UXって何だろう?④ 〜「ユーザー」は一人じゃない。関わる人全員を幸せにするUXデザイン〜

UXって何だろう?④ 〜「ユーザー」は一人じゃない。関わる人全員を幸せにするUXデザイン〜

「ユーザーを中心に据える」と言うけれど、そもそも「ユーザー」って誰のことでしょうか?実は直接システムを触る人だけがユーザーではありません。今回は直接ユーザー・間接ユーザー・広義のユーザーを整理しながら、関わる人全員を幸せにするUXデザインの考え方を整理します。
2026.03.13

前回、第3回の記事では、HCD(人間中心設計)において「ユーザーを中心に据えてサイクルを回す」ことの重要性を整理しました。

しかし、ここで一つの疑問が生まれます。

「私たちが中心に据えるべき『ユーザー』とは、一体誰のことでしょうか?」

スマホの個人向けアプリなら「ダウンロードして画面を触る人」で完結します。でも、世の中のシステム(特に業務システムやBtoBのサービス)は、もっと複雑な人間関係の中で使われています。

今回は「誰のためのデザインか」という視点と、関わる人全員を幸せにするための考え方を整理してみます。

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1. 「ユーザー」は1種類ではない

HCDの考え方でも、ユーザーは1種類ではないと定義されています。システムやサービスには、直接画面を触る人以外にも、さまざまな人が関わっています。

🔵 直接ユーザー

製品やシステム・サービスと直接的に相互作用する人です。さらに2種類に分かれます。

● 一次ユーザー:システムと直接相互作用する人

例:コンビニATMでお金をおろすお客様、店舗でレジを打つ店員

● 二次ユーザー:システムへのサポートを提供する人

例:ATMのメンテナンス業者、システムの管理担当者

🟡 間接ユーザー

製品やシステム・サービスと直接的な相互作用は行わないが、その出力を受け取る人です。

例:ATMの取引データを確認する銀行員、社員が入力した経費データを承認するマネージャー

🔴 広義のユーザー

直接・間接ユーザーをすべて含んだ、そのシステムに関わるすべての人です。

例:コンビニの管理会社、店長、周りにいる他のお客様など

参考:近代科学社「人間中心設計 入門

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2. よくある悲劇:「誰」に向けて作っているか?

なぜユーザーをこうして分類する必要があるのでしょうか。

開発の現場でよく起きるのが、「🔴お金を払う人(社長)」や 「🟡結果を見る人(マネージャー)」の要望ばかりを聞いて、実際にシステムを触る「🔵一次ユーザー」の体験を後回しにしてしまうという状況です。

❌ 失敗例 BtoBの業務システム

「🔴社長」から「顧客データがひと目でわかる、リッチなダッシュボードを作ってほしい」と要望されたとします。その要望に応えようとした結果、「🔵現場の店員」が使う入力画面に項目が50個もある複雑なシステムができあがってしまいました。

「🔵現場の店員」にとっては毎日の業務がとにかく大変です。これはUX(ユーザー体験)の低下と言えます。

UXが悪化すると…

● 入力ミスが増える

● 入力を後回しにされる

● そしていつの日か誰もシステムを使わなくなる

結果としてダッシュボードには古くて不正確なデータしか表示されず、「🔴社長」も満足できない。誰も得をしないシステムのできあがりです。

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3. 「誰か一方が犠牲になる」デザインは失敗する

もちろん、一次ユーザーの体験を最優先に考えることは正しい姿勢です。ただ、『要望をすべて叶える』ことと『体験を良くする』ことは、実は別の話です。要望を叶えすぎた結果、別の誰かが不幸せになり、システム全体が機能しなくなることがあるからです。

❌ 失敗例①:一次ユーザーだけが幸せなパターン

「入力が面倒だから」という「🔵現場の声」をすべて聞き入れ、必須項目を極限まで減らした。現場は楽になったけれど、「🟡間接ユーザー(マネージャーや経営陣)」は欲しいデータが集まらず、経営の分析ができなくなってしまいました。

❌ 失敗例②:ビジネス要件を無視したパターン

「🔵購入者」にとって使いやすくスタイリッシュなECサイトを実現しようと、バナー広告やおすすめ商品の表示を最小限にしました。サイトはすっきりして「🔵購入者」には好評でしたが、「🟡マーケティングチーム」はデータが取れず施策が打てない。「🔴事業部門」の広告収益も下がり、サイトの運営自体が立ち行かなくなってしまいました。

どちらのケースも、誰かが「不幸せ」になっているため、システムとして長続きしません。では、どうすればこのトレードオフを解決できるのでしょうか?

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4. トレードオフを解決し「皆が幸せになる」のがUXデザイン

UXデザインの面白いところは、単に「ボタンを押しやすくする」だけじゃないところだと思っています。一次ユーザー・間接ユーザー・ビジネス(ステークホルダー)、全員にとっての「三方良し」の着地点を探すことが本質であり、意義なのではないか、と考えます。

では、社長の「詳細なデータが欲しい」という要件を満たしながら、現場の入力ストレスを下げるにはどうすればいいでしょうか?

ここで、これまでのUIシリーズの知識が活きてきます。

コンポーネントの活用:直感的に操作できるUIコンポーネントで入力の手間を省く

状態とフィードバック:エラーを未然に防ぎ、入力成功をわかりやすく伝える

余白と情報整理:グリッドシステムで、項目が多くても認知負荷を下げる画面設計にする

「機能を減らす」という安易な方法ではなく、UIの工夫でビジネス要件も現場のUXも両立させる。それがデザインの力だと思います。

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おわりに

「直接ユーザーを一番大切にする」という姿勢は、UXデザインの揺るぎない土台です。しかし、関わる人全員の体験を視野に入れないと、どこかで歪みが生まれてしまいます。

🔵 直接触る人(一次ユーザー) の体験を大切にする

🟡 出力を受け取る人(間接ユーザー) を助ける

🔴 広義のユーザー全体、そしてビジネスも成立させる

「誰のUXをデザインしているのか?」 を想像する。「関わる人全員を幸せにする仕組み」を目指す。これらを掲げることが本当に使われるシステムへの第一歩なのでは、と考えます。

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