[感想] 「アップル、グーグルが神になる日 − ハードウェアはなぜゴミなのか?」を読んで
こむろです。今回は読んだ本の感想です。 *1
今回読んだ本はこちら「アップル、グーグルが神になる日 ハードウェアはなぜゴミなのか? (光文社新書)」。
ご存知Bluetooth LEの世界ではよく知られたわふうの人の著書です。
Twitterでは「ハードウェアはゴミ」「正しくゴミ」などと、若干物議を醸し出す物言いをしているのを見かけることが多いのですが、その辺りの真意もきちんと書かれています。
個人的には、普段考えているモヤモヤした曖昧な考えをバシッと整然と言葉で提示されていた文章であったため、「そう、それです!それ」という思いで読み進めていけました。新たな無線技術によってビジネスがどのように変化するか、今後どういった方向でIoT市場が広がるのか、IoTがもたらす未来なども随所で語られており、個人的に非常に刺激になる書籍でした。
IoTとBLE
ここ最近しきりに叫ばれるIoTというキーワード。それを実現するために非常に重要な技術であるBluetooth Low Energy。
BLEとは今までの無線技術と何が違うのか、なぜBLEが注目される技術なのか、なぜこれによって一気にIoTの市場が大きく前進するのかなど、BLEの技術解説といくつかの実例を元に解説されています。
最近、より人のパーソナルな情報を計測してスマートフォンと連携するものが増えてきているのはみなさん実感されていることではないでしょうか。例としてあげるとすると、ヘルスケア製品、家電、フィットネスプロダクトなどです。今後これらは更に増え、周囲のありとあらゆるものがネットの世界で情報を観測できるようになるというのはどういうことなのでしょうか?
ビーコン技術
BLEと共にほぼ必ず語られることの多い、ビーコン技術。AppleはiBeacon技術をOS内部の機能として取り込み、Androidもまた別のビーコン技術を模索しています。ビーコン技術の概要とその技術によって、ビジネスはどう変化するのか、どんな世界が広がるのかが記されています。
この技術によって、現実世界での人やモノのアクションが仮想世界で簡単に観測ができるようになります。安価で使い捨てが出来、運用次第では様々な情報を観測できるデバイスが急速に実社会に広がり始めています。
現実世界とインターネットの仮想世界が同期する
今までのホームオートメーションがなぜ失敗したのか。現実世界と仮想世界の情報が同期することで何が起きるのか。ヘルスケアの情報蓄積とHomekitなどに代表される家電情報の集約が何をもたらすのか。
Google、Appleなどのプラットフォーム企業が目指す未来なども語られています。人や周囲のモノに関わる非常にセンシティブな情報をクラウドに預けることで、多くの恩恵を受けると同時に、新たな脅威にさらされる可能性もあります。
ユーザー体験を売る世界
日本のエレクトロニクス業界の没落、AppleやGoogleといったプラットフォーム企業の躍進、「ハードウェアはゴミ」と発言する真意などが語られています。
Bluetooth Low Energy(BLE)の登場と、その技術を中心に据えたiPhoneの登場によって、テクノロジーの世界がまた新たなステージへの扉を開きました。単体のハードウェアでユーザーに機能を提供するのではなく、蓄積された情報、ユーザーが身に付ける各種デバイス、そしてユーザーを囲む様々なハードウェアを通じて、体験をハードウェア、ソフトウェア問わず適切な形で提供できることが今後生き残る道のようです。
読み終えて
最早一つの企業だけで差別化では生き残るのが難しい時代です。プラットフォーム企業2強時代に入ってしまっている中、単なる下請けとして生きるのか、それとも新たな価値を生み出す側として生き残るのか、作り手側も社会も今後大きく変化する時代にちょうど居合わせているのかもしれません。これを幸運と思うか、不運と思うか。餅は餅屋ではないですが、今後はハードウェア、ソフトウェアなどの枠組みの垣根を超えて協業などを推し進め、ユーザーに新たな体験価値の提供を本気で考えていかないと、すぐに飽きられ使い捨てられる未来がありそうです。
自分は普段モバイルアプリケーションの開発を行っていますが、スマートフォンはこれらの技術を利用した時代の中核にあります。
今後スマートフォンはどういった方向での技術が求められていくのか、どんな形になっていくのかを予想し、先読みをしていかなければ色々と取り残されるのではないかな、と未来への可能性と危機感を感じました。
タイトルが非常に釣り気味なところが多分にありますが、内容はとても良いと思います。非常に読みやすいですし *2、エンジニアの方は(そうでない方も)是非読んでおいた方が良いかと思います。もちろんハードウェア、ソフトウェア問わずに。
参照
- 「アップル、グーグルが神になる日 ハードウェアはなぜゴミなのか? (光文社新書)」Amazonでチェックする