
Vercelアップデート&修正まとめ(2025/5/1〜5/15)|Changelogから注目トピックを日本語で紹介
豊島です。
VercelはWebアプリケーション開発者にとって非常に強力なプラットフォームであり、頻繁に新機能追加や改善が行われています。
本記事では、5月1日から15日までに実施された主な変更情報を独断と偏見でピックアップし、日本語で解説します。
なお、私自身がVercelの最新動向をチェックし、日々の学習として内容をまとめている側面もあります。
「最近のVercelって何が変わったの?」と気になる方や、最新情報にアンテナを張っている方、そして私と同じように知識を深めたい方にも役立てば嬉しいです。
*本記事では主な変更情報として、新機能追加だけでなくバグ修正・改善・脆弱性対応なども対象としています。
※本記事で扱っていない内容も含め、詳細はVercel Changelogをご確認ください。
Vercel Changelog ハイライト(2025/05/01〜2025/05/15)
プロキシされたレスポンスをCDNでキャッシュ可能に
ざっくりまとめ
- 「ブラウザは非キャッシュ、CDNのみキャッシュ」など、キャッシュ制御を柔軟に分離設計できるようになった
- APIや外部サービスの応答をCDNでキャッシュし、キャッシュヒット時には即時レスポンス化&サーバー負荷軽減が可能
- vercel.jsonからヘッダーを設定できるため、コードの変更不要で導入できる
- 全プランで無料提供
この変更について
VercelのCDNが、外部バックエンドへのプロキシリクエストをキャッシュできるようになりました。
これにより、CDN-Cache-ControlおよびVercel-CDN-Cache-Controlヘッダーを用いて、プロキシされたレスポンスをVercelのエッジでキャッシュ可能になります。すべてのプランで無料・再デプロイ不要で利用可能です。
この機能は、Targeted HTTP Cache Control(RFC 9213)の仕様に準拠しており、max-age
やstale-while-revalidate
などの標準ディレクティブを使ってCDNレイヤーに限定したキャッシュ制御を実現できます。
ヘッダーはバックエンド側で返すこともできますし、バックエンドが編集できない場合にはvercel.jsonのheadersキーで設定することも可能です。
外部CMSやAPIから取得したレスポンスにも、vercel.jsonでCDNキャッシュ用のヘッダーを追加できるため、コード変更不要でキャッシュ制御を導入できます。
VercelでのMCPサーバー/クライアントのデプロイに対応
ざっくりまとめ
- VercelでMCP(Model Context Protocol)サーバー/クライアントを正式にサポート
- HTTPやOAuthにも対応
@vercel/mcp-adapter
パッケージの登場により、MCP対応の実装がより容易に
この変更について
VercelがMCP(Model Context Protocol)のサーバーとクライアントのデプロイに対応しました。
従来はServer-Sent Events(SSE)ベースでの通信が中心でしたが、今回のアップデートによりHTTPとOAuthにも対応し、より汎用的な設計が可能になりました。
ブログも書きました(サイコロ以外のMCPサーバーも構築したいと思っています)
Flags SDK における情報漏洩 (CVE-2025-46332)
ざっくりまとめ
- Flags SDKに関する情報漏洩の脆弱性(CVE-2025-46332)が修正された
- 該当バージョンは
flags ≤ 3.2.0
および@vercel/flags ≤ 3.1.1
- 自動緩和策が実装済みだが、
flags@4.0.0
へのアップグレードが推奨
AIボットのアクセスを制御できるルールセットの追加
ざっくりまとめ
- GPTBotやAIクローラーによるスクレイピングに対して「Log(監視)」または「Deny(アクセスブロック)」ができるようになった
- 検知ルールは自動更新されるため、保守作業が不要
- ワンクリックで簡単に設定可能
- 全プランで無料提供
この変更について
GPTBot(OpenAI)やClaudeBot(Anthropic)、PerplexityBot、Bytespider(ByteDance)などのAIクローラーやスクレーバーをワンクリックでブロックできるようになりました。こちらもすべてのプランで無料で利用できます。
このルールセットはVercelによって継続的に更新され、新たなAIボットが登場しても自動的にブロック対象に追加されます。また手動の保守や細かなルール設定は不要です。
2025年5月15日時点では「ログ」または「拒否」のどちらかのアクションを選択できます:
- ログ:AIボットによるアクセスをブロックせずに記録します。監視やトレンド把握に有効です。
- 拒否:AIボットとして識別されたすべてのアクセスを即座に遮断します。
AIクローラーによるアクセスが正規ユーザーを上回るケースもあるため、著作権やインフラコスト、データ利用の観点から注目のアップデートといえます。
Bot activityとcrawler insightsがObservabilityに追加
ざっくりまとめ
- ボットやクローラー(AI・検索エンジンなど)のトラフィックを詳細に可視化
- カテゴリ別フィルターや個別ボットごとの指標確認が可能に
- Edge Requestsダッシュボードから利用可能(全プラン対応)
この変更について
Vercel Observabilityにて、AIクローラーや検索エンジンを含むボットトラフィックの可視化が強化されました。
Observability > Edge Requestsダッシュボードから、ボットやそのカテゴリごとの内訳を確認できます。
Observability Plusの利用者はさらに以下の機能を利用できます:
- ボットカテゴリ(例:AI)でトラフィックをフィルタリング
- 個別ボットのメトリクスを表示
- クエリビルダーでボットやカテゴリごとのトラフィックを分解表示
AIクローラーや自動化ツールの影響をより正確に分析したいチームにとって、Plusプランは有効だと思います。
とはいえHobbyのままでも、どういったBotからのアクセスが多いかなど分析できるため有用です。
ビルド初期化が45%高速化
ざっくりまとめ
- Vercel上でのビルド初期化が平均45%高速化
- Pro/Enterpriseチームでは、ビルド時間が約15秒短縮
- Hive(Vercelのビルド基盤)の継続的な改良によるもの
- ビルドコンテナ内のファイル書き込みに関するI/O待ち時間も75%削減
この変更について
Vercelはビルド初期化処理を大幅に最適化し、平均で45%の高速化を実現しました。
この最適化は特にProおよびEnterpriseプランのユーザーに恩恵があり、ビルド全体の所要時間が約15秒短縮されます。
「ビルド初期化」とは、ビルドキャッシュのリストアやコード取得など、ビルドコマンド実行前の前処理全般を指します。今回のアップデートでは、Vercelの独自ビルド基盤「Hive」の継続的な改良が大きく寄与しているとのことです。
また、ビルドコンテナ内部でのファイル書き込みにかかるI/O待ち時間が75%削減されたことで、全体的なビルドパフォーマンスも向上しました。
Resourcesタブの使い勝手向上
ざっくりまとめ
- Projects > Deploymentで見れるダッシュボードに
Resources
を追加(今まであったFunctions
タブの置き換え) - 従来のFunctionsで見れる情報に加え、関連する情報への導線が追加し使い勝手が向上した
この変更について
VercelダッシュボードにResourcesタブが追加され、従来のFunctionsタブを置き換える形で登場しました。
このタブでは以下の情報が横断的に表示・検索・フィルタ可能になりました:
- ミドルウェア(Middleware):マッチャーパターン
- 静的アセット:画像・CSS・JSなどファイルごとのサイズ
- Functions:種別、サイズ、リージョン、ランタイムなど
また、Log、Analytics、Speed Insights、Observabilityなどへ遷移できる導線も整備されており、今まで行き来して煩わしかった方には朗報です。
Web Analyticsの価格が最大80%引き下げに
ざっくりまとめ
- イベント単位での課金に変更され、より柔軟な料金体系に(変更前は10万回分の増分ごと)
- イベントあたり$0.00003〜
- Web Analytics Plus(Proプランに更に機能を追加したもの)も月額$10に引き下げ(変更前は月額$50(!))
- Hobbyプランで月5万イベント、Proプランで月10万イベントに上限を拡大
この変更について
Web Analyticsの料金体系が見直され、イベント単位での課金になりました。
これにより、従来の10万イベント単位での課金から、1イベントあたり$0.00003(10万イベントで$3)となり、約79%の価格削減となります。
また、Web Analytics Plusアドオンの月額料金も$50から$10に引き下げられ、約80%の削減となりました。
各プランのイベント上限も増加しており、以下のように拡張されています:
- Hobbyプラン:月間50,000イベント(従来の2,500イベントから20倍)
- Proプラン:月間100,000イベント(従来の25,000イベントから4倍)
Web Analytics Plusアドオンでは、イベント保持期間の延長に加え、utm_source
やutm_campaign
などのUTMパラメータを利用した流入経路の分析にも対応しています。
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セッショントレースでリクエストのライフサイクルを可視化(Observability強化)
ざっくりまとめ
- リクエストがVercelに届いてからVercel Functionで処理されるまでの各ステップを時系列で可視化
- セットアップ不要でVercel Toolbarからすぐにトレース開始可能
- 全プランで無料提供
この変更について
リクエスト処理のタイムラインを視覚的に把握できる「セッショントレース」が新たに追加されました。
具体的には、リクエストがVercelのインフラに届いてから、ルーティング・キャッシュ・ミドルウェア・Functionレイヤーを経て、アプリケーションコードが実行されるまでの各ステップを時系列に可視化します。
これにより、以下のようなことが可能になります:
- 処理の各ステップの時間を把握し、ボトルネックの特定
- ログやメトリクスだけでは見えづらかった処理順序や内部構造を把握できる
- 他の監視情報と併用することで、問題発生時の原因分析や最適化に有効
この機能はすべてのプランで無料で提供されており、Vercel Toolbarから特別な設定も不要ですぐに利用可能です。