テクニカルサポートになってからの 4 年半を振り返ってみた

テクニカルサポートになってからの 4 年半を振り返ってみた

岐阜から福岡、そしてマルチクラウドへ
2025.12.17

この記事は アノテーション株式会社 AWS Technical Support Advent Calendar 2025 | Advent Calendar 2025 - Qiita 17 日目の記事です。

はじめに

アノテーション、テクニカルサポートチームの村上です。
アノテーションへ入社してから 4 年半が経ちました。入社 2 年目に執筆した振り返り記事「テクニカルサポートになってからの 2 年間を振り返ってみた」から、さらに 2 年半が経過しました。

前回の記事では、非エンジニア職からエンジニア職へ転身し、入社してから必死に知識やスキルを身につけていた日々について書きました。今回は、テクニカルサポートのキャリア形成にフォーカスを当て、この 2 年半を振り返ってみたいと思います。

数字で見る 2 年半の変化

まずは、この 2 年半で何が変わったのか、数字と実績で振り返ってみます。

項目 2年半前 (2023.05) 現在 (2025.12)
AWS 資格 Japan AWS All Certifications Engineers (2022, 2023) Japan AWS All Certifications Engineers (2024, 2025)
Google Cloud 認定資格 0 7 つの認定資格
その他資格 IPA NW, FE IPA NW, FE, OSS-DB Gold & Silver
ブログ執筆数 累計 47 本 累計 95 本
居住地 岐阜 → 福岡(移住直後) 福岡 (すっかり定着)

AWS については、資格更新ラッシュを乗り越えて、なんとか All Cert を維持しています。新しく取得した 7 つの Google Cloud 認定資格と OSS-DB Gold については、AWS 以外にも幅が広がったことを示せる資格だと思います。資格での次の目標は、Google Cloud 認定資格の全冠です。

変化したこと

その 1 :「広げる」と「深める」 マルチクラウドへの挑戦

業務における、この 2 年半での大きな変化は、「AWS 専任」から「マルチクラウド対応」へのシフトです。

Google Cloud テクニカルサポート兼任

2024 年 12 月から、Google Cloud のテクニカルサポート業務を兼任し始めました。
正直なところ、最初は「AWS のキャッチアップだけで手一杯なのに、別のクラウドなんて覚えられるだろうか?」という不安がありました。しかし、実際に学習と業務を始めてみると、重要なことに気づきました。

AWS の知識が、別のクラウドとの共通言語として機能するということです。

EC2 と Compute Engine、S3 と Cloud Storage、Redshift と BigQuery...。
用語や設計思想の違いはあれど、「クラウド」というインフラの根幹(コンピュート、ネットワーク、ストレージの抽象化)は共通しています。「AWS で言うところの〇〇だな」と変換しながら学ぶことで、ゼロから学ぶよりも速いスピードでキャッチアップできました。

一つの技術を深く掘り下げた経験があったからこそ、横への展開(Google Cloud)がスムーズにいったのだと実感しています。

OSS-DB Gold 取得の意図

クラウドの幅を広げると同時に、技術の「深さ」も意識しました。その一つが OSS-DB Gold の取得です。
テクニカルサポートをしていると、クラウドサービス自体の仕様だけでなく、その上で動くミドルウェア(特にデータベース)の挙動理解が不可欠な場面に多々遭遇します。
「クラウドの使い方はわかるが、データベースの中身はブラックボックス」という状態を脱したかったのが取得の動機です。結果として、パフォーマンスチューニングやトラブルシューティングの解像度が上がりました。
なお、この 4 年半で 2 回、IPA データベーススペシャリスト試験を受験していますが、いずれも不合格になっています。結果は残念でしたが、データベースについて根本的なところから理解する良い機会だったと思います。

その 2 :技術の外側にある「サービスマネジメント」

当時のチームリーダーからの勧めもあり、2024 年に IPA IT サービスマネージャー試験を受験したのですが、残念ながら不合格となりました。しかし、この挑戦は私にとって非常に大きな意味を持ちました。試験勉強を通じて ITIL(Information Technology Infrastructure Library) やサービスマネジメントの体系的な知識に触れたことで、テクニカルサポートという仕事の捉え方が変わったからです。

以前の私は、「技術的なエラーを解消すること」が自分の仕事だと思っていました。しかし、現在は「お客様の IT サービス(ビジネス)を継続・安定させること」が本質であり、技術サポートはそのための手段の一つに過ぎないと考えるようになりました。

試験には落ちましたが、日々の問い合わせ対応における優先順位の判断や、エスカレーションの質において、この時の学びは確実に活きています。(次は合格したいです!)

その 3 :AI とのかかわり方

技術分野という観点から見ると、この 2 年半でもっとも進化したのは生成 AI でしょう。ChatGPT や Claude などの生成 AI が登場し、私たちの業務も劇的に変わりました。

以前はエラーメッセージ等を検索エンジンにかけて、大量の検索結果から答えを探し出すのが当たり前でした。しかし今は、AI にエラーメッセージと状況を説明し、「壁打ち相手」になってもらうことで、原因の切り分けにかかる時間が大幅に短縮されました。特に、自分が詳しくない領域では、AI は最強のメンターになってくれます。

ただし、テクニカルサポートとして忘れてはいけないのは、「AI の回答を鵜呑みにしない」ということです。AI はもっともらしい誤った情報(ハルシネーション)を生成することがあります。だからこそ、AI が出した回答に対して、公式ドキュメントで裏を取り、実際に検証環境で手を動かして確認するプロセスがより重要になりました。

「AI にヒントをもらい、エンジニアが検証し、責任を持って回答する」

このプロセスが、AI 時代におけるテクニカルサポートの価値だと感じています。

変わらないこと :「学習エンジン」の回し方

環境は変わりましたが、私が大切にしている「学習エンジン」の回し方は 2 年半前から大きく変わっていません。
変化したことを強いて挙げるとすれば、インプットに AI を活用するようになったことでしょうか。今は、知らないサービスや技術が出てきたら、NotebookLM に良さそうなドキュメントやブログを読み込ませて音声解説を聴くようにしています。目を使うことが多い仕事なので、インプット中だけでも目を休められるのも良い点です。

  1. インプット(業務・資格勉強)
  2. 検証(ハンズオン)
  3. アウトプット(ブログ執筆)

このサイクルを回し続け、ブログは累計 95 本になりました。
以前のブログでも書きましたが、私は「忘れてもいいように」ブログを書いています。人間の記憶力には限界がありますが、ブログに残しておけば、未来の自分が(そしておそらく世界中の誰かが)助かります。

これからのキャリア:マルチクラウドエンジニアとしての模索

AWS、Google Cloud、データベース。
扱える技術領域が広がってきた今、私は「マルチクラウドエンジニアとしてどうあるべきか」を模索しています。

「あれもこれも手を出して、器用貧乏になるのではないか?」という不安がないわけではありません。
しかし、お客様の課題は「AWS を使うこと」ではなく「ビジネス課題を解決すること」です。そのための手段として、AWS が最適な場合もあれば、Google Cloud が適している場合もあるでしょう。

これからのキャリアでは、特定のクラウドに固執するのではなく、複数の選択肢の中から最適な「道具」を選定し、提案できる「技術の翻訳者」のようなエンジニアを目指したいと考えています。

謝辞

この 2 年半も、多くの方々に支えられてエンジニアとしてのキャリアを重ねることができました。
新しい挑戦をサポートしてくれたチームメンバー、そして福岡という土地で共に生活を支えてくれている妻に心から感謝します。
また、私のブログを読んでくださる読者の皆様にも感謝しております。本当にありがとうございます。

おわりに

テクニカルサポートになって 4 年半。
「非エンジニアからの転身」というフェーズを終え、今は「マルチクラウドエンジニア」という新しい山を登り始めたところです。

次の 1 年、2 年後にまた振り返った時、「あの時の模索は無駄じゃなかった」と言えるよう、これからもコツコツとインプットとアウトプットを積み重ね、学び続けていきたいと思います。

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福岡の田舎で撮った、とても可愛いカモの群れとアオサギです。

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