[レポート] Google Agentspace の新機能

[レポート] Google Agentspace の新機能

Google Cloud Next 2025 の Agentspace の新機能に関するセッションです。

ウィスキー、シガー、パイプをこよなく愛する大栗です。

Google Cloud Next 2025 に参加してきましたが、Agentspace の新機能に関するセッションのレポートを書き忘れていたことを思い出しました。思い返しながら書いてみます。

What’s new with Google Agentspace

What’s new with Google Agentspace

このセッションは、Google Agentspace の最新の進歩について学びエンタープライズ対応の AI エージェントを立ち上げるプラットフォームを体験します。Agentspace の新たな機能とすぐに使えるエージェント、それらにより可能になる新たなユースケースについてご紹介します。

登壇者

  • Matt Jansen
    • Emerging Technology Manager
    • Gordon Food Service
  • Kalyan Pamarthy
    • Group Product Manager
    • Google Cloud
  • Matt Poremba
    • Senior Software Engineer
    • Gordon Food Service
  • Brendan Stephen
    • Digital Innovation Leader
    • Avery Dennison
  • Vladimir Vuskovic
    • Director, Product Management
    • Google Cloud

Agentspace とは何か?

あらゆる企業で生成 AI を導入するニーズが高まっています。しかし企業における生成 AI とエージェントの利用には、サイロ化されたデータシステム、データセキュリティとプライバシー、エージェントの急増によるガバナンスなどの課題があります。

Google Agentspace はエンタープライズレベルのセキュリティ、プライバシー、コンプライアンスを備えた企業向け検索、アシスタント、エージェントの統合プラットフォームです。

Agentspace は企業内の散らばったデータにアクセスできる場所を提供し、最高の生成 AI モデルとモダンなエージェントプラットフォーム、最適化されたユーザーインターフェースを備えています。単一のウィンドウで分散したデータを検索でき、そのデータに Gemini などの生成 AI モデルを適用でき、企業全体でエージェントを構築やデプロイ、利用、管理を可能にします。

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Agentspace は何が新しくなったのか?

企業内のソースの横断検索

企業全体での検索は伝統的なユースケースですが、まだ解決されていない問題で、非常に多くのデータをもつ大規模な組織では簡単ではありません。Agentspace では様々なアプリケーションをアクセス制御付きですぐに利用できます。エンタープライズナレッジグラフによりデータに関連するコンテキストに基づいて回答できます。Gemini が提供するマルチモーダル機能で、テキストデータだけではなく、オーディオ、ビデオなども理解します。例えば「この架空の会社のシンボルに関する最新の財務報告書を要約してください」と言えば、右のパネルでは Google 検索と同様なブレンド検索が表示されます。その結果をクリックしたり、プレビューしたり、NotebookLM に接続したりできます。

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企業データに基づくコンテンツ生成

画像、ドキュメント、オーディオ、ビデオをアップロードして、チャットしながらコンテンツを生成できます。生成したコンテンツを基にサードパーティのシステムでアクションも実行できます。例えば「私の最も収益の高い営業機会は何ですか?」と尋ねると、Salesforce や SharePoint などの接続されたデータを見つけて、それを Gemini で適切なフォーマットで回答を生成します。最高技術責任者宛にメールの下書きを依頼するとナレッジグラフにより人事ディレクトリに接続して CTO が誰かを知り、メールアドレスを見つけ、メールを生成して、アプリケーションから直接メールを送信するフォームも作成します。

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NotebookLM は Agentspace に統合されているので、サードパーティソースのデータを検索して NotebookLM に取り込む指示も可能です。NotebookLM はポッドキャスト生成ができるので是非チェックして下さい。

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企業内のエージェント向けのワンストップ集約

企業内のデータが乱立している状況では、基本的にエージェントが増殖していきます。それらを Agentspace へ集約したいと思っています。Agent Development Kit で構築したもの、Google Cloud Marketplace のパートナーエージェント、ファーストパーティの Google エージェントなどを Agentspace へ集約します。Agent Gallery ではそれらのエージェントを一元的に表示します。

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新しい Deep Research エージェントもローンチしました。これは Gemini の Deep Research に非常によく似ていますが、皆様のエンタープライズデータソースとウェブに接続されています。「東南アジアで新製品をローンチするにはどう考えるべきか?」といった複雑な質問をすると既存のリポジトリとウェブを見て、計画を立てて、理由を考え、非常に深いリサーチの回答を行います。

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アイデア生成エージェントは自分自身のブレインストーミングバディを持っているようなもので、アイデアを出し合い、改善し、より良いものを作り出すことができます。そのためにマルチエージェントシステムを構築しています。

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そしてまもなく Looker と BigQuery の統合が控えています。BigQuery や他のデータソースに接続して、自然言語で分析を行うエージェントです。約一ヶ月ほどで公開されるはずです。

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ご自身で Agent Development Kit や Agent Runtime Engine を使用してエージェントを構築して Agentspace で公開することも可能です。

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エージェントデザイナーでノーコードでエージェントを構築できます。設定したコネクタを含む様々なツールに接続してシンプルなワークフローを自動化できます。

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Google Cloud Marketplace で 100 を超えるパートナーのエージェントにアクセスできます。

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エンタープライズ向けのビルド

Agentspace が Chrome Enterprise に統合されました。URL の欄から Google 検索を行うように Agentspace を使用して検索できます。

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悪意あるコンテンツの生成などを防ぐ Model Armor が Agentspace に統合されます。コンテンツの安全カテゴリの設定、機密データの保護、プロンプトインジェクションやジェイルブレイクの検出、悪意あるファイルと安全でない URL の検出などを行えます。今後 1 ヶ月ほどで出てくると思います。

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Avery Dennison での AI 検索とエージェント

Avery Dennison はは 33,000 人以上の従業員を擁する多国籍企業であり、50 カ国以上で事業を展開しています。我々が日々扱っている情報と人々は膨大であり、実際に提供している製品は多量のラベルソリューションです。空港に行くためのブリーフケースに貼られているラベルや皆様のビジネスシャツのステッカーやタグも我々の製品です。今年の 2025 年は会社として 90 周年を迎えます。インターネットが存在するはるか以前から90年にわたりお客様とソリューションを構築しており、過去 10 年で 10 件の買収を行ってきました。そのため組織全体に情報や知識が分散されており、Agentspace が多くのアプリケーションのコネクタを備えたエンタープライズ検索プラットフォームと知り飛びつきました。我々はすぐに利用できる Google Workspace と ServiceNow、Jira の統合から始めました。データコネクタを活用して、Google Workspace のコネクタを 15〜20 分でセットアップし、すぐに利用可能になりました。

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Agentspace がエンタープライズ検索の価値やコンセプトがどのようなものになるのか PoC を実施しました。PoC には R&D、カスタマーサービス、製造、運用、IT が参加しました。Agentspace を使用することで 即時応答の品質が 9% 以上改善 されました。非常に驚くべきことで、基盤となるシステムを変更せずにデータを使用するだけで、従業員全体に提供する情報の質を向上できました。

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Agentspace はエンタープライズ検索を始めとして将来のエージェントのプラットフォームを提供します。データコネクタで取得するだけでなく、データソースへアクションを起こすことも可能です。これは我々に大きな影響があり、次の 90 年への革新に活かすことができるからです。

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Gordon Food Service での AI 検索とエージェント

Gordon Food Service は13種類のチャットボットがあり、情報を得るために何を使えば良いのか混乱していました。それを解決するためにマルチエージェントプラットフォームを調査し始め、採用基準を導入しました。推論レイヤーやノーコード、ローコードを通じて組織内の人々がエージェントを作成できることは重要です。カスタマイズ可能な接続なども重要です。

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Agentspace を採用した最も重要な基準は 3 点あります。まずはデータセキュリティです。データが外部のモデルにトレーニングされないことが不可欠でした。Agentspace はこれを保証しており、組み込みのアクセスコントロールがあります。次に組み込みのコネクタです。我々が日々使用しているツールのコネクタが提供されているのでエンジニアの時間を活用できます。最後に、カスタマイズ可能なエージェントです。すぐに利用できるエージェントだけでなく、AI ニーズに特化したエージェントを ADK で構築できます。

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最初のユースケースは ServiceNow で、次に Google Workspace でした。そして SAP と JIRA の統合に取り組んでいます。もともとヘルプデスクの電話を減らすことに焦点を当てており、簡単に回答できる質問では人間へたどり着くことを防ごうとしていました。プロセス全体を通じで Google のサポートにより最終的にかなり正確な結果を得ることができ、非常に満足しています。様々なソースからコンテンツを引き出して Agentspace 内で直接メールの下書きを作成したり、Agentspace でドキュメントに Q&A を繰り返すこともできます。ServiceNow や JIRA のチケット作成にも取り組んでいます。ServiceNow の推論レイヤーがユーザーを必要な場所に誘導してサポートを見つけるのが容易になるはずです。またグラウンディングされたコード生成により、我々の GitLab リポジトリに接続して開発者が以前のパターンに基づいて生成されたコードにアクセスできるようになります。

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Deep Research エージェント も重要なビジネス課題を解決するのに役立っています。例えば、我々は常にドライバーや倉庫作業員の募集と定着に苦労していますが、「どのように関わり、彼らを迎い入れ、より長く我々の会社にとどめておくことができるか」という問題に取り組んでいます。

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アイデア生成エージェントではブランドの浸透に注目しています。どのような創造的な方法でブランドの浸透を考えることができるのかという点を取り組んでいます。

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我々は 10 月から Google チームと協力しており、開発フィードバックサイクルの中でエラーの対応などの成長痛を乗り越えました。現在は接続する様々なナレッジソースをまたがるブレンド検索になりストレスの少ないシームレスな統合とセットアップになっています。

セキュリティは常に懸念事項であり、適切な文書化やリスク評価を行っています。最もエキサイティングなことはエージェント探索でした。スケジュール設定やメール作成のような、すぐに利用できるエージェントだけでなく、Workday を通じた休暇申請や ServiceNow のチケット作成などを早期アクセスした Agent Development Kit(ADK)で構築しました。

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5人のパイロットグループから現在は400人以上の従業員の利用にまで拡大し、最初のサンドボックス環境からより永続的なインフラストラクチャへ移行しており、高度なセキュリティ分析の準備やオンプレミスソフトウェアとの統合を始めています。Gordon Food Service は真にエージェント時代に踏み出しており、効率的なエージェントを自ら開発できるように推進しています。Agentspace の可能性は無限大で今後の開発に期待しています。

さいごに

今後企業内データを活用して行くには、単なるエンタープライズ検索だけではなく検索したデータからナレッジを効率的に得る必要があります。エンタープライズデータを元に RAG を構築するソリューションは既に多数ありますが、それだけではなくエージェントとしてアプリケーションにアクションを行えるプラットフォームはまだあまりない印象です。エンタープライズデータを横断的に検索してエージェントで活用できる Agentspace は今後ナレッジワーカーに不可欠なサービスになる可能性があると感じています。

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