測定時に、ノイズとなる筋電位を一緒に測定して除去処理に使う
- まばたきをスイッチにように使う
- まばたき回数の変化で、例えば眠気の状態を調べる
- 意図的に目を閉じさせる。VR酔いのリセット、期待感を高める演出。
未来のユースケース
- 視覚認知能力を調べて、認知症の早期発見に使う
- 感情を理解できるAIの開発。頭が良いNPCを作ったり、レコメンデーションに使える
- 音声アシスタントと同じ方向
- VRのセンシングによって、より良いVRコンテンツ制作の材料にする
- VR脳トレ。集中を高めるのではなく、「平常心ファースト」
- 「オン」のパフォーマンスを上げるためには、「オフ」のパフォーマンスも上げる必要がある
- VRという高度なシミュレーターを使って、α波が出る状況を仮想的に作って、トレーニング
- テロや犯罪を未然に防いだり、調査に使う。生体反応はトレーニングで制御できるが、感情は制御できない。
- あるいは逆に、避難訓練VR。直面した場合の平常心維持に使える
- ジャーナリズム。事件や災害の臨場感がテレビと変わってくる。
ビジネスアプローチ
- 「無意識を測る」自分の表層意識とは異なる結果が出ること
- 飽きないコンテンツをいかに供給していくか。カスタマイズしてコンテンツを作る市場がある。
- 感情データを抑えるという切り口。広告やコミュニケーションなど幅広い応用が考えられる。
セッション: WebVRを実現する技術と、もたらされる未来
株式会社VOYAGE GROUP 伊藤 淳 氏
※ 当日発表された実際のスライドではありませんが、大まかには上のようなスライドの内容でした。参考までに共有します
- WebVRは、リンクでシェアできるのが、ネイティブVRに対する強み
- 例えばA-Painterは送られてきたリンクに対して加筆できる
- 既存のWebプロモーションに埋め込むことができる
- モバイルではChrome on Daydream、デスクトップでもWeb VR APIでVIVE対応
- 開発方法・フレームワークもいくつかある
- フレームワークはThree.js/A-Frame/React VR/Solufaなど。コミュニティが大きいのはA-Frameでオススメ
- HTMLを解釈してWebGLがレンダリングする
- リソースが重い問題
- VRコンテンツはリッチなので直面しがち
- IndexedDBを使うとだいたい解決
- LPを見ている間に主要ファイルをダウンロードしておく
- 2回目からはIndexedDBを見る
- モバイル回線は、5Gが出る2020年に解決するのでは
- 実行速度が遅い問題
- JSベースだしネイティブよりは遅い -> リッチなゲームは辛い
- WebAssemblyに期待
- UnityのWebGL書き出しが対応しているよう
- モバイルはほぼ未対応。デスクトップのみ
- 現状はビューアなどアクセサビリティが重要なコンテンツで既に実用的
- 「ヘビーな場合はアプリにする」などの住み分けが進んでいくのでは。
セッション: ARもVRもMRもまとめてドドーンドーン!(短縮版)
株式会社ホロラボ/システムフレンド 前本 知志 氏
短縮版のため、デモはありませんでした。
- Kinectを使って深度を取るとオクルージョンできる
- 現実世界と仮想世界を重ね合わせる必要がある。つまり座標系を合わせる。具体的には、Unity座標系と合わせる(1メートル == 1 Unity、xyz軸)
- カメラの位置と方向も重ね合わせる。カメラレンズの歪みも考慮すると大変。
- リアルとバーチャルの重なりを考慮する。KinectのDepthとUnityのZバッファをGPUで比較して、前後関係を判定して表示する
- 「異なる世界をMixさせるにはモノサシと基準を一致させる」
- カメラが複数の場合、普通ならそれぞれスタンドアローンで動く。
- 共有するため、絶対中心と基準座標系を定義して、各デバイスで共有する
- 課題:各デバイス自身は自分が絶対中心と扱うため、現実空間と位置を合わせられない。
- 解決策:床に原点と方向マークの印をつける
- GPSと似た方法でDepthのキャリブレーションを行なう(3点を使う)
- 各点とカメラを半径とする球の交点を求める
- 法線を合わせる
- 現実空間と重なる仮想空間を複数人で共有するには
- いずれのデバイスも、基準点が分かれば良い
- そして通信で共有する
- これまでは自分中心だったが、空間共有ができると「覗き窓」という役割に変わる
- 上書きされた自分を見る
- さらにスマホで覗き込むことができる
- 録画して、上書きされた世界をスマホで裏側(異なる座標と向き)から見ることができる
セッション: 【デザイナー向け】Graphic VR - Photoshopで創るVR世界
マインドスケープアーキテクト ひらやま ともよ 氏
公開されているスライドを、見つけられていません。
- PC/スマホにクリエイティブ業務を行っているデザイナー/ディレクターで、VRを取り入れたい人向けセッション
- VRのフィールドでは表現が360度になり、クリエイターとして使わないのはもったいない
- VRは全天周イメージ投影(プリレンダリング)と、3DCG(リアルタイムレンダリング)に大別される
- 機能や表現の幅は3DCGが優れるが、高コストだったり技術が必要だったりしてオーバースペック
- 簡単にできる全天周イメージ投影でできることを活用していく方向で考える
- 全天周投影法(画像編集可能なVRイメージ方式)では、エクイレクタングラー方式を使う
- 四角の世界地図と同じ
- 地平線(世界地図なら赤道)から離れるほど画像がゆがむ。柄は歪みが目立つが、空など無地は目立ちにくいので作りやすい
- エクイレクタングラーの特性を活かして全天周画像をデザインする。
- 地平線はWebで言うファーストビューに相当するメインコンテンツ
- GoPro VR PLAYERやTHETAモバイルアプリで見れるので、これらを使いながらコンテンツを作る
- 普通の画像があればフォトショで作れる
- 真ん中を決める
- 円筒になったときのために、右端と左端がつながるように画像を修正する
- 上下はグラデーションで無地にする
- VR表示時に目の前に来る位置である真ん中に、メインコンテンツを重ねる
- ファーストビューを意識して、画像全体に対してコンテンツは小さくなる
- 地平線を上げ下げすると見え方が変わる
- 下がると、維持分が落とし穴になったように見える
- 頭を上下に振らせると酔いやすい。
- どうしても上下を見せたいなら、プラグイン(flexify 2)を使ってキュービックからエクイレクタングラーに出力する
- シングルビューを考慮する(VRゴーグルはデュアルビュー)
- InstaVRの他に、PanotourというVRオーサリングツールがある。
- 解像度を上げると没入感が増す
- 「酔わない、疲れさせない、頭を動かさせない」
- Adobe Stockで「エクイレクタングラー」と探すと素材がある
セッション: VRのその先へ - MRによる次世代没入体験
TYFFON Inc. 深澤 研 氏
公開されているスライドを、見つけられていません。
- VRお化け屋敷(CORRIDOR)の企画の話
- デバイスのことは考えないでプラニングした。企画の段階で同時に技術のリサーチ
- 屋敷が変わるアトラクションを作りたくて、実際に屋敷を作るとか電動車椅子とかを考えた
- 企画を詰めるのと同時に、コンセプトアートを作る
- GCデザイナに見せるため、キャラクターデザインもフォトショで作る
- この段階でシステムはfixしていなかった
- 「普通のお化け屋敷ではここまで入り込めない」
- TBSのイベントでローンチ
- 「エンタメがスクリーンの呪縛から解き放たれて、新しいエンタメを作れる。まだされていないことができる。"文法"作りができる」
まとめ
VR Insight関係者が登壇したビジネスセッションではVRを感情抽出の手段として考えていて、開発者・クリエイターが登壇したテックセッションではVRを表現方法として考えていることが印象的でした。
個人的には、前者の「感情抽出」について特に考えていなかったので、新しい視点を得ることができ、参加して非常に良かったと思います。
また、登壇者のみならず参加者のレベル・意欲も高く、懇親会での会話が非常に楽しかったです。懇親会の時間がしっかりと確保されているのも良いと思いました。
このイベントはテーマを変えて、週末まで開催されるようです。まだ人数に空きがあるとのことなので、ぜひ参加してみてください。